無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 まさら「前回までの『無少魔少』。口寄せ神社のウワサをいろはが良く分からない力で倒したり、見滝原から来た魔法少女に襲われたりしたわ。…名前は巴マミる?」

 結翔「一つ余計なの混じった所為で酷い名前になってるな、それ」

 こころ「……想像してしまった自分が憎いです」

 まさら「本編ではそうならないわ。…多分、きっと、maybe」

 結翔「クソほど未確定な言葉を並べるな。…ったく。いつも通り、楽しんで二十二話をどうぞ!」



二十二話「可哀想で危険な傭兵さん」

 ──結翔──

 

 口寄せ神社の件から、また幾らかの時間が経った。

 今、俺は組織の仕事の一つである魔女退治をして家に帰って来てる所だ。

 ……まさらと一緒に。

 

 何故、まさらが居てこころちゃんが居ないのかと言うと、いろはちゃんの妹探しの手伝いをしてるからだ。

 もっとも、最近は鶴乃の家でもある万々歳でラーメンを啜る日々だが。

 

 

 なんでも、鶴乃曰く『柊さん』は常連らしい。

 それを聞いたいろはちゃんは、一旦待ちの姿勢で万々歳に通い続けた。

 

 

「多分、今日でそれも最期だろうな」

 

「……? 何が今日で最期なの?」

 

「いろはちゃんたちが万々歳に毎日通うのだよ。…言っちゃ悪いが、鶴乃の常連の定義は緩い。一ヶ月に一回来てくれればそれで常連だからな。まぁ、俺は週一で通ってるから、鶴乃曰く『超常連さん』らしいけどな」

 

「週一? あぁ、私たちが家に帰ってる日に食べに行ってるのね。……でも、あの50点料理を週一で食べに行ってるの? ももこや貴方が作った方が断然美味しいでしょうに」

 

 

 まさらの言う、私たちが家に帰ってる日は本当の家に帰ってる日の事だ。

 相手の親御さんに、「事故は起きてませんよ」と実際に証明する為にやってる。

 ……本当は、週に一回くらい顔を見に行って欲しいからだ。

 家族との絆は、大切にして欲しいし──それに……

 

 

 いや、違う違う。

 話したいのはそこじゃない。

 今、話したいのは、万々歳の料理についてだ。

 まさら、お前はまだ、あの50点料理の良さを分かってない。

 変わらない味は、慣れれば美味く感じるし、鶴乃が作る料理は温かいから食べてて心地良いんだ。

 

 

「50点料理って、お前、あそこの料理はなぁ──」

 

「はいはい。大体分かったから違う話をしましょう」

 

「すげぇ、テレビで聞いてる分には良いけど、実際に言われるとウザイなその言葉」

 

「煩いわね。……それより、口寄せ神社の件。結局どうなったの?」

 

「お前なぁ……はぁ。確認されてる限り、行方不明者は全員帰ってきた無傷でな」

 

 

 少なくとも数日単位で行方不明になっていて、飲まず食わずだった筈なのに、行方不明者たちは栄養失調にすらなっていなかった。

 これを素直に良かったと取るべきか、怪しんで可笑しいと疑うべきか。

 少々判断に迷う所だ。

 

 

 一つ、言える事があるとすれば、ウワサは危険、その事実に尽きる。

 一歩間違えたら、本当に死者が出るし、今後出てくるウワサが無傷で済ませてくれるとは限らない。

 

 

「…ウワサは着実に増えてる。数は多くないけど、潰すには苦労するよ」

 

「何個かウワサを消したって言ってたとけど、何を消したの?」

 

「何個かって、まだ二個くらいだよ。…一つは『気紛れアサシンのウワサ』、もう一つは『我慢少女のウワサ』だ」

 

「『気紛れアサシン』に…『我慢少女のウワサ』?」

 

「話すと長いけど…帰り道は暇だしな」

 

 

 魔女が逃げに逃げて、大東区に来たから帰るのにも時間は掛かる。

 地理的に、場所は俺達が住んでる新西区とは真反対で東の奥の方。

 道すがら、俺はまさらに『気紛れアサシン』と『我慢少女のウワサ』の内容を話した。

 

 

 ──────────────────────

 

 

 アラもう聞いた? 誰から聞いた? 

 気紛れアサシンのそのウワサ

 

 嫌な上司? ウザイクラスメイト? 裏切られた恋人? 

