がっこうぐらし!ver2.0_RTA 『一人ぼっちの留年』ルート≪参考記録≫   作:ゆキチ

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(2日分に纏めたから長いので)初投稿です。

あっ、あと次回はちょっと遅れます。めーんごっ!(可愛げアッピル)


三~四日目 Lost

やっとRTAっぽい事が出来て嬉しいRTA、はーじまーるよー!!

 

 

三日目に入りました――私は死ぬほど元気です!(テンションバリ高)

 

いやぁ……やっと、やっとチャート通りに進んだんやなって。

色々あったですけれど、チョーカーさんを救出できたのは大きいです。頭数はあるだけでタァイム短縮に繋がり、多少のガバはチャラにできます!

 

バンザーイッ!(テンション↑↑)

 

 

「それで?やなぎくんはどうして先生の頭をパイナップルにしたんですか?」

 

 

だから虚無僧だって言ってんじゃねぇかよ(テンション激サゲ)

 

寝室から、場所は生徒会室に移動しました。

そこに主要キャラ達が集まっており――私はそこで正座をしています。

 

 

「あー、びっくりした。ジャンルがサバイバルからホラーになったかと思った……」

「そのたとえは良く分かんないけど……あれは妖怪だったわよね……」

 

 

くるみとりーさんが仲良くお菓子を摘まみながら談笑してますが――私はそこで、正座をしています。

 

 

「たかえちゃん、たかえちゃん!無事で良かったよぉ……!」

「ゆき……」

 

 

目の前で感動シーンで繰り広げられているというのに――私は!そこで!正座をしています!

なんとめぐねぇは空気が読めないのでしょうか。風情が無いってそれ一番言われてるから。

 

 

「こらっ、不服そうな顔をしないっ!」

 

 

おっ?やんのか――むぎゅっ。

うおっおっおっ。めぐねぇがいたいけなショタの頬を捏ね繰り回しています!ダメージが、微妙にダメージが蓄積するから止めろぉ!(主要キャラ筋力値二位)

いっ、いきなり他人のほっぺいじくるとか常識無いのか!捕虜への拷問は条約違反なんだぞ!

 

 

「………やわっこい」

 

 

あっ……あの?いつまでやってらっしゃるの?(お嬢様部)

いっ、痛い(HP減少中)

 

 

「あーっ!めぐねぇだめだよっ!やーくんのほっぺは私のものっ!」

 

 

止めて近づかないでゆきちゃん!参加しないで!

ふぅおおおおお(HP減少率アップ)。死ぬぅ!死んじゃぁーう!ほっぺいじくられて死ぬとかスペランカー大先生以下だぞショタお前ぇ!

 

 

「あー、ほらほら。あんまいじくってやるなって可哀そうだろ」

 

 

GORIMI IS YASASII

助かりました。このままだと進行しませんし。……お菓子食って回復しておきましょう。

 

 

「こほんっ。それで……柚村、さんですよね?」

「はい――柳のほっぺ触って恍惚としていた佐倉先生」

 

「そっ、それは違います!……違った、わよね?よねっ!よねっ!?」

 

「率直に言ってBPO案件だったぞめぐねぇ」

「くるみ、それを言うならPTAよ」

「――はうっ!」

 

「大丈夫だよめぐねぇ!――私も気持ち分かるもん!」

「――ふぐぅ」

「あーあー、トドメ刺したるなよ、ゆき……」

「トドメってなに!?」

 

 

なにやってんだあのショタねぇは……(ポリポリ)

 

今始まってるのは新キャラが救出された際に入る『合流イベント』です。顔合わせですね。

ここで互いの好感度が低かったりすると、険悪な雰囲気になり、下手したら合流すらしなくなる事もあります。滅多に起こらねぇ事ですが。

 

会話を見るに……互いの好感度は問題なしですね。特に問題無く、チョーカーさんは受け入れられるでしょう。

チョーカーさんが加入すると、ゆきちゃんの正気度減少に補正が掛かります。めぐねぇもいるので、誰か死なない限り――ゆきちゃんは、発狂とは無縁な空気清浄機(比喩)として活躍してくれるでしょう。やったぜ。

 

 

この後、軽い自己紹介とあだ名決めのイベントが始まりますが、ここは何しても変わんないのでスルーしながら、菓子を摘まんで回復に勤しみましょう。

タァイムの短縮には――出来る限り、今ある食糧の消費を早めておく必要がありますので、さりげなーく、食い散らかしておきます。

 

 

「それで、どうやって此処に?他に誰か居たの?」

 

 

おっと。

めぐねぇ、それは。

 

 

「……他に、人は居ない。私一人だった。どうやっては……あー」

 

 

チョーカーさん悩んでますねぇ。

私を見て、くるみりーさん、んで私を見て、言おうか言わずか悩んでます。

くるりーさん達は……こっちも悩んでますね。

 

 

「……?どうしたの?」

「いや……その――」

 

 

さて。ここで私が一人で夜廻を敢行したのがバレたら――秒でお説教です。

今日のお昼頃まで時間が潰れてしまいます。まあ、三日目はやれる事も少ないので構いませんし、チャート的にも想定済みですが――この時間を有効活用したいっていうのも本音です。

 

ここは一つ。こっちをチラチラしてるチョーカーさんにウィンクをかまして、黙って貰うように伝えましょうか。単独での救出の為、好感度は高めのはずです。私の意図はしっかり伝わるはず。

 

 

「えっと……だな」

 

 

チョーカーさん!――バチコーンッッ(迫真)

 

 

「柳に助けて貰ったんだ」

 

 

あれー?

