ある日、
本当に突然だった。
「チェキ券見せていただきますねー」
「その前にちょっといい?
私、346プロダクションの者なのだけれど。
この後時間をもらえるかしら?」
チャンスが突然舞い降りてきた。
私はそう思った。
だって、346プロダクション。
あの、しゅがみんが所属しているプロダクションなんだよ。
地下アイドルを続けて、何年も夢見た世界。
「はいっ。」
このチャンスを掴まなきゃいけない。
そう私は思ったんだ。
「346プロダクションの……と申します。
単刀直入に言うわ。
あなた、うちの事務所のアイドルにならない?」
正直、やったぁって小躍りしたくなった。
でも私だって立派な大人。
ちゃんと聞くべき事は聞かなきゃ。
「346プロダクションの所属アイドルになれる、という事でよろしいんですか?」
「そうよ。
私のグループは佐久間まゆ、森久保乃々、橘ありす、棟方愛海、喜多日菜子、遊佐こずえ、佐城雪美など…まだまだ多数のアイドルをプロデュースしているわ。」
具体的なアイドルの名前を聞いて、この人がすごい事だけはわかった。
「え、あなたはただのスカウトではないんですね?」
「スカウトではなくアイドルのプロデューサー、ね。」
プロデューサー直々に声をかけて貰ったという事なのか。
「そんな硬い顔しないで。
今日あなたともう1人声をかけたい子がいるんだけど。
さっき私の前に並んでいた子。」
不意に自分のファンの女の子の顔を思い浮かべた。
いや、多分違うよね。
「りあむですか…?」
恐る恐る彼女の名を呼ぶ。
「えぇ。あなたの大ファンりあむちゃんよ。」
「うげ。まじですか。」
悪い子じゃない。むしろアイドル的にはとてもいい子。
単推し客はとてもありがたい存在だし、CDもチェキも握手券も買ってくれるいいファン。
ただ…
「あの子炎上しやすいです……よ……?」
「そうね。知ってるわ。
あの子を見たときにね、とても輝く才能を感じたの。」
は?
口に出さなかった。
色々な気持ちが混ぜこぜになって気持ち悪い。
待って、私をスカウトしにきただけじゃないの???
「私を見つけたんじゃなくて…りあむなんですか……?」
「…正直に言うとそうね。」
悔しい。
素直に悔しい。
チャンスが舞い降りてきた!なんて浮かれていた私がバカだ。
そんな美味しい話なんて最初からなかったんだ。
最初からりあむに舞い降りてきたチャンスだったんだ。
夢見りあむが憎い。
憎いはずなのに全く憎めない。
とりあえずこの話は受けない。
私のプライドの為にも。
それに、もっと地下アイドルで……。
「ごめんなさい。
この話はお断りします。
私、ちゃんと地下アイドルやってがんばります。
それで、もっと上に上がります。
346プロダクションのアイドル達よりも、ものすんごいアイドルになるんですから
覚悟してくださいよね!」
あーぁ、私ってばもったいなーい。
でもこれでよかった。
地下のライブハウスに来る馴染み客が1人減った。
と、思ったけれどたまにチェキを撮りにくる。
そしてたくさんお客さんが入るようになった。
多分、この前のテレビであの子が「あんちゃん尊い!フォーエバー!!!!」なーんていつも通り言い放ったからじゃないかな。
鏡を見て、衣装チェック。
私はあの子がいう尊いアイドルなんかじゃない。
だから、私は尊いアイドルになりたい。
今度、便箋を買ってみよう。
りあむがきっと驚いてしまうようなファンレターを描いてしまおう。
きっと私が夢見りあむのファン第一号なのだから。
私を救ってくれたアイドルだから。
2話更新くるとは思わなかっただろ!
ぼくだって本気出せば書けるんだからな!!!()