レナ「……………………」
結翔「…本当に面倒臭い時あるよな、レナって」
ももこ「そこも可愛いんだよ」
結翔「否定はしねぇけどさぁ……」
レナ「もう!レナの前で勝手にレナの事褒めないでよ!!さっさと十六話をどうぞ!!!」
アラもう聞いた?
誰から聞いた?
絶交ルールのそのウワサ。
知らないと後悔するよ?
知らないと怖いんだよ?
後悔して謝ると、嘘つき呼ばわりでたーいへん!
怖いバケモノに捕まって無限に階段掃除させられちゃう!
ケンカをすれば、ひとりは消えちゃうって神浜の子供たちの間ではもっぱらのウワサ。
オッソロシー!
──────────────────────
──いろは──
レナちゃんとかえでちゃんが絶交してから数日。
遂に痺れを切らしたももこさんが動き出した。
私も、ももこさんたちのチームに、妹たち──ういに
重ねてしまった理由は本当に単純で、三人の関係性が似ていたからだ。
灯火ちゃん──
ねむちゃん──
二人とも本当に才能に溢れた子たちだったけど、いつもはよくケンカしあう普通の女の子だった。
そして、そのケンカの仲裁に入るのは決まってうい。
本当に……良く似ていた、だから放ってなんておけなかった。
……まぁ、まさか一人でレナちゃんを誘導する事になるなんて。
しかも、本当なら委員会で残っているレナちゃんを学校の校門前で待ち伏せする筈が、唐突に委員会がなくなった所為でゲームセンターに行く事に……
機械音痴な私は、ももこさんから送られてきた私は地図の見方に四苦八苦しながら、ようやくゲームセンターに到着する。
「ゲームセンターって、もっと怖い人ばっかりなのかと思ってたけど普通の人ばっかりなんだね……。でも、なんか圧倒されちゃう……」
…いや、圧倒されてる場合じゃない。
(レナちゃん…レナちゃん…)
人は多過ぎず少な過ぎず、まばらな感じだった為か──目的の彼女は思うより早く見つかった。
……あまり話し掛けやすい雰囲気ではないが。
「あの子…。あれって…もしかして…」
「あー、もう! この台おかしいんじゃない!? 今のどう考えてもBADじゃなくてGREATでしょ! 判定狂ってんじゃないの!?」
(なんか怒ってるけど。今、行かないと……ダメだよね……)
「ふぅ……よし!」
私は少し近寄り難い雰囲気も出しているレナちゃんに、勇気を持って一歩近づき話し掛ける。
見るからに不機嫌そうな顔だが……臆してはいられない。
「あ、あの、レナちゃん!」
「あぁ? 誰? って、アンタ、あの時、レナを止めようとしたヤツ! ……何の用……? ももこに言われてきたんならほっといてくれない?」
「あの、そうじゃなくて……」
「じゃあなによ!」
「ひっ……えっと……。レナちゃんも
嘘を言うのは心苦しい。
騙している事が心に響くが……背に腹はかえられない。
二人の仲直り為に、私が出来ることをやらなくちゃ…。
「えっ、アンタ知ってるの!? 歴史と浪漫の刀剣愛ドル! 史乃沙優希!」
(あ、そう言うの……なんだ……)
「う、うん、それでね。新西区の建設放棄地でね、ゲリライベントがあるんだって。良ければ……一緒に行かない……?」
「もっちろん! で、アンタはちゃんと刀剣サイリウム持ってきた!?」
「と……えっ……。…………うん‼」
ももこさんからそんなの聞いてない…。
でも、レナちゃんが言うんだからきっと──
「んなもんないわよ!」
「ぇええ!?」
嘘!?
……不味い、凄く不味い。
ここからどうすれば……
頼れる人は居ない。
どうやって話を進めたらいいか──いや、まず話を進められる?
