無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

27 / 81
 フェリシア「前回までの『無少魔少』。結翔のにーちゃんが倒したウワサの話をしたり、いろはやこころ、オレがうわさに巻き込まれたかもって話だったな」

 結翔「おぉ。フェリシアお前、やれば出来るじゃないか!後でアイスをやろう」

 フェリシア「やりぃ!あ……オレ、今日の飯代ない」

 結翔「しょうがねぇなぁ……ほら、一万」

 まさら&こころ『……あ(察し)』

 鶴乃「色々と思う所はあるけど、二十三話を楽しんでどうぞ!!ふんふん!」


二十三話「復讐の先に虚無はある」

 ──こころ──

 

 私といろはちゃんとフェリシアちゃんは三人で、近くにあったデパートに来ていた。

 ウワサがいるうわさを調査する為だ。

 勿論、やる事は聞き込み。

 

 

「私も、聞き込みとか苦手なんだけどね」

 

「わ、私もかな……」

 

「聞き込み?」

 

「最近聞くようになった噂はありませんかって聞くの」

 

「なんだよ、戦うんじゃないのかよ。面倒だし、オレはいいや。パスで」

 

「パスなんてありなの!?」

 

 

 いろはちゃんの声が人が疎らなデパート内に響く。

 聞き込みやすさなら、人が多いほうがいいが。

 私たちのような聞き込みが苦手な部類の人間には、疎らな人盛りが丁度いい。

 結翔さんやまさらだったら別なんだろうけど……

 

 

 でも、流石に二人だけじゃ時間が掛かる。

 フェリシアちゃんに手伝って貰えないのは、先を見越して考えると問題だ。

 

 

「それにオレ、オマエに付いてくって言ったけど、手伝うとは言ってないしなー」

 

「それはそうかもしれないけど…」

 

「うわさに巻き込まれてたら、大変なんだよ?」

 

「んなのへーきだよ。別に大したこと起きねーって。…あぁ、ノド渇いた…」

 

「………………」

 

 

 うわさを信じていないフェリシアちゃんは、あまりうわさの調査に乗り気じゃないらしい。

 困った様子で、いろはちゃんが私の方を見る。

 多分、何が良い案がないか聞きたいんだろう。

 私が思うに、彼女は傭兵、報酬を貰って動く。

 

 

 だったら、追加の報酬を渡せばいい。

 馬を走らせるために、目の前に人参をぶら下げるように。

 

 

「ジュース買ってあげよっか? 今なら、アイスだって付けちゃうよ?」

 

「マジで!?」

 

「じゃあ、手伝ってくれる?」

 

「もちろんだ! ──っ!? ………………」

 

「フェリシアちゃん?」

 

「昨日の魔女だ…!」

 

 

 昨日の魔女…? 

 私が言葉の意味を探しあぐねていると、フェリシアちゃんは既に走り出していた。

 ……考えるのは後にしないと、今はあの子を追いかけなきゃ。

 

 

 一人にするのは……不味い気がする。

 

 

「いろはちゃん! 行こう!」

 

「で、でも……」

 

「魔女は放っておけないし、フェリシアちゃんだって放っておけないでしょ?」

 

「…分かった!」

 

 

 先を急いでデパートの外に出たフェリシアちゃんを追う。

 まだ遠くには行ってない、数メートル先に見える小さい背中を頼りに私といろはちゃんは走る。

 昨日も見た参京区の街並みを駆け抜けて、ようやくフェリシアちゃんが入ったであろう魔女の結界を見つけた。

 

 

「……変身して、早く行こう!」

 

「うんっ!」

 

 

 二人揃って魔法少女に変身し、結界の中に入る。

 ガラッと視界に映る風景が切り替わり、現実とはかけ離れた異界に足を踏み入れた。

 少し目を細めて奥を見やると、魔法少女に変身して大きなハンマーを振り回しているフェリシアちゃんが居た。

 

