そして、自分が楓を壊してしまったと告白する煌成。その口から語られる過去に彩は……
※オリジナル満載
過去の話がメインです
めちゃくちゃ長くなってしまってます
公園のベンチに腰をかけ、煌成くんは口を開いた。
「これは、俺が小学六年生の時の話だ」
ー8年前ー
「煌成ー!もう朝だぞー!」
朝からでかい声の姉に起こされベッドから起き上がる。
両親が既に他界している我が家では、朝ごはんは姉の担当。夜は姉がレッスンで遅いため俺が作っていた。
「そーいえば煌成、今日はお前もレッスンだっけ?」
「あー。まあフェスも近いからね」
俺は幼い頃からギターをやっていた。
一昨年死んでしまった母親に強く勧められて始めたギターだったが、やってみると楽しく、メキメキ上達していった。
若い頃は天才とまで呼ばれていたらしい母親の血を引いていた俺は、ちょっとした規模のライブに出たりライブハウスで練習したりとなかなか充実した日々を送っていた。
そんな俺は、とあるフェスの選考会に出ることになった。
【Worldfuturefes】
世界最大規模のフェスの選考会で、まさかの1位で抜けることが出来たのだ。
小学生をギターに置いてのフェス出場は音楽界でも初のことらしく、最初はテレビに出ないかなどと誘われたりもしたけど俺は全部断っていた。
なにせこれは俺の力ではなく、一緒にバンドを組んでくれたライブハウスで出会った仲間たちのお陰なのだからである。
高校生に、大学生もいるのに小学生の俺と組んでくれたことには、感謝してもしきれない。
「にしても煌成、今回のフェスは気合いが違うねー!もう目がグラグラっとしてるよ!」
もう大学生のハズの姉には、圧倒的に語彙力がなかった。
これなのに
アイドルというのは恐ろしいものだ。
両親がいない以上、姉のアイドル活動が我が家を支えている。勿論両親が残してくれた金もあるが、それだってなにがあるかわからないから無駄使いは出来ない。
だからこそ、今回のフェスでは必ず結果を残さなければならない。
俺が今回のフェスに燃えている理由は、ただデカいフェスだからという訳ではなかった。
賞金が、とてつもなくいいのだ。
この賞金で、姉になにか好きなことをやらせてやりたい。……まあ金だけのためではないけれどな。
俺は意外と姉孝行なんだなと心の中で茶化しながら、俺は焦げて苦い食パンをかじった。
いい歳なんだし、流石に料理は上手くなってくれないとキツいな……
それから月日はたち、姉はどんどんアイドルとして売れていき、俺も師匠を唸らせるくらいにギターの腕が成長した。
そして、フェスの本番。勝負の日が来た。
ーWORLDFUTUREFES開催ー
会場に入ると、まだ開始3時間前なのに熱気に溢れていた。
辺りを見回せば有名なバンドばかり。海外バンドと日本で戦った日本バンドたちが観客席にずらりといる。
「今日はこの中でやるのか……」
「あっれー?緊張してんのー?珍しいねー?」
のんびり屋のベーシストが話しかけてくるが、聞こえないふりをする。正直に言えば心臓が飛び出そうだが、なんか素直に言いたくはない。
「…まあーわかるよー。緊張する気持ちも」
「……珍しいこともあるもんだな」
いつもどこか気を抜いてるような性格で、緊張してるとこなんて見たことがないのに。俺は少しビックリした。ベーシストは目を細めて続けた。
「だって、
「……!!」
俺たちは、このフェスが終わったら解散することが決まっている。
高校生組が大学受験に入るのに加えて、大学生組も就職に向けて勉強をしなければいけないらしく、解散することになった。
だからこそこのフェスは、絶対にとる。俺は気合いを入れ直した。
「おーい!そろそろ控え室行くぞー!」
ボーカルをやってるリーダーに言われ、俺は控え室へと行った。
ー出番前ー
「最終確認は済んだな。全員」
リーダーの言葉に俺たちは頷く。準備は万端だ。
「正直に言おう。俺は今緊張してる」
「「「「えっ?」」」」
4人の声が重なる。ベーシストもそうだが、それ以上にリーダーが緊張してるとこは見たことない。いつも準備万端で動じない。そんな人だと思っていた。だけど確かに声が少し震えてる。
やっぱり、今日で解散だし思うところはあるのか……
