結翔「良い感じ、良い感じ。さっすが、さなは出来る子だな」
さな「そう、でしょうか?」
まさら&こころ「………………(私たちヒロインなのに空気だ)」
みたま&ももこ「………………(私たち今回も出番ないなぁ)」
鶴乃「……大丈夫かな、これ?」
みふゆ「さ、さぁ、私にはなんとも…」
結翔「色々とディレクターズカット版見たいだけど、二十六話をどうぞ!」
──結翔──
『……分かりました、お忙しいところすいません』
『いやいや、俺も手伝えなくてごめんね。何かあったらもう一回かけて、その時には行けるよう頑張るから』
そう言って、俺は電話を切った。
電話の相手はいろはちゃん。
なんでも、マギウスの翼が深く関わってるうわさを見つけたらしい。
最初は、電波少女の噂を調べてて、その後に行き着いたのがひとりぼっちの最果て、最後に名無しの人工知能のうわさ。
追っている間に、見滝原から知り合いを探しに来た魔法少女に会ったり、天音姉妹の一人である月夜から色々と聞き出したりした、と言っていた。
うわさの内容は……
──────────────────────
アラもう聞いた? 誰から聞いた?
名無しさんのそのウワサ
昔は人に囲まれて
成長してきた名無しさん
それは人が作った人工知能で
何でも覚える大天才!
だけど悪い言葉を覚えてしまって
人に恐がられるようになっちゃうと
デジタルの世界で隔離されて
ひとりぼっちの寂しい毎日
それから寂しい子を見つけては
電波塔から飛び降りさせて
“ひとりぼっちの最果て”に
監禁するようになっちゃった!
いつかは手放してくれるけど
絶対にひとりは手放さないって
中央区の人の間ではもっぱらのウワサ
スターンダローン!
──────────────────────
うわさを調べている身として、俺も知らないうわさだった事に驚いた。
そして、そのうわさを現実にするウワサがいろはちゃんにコンタクトを取り、自分を消して欲しいと言っていたと言う事にも驚いた。
名無しの人工知能のうわさに辿り着けたのも、ウワサ自信が道案内をしてくれたかららしい。
一連の流れとして、驚く事は多々あったが、一番驚いたのは今囚われている──監禁されている少女が
しかも、昔聞いた電波少女の噂は今にも泣き出しそうな悲痛な声で『助けて』と求めていたが、今の声は違い笑い声。
詳しく教えてもらった俺に、いろはちゃんは協力して欲しかったようだが俺は──断った。
忙しくて手を離せそうにないと言って、断った。
本当は嘘だ。
今は家で、最近倒した小物のうわさの報告書を書いている。
急行すれば間に合うし、忙しくもなんでもない。
ぶっちゃけるなら、あと少しで終わるところだったので、暇になるくらいだ。
「……今更、どんな顔で会えばいいんだよ」
さなは、俺が昔救えなかった少女。
両側で纏めたウェーブのかかったモスグリーンの髪と、深緑色の瞳が特徴。
彼女は、母親の再婚によって、家庭環境が異常な程悪くなり家ての居場所が無くなり、学校でも周りから浮いて存在感が希薄になり誰にも相手にされない。
最終的には、魔法少女になった時の『透明になりたい』と言う願いで、誰からも見えない存在になってしまった。
……同じ、魔法少女以外から。
出会った時期は、俺がチームを抜けた後で、まだまさらたちとチームを組む少し前。
半年…とは行かないが数ヶ月前だ。
さなの事情を知った俺は、どうにも放っておくことが出来ず、彼女に寄り添った。
最初は心を開いてくれなかったが、俺が距離を詰めようと下の名前で呼んだ途端、反応が変わり心を徐々に開いてくれるようになった。
二、三週間ほど、出来るだけ彼女の傍に居るよう努め、唯一の居場所になれるよう頑張ったつもりだ。
お陰で、完全に打ち解けて笑ってくれるようになり、自分の事も少しづつ話してくれるようになった。
親友、とはいかないが友人と言っても差し支えない間柄になれたと思っている。
だけど、この関係はさなの一言によって崩壊した。
『ずっと…あなたの傍に、居ていいですか?』
さなに、そう言う想いが無いのは、俺自身が一番知っていた筈なのに。
ただ、自分の存在を認めてくれる、自分を必要としてくれる、自分の名前を呼んでくれる、そんな友達の傍に居たかったから出た言葉だと、その時の俺は気付けなかった。
だって、それは当時の俺にとってトラウマだったから。
