こころ「みんな酷いです!先に教えて貰いたかったですよ!!」
まさら「明らかに芝居がかった口調だったのに気付かなかった方も、悪い所はあると思うわ」
こころ「…そう言われると…何も言えない…」
いろは「私もです……」
まさら「約二名、落ち込んでいるのが居るけど、二十四話をどうぞ!」
──結翔──
案の定と言うべきか、フェリシアは帰ってこなかった。
…信用していなかった訳じゃない。
ただ、アイツは傭兵だ。
報酬が良いなら、そっち側に着くのは当たり前。
しかも、報酬に自分の生活が掛かってるなら尚更だろう。
…だけど、それは俺が居なかったらの話だ。
最近は、魔女が多いお陰で傭兵家業に困ってはいないが、少し前までは魔法少女が増えた所為で魔女が足りず、彼女は報酬を貰えない危機にあった。
報酬が無ければ、明日を越すこともままならない。
フェリシアのそんな状態を、俺が見過ごせる筈もなく。
アイツが払えず滞納していた学費を払い、あまり高くはないがアパートを貸し与えた。
食費に困っていたら、金を渡したし、まさらやこころちゃんが実家に帰っている日には、顔を見にも行っている。
ここまでの事を踏まえると、報酬は恐らく──
「魔女を自由に狩る権利…って所か」
「いきなりどうしたの?」
「フェリシアちゃんの事でなにか分かったんですか!?」
「いいや。…ただの推測だよ」
十中八九当たってるだろうけどな。
今、俺たちは鶴乃の案内によって、フェリシアが行ったであろう場所に向かっている。
鶴乃の尾行方法が屋根伝いだった事に、若干頭を抱えながらも走った。
道中、鶴乃はフェリシアをある場所を境に見失ったと言ったが、俺は別に気にしない。
何故なら、千里眼があるからだ。
ある程度場所さえ絞り込めれば、俺の眼で見つける事は難しくない。
寧ろ、絞り込めただけで上々。
……残り時間は二時間を切っているのだから、油断は出来ないが。
そして、鶴乃が見失った場所まで到達する。
「さぁ、ここから先はあんまり分からないんだけど。場所はかなり絞り込めてると思うよ!」
「えぇ、急いでウワサの場所を突き止めましょう」
「ですね……」
「そうはさせねぇよ」
やちよさんの言葉に、俺が頷いたその時、フェリシアがどこからか現れた。
立ち塞がるような言葉の言い方から察するに、やはりあちら側に着いたらしい。
『フェリシアちゃん!』
「なにしてたの!? ずっと待ってたのに!」
「そりゃ悪かったな」
「演技はお終いにして、私たちと一緒にウワサを倒そうよ!」
「それはできねーな。だって、もう演技じゃねーもん」
「…やっぱり、よほど良い報酬を提示されたってことかしら」
「んまぁ、そんなところだな。ひとりで生きていくには十分なちょー良い条件だからな。それに…これだけあったら誰も裏切る必要ねーし」
視線が俺の方を向く。
…バカなだなぁ、フェリシア。
お前が後ろめたく思う必要なんて、これっぽっちも無いのに。
寂しそうな顔で、悲しみを含んだ目で俺を見るフェリシアは、歳不相応な思いやりが見えた。
甘えられなかった分、甘えればいいのに。
言えなくなってしまった分、我儘を撒き散らせばいいのに。
フェリシアは俺にそれを言おうとしない。
……本当にバカなやつだ。
「所詮はプライドもなにもない報酬第一の傭兵ってことね。一緒に行動すれば見直す点もあると思ったけれど。思いすごしだったようね」
「なんとでも言えよ。敵に何を言われようが、オレは痛くもかゆくもねーから」