「でも今考えたんだが、緊張する必要なんてないよな」
「…どゆこと?」
ドラムがよく分からないといった表情で聞く。俺もよくわからない。
「だって、フェスって祭りだろ?お前ら祭りで緊張したことあんの?」
「「「「……」」」」
全員「なんだそりゃ」って感じの表情をしている。
だが、たまにトンチンカンなことを言うのもリーダーらしい。そう思った。
「次のバンド、お願いしまーす!」
係員が声をかける。
「じゃあ、行こうぜ」
そう言いリーダーが扉を開ける。
「さあ、最高の演奏を見せてやろう」
リーダーの声は、しっかりと芯の通った声だった。
「だけど、俺たちは表彰台に立てなかった」
そう言い煌成くんは1度水を口に含んだ。
ていうか、想像以上にすごい人生生きてきたんだなぁ……
小学生の時にはお母さんもお父さんもいなくてでもお母さんに勧めてもらったギターで世界のフェスに出てお姉さんはアイドルやってて……
なんというか、煌成くんが高校生とは思えないほど大人びてるのもわかる気がしてきた。
1人で勝手に納得してると、煌成くんが口を開いた。
「それから俺はー
ーWORLDFUTUREFESから1ヶ月ー
バンドが解散し、俺は中学生になった。
両親がいない上に親戚も近くにいなかったが、叔母がわざわざ来てくれて手続きとかもしてくれたらしい。
叔母は姉には会ったらしいが俺は会うことがなかったから、心の中で感謝しておくことにしよう。
中学校はみんないい人ばかりで、俺は両親がいないというのを隠すつもりはなかったしだからといって気を使って貰うつもりもなかったが、みんな気にしないで対等に接してくれた。
家計が少し厳しかったが、学校側の配慮と時々ギターをBGM用に弾くことを条件に姉の通っている事務所でアルバイトさせて貰えることになった。
俺は中学校とアルバイトでなかなか忙しかったけど、その分充実した生活を送っていた。
でも、事件は唐突に起きた。
事務所の人に、次の姉のラジオ収録の時に、フェスでやった曲を弾いて欲しい、と頼まれたのだ。
心臓がドクンと脈を打ったのがわかった。
俺はフェスが終わってからずっと、バンドでやった曲は避けてきた。
その理由は1つだった。
フェスで表彰台に立てなかったのは、
たった少しのズレ。だけど、勝負を分けたのはそのズレだった。
フェスが終わった後静かに涙を流していたメンバーを見て、俺は思わずその場を去った。
トイレに行き、そこでずっと自分で自分を責めていた。
その後メンバーの元へと帰ったが、どんな会話をしたかが何故か思い出せない。
あのフェスでやったあの曲は、俺にとってとても大切な曲だった。だけど、俺にはもうあの曲をやる資格はない。そう思っていた。
……またあの曲をやるのか。
俺はその日から猛練習した。
学校も休んでずっとギターを弾いていた。
絶対にミスをしないため。絶対に成功させるため。
しかし、俺は弾けなかった。
ギターを構え、姉が喋り始めるが、指が動かない。体中が震えているのがわかった。
怖い。失敗してしまうのが怖い。また迷惑をかけてしまう。弾かないと、弾かないといけないのに……
俺は気づいたら、外に出て走り出していた。
どこを走っているのかもわからない。なんで走ってる?ここはどこだ?
グチャグチャになりそうな頭の中で考える。俺は一体何をしている?
すると、後ろから声がした。
「煌成ー!!!」
「!!」
後ろから走って追いかけて来ていたのは、楓だった。
俺は立ち止まった。そうだ、俺は楓のために、ギターを……
その瞬間、俺の視界に鉄の塊が移った。
「煌成!!!!」
次の瞬間俺の体は何かに包まれたような感覚になり、強い衝撃が体中を走った。
朦朧とする意識の中、俺の目に映ったのは血を浴びて赤く染っている楓の顔だった。
後から聞いた話だと、飲酒運転をした車に激突。俺は左足と右肩を骨折して、右の耳が上手く聞こえなくなった。姉は下半身不随で動けなくなり、病院生活となった。
「これが、俺と俺の姉にあった出来事だ」
そう締めくくり、煌成くんは1度深呼吸をした。
…壮絶なんてレベルじゃなかった。少なくとも私が思ってたよりずっとだ。
でも、煌成くんは何でこの話を私に……?