あの時のメルと、一語一句違えず同じ言葉だったから。
逃げ出したのだ、彼女から──双葉さなから。
「…断って良かったんですか? ウワサ退治の件」
「俺が行っても、少し遅いよ。もう始まっちゃうだろうしね」
そんな事はない。
いろはちゃんは、待つと言ってくれたし、それなりの猶予があったから連絡してきたのだ。
始める直前に電話するなんて、有り得やしない。
「…私の…私の勝手な勘ぐりかもしれないですけど、結翔さんはきっと後悔しますよ」
「それは…………そうかもね」
こころちゃんは、心配そうに眉を八の字にしながらそう言った。
勘が良いのも、本当に困りものだ。
こう言う時、俺は彼女たちに嘘が付けない。
付けたとしても、それはすぐバレるような幼稚な嘘だ。
とても、真実を隠し通せるようなものじゃない。
勇気を持てれば、一歩踏み出せるのに。
自分だけの力じゃ、俺は勇気を持てない。
いや、今の自分になった時点で勇気なんて持てる筈がなかったのだ。
殆ど強迫観念で人助けをしている、今の自分になった時点で。
助けたい気持ちも、救いたい気持ちも、ここにあるのに。
それを後押しするのは、いつも『後悔』と言う名の強迫観念。
……吐き出すように、断った理由と今回のうわさについて話した。
すると、彼女はこう言ったのだ。
「行けば良いじゃないですか、後先なんて考えず。それが、ヒーローってものなんじゃないですか?」
「……………………」
「私も、まさらも手伝いますから。一緒に行きましょうよ?」
「…ありがとね。すぐ、出る準備しよっか」
後先考えず…か。
まんま、昔の俺みたいだ。
今を精一杯生きて守ろうとしていた、昔の俺の考え。
もっとも、それは今でも変わってない。
少しだけ、変わった事があるなら、今だけじゃなくて未来の事も考えるようになった。
まぁ、俺は変わるかもしれない未来に怯えているだけだが……
「……覚悟は、決めないとな」
拳を握り、剣を取り、銃の引き金に指をかける。
そんな覚悟を、もう一度決めなくてはいけない。
例え、相手が大切な人だったとしても……守る為に、戦わなければいけない。
……それが、ヒーローなのだから。
──さな──
ひとりぼっちになった原因を聞かれたら、私は自分の所為だと答える。
全部全部、自分の所為。
私がダメだから。
私がバカで何もできないから。
私は迷惑を掛けるだけ、邪魔なだけの存在なんだと思った。
誰にも会いたくなくなって、誰にも見つけられたくなくて、私は透明になることを願った。
なのに、彼は──結翔さんは私を見つけた。
公園で体育座りで蹲っている私に、彼は声を掛けた。
「大丈夫?」
たった一言、たった一言だった。
見知らぬ私に、彼はそう一言声を掛けた。
そんな事する意味なんてないし、そもそも私の事なんて見えてない筈なのに。
そう考えた私は、何も答えなかった。
今思えば、私は怖かったのだ。
だって、誰かに私を知ってもらう程、失望される気がしたから。
親しくなればなる程、私を知れば知る程。
私のダメさ加減を、バカさ加減を知ることになる。
本当に何もできない人だと、知られることになるのだ。
そうやって、ずっと蹲っている私を見て、彼は何を思ったのか、頭を撫で始めた。
戸惑った。
久しぶりの事だったから、余計に戸惑って私は顔を上げる。
その時、ようやく彼と目が合った。
赤褐色の瞳は輝いていて、吸い込まれるように見つめ続けた。
すると、結翔さんはカラカラと笑って言った。
「見つめられると照れるなぁ〜」
「え…あ……その、そう言う訳じゃ──」
「知ってるよ。…中々反応してくれなかったから、そのお返しってやつ」
「ひ…酷い…です!」
「ごめんって。…でも、体の方に問題はなさそうで良かったよ。顔色もそこまで悪くないし」
不思議な人。
初対面の感想はそれだ。
でも、会う回数を重ねる度に、私の彼へ向ける目は変わっていった。
優しい人で、強い人。
私とは違う、対極の場所に居る人だと思った。
なのに、彼は酷い話も嫌な顔一つせず、親身になって聞いてくれる。
まるで、本当の兄が出来たような感覚で、本当の友人が出来たような感覚で、凄く凄く嬉しかった。
ずっと傍に居たい、そう思えた。
だからだろうか…私は言葉にして伝えないとと思ったのだ。
いつもしてなかったから、するようにすれば一緒に居られると、そう思った。