 

「∞εζπЖαγ!!」

 

「りゃああああ!! ガンガンガーン!」

 

 

 ハンマーで叩き潰されている使い魔は、形容し難い容姿をしている。

 人差し指を立てた黄緑色の左手の先に鍵の付いた輪っかを掛けて、胴体であろう部分は手に突き刺さったピンセットで何故かズボンを履いている。

 

 

 そんな、意味不明な使い魔に、フェリシアちゃんは一人でハンマーを振り続ける。

 暴れ牛を連想させる角の付いた二股帽子を被り、帽子の上にゴーグルも掛けいる。

 全体的に薄紫色で構成された魔法少女の衣装は、彼女の成長しきってない心を表してるようだ。

 

 

「≠∫∫∞⊇∂-β㊀∴-!?!?」

 

「じゃまぁ!」

 

「ふぁっ!」

 

「いろはちゃん! フェリシアちゃん! ちゃんと周りを見ないと!」

 

「ずりゃあッッ!」

 

「聞こえてない…!」

 

 

 ドンドンと爆発したかのような音を立てながら、フェリシアちゃんは使い魔の数を減らしていく。

 ……減らしていくスピードは良いが、振動が周りに響くレベルで強い攻撃の所為で、上手く使い魔と戦えない。

 多分、昔の私だったら簡単にやられていただろう。

 

 

 結翔さんに鍛えてもらっていて良かったと、久し振りに実感する。

 

 

「⊥∀β≠㊀ω§!!」

 

「りゃあっああああ!」

 

「──っ!? フェリシアちゃんの攻撃が…!」

 

「下がって! いろはちゃん!!」

 

 

 勢い余ったハンマー攻撃が、いろはちゃん当たる寸前。

 ギリギリの所で私のカバーが間に合い、可変型トンファーでハンマーを受け止める。

 全体で受け止めるように、肘を曲げて腕を立てて構えたのに、それでも私は少し後ずさった。

 

 

 重い一撃は、私自身の固有の能力が無ければ、痛いダメージだっただろう。

 受け止めた可変型トンファーから響く揺れで、私の腕はジンジンと痛む。

 

 

「くっ!!」

 

「こころちゃんっ!」

 

「あっ…! ご、ごめん! 大丈夫か!?」

 

「ダメだよ、フェリシアちゃん。魔女を倒したい気持ちは分かるけど、冷静にならないと…。誰かと一緒に戦うなら、尚更だよ。もっと周りを見ないと、大切なものを傷付けちゃうよ…?」

 

「………………」

 

「フェリシアちゃん。こころちゃんの言う通りだよ? 周りを見ないと…もっと評判が悪くなっちゃうよ?」

 

「仕方ねぇじゃん…。仕方ねえじゃん!!」

 

 

 私といろはちゃんの言葉に、フェリシアちゃんは声を震わせて返した。

 その声に含まれる感情は、きっとフェリシアちゃんのような女の子が持つようなものではない……ドス黒いものだ。

 

 

「コイツが…コイツが…。コイツが父ちゃんと母ちゃんを殺した魔女かもしんねーじゃん!」

 

「それって、この結界の魔女が…」

 

「わかんねぇ…。それは、わかんねぇけど。どの魔女が殺したか知らねえけど…! でも、知らねえから! ずっと本気じゃなきゃダメなんだ! 。オレは逃がさねえ…見つけた魔女はぜってーに」

 

「…あの、ごめんなさい…! 私、フェリシアちゃんのこと知らずに」

 

「……私も、ごめんね」

 

 

 いろはちゃんは謝った。

 私も謝った。

 だけど、私は──謝りたくなかった。

 その行為は間違ってると言いたかった。

 

 

 だけど、魔女の結界内で話をしている余裕はない。

 時間も余りに余ってる、そんな状況ではないのだから。

 

 

「フ──!」

 

「フェリシアちゃん。一旦落ち着いて、一緒に魔女を倒そう」

 