無理だ……やってしまった。
多分、私は一番してはいけないミスをした。
「やっぱ、ももこからなにか入れ知恵されたんでしょ。人の好きなもので釣ろうなんて良い根性してるわね。サイテー。マジふざけんじゃないわよ、レナ絶対行かないからね」
「うぅ……あのね、でも……」
「なに、アンタ今度はレナと本気でやりあおうってワケ?」
「ごめんなさい……」
「謝るぐらいなら、最初から言うな、バカ!」
「うぅ……」
「レナちゃん!」
どん詰まりだった。
そんな私たちの前に──かえでちゃんは現れた。
ももこさんと一緒に建設放棄地に向かっているであろう、かえでちゃんが現れたのだ。
「もう、今度は誰よ! ──っ!? あんた……かえで……」
「かえでちゃん……? どうしてここに……」
かえでちゃんが現れた事によって、色々なものが変わった。
上手く行けばこのまま──そんな淡い期待が私にはあった。
だって、
でも、違う。
あの三人と、ももこさんたちは違う。
関係性は似てるが、同じ人間じゃないし……なにより状況が全く持って違う。
絶交ルールのウワサ、私はそのウワサの真の恐怖を知らなかったのだ……
──結翔──
『……かえでが攫われた?』
『はい。……恐らくなんですけど、ウワサだと思います』
『かえでがレナに謝ったら、変な結界に呑まれて使い魔擬きにかえでが攫われたと……』
『絶交ルールのウワサを破ったから……でしょうか?』
『多分ね。……俺も出来るだけ早くそっちに行く。新西区の建設放棄地だったよね?』
『そうです。…お願いします』
ももこから連絡を受けた数分後、いろはちゃんからも連絡もらった。
…はぁ、念の為に連絡先を交換しといて良かったよ。
ももこは未だに半信半疑で、俺とレナの言葉だから微かに信じてる節がある。
もう、動き始めてる。
まさらとこころちゃんに先に向かってもらうか?
……いや、そうするしかない。
俺が行くには少し遠い。
人通りが多い場所に居る所為で、一旦違う場所に行かないと魔法少女に変身すら出来ない。
「…クソッ! 調査は切り上げて、すぐにでも行くべきだったか……」
出来るだけ、ウワサの弱点になる情報が欲しかったが、そうも言っていられない。
今は、一分一秒が惜しい。
冷静に判断して、事を進めないと。
また、俺は──失ってしまう。
(そんなの真っ平だ…!)
そこからの行動は早かった。
即座に人気の少ない場所に移動し、変身してすぐに電話をかける。
相手は──
『新西区の建設放棄地』
『分かったわ。こころも連れて急いで行く』
『頼んだ』
短い言葉でまさらとの電話を終えて、俺も建設放棄地に向かい始める。
しかし……その時にはもう、戦いは始まっていた。
──ももこ──
レナの作戦は……一応成功した。
アタシたちは結界の中に居る。
いつもの魔女の結界とはナニカが違う。
そのナニカが分からないが、絶対的にナニカが違う。
そして、かえでがアタシたちの目の前に現れる。
けど……あれはかえでじゃない。
使い魔らしきものを従えて、彼女はこう言ったのだ。
「迎えに来たよ、レナちゃん」
「かえで!?」
「レナちゃん、こっちにおいでよ。一緒に階段さんをお掃除しよう」
「なに言ってるのよかえで…。アンタがこっちに来るのよ!」
「じゃあ、私が連れて行ってあげる。今よりずっといい所だから」
「やめて! かえでちゃん!」
「┃『』『』『』『』!! ┃」
……アタシは動揺して動けなかった。
情報量が多過ぎたのだ。
使い魔らしきものを従えているかえで、いつもの結界とはナニカが違う結界、ウワサが現実になっているかもしれないと言う事実。
そんなアタシより先に、いろはちゃんが声を出した。
「レーナちゃん、ふふふっ」
「はやっ! かえでの動きとは思えない…」
かえでは、普段からは想像も出来ないほどの俊敏な動きで、レナとの距離を詰める。
変身はしたが、動くに動けない。
動揺が、アタシの体を思うように動かせてくれない。
「なんだよこの結界、こいつら本当に使い魔なのか!?」
「┃『』『』『』『』!! ┃」
「いけない、レナちゃんと引き離されちゃう!」
使い魔らしきものが邪魔をする為に、アタシたちの方にも群がり始める。
……動揺はまだ抜け切ってないが、動かなければレナまで──
「あたって!!」
「┃『』『』『』『』!?!?!? ┃」
「これで、道が出来た! ももこさん、今のうちにレナちゃんを!」
「──っ! あぁ!!」
いろはちゃんが使い魔らしきものを倒してくれたお陰で道は出来た。
素早く、アタシはその道を通ろうとするが……
追加の使い魔らしきものがぞろぞろと現れる。
「┃『』『』『』『』!! ┃」
「そんな、まだいるのか!?」
そうやって、アタシが足止めを食らっている間に、かえでがレナを連れて行こうと強行手段に出た。
……クソ!
レナは相手がかえでだから……手が出せない!
「それじゃあ、行こうかレナちゃん」
「┃『』『』『』『』!! ┃」
「なんで、なんでかえでなの! ずるい…こんなの…。攻撃できるわけないじゃない!!」
「みなさん、お願いしますー」
「┃『』『』『』『』!! ┃」
やばい…やばい…やばい!!