 

えっ、伝わんなかった?さっきお前言おうか言わずまいかチラチラ見てただろ?スゲー見てたゾ。

なのになんでウィンク見た途端、迷いなく暴露し始めたんだよおい。無視より酷いぞお前!意図を察してもその通りにしてくれないとか……えっ、意外に好感度は低いのか……?うーん?

 

 

「やなぎくん。どういう、事……?」

 

 

――説教確定ですねクォレハ……。

チョーカーさんの裏切り者ぉ!空気読めるチョーカーさんなら伝わってただろ絶対ぃ!ああ……横からの視線の圧がつよい。見なくても涙目のゆきちゃんが見える見える……。

バレたのなら仕方ありません。説教を甘んじて受けましょう。

むしろ、めぐねぇの説教は心が和むのでほんわかしながら流しましょう。顔真っ赤にしてプンプンでめっ!してくるめぐねぇいいゾ~これ。

 

さて、適当に――

 

 

「どうして、そういう事したの?危ないのよ?」

 

 

えっ、危なくなんて無いんですけど。余裕だって安心しろよぉ~(RTA走者の鑑)。

ヘーキヘーキ、ヘーキだから。三十分で一人!簡単だったぜや。褒めてくれてもええぞ!

 

 

「――平気ではありませんッ!」

 

 

――ふやっ!?

………めぐ、ねぇ?

 

 

「今、外がどういった事になってるか。分かってるでしょう?なんで誰にも言わずに……!」

 

 

……けっ、気色が違う!

私が想像していたのはプンスコッ!ってオコしてるめぐねぇなの!こんな、こんな……!――何しても怒んない眼鏡の友達から眼鏡取り上げてガチギレさせちゃった、みたいな説教は望んでない!

見てよ!めぐねぇがあまりの剣幕だから――皆して、悲壮に満ちた顔してるじゃん!

 

えー……えー……?

なんかぁ、アレですね?――意外に。皆、好感度、低い……?

ゆきちゃんはビンタだし、ゴリラも腰紐だし、チョーカーさんはスルーしてくるし、めぐねぇはこれだし……あれ?想定以上なのりーさんだけじゃね?いつもは隠れ発狂してるりーさんだけ上手く行ってるってどういう事?嬉しいのにすっげぇ複雑!

 

ゆきちゃん幼馴染ルートのはずなのにぃ!

なんでしょう?知らずの内に、好感度を下げる行動をしていた、とかでしょうか?あー……アカン。特に思いつかない。いや、ガバはあっても好感度が下がるような行動は……。

ええい、仕方ありません。後で全員に死ぬほど媚びを売っておきましょう。

 

 

「やなぎくん……やなぎくん!」

 

 

だから、今は甘んじて受けてやるぅ!!

ひぃ、本気モードめぐねぇ迫真過ぎる!これも覚醒めぐねぇのせいなのか!ショタじゃなくて、私自身が怒られるように錯覚するほどなんですけどぉ!

 

 

 

 

 

 

 

「うー……」

 

 

三日目、昼です。

こってり絞られたような気がします。気持ちは牛乳を拭かれた後の雑巾。実に惨めな気持ちです。今も右腕はゆきちゃんによって絞られています。柔らか痛いです。

ガバはあっても上手く行ってたはずなんですけどねぇ……。

 

 

まあ、気持ちを切り替えて行きましょう!(ポジティブ)

 

 

三階制圧までが言わば、序盤!

ここからは耐久戦な中盤の始まりです。ここまで行けば、滅多な事はあっても私ほどの歴戦の走者ならば問題ありません。安心して終盤に備えて行きましょう。

 

主要キャラ達は、朝になると朝食を摂った後、バリケードの外に出る“えんそく”などのコマンドが発生しない限りは――皆自由に活動し始めます。

あっ、夜に見張りを行なったキャラは三時のおやつ辺りまで寝室に行きます。

……今頃、りーさんは恵体を投げ出して寝ている事でしょう……くっくっく。まあ、何もしないし、したら好感度高いりーさんでも問答無用でイく(そういう意味ではない)なので注意しましょう。

 

 

「うー……うー……」

 

 

ここから恐れるべきは――直近で七日目。皆大好き“あめのひ”イベントです。

このゲームは、七日過ぎる毎に雨が降り、そうすると雨でビチョビチョになる事が嫌な『かれら』が校舎内に殺到し、朝昼夜限らず飽和状態になります。ゾンビクラフト系かな?(すっとぼけ)

ですので、階段が上がるのが難しい『かれら』もバリケードまで到達しやすくなり――バリケード崩壊、総力戦っていう事が起こるのです。雨は流石に止める事が出来ないので、その為の準備が必要になります。

 

が。

 

 

「うー……うー……」

 

 

知る人ぞ知る()()()があるので――特に準備する事はありません。

ここは本チャート通り、好感度稼ぎと食糧の貯蓄をこなしていきましょうか。特に、好感度ガバが激しいのが分かって来てるので積極的に揉み手で媚を売りに行きましょう。うーん……足を舐める辺りまでなら大丈夫ではないでしょうか!(謎基準)

 

では、早速。

――キャラの好感度稼ぎをやっていきましょう!