「なぁ、フェリシア。…本当に報酬に目が眩んだだけなのか?」
「……………………」
「
「……だよな」
いろはちゃんも、こころちゃんも、鶴乃でさえも違和感に気付いている。
あっちに行ったり、こっちに行ったり、行き当たりばったりな動き。
不自然に思うのは当然だ。
まぁ、うわさを信じていないと言う意味では、動き方は妥当かもしれないが……
それにしたって不自然だ。
「なーんか変な感じ」
「鶴乃さん?」
「フェリシア、自分の状況分かってないんじゃないかな?」
「やっぱり、そうなんですかね?」
「うん、人のこと言えないけどさ。行き当たりばったりで何も考えてないと思うんだよね」
「はい、今回のうわさのことちゃんと理解出来てないと思います」
「何、ごちゃごちゃ言ってんだよ」
小さい声で喋っていた、いろはちゃんとこころちゃんと鶴乃の三人に、フェリシアは低い声で喋りかけた。
頑張って低い声を出しているのだろうが、全然怖くない。
こころちゃんやまさらが怒っている時の方が万倍怖い。
…まさらなんて、下手を打てば包丁が飛んできそうな勢いなんだもん、怖いに決まっている。
俺が違う事を考えてる間に、フェリシアは変身を済ませて、ハンマーをこちらに向けながら叫んだ。
「そっちからこねーならオレからズガンといくぞ!?」
「相手は、こう言ってるけど?」
「フェリシアちゃん! もう二時間ない間に、本当に不幸になっちゃうよ!? それでもいいの?」
「またそれかよー。今さら不幸になろーがオレには何ともないからな。父ちゃんと母ちゃんが死ぬ以上の不幸なんてあってたまるかよ」
いろはちゃんの言葉に反論するフェリシア。
当たり前の反応だ。
…両親を失う以上の不幸なんて、そうそう転がっていないだろう。
「…私もね、妹がいなくなってるの」
「だから、なんだよ?」
「それはね、私にとっての不幸だよ。でもね、それだけが不幸じゃない。不幸っていろんな事があると思うの。いなくなった妹に何かあるかもしれないとか。やちよさんや鶴乃ちゃん、結翔さんやこころちゃんに何かあるんじゃないかとか…」
「はっ。……オレには家族も仲間もいねーよ。関係ねー話じゃん」
「でも、それだけじゃない! ずっと変わると思うの自分にとって大切なことって。フェリシアちゃんにはないの…? 今、大切なものって…。ねぇ、お願い、ちゃんと…ちゃんと考えてみて…」
そっと、フェリシアは目を伏せる。
一瞬、こっちを見たのは気の所為……じゃない。
なんだかんだ、ちょっとは思われてるらしい。
「………………ゆい──ぬいぐるみ、とか。牧場で父ちゃんと母ちゃんに買ってもらった…牛の…」
「…それが無くなったら、どうするの…?」
「はぁっ!? や、やだ! あれ、オレの宝物だぞ!?」
「だから、不幸ってそういうことだよ!」
「──っ!?」
「お願いだから、自分から不幸になろうとしないで! もしも、その牛さんが傷付いちゃったりしたら。また、フェリシアちゃんが傷つくことになる…。私、見たくないよ。これ以上、フェリシアちゃんが不幸になる姿なんて…」
「いろは…」
思った以上に、いろはちゃんの言葉はフェリシアの心に刺さったらしい。
変身を解除して、今にも泣き出しそうなうるうるとした瞳で、いろはちゃんの名前を口にする。
俺やこころちゃんの方にも、申し訳なさそうな視線を送っていた。
「ねぇ、だから一緒に!」