手間取ってる隙にレナが……
悲痛そうな顔をするレナに、アタシは手が伸ばせない。
アタシの手は届かない。
足りない……長さが足りない、力も足りない……全然届かない。
「イヤアアアアアア!!」
「レナちゃん!!」
「くっ、一足遅かった…」
「やちよさん!?」
……なんで、なんでアンタなんだよ!
アイツは、アイツはどこで何してんだ!!
やちよさんが来た事によって、アタシの頭に段々と血が昇っていく。
「神浜うわさファイルの通り、現実になってしまったわね」
「何がうわさファイルだ! 魔女の性質が、偶然似てただけだろ!」
可笑しいのなんて気付いている。
だけど…だけど、それをウワサとして納得できるかは別問題だ。
信頼してるアイツが言った言葉も、やちよさんに言われると信じられなくなってしまう。
身勝手な我儘だって気付いていて、それでも──
「いい加減現実を見なさい! あなたが、私を嫌いなのは構わないわ。だけど、それを理由に仲間を危険に晒さないで。曲がりなりにもリーダーでしょ」
「……………………」
「魔女と魔法少女が集まり、調整屋や小さなキュウべえが現れ。噂まで現実になる神浜市…。もはや、普通の状況じゃないのよ…」
「………………。分かった…分かったよ。認めざるを得ないよ…」
………………あぁ、もう。
アンタが完璧に変わってたなら、どれほど良かったか。
中途半端に優しくしないでくれよ。
そうしないと、またアタシは頼っちまう。
「…それで、私たちはどうすればいいんですか?」
「レナとかえでが敵の手に落ちれば、すぐに逃げられてしまうわ。だから今は、ここのボスを倒すか二人を足止めする必要がある。私はかえでの動きを止めるわ。あなたたちは、ボスを見つけてくれる?」
「…分かりました!」
「……身をていしてレナが作ってくれた機会だ無駄にはしないさ。それじゃあ、行こういろはちゃん!」
「はいっ!」
やちよさんにかえでを任せて先を急ぐ。
あまり時間を掛けてはいられない。
なるべく早く敵を見つけて叩かなければ、レナまで……
「にしても、ほんと、何なんだこの結界……。噂が現実になるって信じた所為かかなり異質に見えてくるな……」
「…そうですね」
いろはちゃんの相槌が聞こえた次の瞬間、凄まじい魔力反応を感じ取った。
間違いない、さっきの使い魔らしきものとは桁が違う。
まさか、魔女?
「──っ!? いろはちゃん、今の魔力感じた!?」
「はい…強いです…。さっきの使い魔なんかより全然強いです!」
「おいおい、まさかの魔女のお出ましか…? ともなると、余計に理解不能だな…」
「はい…。つまり──」
「階層のない結界という事ね…」
「つうことになる──って、なんでまさらちゃんがここに!?」
「…一応、私も居ます」
いきなり背後に現れたのは魔法少女に変身しているまさらちゃんと、追いかけてきたのであろうこころちゃん。
何故二人が……
「何で二人が──」
「──っ!? ももこさん、来ます!」
「ちっ! 話は後だ!」
現れた魔女は、かえでの言葉にもあった、階段の要素を取り込んだものだろう。
そこらの魔女より明らかに強い、階層のない結界と言い──まるで魔女らしさがない。
喰らった衝撃波も、魔法少女として活動してきた中でもトップクラスだ。
何度も何度も喰らって立ち上がれるものじゃない。
「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」
「ももこさん、魔女の所にレナちゃんが!」
「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」
「くっ、ぁぁぁ……」
「ちっ、かえでと同じように。レナまで洗脳しようってか……? させるかよ……させて、たまるかああああああ!」
アタシは大剣を持って突っ込み、過去最高の踏み込みで思い一撃を入れたが……相手はビクともしない。
その後も、無我夢中になって大剣を叩き込んだが、全く持って攻撃が通ってる感じがしない。
まさらちゃんも、アタシに続く形で攻撃を仕掛けているし、いろはちゃんやこころちゃんだって援護射撃してくれてるが……
全く効いていない。
アタシの大剣による重い一撃も、まさらちゃんのダガーによる連撃も、いろはちゃんによる矢の連射も、こころちゃんの可変型トンファー(射撃モード)による電撃も、ダメージを与えられてない。
「……くそっ、なんなんだよ……。攻撃が通ってる感じがしない……」
「えぇ、全く持って効いてないわ」
「まさら! 落ち着いてる場合じゃ…!」
「苦戦してるみたいね」
「やちよさん!」