 

 

「うー……――がうっ!」

 

 

痛っ!ゆきちゃんに噛まれた!(小ダメージ)

これは、感染してしまいました!――ゆきちゃん可愛過ぎ病に!(バカップル並感)

あー、ほっとき過ぎて怒っちゃったんだねー。ほぅら、よしよしー。頭もほっぺも撫でてスキンシップを取りましょう。

 

 

「うー、んにゃう!」

 

 

子猫かな(鼻血)――たまらねぇぜ。

 

 

「むーっ、やーくん。私も怒ってるんだからね?」

 

 

まあ、ゆきちゃんに隠れて外に行ったという事ですしね。

これは好感度高低関係ありません。素直に謝っておきましょう――次は一緒に行く?(ぜってぇ行かせねぇけど)

 

 

「もー!めぐねぇのお説教理解してないでしょっ!やーくんのお馬鹿!」

 

 

ひっ、酷い!

全教科赤点なゆきちゃんにバカって言われました!

ここはプンスコゆきちゃんを落ちつかせる為に、ほっぺをむにゅりますか。ほーら、うにゃにゃしてねー。ふっふっふ、怒り状態を保てず、口元が緩み始めたぞバカめ!このちょろゆきちゃんめ!

 

 

「うーっ、やーくんったら。……誤魔化されてあげるよ、もう」

 

 

よし、勝った!

では、気を取り直して――好感度稼ぎ、やっていきましょう!

 

 

 

 

 

 

「ねー、やーくん。なにする?めぐねぇはくるみちゃん達が起きてくるまで自由にしてていいって言ってたけど」

 

 

じゃあ、お外――

 

 

「あっ、お外はダメだからね!行こうとしたら私の幻の右手が炸裂するからっ!」

 

 

それはノーサンキュー。

まあ、お外はジョークです。流石にお昼はかれらの数が多いのでムリのムリ、カタツムリーです。

 

めぐねぇが言ったのは、くるみ達が起きてから始まる清掃の時間の事ですね。廊下も教室も、血塗れガラス塗れですから。……運営も、かれらの死体を自動で消すんなら血の跡とかも自動にしてくれればいいのに。変に不親切ですよねぇ。

 

清掃の時間は夜まで掛かるので、三日目の好感度稼ぎは今の時間にしか行えません。ちゃっちゃと行きましょう。

 

まずは、めぐねぇですかね。

……お説教のさっきのさっきなので、顔を合わせづらいのは否めないですが――今のめぐねぇは覚醒めぐねぇ、ゴリラに匹敵する戦闘能力を持っています。私は常に強い者の味方です。合わせる顔がなんぼのもんじゃーい!

 

 

「えっ、めぐねぇに会いにいくの?……うーん、そうだね。行ってみよっか」

 

 

めぐねぇは基本的には職員室か生徒会室に居ます。今回は……職員室みたいですね。行きましょう。

 

おっ、職員室の扉が空いてます。

ここは堂々と……は、止めて。先にこっそりを様子を見てからにしましょう。

 

――ちらっ。

 

 

「…………」

 

 

あら?あれは私のバッグ。

アレを眺めて茫然としてますが、どうしたんでしょうか。

使い道を捻りださないと使えもしないゴミの束なんですけどね、アレら。

 

 

「……なに見てるんだろうね?」

 

 

私のバッグ、お外で色々持って来たんだよ。

 

 

「……キーホルダー?ペン?何使うの?」

 

 

補強だよ、補強。

……そういえば、バサ槍ブッ壊れちゃったし、ある意味やっておいて良かったですね。

ついでに補強もやっておきたいですし、返してもらいましょうか。

 

 

おーい!(媚び)

めぐねぇ様ぁん!(媚び媚び)

どうしたのぉーん!?(媚び媚び媚び)

――これオカマだわ。

 

 

「えっ?あっ……ううん、なんでもないの。どうしたの二人とも?」

「えっとねっ!やーくんがめぐねぇに謝りたいんだって!」

「……そうなの?」

 

えっ、そうなの?そうだったっけ?(池沼)

あー……まあ、特に拒否る必要はありませんので謝っときましょう――めーんごっ!(精一杯の可愛げ)

 

 

「……もう」

 

 

ひぃ、めぐねぇが近寄ってきました。

また圧力がががが――と?おや、頭を撫でられています。これはぁ……これはぁ……?

 

 

「先生も……私も。言い過ぎたと反省してたの。ごめんね」

 

 

これはぁ……大丈夫やな?(不安)

 

 

「だから、ね?――皆、やなぎくんが心配な事だけはどうか分かって欲しいの」

 

 

大丈夫……って範囲内でいいですねこれ!(確信)

めぐねぇの顔が実に優しげです!そうこれだよ!これ!さっき欲しかったのはさぁ!