「うん…。オレ、宝物を無くしたくねぇ…大切な人も居なくなって欲しくねぇ…。奪うようなヤツの味方にだってなりたくねぇ。これ以上、迷惑だってかけたくねー! だから、いろはたちに付いてく!」
「フェリシアちゃん!」
話が終わると、やちよさんも申し訳なさそうに両親が居ない事を聞いたり、鶴乃とこころちゃんが号泣してフェリシアに抱き着いたり。
色々あったが、フェリシアが敵のアジトまで俺たちを案内することになった。
その道中で、彼女はこう言った。
「サンキューないろは。オレ、お前のお陰でもっと嫌なヤツにならなくてすんだぞ」
くしゃりと笑ったフェリシアはとても嬉しそうで、俺も釣られて笑ってしまった。
誰かが救われた時に見せる笑顔は格別だ。
手を取れたのは俺じゃないけど、フェリシアが救われたのは素直に嬉しかった。
そうして、案内されるがまま着いた場所は参京院教育学園。
「参京院教育学園って。学校がアジトなの?」
「つーか、もうちょい先だな。今日は休みで生徒もいないし入るのはよゆーだろ」
フェリシアはそう言うと、ズンズンと先に進んでいく。
俺たちも、後を追うように先を急ぐ。
「この校庭を越えた先に、地下水路への入り口があって。そこがヤツらの拠点になってるんだ」
「でもさ、ふと思ったんだけど。フクロウ印の給水屋さんを消せばいいんじゃないの?」
「同感ね。昨日も、この時間帯に居たんだから探せば見つからない事もない筈よ」
「オレには言われてもなー。噂のことなんてわかんねーし」
「きっと敵のウワサは出てくるでしょうけど。それは所詮、小物のウワサでしかないわ。うわさを消すなと言ってるいるヤツらの拠点がここにあるなら、恐らくうわさを具現化させている大元のウワサもここに居るはずよ」
「そうですよね。……だとしたら、早く行かないと」
俺たちは、地下水路への入り口へと足を踏み入れる。
薄暗い地下水路はレンガ造りのトンネルのようになっており、コウモリまでも住み着いている。
いろはちゃんとこころちゃんと鶴乃の三人は、少女らしくコウモリに驚き悲鳴を紛いの声を上げた。
「……バレるな、こりゃ」
「…私も、『キャアア!』とか声を上げた方が良いのかしら?」
「いや、良いよ。てか、お前微塵も怖いと思ってないし、近くに来たとしても叩き落とすじゃん」
「……それもそうね」
そんな他愛ない話を繰り広げたあと、俺は先頭に出る。
殿はまさらが居れば十分だろう。
「そこにいるのは、だれだ…」
「だろうも思ったよ」
目の前に現れた黒いローブの魔法少女。
ここが拠点なのは間違いないらしいな。
俺はすぐさま魔法少女に変身して、拳を握る。
戦いは始まる寸前だった。
──まさら──
私に最後尾──殿を任せた結翔は、現れた黒いローブの魔法少女の前に立つ。
黒いローブの魔法少女は、フェリシアを見て少し残念そうに呟いた。
「深月フェリシア…。まさか報酬を自ら捨てるとは」
「へーんだ! オレだって人の宝物奪うようなヤツにはなりたくねーからな!」
「どうあっても、退くつもりはないんだな…」
「えぇ、当然でしょ? こちらも譲る気は一切ないわ。あなたたちの素性も目的も知らずに譲るなんて。そんな都合のいい話は有り得ないでしょう?」
「……………………」
七海やちよにそう言われた黒いローブの魔法少女は、考え込むように黙り込んだ。
私も、彼女の言う通りだと思った。
素性も目的も何も知らないのに、退いて不幸になりなさいなんて、誰が聞き入れるのだろうか?