「……わかった」

 

「いろはちゃんも。話は、外に出てから」

 

「うん」

 

 

 その後、魔女は冷静になったフェリシアちゃんと私といろはちゃんの三人で倒す事が出来た。

 結界が解けると、私は近くに転がっていたグリーフシードを拾い上げて、二人の元に戻る。

 

 

 空気は、どこが重い。

 先程の言葉の所為だろう。

 …疑う必要は無いが、もし先程の言葉が本当なら、彼女は今まで一人で生きてきた事になる。

 

 

 寂しかったんじゃないか? 

 苦しかったんじゃないか? 

 辛かったんじゃないか? 

 一人で……怖かったんじゃないか? 

 復讐の憎悪だけを糧に、生きてきたんじゃないか? 

 

 

 グルグルと回る思考を一旦放り捨て、沈黙していたフェリシアちゃんに話しかける。

 

 

「フェリシアちゃん、さっきの魔女は……」

 

「分かんねぇ…。でも、こうやって倒してたらきっと知らないうちに倒してる。父ちゃんと母ちゃんの仇…。ま、もう倒してるかもしんねぇし、倒してねえかもしんねぇけど…」

 

「そんなの、終わりがないよ…」

 

「いいんだよ別に。オレはそのために魔法少女やってんだから…」

 

 

 フェリシアちゃんの言葉を聞いて、私は結翔さんと少し前にした会話を思い出した。

 

 

 ──────────────────────

 

 ある日の、夕方。

 結翔さんとまさらが見ていた特撮番組の中で、復讐の為に戦うヒーローを見た。

 私は、少しだけ気になって、結翔さんに復讐について聞いた。

 

 

「結翔さんは、復讐ってどう思います?」

 

「…人を殺す事や、人を殺そうとする事は許せないけど。誰かを殺したい程憎むって気持ちは……分からなくはないかな。復讐は──言わば当事者に許された特権みたいなものだよ。やるも良し、やらないも良し、その人次第さ。まぁ、良い事ではないけどね」

 

「ですよね…」

 

「………………復讐の先にあるのは虚無だ。虚無だけが存在する」

 

 

 虚無がある、虚無が存在する。

 そんな矛盾しているような事を言う結翔さんは、至って真面目な表情だった。

 まるで、それを見たかのような表情だった。

 気になった私は、彼の言葉を鸚鵡返しした。

 

 

「虚無だけが存在する?」

 

「あぁ。復讐は、自分に残っていた全てをすり減らして、犠牲にし続けて行うものだ。すり減らして、犠牲にし続けて、最終的に復讐を達成しても、残っているものは何もない。何も残らない。復讐ってのはそう言うものだ」

 

「……見た事、あるんですか?」

 

「あるよ…一度だけね。最悪の未来だった」

 

 

 そう言う、結翔さんの表情は苦虫を噛み潰したようなものだ。

 ……私は、それ以上なにも言わなかった。

 言いたく…なかった。

 

 

 ──────────────────────

 

 言いたい言葉が幾つも出てきては沈んでいく。

 それを何度か繰り返し、一つでた言葉は在り来りなものだった。

 

 

「何かあったら、言ってね?」

 

「………………」

 

「なんで、オマエらが悲しい顔すんだよ! これはオレの事だし関係ねーだろ! ほら、噂、探しに行こーぜ」

 

 

 私の言葉をフェリシアちゃんは聞き流した。

 ……お節介過ぎたかな? 