 本当にケシたいならお任せヲ

 

 依頼書にその人の名前を書いて

 ポストにポイすればそれで終わり

 ケシたい人を気分次第で消してくれる

 

 でもでもでもキヲツケテー! 

 気分次第で依頼者を消しちゃうって

 新西区の人の間ではもっぱらのウワサ

 

 オイノリダー! 

 

 ──────────────────────

 

 

 アラもう聞いた? 誰から聞いた? 

 我慢少女のそのウワサ

 

 辛いこと、苦しいこと、悲しいこと

 いっぱい、いーっぱいガマンしてない? 

 

 溜め込み過ぎてるならご相談

 ガマンしていた事を全部ぜーんぶ引き受けてくれる

 

 けどねけどね話過ぎはヨクナイヨー! 

 溜め込み過ぎたもの全部消しちゃうって

 南凪区の間ではもっぱらのウワサ

 

 ナンデヤネーン! 

 

 ──────────────────────

 

「──ってな感じだ」

 

「相変わらず巫山戯た内容ね。…でも、両方危険ってことは分かったわ」

 

「唯一の救いは、俺一人でも倒せる敵だったことだ。絶交ルール見たいに、二人以上必要な場合は面倒だしな」

 

「…まさかとは思うけど、こころに内緒じゃないでしょうね?」

 

 

 まさらの言葉を聞いた瞬間、俺はそっぽを向いて口笛を吹き始める。

 誤魔化した、精一杯誤魔化した。

 バレたら、また説教コース確定どころか、本気でGPSとか盗聴器とか付けかねられない。

 

 

 まぁ、俺の子供のような誤魔化しが、まさらに通じる筈もなく。

 帰ったらこころちゃんに報告することが決定した。

 

 

 ヒーローとして頑張ったのに……解せぬ。

 そうして、帰り道を歩いていると、参京区の辺りでみなれぬものをみつけた。

 自転車の移転販売か? 

 

 

「……なになに、キリッと冷えた幸せの水。フクロウ印の給水屋さん。疲れた人のために無料で提供中」

 

「どこかの天然水ってことかしら?」

 

「さぁな。…にしても、幸せの水かぁ。オカルトチックな売り文句だな」

 

「私たちの存在が既にオカルトチックでマジカルだと思うわよ?」

 

「違いない…」

 

 

 水を配っているおっちゃんは優しそうだけど……

 なんでだろう、違和感がする。

 珍しいけど、なくはないありふれた日常の光景なのに。

 どうしてか、違和感がする。

 

 

「考え過ぎか…」

 

「帰りましょう。早くしないと、料理が冷めるかも」

 

「だな。こころちゃんを待たせるのも悪いし。……怒られるのは嫌だけど」

 

 

 俺の最後の言葉を、まさらは無視して先を行く。

 それに追い付くように俺も小走りで距離を詰めた。

 非日常を味わって一時間も経ってないのに、俺たちは日常の中に居た。

 

 

 ──こころ──

 

 やちよさんに言われた、電話帳を使った柊ねむちゃんの捜索から一日。

 結果として、電話帳に載っていた四つの家は全て全滅だった。

 いろはちゃんが凄くガッカリしてたのをハッキリと覚えている。

 私は、何も言えなくて、そのまま流れで別れた。

 

 

 その後は、家に帰って料理を作って結翔さんたちを待った。

 放課後、仕事が入ったので急遽まさらと一緒に、大東区まで行っていたらしい。

 ……帰ってくると、家に入るなり玄関で土下座をされて驚いたが、理由を聞いて納得した。

 

 

 今度から私たちも手伝うと言ったのに、一人でウワサを調査し倒したとの事。

 怒った、怒りに怒った。

 一人で戦った事を怒った。

 

 

 守って下さいとは言ったが、それが一緒に戦わないと言うことではない。

 家族だと言うなら頼って欲しい。

 その件でひとしきり怒ると、どこからが紙が落ちてきた。

 紙には『21』と書かれていた。

 

 

 結翔さんは怪しいと、何かに巻き込まれてるんじゃないかと言ったが、私はそれを気にしない程に怒っていた為、説教は続いた。

 今思えば、少し頭に血が上っていたのかもしれない。

 何せ、いろはちゃんと一緒に居た時から、どこからがその紙が落ちてきたのだから。

 

 

 ……そして、今日に至る。

 朝起きると、ベットの周りに紙が落ちていた。

 それも、一枚や二枚じゃない。

 十二枚、十二枚も落ちていたのだ。

 慌ててパジャマのまま、結翔さんの部屋に突っ込んだ。

 