普通の思考を持っている者なら、聞き入れるなんて有り得ない。
黒いローブの魔法少女もそれが分かっているのか、重いため息吐いてから騙り始める。
「対象者以外には公言するのは控えるように言われているが、不毛な争いを避けられるのなら言わなくてはならない…」
「巻で頼むよ。こっちも、時間が残ってないんだ」
「あぁ…。………………。…私たちはマギウスの翼だ」
「……マギウスの翼…ねぇ」
「私たちの上に立つマギウスの目的を果たすため、彼女たちの翼となる集団のことだ。その中でも私たちは黒羽根と呼ばれている」
「……んで、その目的って言うのは?」
訝しげな様子で聞く結翔に、黒羽根と呼ばれる魔法少女は怯える様子もなく話を続けた。
怯えてないように見えるのは……感情を押し殺しているだけだろうが……
虚勢を張るのは上手いらしい。
「…魔法少女を救うこと。マギウスは、この神浜市で魔法少女を呪縛から解放する。私たちはその助力となるため活動している。魔法少女解放のためにもうわさを消されてはならない」
「魔法少女を解放するってどう言うことですか?」
「それに、うわさを守れば成立するって理屈も分からないわ」
「それは……」
口篭る黒羽根。
呆れる、呆れるしかない。
理屈も分からずに手伝うなんて、何の意味があるんだ?
何か意味があるのか?
全く持って意義を感じられない。
「…お前ら、それすら分からずに手伝ってるのか?」
「………………」
「なに、チンタラしてんだよ!」
「くっ……」
黒羽根が黙っていると、見知らぬ赤髪に緋色の瞳を持つ魔法少女が乱入してきた。
乱入してきた魔法少女は槍を片手に、黒羽根を力技で倒し、私たちに向かって言い放つ。
「相手のご高説なんざ聞いてる暇あるのかい? 残りあと…。おっと…。……ちょうど1時間。それもご丁寧にタイマーで刻んでくれるらしい。会報だかなんだか知らないけど、先にやることがあんだろ?」
「あなた、佐倉さん!?」
「途中で、アンタらを見かけて追いかけてきて正解だな」
「くっ…お前は…」
「悪いけど、あたしはコイツらみたいに、余裕をぶっこくつもりはないんでね。話なら、ウワサとやらを片付けてからにさせてもらうよ」
「戦わざるを得ないか…」
「話が分かる奴は好きだよ」
そう言うと、黒羽根の一味がぞろぞろと現れ始め、行く手を遮るように立ちはだかる。
後ろには居ないから、加勢するべきか?
「結翔」
「みんな、変身だけはしとけ。黒羽根のヤツらは俺一人でも十分。魔力消費と体力の消耗はこのあと痛いからな。あと、悪いけど、佐倉さん一緒に戦ってもらえる?」
「本当なら断りたい所だけど、今回はそうもいかないからね。ひとつ、よろしく頼むよ」
そう言い終えると、佐倉と言われた魔法少女と結翔は十数人の黒羽根相手に、多対一の状況で戦い始める。
結翔は素手で、黒羽根の攻撃方法は様々だ。
鎖を使った攻撃が主だが、それ以外にも剣や鎌、鉤爪のような物も使っている。
それを相手に、結翔は素手で相手をしている。
ハッキリ言って、相手に勝ち目はない。
全ての黒羽根をほぼ一撃で倒し、挙句彼女たちの攻撃は一切が当たらず、受け流されるか躱される。
「固有の能力を使ったなら別だが、お前たちがそれをしない限り俺には勝てないよ」
襲い掛かる黒羽根を一人づつ無力化していく。
剣を振られれば、一度目の蹴りで剣を折り、続く二度目の蹴りで相手を吹き飛ばす。
鎌を振られれば、一旦避けて空振りさせ、相手が二撃目に入る前に腹に掌底を入れて気絶させる。
鎖を投げつけられれば、投げられた鎖を掴み無理矢理引き寄せて、相手を地面に叩きつける。
一瞬で意識を刈り取り、痛みを極力感じさせないようにしているのは、彼なりの優しさなのだろう。
……そして、最後の一人となった黒羽根が掠れる声で結翔に問い掛けた。
「魔法少女の解放、藍川結翔ほどの魔法少女なら知っている筈だ、その意味を」
「…………知ってるよ。だけど、俺はウワサで誰かを犠牲にしてまで、救われたくはない。…それに元々、俺は救いなんて要らない」
どこか吐き捨てるように、結翔は苦虫を噛み潰したような声で言った。
分からない事だらけだった、結翔の事情が、今回の件で余計分からなくなった。
……マギウスの翼には、感謝したくてもしたくない。
黒羽根を全て倒し終えたあと、私たちは奥へと進んでいく。
──結翔──
薄暗い地下水路の奥へと進むと、大きく開けた場所に到着した。
大元のウワサがあるかと思って踏み込んだが、そこに居たのは白いローブを被った魔法少女が二人居るだけだ。
「聞こえてましたよあと1時間ですってね」
「聞こえてたねあと1時間だって」
「ねー」
「だけどウチらには関係ない。ここで足止めさせてもらうから」
「そのままご不幸になられて辛酸をお舐めくださいませ」
「ねー」
「あなたたちの目的のために…ですか…?」
「というよりも、マギウスのため、全魔法少女のためにでございます」
何とも特徴的な喋り方だ。
その特徴的な喋り方を使って、俺に素性がバレないかとか考えないのだろうか?
