煌めいた彩りは新しい春を運ぶ   作:♡チェケ♡

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別れの春が、やってきた。




※オリジナル設定注意
視点変更あり


最終話 煌めいた彩りは新しい春を運ぶ

「行ってきます」

 

この家にも長い間お世話になった。一人暮らしに変わってからもこの家は変わらず俺の居場所だった。

もう家具も何もなく、表札もない家を見ると少し寂しい。

 

「…行ってきます」

 

もう一度言い、煌成は学校へと歩き始めた。

 

 

 

3月9日。卒業式の日である。

 

 

 

ー花咲川学園ー

 

教室に入るとやはりというかなんというか騒がしかった。

 

「お、煌成。今日は少し遅かったな」

 

「ああ雅也。今日くらいはゆっくり歩こうと思ってな」

 

既に少し涙目の雅也を見てると俺も少し泣きそうになる。

 

「……長い間ありがとな」

 

そう言うとズズっと鼻をすすり照れくさそうに

 

「卒業式が終わってから言えや」

 

と笑った。それから俺達3年生は時間が来るまでずっと話していた。高校の3年間も、今日で終わり。みんなこの時がずっと終わらないかのように話して、笑っていた。

 

「…移動の時間だぞ」

 

ほとんど泣きそうになってる担任の声で、俺達は静かに廊下に並び始めた。

 

後輩達に見せる最後の姿だ。キチンと終わらせよう。

 

 

 

 

 

「卒業生、入場!」

 

体育館に響く拍手の音が大きくなる。この音を聞いている側って考えると卒業する気分になってくる。

 

「おっ…」

 

みんなわかりやすいな。すぐに見つかる。

 

微笑んでこっちを見てくる若宮、真面目な顔してこっちを見てくる白鷺。それと…………

 

「えっぐ、ひぐっ。ぐずっ……」

 

もうこっちまで聞こえるくらいの声で泣いてる、彩。

 

「卒業生、起立!」

 

ガタッ!と後ろから音が聞こえた。いつもの声も。まあ、彩だろう。

 

……変わらないな、いい意味で。

 

 

 

 

どんどん式の行事が進んでいく中で煌成はずっと物思いにふけっていた。

 

 

早いものだ、この3年間も。去年卒業式の話を彩とした気がするな。

少しだけ流れそうになる涙を抑え、煌成は目を閉じる。

 

同級生に、先生に、先輩に、後輩に。沢山の人に支えられてきたこの高校生活は、俺の一生の思い出だろう。

 

「卒業生、礼!」

 

 

今までありがとう。花咲川学園。

 

 

 

卒業式が終わった。

 

退場の時に目のあった煌成くんの顔は、優しい顔をしていた。

……私は涙でぐちゃぐちゃの顔を見られちゃったけど。

 

「煌成くん、まだかなぁ……」

 

昨日の夜煌成からメールで体育館裏に来て欲しいと言われてずっと待ってる彩は、少しだけ怒っていた。

 

「そりゃ煌成くんも友達とか多いだろうから積もる話もあるだろうけど……」

 

こんな時でも1番に会いたいと思うのはエゴなのかな?卒業式くらいはしょうがないかなぁ……。

 

「ヒャッ!」

 

「お待たせ、待った?」

 

後ろからほっぺに熱いものを当てられたと思ったら、カフェオレを持った煌成くんがそこには立ってた。

 

「座れるところ行こうか」

 

そう言い歩き出す煌成くんの後ろについて行く。

学校では迂闊に近づけない。周りにバレたら大変だからね。

 

 

 

 

ー特別教室ー

 

「あれ?鍵かかってるはずじゃ…?」

 

煌成くんに連れていかれたのは普段は鍵が入っていて誰も入れない特別教室だった。

不思議そうな目で煌成くんを見るとポッケからチャリーンと鍵を取り出した。

 

「先生が貸してくれた」

 

煌成くんへの信頼、絶大……!?

 

煌成くんとこの学校の教師にビックリしていると、煌成くんに真正面から抱きしめられた。

 

「え?煌成くん?だ、ダメだよ。ここは学校……」

 

煌成を止めようとする彩だが、煌成は抱きしめる力を更に強めた。

 

「……ずっと、こうしたかったんだ」

 

「…え?」

 

「学校の中でも、外でも。ずっと一緒に居たかった。ずっと同じ時を過ごしていたかった。何度同じ学年である事を望んだか。何度大学を変えようと思ったか……」

 

そう言う煌成の目から流れ落ちた涙は、見上げる彩の頬へと落ちた。

 

「本当はずっと、ずっとお前と一緒にいたかった…。本当に寂しかったのは、ずっと俺だったんだ…………」

 

泣いて呟く煌成とは裏腹に、彩は落ち着いていた。

 

「煌成くん」

 

「…ん」

 

力を抜き、彩の目を見る煌成。彩は軽く微笑み、

 

「甘えない!」

 

そう言い煌成の頬をビンタした。

 

「いっ……。え?」

 

状況が掴めない煌成に彩はまくしたてる。

 

「煌成くんの方が寂しかったって!?そんなわけないでしょ!私だってずっと寂しかったの!それに煌成くんが今日卒業したら私は1年間煌成くんの居ない学校を過ごさなきゃダメなんだよ!?それなのに……」

 

彩は煌成にタックルするように抱きつき、言葉を漏らした。

 

「ずっと一緒に居たかったなんて、言わないでよ……。ずっと一緒に居てよ……。互いに夢を叶えて、できる所まで行って、もう思い残すことはない!ってら言えるようになったら……」

 

 

「私とンッ!?」

 

 

煌成が瞬間的に彩の口を塞ぐ。そして焦ったように彩へと告げた。

 

 

 

「それは、俺に言わせて欲しい」

 

彩の目から涙が零れ落ちる。何滴も何滴も。卒業式の時よりもはるか多くの涙が。

 

「ずっと一緒に過ごそう」

 

「うん」

 

「毎日美味しいご飯を食べよう」

 

「うん…」

 

「休日は2人でどこかに出かけよう」

 

「……うん…」

 

「いつか、いつか…」

 

 

 

 

「結婚しよう」

 

 

「……うん……っ!!」

 

 

 

たとえ離れ離れになっても、俺達はきっとまた会える。

 

 

 

「あ、桜咲いてるね」

 

「ああ、綺麗だな」

 

 

 

 

別れだけど、これはそれぞれの夢への新たな始まり。

 

 

 

 

新しい、春の始まりだ。

 

 

 

 

 

おしまい




これまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。去年の11月から始めたこの「煌めいた彩りは新しい春を運ぶ」は今回で最終話とさせていただきます。
気軽な気持ちで始めた小説投稿でしたが色々な人に見てもらいここまで来ることができました。本当にありがとうございます。
最後のアンケートとして2人の未来の話を書くかどうかは皆さんに委ねたいと思いますので、良ければ参加してください。

これで彩の物語は終わりですが、今2話だけ書いてある千聖の「僕が出会った少女はガラスのような人でした」の投稿を再開しますので、良かったらそちらも見てくださると幸いです。しかしシリアスが多めとなっていますのでご注意ください。

最後に、これまで読んでくださり本当にありがとうございました!
これからも頑張りますので、是非応援よろしくお願いします。
(Twitterチェケって名前でやってますのでフォローしてくれたら嬉しいです)

それでは、またお会いしましょう。

彩と煌成の未来のお話

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