 でも、私はそれを言いたいと思ったんだ。

 だったら、間違いだって言う事はないだろう。

 

 

「手伝ってくれるの?」

 

「そりゃ、だるいけどさー。ジュース買ってくれるんだろ?」

 

「………………」

 

 

 フェリシアちゃんの言葉に、いろはちゃんは少し考えるように、一瞬目を閉じた。

 同じことを考えていると思う。

 出来るだけ、何かしてあげたい…と。

 

 

 勝手な思い込みかもしれないけど、それが堪らなく嬉しくて、私は早く行こうと声に出そうとすると……

 

 

「それじゃあ──」

 

「あっ、なんだアイツ!」

 

『へ?』

 

「あ、あれってやちよさんが言ってた…!? 連絡、入れておかないと!」

 

「わ、私も、結翔さんに…!」

 

 

 突然、驚いたようなフェリシアちゃんの声が重なった。

 驚いている彼女が指さす方向を見ると、そこには人型の使い魔擬きが居た。

 ……もしかしなくても、うわさを広めているウワサだ。

 私といろはちゃんは急いで、結翔さんに連絡を入れる。

 

 

 数分の内に返信が来て、すぐに向かうとの旨だった。

 

 

「おい、あれ使い魔か?」

 

「やちよさんも言ってたけど、違うような気がする…。結界を持ってないし…」

 

「じゃあ、なんなんだよ」

 

「わ、分からないよ…」

 

「あっ……」

 

「あんだよ?」

 

「静かに…何か話してる…!」

 

 

 少しだけうわさを広めているウワサに近付き、耳を澄ませる。

 そのウワサが話していた内容は──私たちが求めていたものだった。

 

 

 ──────────────────────

 

 アラもう聞いた? 誰から聞いた?

 ミザリーウォーターのそのウワサ

 

 むかし懐かしママチャリの、荷台に乗った保冷箱

 

 おじちゃん1杯くださいなって

 貰った水を飲んだなら

 ゴクゴクプハーッって気分は爽快、元気も一杯!

 

 けれどだけども、それはまやかし

 飲んだ水はヤバイ水!! 

 

 24時間経っちゃうと

 水に溶けた不幸が災いを引き起こすって

 参京区の学生の間ではもっぱらのウワサ!! 

 

 モーヒサーン!

 

 

 ──────────────────────

 

 ミザリーウォーターのウワサ。

 多分それが、私たちが巻き込まれたウワサの名前だ。

 24時間経っちゃうと……この言葉から察するに、降ってきていた紙はカウントダウンのつもりだろう。

 

 

 当たって欲しくない予想が当たってしまった。

 

 

「おい…これって…」

 

「うん…。私たちが飲んだ水のことだ…」

 

「あの、おっちゃん…悪いヤツだったのか…!?」

 

「悪い人って言うか、うわさの一部でしかないんだと思う…。幻みたいなものだと思う…」

 

「わけわかんねぇよ」

 

「紙の数字が時間なら…私たちに残された時間って。あと、5時間もない」

 

 

 不安そうに言ういろはちゃんに対し、フェリシアちゃんは呆気らかんと返した。

 

 

「ってもまぁ、十分不幸な目にはあったし。今さらどうでもいいけどな」

 

「えぇ…」

 

 

 困惑の色を見せるいろはちゃんは、黙りこくって考え始めた。

 不幸の内容を考えているのだろうか。

 ……安直に言えば、大切なものをが傷付くとか、壊れるとか。

 はたまた、私たち自身が死んでしまう…とか。

 

 

 不幸の内容は五万とある。

 考える余裕を持つくらいだったら、ウワサを消すために動く方がいいだろう。

 

 

「いろはちゃん。ウワサが言っちゃうよ?」

 

「あ、追いかけないと!」

 

「えぇ、追いかけんの?」

 

「何か詳しい話が聞けるかもしれないから」

 

 

 そう言って、うわさをを広めているウワサを追おうとした途端、突然現れた黒いローブの不審者に腕を掴まれた。

 咄嗟に後ろを見ると、いろはちゃんもフェリシアちゃんも腕や肩を掴まれていた。

 

 

「行かせない…」

 

「だ、だれ…!?」

 

「こい…」

 

「ひゃっ!」

 

「わっ! おい、はなせよ!!」

 

 