いや、バレてもいいと思ってるのか?
何とも言えない複雑な気持ちになっている俺を他所に、鶴乃が白いローブの二人に向けて叫んだ。
「何が解放かなんてわからないけど、人の不幸の上に成り立つ解放なんてわたしはいらないよ!」
「無知な者には理解できる問題ではございません」
「静かにウチらがすることを見守ってろって感じだよね」
「ねー」
「誰が見守るかってんだ。どうせ、こっちの言葉なんざコイツらには通じない。さっさとやっちまおうぜ」
「へへっ、オレもそう思ってたところだ時間もないもんな!」
「そうだね、先を急ごう」
「だね。私たちの時間も余裕がある訳じゃないし」
「どうせコソコソ姿を隠すような連中よ。大した相手じゃないわ」
…それがそうとも限らないんだよな。
一人一人は別にそうでも無いが。
二人揃うと厄介この上ない。
しかも、この開けた空間は音が良く響く。
アイツらの為に用意されたステージと言っても過言じゃない。
参った、そう言いたくなる気分だ。
俺の魔眼と、あの二人の攻撃方法は死ぬ程相性が悪い。
「あら、姿を晒すことぐらい造作もないことでございます」
「ウチらを黒い連中と一緒にして欲しくないよ」
「ねー」
そう言い終えると、二人は白いローブを脱ぎ捨てる。
出てきたのは瓜二つの少女。
同じ茜色の髪を持ち、苺色の瞳を持っている。
一人は幅広のポニーテールで、もう一人は髪を纏めた根元から分かれているツインテール。
背丈も殆ど一緒で、唯一違う所があるとすれば、スレンダーな体型かグラマラスな体型かの違いだ。
グラマラスな体型で髪を幅広のポニーテールにしているのが、双子の姉である
スレンダーな体型で髪を纏めた根元から分かれているツインテールのしているのが、双子の妹である天音
「マギウスの翼、白羽根。天音月夜にございます」
「マギウスの翼、白羽根。天音月咲だよ。どうぞ、ウチの奏でる音色に」
「酔いしれてくださいませ」
独特な喋りを終えると、二人は同時に笛を持ち構える。
…急いで警告しないと不味いな。
「…みんな! ここはアイツらのフィールドだ。気を付けろ!」
「流石、結翔様でございます」
「でも、ここに来た時点でもう遅いんだよ?」
「ウワサに巻き込まれた奴らは走れ!! 奥に行けば勝ちだ!!」
演奏を始める前に行かせないと。
時間の切迫具合から、俺はそう叫んだ。
すると、ウワサに巻き込まれている四人は走り出す。
天音姉妹は歯噛みしながらも、俺から目を離さない。
「行かせていいのかよ?」
「結翔様から目を離す方が危険でございます」
「それに、ウチらをだけが相手なんて言っないし」
『ねー』
二人が声をそろえると、黒羽根がぞろぞろと出てくる。
流石に、二人で空いてする訳ないよな。
「……やちよさん、鶴乃、まさら。三人は黒羽根の対処を」
「二対一よ、なんとかなる訳?」
「何とかしますよ。それより、ウワサにあの四人を届けないと」
「分かったよ! 結翔!!」
「面倒ね…分かったわ」
三人をフォローに向かわせて、俺は二人と向かい合う。
ぶっちゃけ、未来視の魔眼があっても、反響した音を避けるなんて非現実的な無茶だ。
音を防ぐだけなら耳を塞いでも良いが、そしたら武器が持てないし攻撃もし辛い。