だけど、それは間違いで、彼を傷付けた。
「ずっと…あなたの傍に、居ていいですか?」
「あ……あぁ……えっと……その…」
苦しそうな顔で、彼は喉を詰まらかのように途切れ途切れの声を出す。
結局、結翔さんは「ごめん」そう一言残して去って行った。
……ずっと謝りたかったけど、謝る事は叶わず。
本当の自暴自棄になった私は、ひとりぼっちの最果て訪れた。
私に相応しい場所だと思ったから。
そこで、私はウワサと出会う。
名無しの人工知能のうわさ、それを現実にするウワサ。
怖い言葉を散々言われたが、自暴自棄になっていた私にその言葉は意味がなくて、ただただ私は自分のネガティブさ加減を吐露し続けた。
その内に、私は名無しの人工知能であるウワサに名前を付けた。
Aiだからアイ、アイちゃん。
名付けられたあと、次第にアイちゃんに優しさが芽生え、私を励ましてくれるようになった。
彼と居た時間以上の時を過ごす内に、アイちゃんは私にこう言うようになった。
「>さなは、帰らなくていいんですか?」
「>もし、あたなを必要としてくれる人が、ここまで来たらどうしますか?」
前者は心配から来た言葉、後者も私の吐露したある言葉を心配したが故に出た言葉。
「もう、居場所なんてないから。私が無くしちゃったから」
「……本当に来てくれたら、私はもう一度誰かを信用できるかも」
二つの回答を聞いたアイちゃんは、私の知らない内に外とコネクションを取って、ある人を連れてきた。
「アイちゃん、この人たち…誰?」
名前は環いろは…さんと言うらしい。
他にも、二人見知らぬ魔法少女がウワサの結界の中に居る。
環いろはさんと同じく桃色の髪をした人と、黒い髪を三つ編みにしたメガネの子。
私と同じ魔法少女で、私が見える人。
でも、ここに来る魔法少女はマギウスの翼と言われる人達だけだ。
他の魔法少女が来る事は難しい。
最初、何も知らなかった私は疑った。
何故なら、マギウスの翼はアイちゃんのうわさの中で、魔女を育てているような人たちだ。
「みんなもマギウスの翼…?」
「ううん、違うよ。私たちは普通の魔法少女」
「…じゃあ、何をしに来たの?」
「私ね、さなちゃんを迎えに来たんだ」
「私を、迎えに…?」
その言葉に、私は困惑した。
困惑し戸惑った私は、震える瞳でアイちゃんの方を向く。
アイちゃんは、電子の体にノイズを走らせながら、作られた声で話し始めた。
「>………………>さな、そろそろ>この関係をおわりにしましょう>やっとあなたを>見つけてくれる人が来ました>私のところを離れる時です」
「え…アイちゃん…? なに、言ってるの…? 私が居なくなっていいってこと…?」
口から出る声も、体も全てが震えていた。
また、まただ、私の居場所が消えようとしている。
怖い、恐ろしい……それもあるけど、嫌だった。
「>最近ずっと考えていました>私は作られた存在>いつか消える人工知能>ずっと共にいることは>できないと>なので、さなは>私のようなウワサではなく>人と一緒に居るべきなんです」
「どうして、そんなこと言うの? 私、アイちゃんと仲良く過ごせてたよね…? 私のこと、嫌いになったの…?」
振り絞った声がウワサの結界に響き、一瞬の間、静寂が流れる。
しかし、その静寂を許さないと言うように、アイちゃんは言葉を返した。
「>いえ、大好きですよ>さなは色んなことを>たくさん教えてくれた>とくにさなは>私に優しさを教えてくれた」
「私のことが好きならここに居てもいいでしょ…?」
大好きの一言が嬉しかった。
彼は私の隣に居てくれたけど、その一言だけは言ってくれなかったから。
だから、だからだろうか、彼女が次に言う言葉が分かって、涙がとめどなく溢れ出す。
「>いえ、いろはさんとことろへ>行ってください>そうすればここで>マギウスの翼がしていることに>あなたが苦しむことも>なくなります>私は苦悩するさなを>見たくないのです」
「アイちゃん…」
あぁ、本当に……アイちゃんは優しい。
いつも私の事を想ってくれる──私の生きる未来の事を想ってくれる。
揺れ動く心、それに追い打ちをかけるように、環いろはさんが言ったのだ。
「一緒に行こう、さなちゃん」
「………………」