 警戒が薄すぎたのかな……まさか後手に回るなんて。

 どうにかして掴まれた手を退かしたいけど、妙に力が強くて退かせない。

 路地裏の方に連れ込まれると、ようやく腕の力を緩めたので変身して力づくで腕を退かす。

 

 

「こんなところに引きずり込んで何ですか! 通して下さい!」

 

「戦うつもりはない…」

 

「どけっつってんだろコノヤロー!」

 

「ちょっと、待って!」

 

 

 黒いローブの二人は魔法少女だ。

 フェリシアちゃんはすぐに分かったのか、ハンマーを黒いローブの魔法少女たちに振りかざした。

 二人は受ける体制をとることも出来ず、吹き飛ばされる。

 

 

 確かに、フェリシアちゃんは強いが、あんなにあっさりと負けるほど強いのか? 

 今の攻撃だって、結構大振りだったから、受ける体制をとるのは難しくなかったと思うが……何か引っ掛かる。

 

 

「くっ…………」

 

「おい、いろはにこころ! こいつらめっちゃ弱いぞ! このままやっつけて行こうぜ!」

 

 

 吹っ飛ばされた黒いローブの魔法少女を見て、フェリシアちゃんは笑顔でそう言った。

 だけど、それに続けるようにどこからか現れたやちよさんが、その言葉を否定した。

 

 

「その必要はないわ。今さら行ったところでアイツには追いつけないから」

 

「やちよさん…」

 

「連絡を受けて来てみたら、なんか変なのに捕まってるね」

 

「そうだよ、いろはちゃんたちに何したの!?」

 

「……………………」

 

 

 やちよさんに続くように、結翔さんと鶴乃さん、まさらが私たちのもとにやって来た。

 

 

 ──結翔──

 

 まさらと一緒に連絡を受けた場所の近くに行くと、やちよさんと鶴乃に会い、何故か少し離れた路地裏にいるこころちゃんたちを見つけた。

 そして、近くには黒いローブの魔法少女が二人。

 

 

 明らかに怪しい。

 恐らく、邪魔をしたのはコイツらだろう。

 

 

「七海やちよ、由比鶴乃、環いろは、藍川結翔…ちょうどいい…」

 

「何がちょうどいいの! はっ。もしかして何かわたしたちに言いたいことが!?」

 

「その通り…」

 

「っていうことは…。あの変なヤツに手を出すなってこと!?」

 

「その通り…」

 

「それで、話し合いをしたいっていうこと!?」

 

「全て言われてしまった…」

 

「鶴乃ちゃんすごい…」

 

「えっへん!」

 

「…いや、コントじゃないんだからさぁ」

 

 

 一連のやり取りに苦笑を零しながらツッコミを入れる。

 鶴乃のよく回る頭は凄いと尊敬できるが、場の雰囲気を緩めてしまう時があるのが玉に瑕だ。

 現に、まさらはいつもの真顔を少し崩して、微妙な表情をしている。

 

 

 やちよさんは、ため息を吐きながらも話を続けた。

 

 

「…それで、何を話し合いたいの?」

 

「これ以上、うわさに手を出すのは止めて欲しい」

 

「そう言われても理由がまるで見えないわ。これじゃ、話し合いっていうよりも、一方的にそちらの条件を呑めと言われているようだわ」

 

 

 やちよさんの最もな言い分に、黒いローブの魔法少女は、先程から続く感情が見えない声で返す。

 

 

「その通り…。うわさを消しても良いことはない、手を退いて欲しい…」

 

「…そりゃあ無理だろ。被害者が現に出てる。今の所、死者はいないが、何時ででも可笑しくない状況だしな。あと、お生憎さまだが、姿をローブで隠したやつの話を聞く質じゃないんだ」

 

「…………。今回のミザリーウォーターのうわさも、ですか?」

 

「そうだ…」

 

「でも、私たち…。もう巻き込まれてるんです。勝手に不幸になれって…酷いと思います…」

 