ここは神妙に「はーい」と項垂れて、恭順を示しましょう。こうすれば、いざの時まで警戒されないので(ゲス)

 

 

「……うん。やなぎくんは良い子ね、本当に」

「そうだよっ!」

 

 

いや、そんな事……――ありますねぇ!(得意げ)

 

……めぐねぇはもう大丈夫そうですね。もう怒ってないみたいです。

次はチョーカーさんのとこに行きましょうか。あっ、めぐねぇ。バッグ返して。

 

 

「あっ、ええ。はい――何に使うの?」

 

 

いやね。あっ、あとバサ槍さん知らない?私の方の。

 

 

「ばさやり……これの事?」

「ああっ!バサ槍さん!」

 

 

oh~、これは無残ですね。

 

昨日は暗くてあまり見えなかったですけど、やっぱり酷いですね。刃の部分が根元から完璧にイってしまってます。

これでは槍ではなく、ただの古びた棒です。はじまりの城で貰える棒よりも弱くて脆いとかゴミでねこれは(辛辣)。いけませんね。

 

ですから――このバッグの中身が必要なんですね。

 

おうりーさん!その恵体でちょっくら工具のドリルを探してぇ……って。そういえば、寝てるんだった。……うぅ、今んところの私へ確実な好感度を示してる唯一の良心がぁいないぃ……。

 

うぅ……。

――ねぇ、めぐねぇ。工具のドリルない?

 

 

「ドリル?……うーん?」

「なぁに?ろけっとぱんち?」

 

 

ゆきちゃん、それはロボに付ける方のドリルや。

 

 

「ああ、もしかしてネジ穴を開ける奴の事?それなら確か、園芸部の備品に……」

 

 

……ほんと何でもあるな園芸部。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ん?どうした?ゆき、やなぎ」

「あっ、たかえちゃん!」

 

 

こちら、屋上。

恥知らずのチョーカーさんが黄昏てました。

おまえの大ピンチを助けてあげたのわかってる!?この恩知らずめぇ!(ゆきちゃん並感)

 

まあ、好感度稼ぎは後です。

先にバサ槍さんを治してしまいましょう。えーっと、では備品を荒らしましょう。ショタならば直ぐに見つかるでしょう。

 

 

「……んー?やなぎは何を探してるんだ?」

「ドリルだって!」

「ドリル?ぐれんらがん……?」

 

 

だから、そういうドリルじゃねぇ!

おっ――こっ、これは、コードレス・高品質バッテリー・小型サイズの工具ドリルです!これはレア度高い!……いや、これにレア度求めてねぇよ!こういう時に豪運発揮すんのやめて!?

 

 

「ああ、それか」

 

 

それだよ。

あっ、ゆきちゃん。ちょっとバサ槍さん押さえててくんない?

 

 

「……こう?」

 

 

では――ギュイイインと。柄の部分に穴を開けましょう。これはクソザコショタにも容易いです。

そこに、取って来ていたキーホルダーの中で、おっきめの輪っかが付いてるのを嵌めます。

 

そして、その輪っかに一個ずつ。キーホルダーを付けて行きましょう。

 

 

「あっ――」

「………」

 

 

出来れば、ゴツゴツでトゲトゲなのを選びます。

あっ、修学旅行で男子中学生が必ず買う龍の剣のキーホルダー!修学旅行で男子中学生が必ず買う龍の剣のキーホルダーじゃないか!こいつは絶対付けましょう。

こうやってキーホルダーを重ねて付ける事によって、振るえば鈍器になります。丁度槍ではなくなったので良いリカバーですね!

 

よし、出来た。このぐらいでいいでしょうか。

余ったのは、またいつか使う為に適当な箱に移して、バッグを空にしておきます。

 

これで新しいバサ槍、さん……ではないですねもう。

 

バサ……バサ……アンバサ(イミフ祈り)……――そうだ!バサ杖!

今からコイツは枝切りバサ杖さまと命名しましょう!かーっ、なんて粋な名前!痺れるセンスが光りますね私は!

 

丁度見た目も僧侶が持ってそうな感じですし、実に良いです。動く度にシャランシャラン煩いですが、かれらを音で誘導できると考えるべきでしょう!

 

じゃあーん!見てよゆきちゃーん!

枝切りバサ杖さま!

 

 

「……うん、かっこいいよ。やーくん」

 

 

ダルルォ!?

 

 

「………」

 

 

チョーカーさん。

なんだその目は!なんだその目は!こらっ、頭を撫でるな恩知らずめ!

 

 

 

 

「――皆。二人が起きたから、来てくれる?やっておきたい事があるの」

 

 

おっ、めぐねぇが来ました。もうそんな時間ですか。かしこまりっ!

チョーカーさんの好感度稼ぎは出来なかったな……。まっ、いっか。

良いリカバーできましたし、三日目は良い感じですねっ!

 

めぐねぇめぐねぇ。

ほら――枝切りバサ杖さま。

 

 

「……そう。かっこいいわね、やなぎくん」

 

 

……ゆきちゃんと同じは面白くありませんねぇ(わがまま)

 

 

 

 

 

 

 

午後は(スタミナバー酷使走法を使って秒速で綺麗にするだけだから)倍速です。特に面白みも無いですしねぇ。

 

普通なら、直ぐにでも二階制圧を試みたりだとかをすべきでしょうが――正直、後衛組に入ってしまった以上、ゴリラズに任せるしかありませんので無理です。あまり運頼みはちょっと、ですし。

 

という訳で、モップ片手にバサ杖さま片手にちゃっちゃと終わらせ……くっ、モップがデカイ。バサ杖さま邪魔だわ。チャリチャリ鳴るだけやんけお前ぇ!