「私もね、さなちゃんほどの孤独感は味わったことないけど…。クラスに馴染めなくて疎外感を覚えてたことはあるの…。でもね最近、魔法少女の仲間ができてから。そんな前の自分がウソだって思えるぐらい自然に過ごしてるの。だからね、さなちゃんもきっとうまくやっていけると思う」
「………………」
「それにね、私たち、マギウスの翼を探ってるの」
「え…」
「さっき、マギウスの翼のことで苦しんでるって言ってたから…。私たちはね、手を取り合って戦うこともできると思うの。だから…良ければ一緒に来てくれないかな…? 魔法少女として…そして、友だちとして」
「私…」
「今度は私が、さなちゃんを必要とするから」
「──っ!!」
深く、深く、突き刺さるような言葉。
正面から、真っ直ぐな瞳で、環いろはさんはそう言い切った。
その姿は、彼と──結翔さんと良く似ていた。
見紛う程にそっくりだった。
色々と違う所はあるけど、根っこの部分が同じなんだと思う。
優しい…優しい、根っこの部分が。
一歩踏み出したい……が、アイちゃんを一人にはできない。
そしたら、彼女は暴走してしまう、いろはさんたちを傷付けてしまう。
そんな所を、私は見たくない。
「でも、私がいなくなったらアイちゃんは…」
「>はい、誰もいなくなれば>ウワサとして暴走するでしょう>だから私を消してください>それが、さなにとってもいい>マギウスの翼にとっても>痛手になるはずです>アリナが来ます、足止めはしてくていますが>他の羽も連れているのでいつまで持つか分かりません」
「足止め…? やちよさんたちの事ですか? それと、アリナって?」
「アリナ・グレイ…マギウスの翼束ねる存在です。…マギウスの一人」
「>そして、今>アリナと戦っているのが藍川結翔です」
「──っ!? ま、待って! …な、なんで、結翔さん……が?」
いきなり訳が分からなくなって、必死に驚きで上手く喋れない舌を回す。
なんで? どうして?
今になって、なんでなの?
ずっと避けていたのに、違う人と新しい居場所を作っていたのに。
訳が分からない…分からないけど、心がいっぱいになって、途切れていた涙が流れ始める。
「>さな、やはりあなたは>人と居た方が良い>あなたもそれを>望んでいるではないですか>だったら行くべきです」
「で…もぉ…」
涙で良く見えない視界の中で、いつも浮かぶような不定形だったアイちゃんの姿が、魔法少女に変身した私と同じになっていく。
正体不明の感情に突き動かされて、私も変身した。
変身した姿は、本当に私に似合っていない。
大きな盾を持った騎士のような衣装は、絶望的なほど私から遠い存在だ。
数秒立ち尽くして、どうしてアイちゃんげ私と同じ姿になったのか考えた。
でも、私に答えなんて出せなくて、直接聞こうとした時、アイちゃんの方から口を開いた。
「>私はあなたで>あなたは私>例え消えたとしても>あなたの中で私は生きている>私たちは一つなんだから>当たり前です>どうにも、私にこれは>似合わない>…うん、あなたの方が似合っている」
不器用に微笑んだアイちゃんは、頭に載せられていたティアラを私に返した。
いつの間に無くなっていたのかなんて、そんなの知らないけど。
この言葉で、私は決意した。
私が終わらせなきゃいけないんだ…と。
「…ありがとうね、アイちゃん。……一緒に行こう」
言葉を最後に、私はアイちゃんの手から短剣を貰い、深く胸に突き刺した。
実感なんてない、刺した実感なんてどこにも。
ただ、私に欠けていたナニカが埋まるような感覚がした。
それはきっと、『優しさ』だった。
自分に向けるものじゃない、誰かに向ける『優しさ』だった。
私が必要としなくなってしまったものを、彼女は大事に持っていてくれたのだ。
そして、たった今それを返してくれた。
「>さ…な……>わた…しに優しさを……クレテ>アリ…ガトウ>ワタシニ…ナマエヲ>ク……レテ>ア…ア…リガ…ト……ウ」
無言で抱き締めて、精一杯の想いを伝えた。
彼女の感謝に応えられるような、精一杯の想いを伝えた。
次の瞬間、ウワサであるアイちゃんが消滅し、結界も解けて消える。
約一ヵ月ぶり見る星空の下で、私はまた彼に──藍川結翔に出会った。
次回もお楽しみに!
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※今の結翔くんは一人で勇気を生み出すことが出来ません。もっと昔の彼なら出来たかもしれませんけどね。