「こ、こうせ
「すまなかった。丸山」
煌成くんに聞こうとしたのを遮り、煌成くんは急に頭を下げた。
「な、なんで!?どうしたの急に?」
「俺は、お前の目標を奪ってしまったんだ。だけど、姉はお前に会いたいと言っていた。だけど会わせるにしてもこの話はしておかなくちゃいけないと思った」
「いやでも、奪ったっていっても悪いのは煌成くんじゃなくて飲酒運転した車でしょ?」
「だけど、そもそもは俺が原因だ。俺次第ではこんな事にはならなかったんだ」
煌成くんはそう言い唇を噛み締めた。
煌成くんがこのことを私に言うことを決心した時、どんな気持ちだったのだろうか。きっと、苦しかったんじゃないだろうか?
それでも私に話してくれた。そして私に謝ってきた。
それなら私も、それに応えなくちゃいけない。
「煌成くん。煌成くんって私の学年の女子にすごく人気なの知ってた?」
「え?」
私が出した話題に煌成くんはきょとんとする。それに構わず私は続ける。
「顔もイケメンだし、先生と手伝いとかもしてて性格もいいし勉強もできるしで完璧だーって言われてるんだよ」
「…俺は、完璧なんかじゃないよ」
「煌成くんが自分を責めてるのはわかるよ。それがずっと引きずるような大きな事だっていうのもわかる。でも、もういいんじゃないかな?」
「……!」
「だから…えっと、煌成くんも自分を…えっと……」
あれ?なんか言いたいことがよくわからなく…
……俺は、ずっと周りに助けられて生きてきた。
姉に支えられ、バンドメンバーに助けられて、叔母を頼って生きてきた。だからこそ、その人たちに恩返しをしなくちゃいけない、そう思っていた。
でも、俺は恩を仇で返すばかりで、自分がどうしようもないやつにしか思えなかった。
俺の思い出は、ロクなことがない。そう思ってた。
じゃあ、なんで俺はギターをやっている?
じゃあ、なんで俺は事務所で働いている?
じゃあ、なんで俺は今この場所にいれる?
バンドメンバーのお陰で音楽が好きになった。姉のお陰でギターのレッスンを続けられた。
バンドメンバーのお陰でギターが上手くなった。姉のお陰で事務所で楽しく過ごせた。
でも、最後はいつも失敗していた。
だけど、その度俺はなんて言われてきた?
バンドメンバーとの最後の会話が、突然頭に浮かんできた。
「これで全部終わりじゃなえよな」そう言い涙をふくキーボディスト
「お前のせいじゃない」そう言い背中に手を置いてくれたドラマー
「俺たちの音楽は、全部出てたなー」そう言い天井を見上げるベーシスト
「自分を責めるな。お前にはまだ未来があるだろう」そう言い頭に手を置いてくれたボーカリスト。
病院で楓は俺に言った。
「煌成が気に病む必要はないよ。むしろ何も気づけなかった私たちが悪いの。煌成は中学生なんだから、もっと周りに我儘を言っていいの!まだ『次』があるんだから、とっとと前を向きなさい!」
みんな俺を責めるどころか、『未来』があると言ってくれた。
それなのに俺は、ずっと後ろ向きだった。
俺は、過去に囚われてたのかもしれない。
「あー、ギター弾きてぇな」
ふと口から零れた言葉に、丸山はびっくりしたようで、「びひゃっ!?」と言った。びひゃってなんだ、びひゃって。
「こ、煌成くん、大丈夫?」
「んー、まあ。なんかスッキリしたよ」
「うん…良かった」
そう言い笑う丸山。こうして見ると、少し楓に似てるかもしれないな。
…楓?そう言えば今日って…
「……あ!お見舞い!時間忘れてた!!」
「え!?時間って決まってるの!?」
「いや楓に言われた時間が…やっばそろそろだ!走るぞ!!」
「あっ!ちょ、ちょっと~!待ってよ~!」
急いで走り始める丸山を見て、俺はその横につく。
昔のことがなかったことになるわけじゃない。俺は一生後悔するだろう。でも、俺が見ないといけないのは今なんだ。
そして俺が1人で突っ走ったって意味が無い。それじゃまた誰かに迷惑をかけるかもしれない。
だからこそ、俺は寄り添って生きていこうと思う。人の隣で。
……まあこんな恥ずかしいこと、誰にも言わないけどな。
fin
読んで頂きありがとうございます。
長くね?書きながらずっと思ってました。
今回は本当に分かりづらくなってないかが心配……語彙力と表現力がもっと欲しい…と悩まされております。
次回はやっとお見舞いです。そして泊まりからの観光までいっちゃいます!
それと、お気に入り登録して頂いた数が50までいきました!本当にありがとうございます!!
私も音楽やってればな…一応できる楽器はあります。ハーモニカです。
それでは次回またお会いしましょう。
彩と煌成の未来のお話
-
ほしい
-
結構です