 

 

――工事完了です……(ご満悦)。もう夜ですね。

 

 

「今日は私が見回りをやります!」とやけに自信満々なめぐねぇに、私達は寝室に押し込まれてしまいました。うーん……本当はあめのひじゃなければバリケード突破されないからやんなくてもいいんですけどねぇ。掃除の最中にバリケードの状態もチェックしましたけど、特に問題ありませんでしたし。

 

皆は、私と違ってかれらの法則をまだ理解してないので仕方ないんですが。

早めにそれとなぁく周知させたい所です。

 

 

では、とっとと寝ましょう。

皆清掃で疲れてるからか、いそいそと就寝に入ります。私も寝ますが……――また夜廻を試みましょう。

正直、行っても行かなくても問題ありませんが――行って損はありません。必要なのは腐ってしまう生鮮食品とかですかねぇ。

 

まだ物理的な拘束もされてないのでささっと向かいましょう。なぁに、今回は急ぎじゃありません。バレれば時間の無駄なので即撤収します。

 

持ち物……バサ杖さま、空にしといたバッグ。諦めない心~。では、まいりましょう!

 

 

布団を出て、廊下を歩いているのはいいですが。

むぅ……やっぱ体力持久力も無いショタだと二日連続は流石に――

 

 

「……やーくん」

 

 

ひぇ、ゆきちゃん。いつのまに。

うー……見逃して?

 

 

「戻ろ?めぐねぇにまた怒られちゃうよ、だから――戻ろ?大丈夫だから」

 

 

くそ、聞いてもねぇ。

仕方ない。今回は諦めてやりますか――今回はな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます。四日目、七時の朝――生徒会室でのお時間です。

めぐねぇは「ふぁあ、わらしはねまふね……」とかふにゃふにゃしながら寝室に行ったのでもう居ません。……大丈夫だよな、廊下でもう寝てたりしてねぇよな。絶対宿直が苦手なタイプですねアレは。

 

朝ごはんは――残りのカロリーメイトと蒸しキャベツです。食い合わせ、イミフで最悪です。

さっきのめぐねぇの縮小版みたいになってるゆきちゃんの口に詰め込んで起こしてあげましょう。おら、私の分も食えやおら。

 

私が良い感じに食い散らかしたおかげで、もう食糧が底を突き始めましたね。ひゅ~、タイム短縮ぅ~。

 

 

「……んー、どっかで飯を取りに行かないとなぁ」

「そうね、三階のはもう取り尽くしたし」

「でも……外、だろ?大変じゃないか?」

 

 

お外ですか。

ここは、バサ杖さまを揺らして、自己主張しましょう――私が行ってもええんやで?(決め顔)

 

 

「………」

「………」

「………」

 

 

――ええんやで?(エコー)

 

 

「そういえば、夜はやつらが少なかったな」

「えっ、そうなの?」

「ああ、廊下にまばらに居るぐらいだった」

 

 

おーい。

こっち見たのにスルーはないじゃないのー!ひどい……ひどくない?

 

 

「……そういえば、夜は校庭には誰も居なかったような」

「確かに。今は……たくさんいるわね」

「ひょっとしたらアレか――夜は家に帰ってるとか」

 

 

おっ、なんとなく法則に気付いてきたかしら?

それは良いですね。そうすれば、私もそれに則った裏技で楽が出来ますし。

 

 

「……取り敢えず、この話はめぐねぇに通してからにしようぜ」

「そうね。今日も一先ず、ゆっくり過ごましょ」

「……ああ」

 

 

今日の予定が決まりましたね。

まあ、自由行動ってだけなので今日も適当に好感度稼いで行きましょうか。

 

 

「そういえば、焼き芋。食いたい。……やなぎが作ると美味しいんだ」

「んー、そうね。朝からすきっ腹だとね。……なぎくんが作ってくれたら」

「焼き芋か。いいな。……やなぎが上手く作れるのか?」

 

 

……期待した目で見ても、さっきの事――私、忘れてませんよ。

………無論、これが良い好感度稼ぎになる事も――私、忘れてませんよ。

 

しゃあないな。しゃーあ、なーいなぁ!(銀河系より広い心)

やってあげましょう。どうせ、好感度稼ぎに終始する予定でしたし――あー、でも燃料が。

 

 

「燃やす物だったら、棚に何かいっぱいあるから適当に使えるわよ?」

 

 

棚ね。

ふっふっふ。

まあ、焼き芋だけで好感度が稼げるなら楽な商ばっ――

 

 

マニュアル「ハァイ」

 

 

――閉めます。

 

すぅー……ふぅー……(深呼吸)。

いや、まさか。いやぁ……まさかねぇ?きっと見間違いですね!RTAのやり過ぎで目がやってしまったんですねきっと!

マニュ……マニ……アニ――そう!アニマル!

きっと、棚の中にライオンが入っていたんですよ!

ああ、よかっ――

 

 

マニュアル「ハァイ、ジョージィ……」

 

 

――ふぁっきゅー!ふぁっきんみーっ!

私のバカ!そういえば、忘れてたくそが!ああ、取り敢えず、適当なものを上に置いて一先ず目に見えないようにして……!

いや待て。このまま一緒に焼却してしまえば――!

 

 

「ん?なにかあっ――」

 

 

覗き込むな、ゴリラ!