「どうせ、このままだとあんたたちが守ってるウワサにわたしたちが辿り着くって、そう思ってるんだね!? だから急に出てきたんでしょ!?」

 

「………………」

 

「にひっ」

 

 相変わらず、鶴乃は怖いな。

 カマかけやがった。

 こっちが数的有利だから、取れる情報を根こそぎ盗るつもりなんだろう。

 本当にどこまでも頭が回る奴だな。

 鶴乃みたいな奴ほど、敵に回したくはない。

 

 

 全く持って、味方でよかったと思うよ。

 

 

「…手を退く気はないんだな…」

 

「…フェリシア。耳を貸しなさい…?」

 

「あ? 何だよ…?」

 

「そこ、何をコソコソしている…」

 

「別に、あなたたちを潰そうって話してただけよ」

 

「どう足掻いても、争いは避けられないか…」

 

 

 そこからは、一方的な戦いだった。

 数では七対五。

 だが、実力だけで言えば、強くなったいろはちゃんやこころちゃんの足元にも及ばない。

 ぶっちゃけると、途中から「俺一人で相手をしてもどうにかなるのでは?」と思っていたくらいだ。

 

 

「へへっ、このオレに勝てると思ったか!」

 

「くっ…分かっていた…。だからこそ交渉しようと」

 

「交渉の定義を辞書でちゃんと引いてくるといいわよ。交渉にすらなってなかった」

 

「…そこでだけどさ」

 

「なんだ…」

 

「オレがそっちについたら形勢逆転だと思わねー?」

 

「──っ!? フェリシアちゃん!?」

 

 

 フェリシア? 

 一瞬、やちよさんの方を見やる。

 さっき、コソコソと話していたのは、コレと理由がある。

 勘でそう思ったからだ。

 

 

 …だって、フェリシア一人がそちらについた所で、戦力差は変わらない。

 路地裏の狭さでハンマーを相手するのは辛いが、伊達に死線はくぐってない。

 タイマンをはったら秒で蹴りがつくだろう。

 

 

(フェリシアに追加報酬を頼んだ。敵の場所を探ってもらうわ)

 

(了解)

 

 

 テレパシーで短いを会話をする。

 単純な作戦だが、悪くない。

 問題があるとすれば、報酬次第でアイツが本当に寝返る可能性がある事だ。

 

 

 あんまり、フェリシアとは戦いたくないんだよな……

 その時はその時、なってから考えればいいだろう。

 

 

「どういうことだ…」

 

「それなりの報酬があるなら寝返ってやるって言ってんの」

 

「フェリシアちゃん! どうして、さっきまで一緒に──」

 

「何言ってんだ? オレは傭兵だぞ」

 

「…だからって……」

 

「…分かった。それなりの報酬は用意する…」

 

「いーねー! つーわけで、オレは今からこっち側! 悪いないろは、こころ」

 

「………………本気なの?」

 

「………………本気なんだよね?」

 

 

 ……うわぁ、演技だって言い辛い。

 チラッとまさはの方を見やると、まさらもなんとも言い難い表情だった。

 今日はよく表情筋が仕事をするな、とでもジョークを言えば場は和むだろうか? 

 

 

 そんなことを考えている間に、一度撤退することが決まった。

 ……だが、撤退すると言うのに、鶴乃がどこかに消えている。

 あぁ、なるほど。

 もしもに備えて、鶴乃に尾行させてるのか。

 だったら、本当に徹底してるな。

 

 

 路地裏から戻って少しした後に、フェリシアに追加の報酬で動いてもらったことを伝えると、二人は相当驚いていた。

 ……あと、こころちゃんは俺とまさらに恨みがましい目線を送っていた。

 

 

「……紙が」

 

「4…か。ちょっと、不味いかもな」

 

 

 残り時間は、あまり多くない

 

 

 




 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 感想や評価もお待ちしております!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。