無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 中々お気に入りが五十人超えない侍。
 精進致します。

 ※さなはヒロインじゃありません。


幕間「不器用な二人の仲直り」

 ──結翔──

 

 名無しの人工知能のうわさを解決してから数日が経ったある日、さなが家を訪ねてきた。

 しかも一人で…だ。

 

 

 最初は少し驚いたが、時間も六時頃で辺りも暗かった為、すぐに家に上げてリビングに通す。

 まさらやこころちゃんも驚いた顔をしていたが、俺が通したこともあってか警戒はしていない。

 

 

 

「で? どうしたの、こんな時間に来るなんて」

 

「…あ…いえ…その…」

 

 

 俺の質問に口篭るさな。

 落ち着かない様子で体をモジモジとさせ、手を開いたり握ったりしてる所を見ると、そこそこ大事な話なのだろう。

 アイコンタクトで、まさらとこころちゃんの二人に、少しの間二階に行ってもらおうと伝えようとした時、さなが叫ぶように言った。

 

 

「あ、明日! 私とお買い物に行ってくれませんか!?」

 

「……へっ? いや、良いけど」

 

『……え?』

 

 

 どうやら、買い物のお手伝いをお願いしにきたらしい。

 多分、落ち着かない様子だったのは前の事を引きずってるのと、まさらたちが居たのが原因だと思われる。

 

 

 俺が二つ返事で了承の言葉を返すと、今度は後ろから間の抜けた驚きの声が届いた。

 珍しく、まさらですら口をあんぐりと開けている。

 …別に、変な事を言ったつもりはなかったんだけどなぁ。

 

 

 ……うん、当たり障りのない了承の返事だったし、変な所は──あれ? 

 ちょっと待てよ……もしかして二人だけで、とかじゃないよな? 

 

 

「さな、明日は俺と二人だけか?」

 

「…は、はい。まだ、日用品が揃ってなくて。やちよさんがお金を上げるから買ってきなさいって…。ごめんなさい、二人じゃダメ…でしたか?」

 

「いや、全然。色々と話したい事もあるし、二人の方が良いや」

 

 

 適当な言葉を返し、改めて何故二人が驚いたのか考える。

 あぁ、二人は勘違いしてるんだろうな、俺とさながデートに行くんじゃないかと。

 …そういや、やちよさんも女性と二人で出掛ける時は、デートだと思って行動しなさいって言ってたっけ。

 

 

 後で怒られるかもだけど、この勘違いはそれはそれで面白いから放置しよう、そうしよう。

 その後、俺とさなは集合場所と買い物の場所を決め話は終わった。

 外が暗い事もあり、一人で返すのに抵抗があった俺はさなをみかづき荘まで送ると言って家を出る。

 

 

 外に出て空を見上げると、我先にと言わんばかりに、一番星は既に輝いており、月と一緒にこちらを照らしていた。

 駐車場からバイクを引っ張り出しキーを入れてエンジンをかける。

 久しぶりの感覚に身震いしながらヘルメットを被り、さなにも片手に持っていたヘルメットを手渡した。

 

 

「バイクで送ってくから、メット被って後ろ乗って」

 

「…結翔さんって、バイク運転できるんですね」

 

「仕事の都合上、取らなきゃやってられなかったからね」

 

 

 カラカラと笑ってそう返すと、さなは俺の背中に抱き着くような形でバイクに乗った。

 ………………車の方が良かったと、既に後悔し始めた自分が居る。

 女の子特有のモチモチと柔らかい体の感触が、背中に押し付けられる形で伝わってくる。

 

 

 何とか理性の舵取りをしながら、俺は走り出した。

 …ギリギリの戦いになると思われたが、バイクで風を切る感覚に全てが色褪せていく。

 憧れのヒーローが乗っていた乗り物は、俺に取って滅多に乗れないリニアモーターカーや戦闘機に乗る以上の価値がある。

 

 