閉めます。閉めまぁーす!押さないでくだぁーい!!(駅員並感)

見られる訳には行きません!――いっ、いやぁ。棚には何にも無かったな!紙も無かった!しょうがないから、職員室まで取りに行かなきゃ……。

 

 

「そうか。んじゃあ、あたしが取ってくるよ。頼むのはこっちだしな」

 

 

流石、ゴリラ優しいな!だからこの棚からとっとと離れろ!

 

 

「じゃあ、私はお芋掘ってるわね。なぎくん、たかえちゃん。ゆきちゃんが起きたら手伝いに来てね」

「ああ」

 

 

おう!分かった!とっととゴー!

ふぅ……ゆきちゃん。ほっぺちょっと借りますわ。

 

 

「むにゃ……うにゃ……むにゃ――ふえ?」

 

 

アレ、適当な時にどっかに隠すかコンロで焼きますか。あー……でも、生徒会室って基本誰かいんだよなぁ……。

 

 

「…………」

 

 

チョーカーさん。なんだその目は!

こっち見んな!棚を見るな!見ないでぇ!

 

 

 

 

 

焼き芋を振舞いました。好感度が十分に稼げた事でしょう。

スゲェ嬉しそうにしてたんだ。これは低いから普通よりちょい上になったのでは?

なれ(豹変) なって(懇願)。

 

 

では、自由時間です。

生徒会室に行って、マニュアルを入手しに行きましょう。

くっそ、これならまだめぐねぇのとこに置いとけばよかった……!

 

 

「あら?どうしたのなぎくん?なにか用?」

 

 

用があるのは恵体じゃなくて、マニュアルなんだよぉ!

仕方ない――もう数時間後にもっかい……!

 

 

「ん?おー、どした?あたしになんか――」

 

 

なんもねぇよゴリラ!

くそっ、また数時間後なら……誰も居ないは――

 

 

「む……どうした?柳」

「やーくん。また、だるまさん転んだしてるの?」

 

 

ぬわぁぁぁぁぁん!絶対誰かいる!なぁんでいっつも誰かいんだよ!もぉー!

 

 

「ふわぁ、おふぁようございまふ……」

 

 

ちっ、めぐねぇも起きてきたか。時間を完全に無駄にしました。

……苦渋ですが、また機を狙いましょう。まあ、あんなとこにマニュアルがあるなんて誰も思わないでしょうし。

 

 

 

 

 

夕方――そして、夜になりました。

 

何も無いとほんと何も無いのがこのゲームの良いとこですよね(トイレ休憩の多さ)。

 

 

「じゃあ、今日も私が夜にいるわね」

「えっ?いいよ、めぐねぇ。今日はあたしが……」

「ううん、大丈夫。くるみさんは寝てて?」

 

 

おっ、今日もめぐねぇが見張りを……。

うーん、ていうか。そろそろかれらの習性を周知させて、夜寝かせた方がいいですね。昼夜逆転に慣れさせると面倒ですし、すれ違いが起きて好感度が下がりやすくなります。なに?お前ら両働きの夫婦かなにか?

五日目に、それとなぁく伝えるとしましょう。時間的にも丁度良いですし。……四日目。ほんと時間の無駄だったなマジで。

 

 

「あっ、めぐねぇ。私も付き添いますよ」

「それじゃあ、私も。その、話したい事があるし。佐倉……いや、めっ、めぐねぇ……」

 

 

チョーカーさんかわゆす。

りーさんも職員室に向かうようなので、これはこれは――夜行けそうな匂いがしてきますねぇ!

 

 

 

「……まあ、夜起きてるのは辛いからありがたいか。んじゃ、寝ようぜ」

「うん!はい!おいでやーくん!ぬくぬくしよ?」

 

 

んじゃおやすみなさーい(ガンスルー)。

 

 

「ふぇ……」

「………。おーい、やなぎー。ゆきが泣く一歩手前だぞー。一緒に寝てやれ」

 

 

――ちらっ。

 

 

「ふっふっふ。うっそ――」

 

 

――すやぁ(秒速寝入り)。

 

 

「……あれー?」

「やなぎがあんな呆れた顔すんの初めて見た……」

 

 

おら、とっとと寝る寝る!ネルネルネルネしてやるぞ!(謎脅し)

 

 

 

 

 

 

……――とでも、言うと思ったか!(今回二回目) 夜廻の再来を行ないます(今回二回目)。

ふっふっふ、ゆきちゃんも何とか起きようと頑張ってたみたいですが、ぬくぬくの魔力には耐え切れなかったようですなぁ(ニチャァ)

 

 

では、スルリと布団を抜け出して廊下を目指し……うおっ、また画面がぼやけた。ショタはこういうのが弱いなぁやっぱり。

うーん、この辺は諦めてチャート変更すべきですかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――お菓子数箱、カロリーメイトもそのぐらい。カップ麺人数分。キャベツは十玉、サツマイモは把握はしてないけどそれなりに。

 

それが私達に残された食糧だった。

 

 

「やっぱり……もうご飯が無いですね……」

「はい。キャベツとかお芋があるので当面は大丈夫ですけど……」

 

それでも、それだけじゃいつか枯渇する。余裕がある内にどっかから取って来た方がいいのは明らかだった。

 

