※オリジナル設定注意
視点変更あり
「パステルパレットでしたー!」
ステージの上でポーズを決め、観客の歓声を聞きながら裏へと向かう。今日は私達パステルパレットのライブ。何回かあったライブはいつも挨拶とかで噛んじゃったりしてたけど、今日は完璧にできたはず。
「彩ちゃん、今日噛まなかったねー」
「そうでしたね。成長の証っすよ!」
「えー、なんかいつもと違って変な感じー」
「ひどいよ日菜ちゃん!」
控え室でみんなでお喋りしていると、煌成くんが入ってきた。なんでか目にハンカチをあててる。
「あら、どうしたんですか?黒峰さん」
扉の前でグズッと鼻をすすった後、煌成くんはいきなり私の肩を掴んだ。
「…丸山、成長したなぁ…!噛まないでMCできるなんて…自己紹介も……」
「ひ、ひどいよ煌成くんまで!みんないつも私をなんだと思ってるの!」
「噛み噛みアイドル」
「緊張系アイドルかしら」
「かっこいいアイドルですよ!ブシドーです!」
「うぁ〜ん、イヴちゃ〜ん!」
イヴちゃんに抱きつきながら考える。でも、確かにいつもより緊張しなかったな。これも練習のおかげだね!
「よし、今日は俺の奢りでどっかに食べに行くか!」
「えっ!?いいのー!?あたし焼肉食べたい!」
日菜ちゃんはやっ!い、今食べたいもの…。う〜ん…。
脳裏に浮かぶ焼肉たち…。うん、私も焼肉がいいな…。
「じゃあ食べに行くか。俺ちょっとタクシーよんでくる」
「じゃあお客さんがいなくなったら行きましょうか」
「「「「はーい!」」」」
タクシーを2つ捕まえて俺達は焼肉屋を目指していた。2つあった車の1つに4人。もう1つに2人というなんとも言えないバランスで乗ってることに運転手聞かれたが俺と彩は笑って誤魔化す。
「そういえば煌成くん」
「どうした?」
「今日の私、見た?すごく良かったと思うんだけど!」
「さっきも言っただろ…。思い出しただけで涙がでて…グスッ」
「あっ!それは馬鹿にしてるでしょ!ひどい!」
「あははは!…でも本当に良かったよ。お疲れ様」
そう言い俺は彩の頭を撫でる。一応変装はしてるから大丈夫だと思うけど少し怖い。バレたらファンに殺されるのかな、俺。
「…俺が見てやれる回数ももうそんな多くないってのは、やっぱ寂しいな」
「……!」
彩の顔が曇るのが見える。やばい、やっちまったか?
「…でも、私はずっと見てもらえるくらい、有名になるよ。煌成くんが遠くに行っても聞こえるくらい、すっごいアイドルになってみせるからね!」
そう言い彩は俺の手をとる。……ああ。どこに行っても、俺はお前を……
「俺は」
「お客さん!危ない!!!」
運転手の切羽詰まった声にバッと窓を見た煌成の目に映ったのは、横転し突っ込んでくる車の姿だった。
「彩!!!!」
車がぶつかる刹那、煌成が思い返してたのは
「ーーくん!ーーくん!!」
…誰かの声が聞こえる。誰かが俺の名前を呼んでいる。
朦朧とする意識の中、薄く開いた煌成の目に映ったのは泣きながら名前を呼ぶ彩の顔。
……ああ、無事だったのか。彩。
「……ぁ、や」
「ー成くん!煌成くん!!」
「…ぉまえが……無事で…よかっ」
意識を失った煌成はすぐ病院に運ばれ、集中治療室での手術により一命を取り留める。
とりあえず安堵するパスパレ達だが、問題はここで終わらなかった。
夕焼けに照らされる病室では毎日魂が抜けたように煌成の傍らで手を握る彩の姿。
煌成が眠り、早くも3週間が経とうとしている。
中編へ続く
読んで頂きありがとうございます。
中編と後編は一気に出すので、しばらくお待ちください。
これが、最後のシリアス回です。
彩と煌成の未来のお話
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ほしい
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結構です