「かえではどうしたんだ!?」
「しばらく眠ってもらってるわ」
……ダメだな、アタシ。
また、頼ってる。
また、甘えてる。
ちょっとは、強くなれたつもりだったのに。
……いや、結翔に甘えてる時点で、強くなんてなれてないか。
お礼だけは、言わないと。
きっと、それだけは間違えちゃいけないから。
「そっか、ありがとう…」
「あら、ずいぶん素直なのね」
「感謝するべき時は、誰だろうとちゃんとするさ。それで、あの魔女……そうやって倒せばいいんだ?」
「そんなの、分からないわよ」
「っ、はあ!? 噂を調べたりするのはアンタの専売特許な筈だろう!?」
「『神浜うわさファイル』だって、そんな万能じゃないわ。解決されたこともないのに、うわさがつくわけないでしょ。このうわさの続きはね、私たちで新しく記すしかないの」
…………一度、頭を冷やさないとダメなのかもしれない。
でも、その余裕が無い。
今すぐにでもレナを助けないと。
「くぅぅ、役に立たない」
「ようやく状況が掴めたからって簡単に人を頼ろうとしないで、また私の金魚の糞になるつもり? 甘えん坊のももこちゃん」
「か、過去を蒸し返すなぁっ!」
「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」
「は……あなたの……しもべに……」
「いけない……急がないと……レナちゃんが……」
「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」
「ックゥゥゥアアアアア‼」
間に合わない……
あぁ、いつもそうだ。
タイミングが本当に悪い。
バットタイミングのももこ、そう言われていた過去を思い出す。
「ももこさん、やちよさん! このままじゃ、レナちゃんが!」
「えぇ、分かってるわ。だけど、ここからは本当に無策よ」
「ただ、六人の力で押していけば、気絶くらいは狙えるかもしれない」
「そんなの、希望的観測でしかないわ」
本当に、中途半端な人だ。
冷たくするなら、もっと前からやっていてくれ。
優しくするなら、もっと前からやっていてくれ。
変わってないから、反発しちまうんだ。
「待て! 六人じゃなくて七人だよ!」
そう言って、アタシの前に現れたのは──
──結翔──
ギリギリ、ラスボス前には間に合ったらしい。
ももこたちの前に着地すると、魔力で剣を編み構える。
敵は使い魔擬きも合わせると結構な数だ。
それに……
「階段さんの邪魔は許さない」
「この身は階段さんのもの…」
「──っ!? レナまで……」
「嘘…。間に合わなかった」
「ももこ……アンタはもうレナたちのリーダーじゃない」
「ごめんね、ももこちゃん。階段さんの方が魅力的なの……」
「くっ、何が守ってやるだ……何も出来てないじゃないか……。やちよさんの言う通りだ……、個人的な感情で噂を楽観視してこんな結果を招いた……。リーダー失格だよ、まったく。二人とも、アタシも謝るから目を覚ましてくれ」
「目を覚ませ? 何を甘いこと言ってるの」
……俺は何も口を挟まない。
口を挟んでも良い事なんてない。
「やちよさん……でもアタシは、コイツらを守らないと……」
「傷つけないことは守ることと同義じゃない、それぐらいわかるでしょ。あなたは仲間を傷つけることで自分が傷つきたくないだけよ」
「やちよさん。幾らなんでも言い過ぎです! ももこさんにとって、二人は大切な仲間なんですよ!!」
こころちゃんがやちよさんに食ってかかる。
やちよさんが言ったことは紛れもない正論で、こころちゃんが言ったことも紛れもない正論だ。
正論と正論のぶつかり合い。
本来なら起きない筈のそれが起きていた。
「……ももこ。貴女には荷が重いでしょ。私とこころがやる。それでいい?」
「悪いけど……頼む」
「まさら、こころちゃん。使い魔擬きの処理も頼む。こっちに近付けさせないで」
「了解です! 任せて下さい」
そう言うと、まさらとこころちゃんは二人と使い魔擬きを連れて、離れていく。
……邪魔者は居なくなった。
これで、心置き無く、ウワサを潰せる。
さっきまでのやるせなさを力に変えて剣を握った。
直死の魔眼で死が見えないという事は、特定の条件下でしか倒せない敵という事だろう。
まぁ、取り敢えず。
「俺の妹分に手ぇ出してくれたんだ。覚悟は……出来てんだろうなぁ!!」
俺の怒りの声が響く。
次の瞬間、俺たちの初めてのウワサとの戦いが幕を開けた。
次回もお楽しみに!
誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!
感想もお待ちしております!