 

「結翔!!! 大変ですっ!?」

 

「……んん。何が?」

 

「紙、紙がいっぱいっ?!」

 

「……あぁ、なるほどぉ。下で待ってて、すぐ下りるから」

 

「はっ、はい」

 

 

 同じ部屋で眠っていたまさらも、私の慌てた起床後の行動で起きたのか、パジャマから着替えて先に下に下りている。

 彼女は最近買った、シンプルなデザインの水色のパーカーにジーパンを着ていた。

 

 

 私が下りた少し後に、私服であるベージュのトレンチコートに、まさらと同じくジーパン姿の結翔さんも下りてきた。

 それを合図にするように、まさらが私に問い掛ける。

 

 

「……こころ。一体どうしたの?」

 

「実は──」

 

 

 そう言って、私は昨日の話を、出来るだけ細かく話した。

 すると、二人とも引っ掛かる事が合ったのか、私の話が終わったあと、結翔さんが続けるように言った。

 

 

「フクロウ印の給水屋で配ってた水を飲んだんだよね?」

 

「はい。……ちょうど、私といろはちゃん、喉が渇いていたので……つい」

 

「まぁ、ああ言うの見たら怖いもの見たさで飲んでみる…ってのも有り得るよな。でも、そんなウワサ聞いた事ないし……はぁ。どうするかなぁ……取り敢えず、一旦合流するか」

 

「七海やちよたちと?」

 

「あぁ。もしかしたら、あっちが尻尾を掴んでるかもしれないし。掴んでなくても、人手はあって困らないだろ?」

 

 

 確かに。

 いろはちゃんも巻き込まれてるんだったら、やちよさんも動くし、一緒に探せれば運良く見つかるかもしれない。

 もし、これがカウントダウンか何かだった場合……残りあと、九時間程だ。

 

 

「よし! 決まったら行動だ。急がないと、何が大変な事に──」

 

 

 そう、結翔さんが言い終える前に、ヒラヒラと紙が落ちてきた。

 紙には『8』と書かれている。

 ……もう、あまり時間は残ってないらしい。

 

 

 ──結翔──

 

 やちよさんたちと合流するべく、俺たちは急いで万々歳に向かった。

 咲良さんへの報告を済ませてから来たので時間は掛かったが、ギリギリセーフだろうか? 

 そっと引戸を開けると、やちよの叱るような声が聞こえた。

 

 

「すぐにこの子と解約しなさい!」

 

 

 ……解約、なんだそれ? 

 考えようかと思ったが時間が惜しかった為、俺は気にせず中に入った。

 そこには、やちよさんといろはちゃん、鶴乃に──なんとフェリシアが居た。

 深月(みつき)フェリシア、傭兵としてそこそこの知名度がある魔法少女。

 悪い意味で……だが。

 

 

 実力は悪くないのだが、如何せん、魔女を知覚した瞬間からこちらのコントロールが殆ど効かなくなる。

 所謂、暴走状態というやつだ。

 

 

 まぁ、過去の事を含めると、分からなくもない話なのだが……

 

 

「そんな突然!?」

 

「そうですね、突然過ぎて話に追い付けませんでした」

 

「あぁっ! 結翔のにーちゃん!」

 

「……本当に、あなたが居ると話がややこしくなるわね。あのね、環さん。深月フェリシアは有名なの」

 

「強い傭兵としてだろ!?」

 

「いえ、悪い傭兵としてよ。それも針が振り切れて測定不能なぐらいね」

 

「なんだとー!」

 

 

 いや、まぁ、悪い奴ではないんだけど、やちよさんの言う通りだよ。

 悪い奴ではない、悪い傭兵なのだ。

 弁護してやりたいが、しようにも色々と話さなきゃいけないしなぁ。

 人の過去を許可なしに言うのは最低な行為だ。

 

 

 俺だって、未だに言えない過去がある。

 ……結局、俺が臆病なだけなのだが。

 

 

「そう、なんですか?」

 

「魔女と見れば目の色を変えてブレーキなしに暴走する。強さは折り紙付きだけど、その暴走で味方を苦境に追いやることもある危険人物」

 

「なんだよそれッ! 確かにちょっとは迷惑かけてるかもだけどさ!」

 

「それに、報酬次第じゃ寝返ることも多々あり。魔法少女に敵も多いから、関わって良いことはないわよ」

 

「うぐっ…」

 

「暴走は…確かに…」

 