夜。職員室で丁度良いからと話しかけてきたのは――世知辛い食糧事情だった。

残ってるのは心もとないもの。どう考えても足らない。多くあったように思えたが、意外に少なかったようだった。……餓死なりかけの私がいっぱい食べたってのもあるかもしれない。

 

持って、明日まで。

それが過ぎれば――焼き芋を主食にした、茹でキャベツの茹で汁生活だ。嫌だ、そう言える事態ではないと分かっているが――やはり、嫌だ。

 

「……外に、取ってくるしかないと思う」

 

私がそう言うと、めぐねぇとゆうりは小さく頷いた。それでも不安は隠し切れない。

……当然だ――外には『やつら』がいる。耳の奥で呻き声が聞こえたような錯覚を受けた。

 

「ねぇ、たかえちゃん。夜に、あいつらが少なかったって本当?」

「えっ、そうなの?」

 

朝の話に戻った。

やなぎが、これみよがしに「この僕が行ってきてあげるよ?」とドヤ顔しながら、バサ杖とやらをチャラチャラ鳴らしてたのを思い出して――少し、心が軽くなった気がした。

 

「ああ。その……やなぎが連れてってくれた時、廊下に数人しかいなかった。教室も、そんぐらいだったと思う」

「そっか。じゃあ、行くとしても――夜」

「……」

「大丈夫よ。くるみさんもいるしね?」

 

そう言って笑うめぐねぇだが――ゆうりからは見えない手元は、静かに震えていた。

やつらはやつらでも――それでも、元は知り合いだった。そう思うと、めぐねぇの気持ちは理解出来た。

 

それでもやらなくちゃ生きられない。それは、とても悲しい事に思えた。

 

 

静けさが職員室を覆ってしまった。

めぐねぇはバールを見つめて。ゆうりは頭を静かに抱えてしまった。

……これじゃあ、相談してもさらに落ち込むだけだな。取り敢えず、空気を変えようと生徒会室で温かい飲み物でも淹れてこようと立ち上がった時――

 

 

シャラン……シャラン……。

 

 

金属が擦れる静かな音が廊下から響いてきた。

私達は顔を見合わせて――また、顔を曇らせてしまう。私の相談の元がやってきた。

 

音を立てないように静かに扉から覗きこむと、

 

 

「………」

 

バサ杖さまだ。バサ杖さまだと自慢していた杖を片手に廊下を歩いている柳がいた。

その足取りはおぼつかず、わかりやすいくらいフラフラしていた。

 

「……やなぎくん」

 

そう呟いためぐねぇは酷く悲しげだった。

溜息を一つ。呼び止めようとしたのを――私は止めた。

 

 

「――やーくん」

 

 

後ろから、ゆきが近づいてきたのが見えたから。

ゆきに声を掛けられると、ふらっとそこに目を向けた柳は、何事か呟いていた。

 

「大丈夫――戻ろ?ぐっすり寝れば、また元気になるよ」

「………」

「だから、戻ろう?明日になれば、悲しくないよ」

「………」

 

ゆきの言葉に従うように、音は遠ざかって行った。私達はそれを――ただ、見ているしかなかった。

 

 

「無意識、なのかも」

 

ふと、ゆうりがそう呟いた。

 

「なぎくんはめぐねぇの気持ちを不意にするような、そんな子な訳がない。でも、きっとそれでも……」

「こんな状況だものね。その……おかしな事が起きても不思議じゃない……」

「めぐねぇ……」

 

あの杖に、一個ずつあいつらの形見を付けていた柳を思い出す。

それはとても悲しげで――何処か、上の空な印象を受けた。

シャラン……シャラン……と擦れて鳴るアレは空虚で、もう無くなってる過去を――必死で隠しているような、そんな雰囲気があった。

 

 

「相談ってのは、柳の事なんだ。その……何とかしてやりたい」

 

 

めぐねぇとゆうりはしっかり者な印象が前からあった。こうした相談に乗ってくれるはず。くるみもいいやつなのは知ってたが、戦うなんて役目が強いアイツには酷だろう。ゆきは……まあ、うん。

 

「私達に接する時は、酷く明るいんだ。いつもよりもおどけて……励まそうとしてくれてる」

「………」

「でも、それが見てて辛いんだ。アイツだって、苦しいはずだろ……?あんなの作って、あんなになって……!」

「……たかえさん」

「私はっ、アイツに助けられた。だから、助けたいんだ。だから、知恵を借りたい。私には何も思いつかないんだ……」

 

この二日間。見てて思った。

 

――柳は危うい。

 

めぐねぇの説教は、てんで効かない――何を言っているのかよくわかってすらも無かったように思えた。

現実を理解しているのか、していないのかも定かじゃない。

そもそも現実を見ていれば――私を助けようと、果たして考えただろうか。

 

――『あれ?義一くんまだ学校に居るの?また顧問に怒られるから早く帰った方がいいよ?』

 

血に塗れ、こちらを食べようと口を開いていた化け物を目の前にして、そう言える――それが果たして、正気なのか?

 

わからない。わからない。私達は専門家じゃない――だから、怖いんだ。

柳が壊れようとしてるのに、何も出来ない。助けられたのは私なのに、私は何も――――!