 こぞって、ヒーローが乗る気持ちが分かる気がした。

 風を切る感覚は病み付きだし、狭い路地裏でも通れるので機能性も悪くない。

 …まぁ、一部のヒーローによってはマシンが空を飛ぶのです関係ないが。

 

 

 十分ほど経つと、いつの間にかみかづき荘に着いていた。

 …凄いな、走るのに夢中になってても、通い慣れた場所には案外いけるものだ。

 さなが降りた後にヘルメットを預かり、別れの言葉を言って家に帰った。

 

 

「また明日」…と。

 

 

 ──さな──

 

 言ってしまった。

 誘ってしまった。

 結翔さん、きっと断るって思ったのに…なんで受けてくれたんだろう? 

 私の想いが、結翔さんが忌避しているものじゃないって気付いたから? 

 それとも、私が誘った本当の目的に気付いているから? 

 

 

 分からない…分からないけど、これはチャンスだ。

 仲直りできるまたとないチャンスだ。

 きっと、私たちはお互いを考えて一歩引いちゃうから、どっちかが一歩踏み出さないと。

 

 

 アイちゃん、私、頑張るよ。

 少しづつでも良いから、アイちゃんに誇れるような自分になる為に。

 

 

 …彼女の事を考えると、少し胸が痛むけど、それ以上に温かくなる。

 みかづき荘の皆さんと買ったマグカップを見ている時と同じくらい、温かくなる。

 

 

「また明日…か。…久しぶりだったな、そんな事言われたの」

 

「さなちゃん…嬉しそうですね。結翔さんの事、しっかり誘えたんでしょうか?」

 

「みたいね。まぁ、今の結翔が断るとは考え辛いわ」

 

「……? 何の話だ?」

 

「フェリシアはまだ知らなくていーの」

 

「ん? そうか? なら、良いや」

 

 

 後ろで話している声が聞こえたが、私は特に気にしなかった。

 何故なら、明日はどんな事を話すか、明日はどんな事をするのか、それを考えているだけで精一杯だったからだ。

 

 

 夜ご飯を食べてお風呂に入ったあとも、私は考えていた。

 最近、みんなでやるようになったゲームにも参加せず、考えていた。

 ……寝る間も惜しんで、とはいかなかったが、寝るギリギリまで考える。

 

 

 …眠気で意識が落ちる直前、もしかしたら、私は話す事ややる事を悩んでいたんじゃなくて、ただ楽しみなだけなのでは? 

 そう思ったが、深く考えないようにして、眠気に任せて意識を放り捨てた。

 

 

 翌日、学校終わりの放課後、デパートの入口前で待っていると、制服姿の結翔さんが、額に汗を浮かべながらやって来た。

 遅刻しそうになって走ってきたらしい、連絡の一つでも入れてくれたら気にしないのに。

 

 

 彼のそんな姿を見て、私は笑ってしまった。

 

 

「く…ふふふっ、あははは!」

 

「さ、さな?」

 

「律儀過ぎですよ、結翔さん。私、ちょっとくらい遅れても気にしないのに」

 

「…今度から、そうするよ」

 

「はい、そうして下さい」

 

 

 なんでだろう、今だけは幼い頃のように自然と笑えている気がした。

 雑貨屋は服屋を周りながら、色々な話をした。

 でも、その全てがアイちゃんとの話だった。

 

 

「アイちゃんと絵本を──」

 

「アイちゃんとゲームで──」

 

「アイちゃんと海に──」

 

「アイちゃんが──」

 

「アイちゃんも──」

 

「アイちゃんは──」

 

 

 普通だったら、うんざりするような話だったと思う。

 昔を引きずっている人の話だったと思う。

 けど、彼は黙って私の話を聞いてくれた。

 時に相槌をし、時にくだらない事で笑って、時に少し悲しそうに俯いて。

 

 

 色々な表情を私に見せながら、話を聞いてくれた。

 …優しい、本当に優しい人だ。

 私は透明なのに、まるで私がそこに居るように話を聞いてくれる。

 周りから変な目で見られようと関係ない、そう言っているようだ。

 