「既に環さんも経験済みじゃない。ほら、返してらっしゃい」

 

「そう言われても私…。どうしよう…」

 

 

 ……この場面だけ見ると、子犬を拾ってきた娘と、返して来いと言う母親って感じだ。

 よくアニメやドラマとかで見る展開だな。

 ちょっと面白いと思ってしまったのは、心の奥底に沈めておこう。

 

 

モ、モキュ(返しちゃだめだよ)

 

「そうだよね、フェリシアちゃん何も知らないし心配だもん…」

 

「オレはやだぞ! だって、ごはんー!」

 

「ごはん?」

 

「あ、私が作ってあげるって」

 

「また、随分と安いのね…」

 

「あの、私がフェリシアちゃんと一緒に居ますから」

 

 

 いろはちゃんが心配そうに言うもんだから、やちよさんも少し考えを改めようとしたが……

 続く言葉が、やちよさんの考えを改めようと言う意志をかき消した。

 ……そろそろ、会話に入りたいんだけどなぁ。

 

 

「さっすが、いろは! 偏屈ババアとは違うな!」

 

「…こいつ」

 

「ちょっ、フェリシアちゃん!」

 

「やちよはババアじゃないよ! ギリ未成年だよ!」

 

「はぁ? 誰だよオマエ…」

 

「最強の魔法少女、由比鶴乃とはわたしのことだー!」

 

「はっ、知らねーし。どうせ自称最強だろー? 結翔と同じだよ」

 

「ぐふぅ!?」

 

 

 え? 

 なんで? 

 ……いや、まだあの頃は自称してたけど。

 今、言わなくても良くない? 

 思わぬ所でボディーブロー喰らった感じなんだけど。

 

 

 心が痛い。

 やだもう帰りたい。

 

 

「…………はぁ、飛び火して被害者が出てるじゃない」

 

「ゆ、結翔さん大丈夫ですか!?」

 

「完全な死角からの攻撃だったわね」

 

 

 ため息を吐くやちよさん。

 心配するこころちゃん。

 鼻で笑うようにこちらを見るまさら。

 

 

 三者三様の反応を見せる中、俺が立ち直るまでに、鶴乃とフェリシアは喧嘩勃発の一歩手前までいってた。

 何とかいろはちゃんとやちよさんが仲裁して事なきを得たが、その後はすぐに二人一組で行動する事が決まった。

 

 

 それと、やちよさんはウワサを広めている存在にあったらしい。

 使い魔ではないが、ウワサを広める為に存在する事は確かとの事。

 見つけたら連絡を欠かさないように、そう言って別れた。

 

 

 ウワサの事は、まだやちよさんも掴みきれてなかったようだ。

 ガッカリしたいがそうもいかない。

 時間は残り少ない訳だし、急がなければ何が起こるか分からない。

 

 

 念の為に、ウワサに既に巻き込まれているであろう三人を一組にして行動させて、俺とまさら、やちよさんと鶴乃で行動する事になった。

 

 

「……ねぇ、結翔? 私は、深月フェリシアとこころを一緒に居させたく──」

 

「居させたくない…だろ? 分かってるよ、そんな事。だけど、お前の我儘聞ける程悠長な余裕はねぇ。それに、アイツは──フェリシアは悪い奴じゃねえよ」

 

「…そう、言い切れる根拠は?」

 

「……アイツは両親を魔女に殺された──と思い込んでる」

 

「どういう事?」

 

 

 ペラペラ喋りたくないが、まさらを納得させる為だ。

 ……悪いな、フェリシア。

 

 

「アイツの両親の死因は火事による焼死。ようは事故死だ。そして、原因は──フェリシアのイタズラ。構ってもらう為にしたイタズラで両親が死んだ。そんな現実に子供が耐えられると思うか?」

 

「思わない…わね」

 

「だろ? そして、丁度良くその場にキュウべえが現れて、願いとして記憶を消した。その代わりに、都合のいい記憶を差し込んだ」

 

「それが、魔女に殺されたと言う記憶?」

 

「正解」

 

「待ちなさい。それが真実だとしても。何故、それを貴方が知ってるの?」

 

「何でって、そりゃあ──」

 

 

 記憶を消したショックで気絶して、焼け死ぬ寸前だったアイツをマンションから助けたの──俺だしな。




 次回もお楽しみに!

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 無駄なネタは書くけど、無駄な文章は書かない。
 散りばめられた伏線はキッチリ回収する系投稿者です!(覚えてる範囲で)
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