「さて…どうするかな」
「…今だったら、まだ間に合うでございます結翔様」
「マギウスの翼に入ろうよ、結翔くんだったらマギウスも歓迎してくれるよ?」
「…散々言っといてそれかよ。言っとくけど、お前たちに手を貸すつもりはない。確かに、お前たちは俺が守るべき大切だけど、お前らがやってることは見過ごせない。犠牲の上に成り立つ救いなんてまやかしだ、俺はそんなの望んでない。俺は、俺なりのやり方で、みんなを救うために──みんなを守るために戦ってるんでな」
彼女たちの誘いを断り、俺はいつものグロックと西洋剣を魔力で編み構える。
二人も、俺を勧誘するのは諦めたのか、笛を構え直す。
静止で一気に決めるか?
いや、黒羽根からの攻撃もあるから、無闇に魔眼を使うのは控えるべきだ。
暗示の魔眼や心転身の魔眼も、今の状況では意味が無い。
混乱させることは出来ても、決着を簡単に付けることは不可能だ。
そうして、俺が考えている間に、彼女たちの演奏が始まった。
反響して飛んでくる音は、当たるだけで体を痺れさせ、脳に直接響き渡る。
音の効果は絶大で、視界が揺れるような錯覚が起き、まともに立っていられないし、思考も上手く纏まらなくなった。
フラフラと揺れる体を奮い立たせ、目の前に居る二人の奏者を見すえる。
避けるのは困難で、デタラメに避けても次の音が来るため防戦一方になるだけ。
……やりたくない手を取るしかない…か。
グロックを耳と同じ高さまで上げて、左右の耳の高さも平行に合わせる。
天音姉妹も、俺の作戦に気付いたのか、月咲の方が俺に笛を吹きながら接近してくるが関係ない。
引き金はもう──引いた。
甲高い銃声がその空間に響き渡り、次の瞬間には俺の世界から音が消えた。
左右の耳を一直線上に持っていき、両耳の鼓膜を同時に貫通させて聴覚を一時的に破壊した。
自傷行為による緊急離脱は何度かしてきたが、比較にならない激痛だった。
耳から流れる血の感触は温かく、ドロドロとした他のナニカも流れ出ている。
…医者ではないので知らないが、普通こんな事やったら死ぬ。
魔法少女であり、生と死の魔眼を持っている俺だから出来るのだ。
ジンジンと痛む耳に苦しみながらも、近付いてきていた月咲を蹴り飛ばし月夜に当たるように吹き飛ばす。
吹き飛ばしたら、グロックを発砲して弾丸で二人が持っている笛を弾く。
…ふぅ、これでようやく武器と言う武器が無くなった。
新しい笛を魔力で編むよりも、俺の攻撃の方が早い。
「──────────!!」
「────────────!!」
うん、何言ってるか分かんないけど、驚いてるのは二人の顔で分かった。
多分、有り得ないでございますとか、普通そんなこと絶対やらないよ、とか言ってるんだろうなぁ……
…いや、知らんけど。
二人に銃口と剣先を向けながら、更に奥へと続く道の方を見やる。
グットタイミングと言うべきか、丁度四人が奥へと入っていく瞬間だった。
俺は警戒を緩めず、徐々に戻っていく聴覚を感じながら、ウワサと相対するであろう四人にエールを送った。
頑張れ、と。
次回もお楽しみに!
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