 

 堪らなく嬉しかった。

 彼の隣に、私の居場所がまだあった事が、堪らなく嬉しかったのだ。

 

 

 話が一段落した時、ふと近くにあったオモチャ屋の店頭に目が行った。

 そこには──

 

 

「ゴロゴロ…!?」

 

「ん? …ああ、あの猫ちゃんの名前?」

 

「は、はい、こねこのゴロゴロって言う昔テレビでやってた人形劇のキャラクターです!」

 

「へぇ。可愛いね、あの猫の人形」

 

「本当にすっごく可愛いんです!! 私、あれを見てから猫が大好きに──」

 

 

 暑くなって喋りすぎてる事に気付いて、私は慌てて口を閉じだ。

 結翔さんはそれを見て、クスクスと笑っていた。

 ……ど、ど、どうしよう。

 変な所は見せないように、しっかり仲直りしようと思ったのに……やっちゃった。

 

 

 あわあわと口をパクパクしている私に、結翔さんはこう言った。

 

 

「ちょっと待ってて、すぐ買ってくるから」

 

「…そ、そんなの悪いです! せ、折角仲直りの為に──あっ」

 

「あぁ、そう言う。良いよ、俺がしたいだけだから」

 

「で、でもぉ…」

 

「…分かった。俺も欲しい物あるかもだし、少し見てくるね」

 

 

 気を遣われてしまった、目的も言ってしまった。

 ……いつもこうだ、私は鈍臭い。

 バカでダメで、何をやらせても上手くいかない。

 

 

 その所為で──

 

 

 そうやって私が自己嫌悪を浸っている時、近くで他の少女たちが動いていた。

 

 

「なんで、貴方たちが居るのかしら?」

 

「それはこっちのセリフよ。加賀見さんに粟根さん」

 

「やちよさんに加賀見さん。ふ、二人とも落ち着いて下さいよ」

 

「そ、そうですよ。ここに来たのも偶然ってだけなんですし」

 

「……なぁ鶴乃ー、腹減ったー!」

 

「だねー、わたしもだよー」

 

 

 思い思いの言葉を口にする彼女たちが誰なのか、私には分からない。

 ただ、偶然出会ったのは本当で、偶然来たのは嘘だろう。

 

 

 …まぁ、私にはそれ以上分からない。

 気付いていても、自己嫌悪に必死な私には知る由もない。

 

 

 ──数分後、小さな袋と中くらいの袋を持った結翔さんが出て来た。

 そして、中くらいの袋を私に渡す。

 一瞬、何が何だか分からなくて、首を傾げた。

 

 

「あ、あの、結翔さん…これは?」

 

「あぁ、さっき見てたゴロゴロの人形。ちょうど良かったから買ってきた」

 

「ちょ、ちょうど良かったって?」

 

「なんでも、あの店は今日お得デーらしくてな。千円以上買うと10%オフだったんだよ。んで、俺のだけだと超えなかったから、さなが欲しがってたやつも買ったんだ」

 

「………………」

 

「さ、さな? も、もしかして、俺、余計な事しちゃったか?」

 

「……いえ、本当に優しいなぁって」

 

 

 透明な私が持っていたら、袋は目立つから彼に返し、続けざまにこう言った。

 今日、私が一番言いたかった言葉を言った。

 

 

「結翔さん。…もう一度、私とお友達になってくれませんか?」

 

「…こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

 アイちゃん…やったよ。

 私、ちゃんと踏み出せだよ。

 …見ててくれたよね? 

 

 

 きっと届いていると信じて、親友に言葉を送る。

 その日、ようやく私のもう一人の友達が戻ってきた。

 

 

 明るくて、優しくて、強くて、私とは真反対の人。

 ヒーローみたいな、カッコイイ友達が。




 この後、告白現場と誤解されたみんなに、揉みくちゃされたとか、されてないとか……

 真相は闇の中である。

 次回もお楽しみに!

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