 

 

「――たかえさん」

 

 

めぐねぇの言葉に、顔を上げる。

気が付けば、視界が曇っていた。めぐねぇが浮かべているのだろう淡い笑顔が良く見えない。

 

「ありがとう、打ち明けてくれて。たかえさんは優しいのね」

「へっ……?」

「だって、そうでしょう?人の為に涙を流せるのは、優しい証拠。大丈夫、絶対それはやなぎくんにも伝わってるわ」

「……そう、かな」

「そう、思いましょ?」

 

視界を拭っていると――ゆうりが何かを思いついたように表情を明るくしていた。

 

「ねぇ、二人とも――だったら、楽しくすればいいと思うの」

「楽しく……?」

「終わった事は、終わった事……だから。それだったら今が楽しい方が楽しいに決まってる――家族だって、他人がなれるんだから、心は持ちようだと思うの!たぶん!」

「いっ、いきなり明るくなったわね、ゆうりさん……」

 

若干、良く分からないゆうりだったが――言いたい事は、理解出来た。

今をよりよいものにするのだ。過去が過去だと言えるような、そんな明るい今を。空元気であろうとも。

 

 

「この生活を、例えば部活って事にして」

「部活……だったら、名前とかどうしようかしら――」

 

 

盛り上がる二人に、私は「二人が不安だから」と席を立った。

それは本当だし、二人ももう大丈夫だろう。それに――指針が見えたような、そんな気がした。

 

 

寝室に戻るまでに、ふと生徒会室で立ち止まる。

そういえば、気になる事があった。

 

「………」

 

棚。そこで柳は変な事をしていた。開けて閉めたと思ったら、また開けて。くるみが近づいてったら中の物を隠そうとわたわたしてた。二人は気にしてなかったようだったが――私は妙に気になった。

 

その後、柳がゆきのほっぺで遊び始めたってのもある。

 

柳がゆきのほっぺをいじくる行為。皆は微笑ましい光景として見ていたが――二人と絡みが多い私には、気付いていた。

 

あれは――柳が不安になったり、怯えた時にやるやつだ。

ゆきも、それを分かってるはずだ。だから甘んじてる――それで、柳が癒されるなら、と。あいつはポヤポヤしてるくせに、妙に鋭いとこがあるし。

 

つまり――この棚には何かがある。

 

「………」

 

開ける。

そこにあったのは、良く分からない紙の束だけだった。特段、気になるものは見当たらない。

 

「……気のせい?」

 

それも、あるかもしれない。

柳は今――ひどく、疲れている。いつもと違う行動を取る事も不思議ではなかった。

 

 

「……どうにか、元気になってほしいな」

 

私も二人と同じ方向性で、何らかのアプローチをしてみたい。行動をしていないと不安でしょうがなかった。

 

アイツを意識させるもの。

過去じゃなくて、今――私達を強く思わせて、現実を見させる方法。

 

少し考えて――頭のふちに、引っ掛かるものがあった。

 

「………」

 

私の教室は――運良く三階だ。

なら、まだあるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あった」

 

無残な教室。

私が座っていた席から――かなり離れたとこに吹き飛ばされながらも私のバッグはあった。

 

探し物はその中。

いつかの為にと取っておいたものだ。恥ずかしくて誰にも言わずに、それでも持ち歩いていたもの。

 

『一対のチョーカー』

 

二つ合わせたら満月になるっていう、今思えば少女趣味甚だしい代物だ。正直、今もちょっと顔が熱いのを感じる。

 

「……むぅ」

 

付けていたチョーカーを外し、このチョーカーの片割れを身に付ける。

床に散らばったガラスの破片を覗きこめば――首元に半月が揺らめいていた。

 

ふと、柳がこれを付けるのを思い浮かべる。

似合うだろう――きっと、似合う。

 

「柳、気付いてくれるかな」

 

手の中にある片割れを弄ぶ。

今は気付いてくれなくても、いつかきっと気付くだろう。

 

それがどういう意味かは、恥ずかしくてあまり考えたくは無いけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――五日目に入りました。おはよ……あれ?なんかショタの首元に何かありません?

 

 

「あれ?ねー、やーくん。そのチョーカー、どうしたの?」

 

いや、わかんない。

いつの間に……って、アレこれ。この形状って……確か、チョーカーさんから貰えるアイテムの……

 

「ほら、なにしてんだ。もう皆生徒会室に集まってんぞ」

 

おっす。チョーカーさん。これ、チョーカーさんが付けてくれたの?

 

「………何の話だ?ほっ、ほら!早く行くぞ」

 

あれー?

気のせいなのかな?えっ、幽霊が付けたとかバグ?……これ終わったら報告案件?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……たかえちゃん、首輪変えた?」

 

「首輪じゃなくて、チョーカーだっての。気分で変えてみた……似合う?」

 

「うん!とっても綺麗!……やーくんのとそっくりだね?」

 

 

 

 

 

「……ゆきは気付いたってのに、なんであいつは気付かないんだっての。……気付け、バカ」

 

 




――
※解説

『たかえのチョーカー』
入手条件:たかえの信頼イベントのクリア後・死亡時。

柚村貴依からの“おくりもの”。
彼女が「いつか必要になるかも?」と買っておいた一対のチョーカー、その片割れ。

装備すると、一度だけ首への攻撃を守ってくれる。

これを贈ったのは、貴方に――気付いてほしいため。
それがどういう意味かは贈られた貴方が考えるべきだろう。
これは、そういう“おくりもの”だ。



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