まさら「今回から過去編なのよね、感慨深いわ」
鶴乃「どんな事があるのか、ドキドキワクワクって感じたね!!ふんふん!」
結翔「…あぁ、そういや、この頃の事はお前に言ってなかったっけ?」
ももこ「事情があったししゃあないだろ。取り敢えず、過去編の第一話である二十九話を楽しんでどうぞ!!」
二十九話「弟子入りしましたヒーローくん」
──結翔──
咲良さんに貰った地図を片手に、俺はある場所を目指す。
みかづき荘、と呼ばれる下宿屋だ。
目的はただ一つ、そこに居るベテラン魔法少女である七海やちよさんに弟子入りする為だ。
弟子入りする理由は…経験不足を補う為。
魔法少女になってまだ数週間、幼馴染であるももこと狩りはしているし、他にも咲良さんからの依頼で仕事として狩りをしているが、未熟さ故に生傷が絶えない。
先日、ももこに泣きつかれ、泣く泣く俺は誰かに師事する事にしたのだ。
そして、その事を咲良さんに相談すると、師事するのに良い相手を紹介してもらえた。
魔法少女歴四年のベテランで、比較的人格者、且つモデルとしても有名な七海やちよさん。
「……ここが、みかづき荘?」
下宿屋と言うだけあって、大きい建物だ。
緊張に体を強ばらせながらも、俺は勇気を振り絞ってインターホンを鳴らす。
すると、十秒もしない間に、玄関のドアが開かれ神浜市立大附属学校の制服に身を包んだ七海やちよさんが現れた。
「…あら、新しい入居者かしら? 何も話は聞いてないのだけど…」
「あ、あの…えっと、俺は入居希望とかじゃなくて…その…」
「? 神浜市立大附属学校の生徒よね? 何年生?」
「お、俺は中等部一年の藍川結翔です! …で、で、弟子にしてください!!」
…やっば。
菓子折りとか色々持って来たのに、何も渡さず、理由とかも言わず、いきなり本題に行っちゃった…
下げた頭を少しだけ上げて、一瞬、彼女の様子を伺う。
…まぁ、そうだよね、固まるよね、いきなり
理由を説明しようと、体を起こして話そうとした瞬間、彼女の方から戸惑いの色が乗った声が聞こえた。
「と、取り敢えず、中で話を聞くわ。外じゃあれだし…」
「あ、ありがとうございます…」
玄関先で靴を脱ぎ、来客用のスリッパを借りて廊下を歩く。
少し歩いた先のドアを進み、共有ルームと思われる部屋に入る。
リビングとダイニングとキッチンが一緒になったような部屋は、広々としていて快適そうだ。
ソファやら丸いガラステーブルやら、色々と置かれている。
適当な所に座ってと言われたので、一人用の小さなソファに腰掛け、持って来た菓子折りを膝の上に乗せる。
…あれだな、モデルさんってだけあってスラットしてて、綺麗だしカッコイイ。
身長は160そこらだろう…良いなぁ。
150程しか身長がない身としては羨ましい限りだ。
数分ほど、キッチンに行った七海さんが戻ってくるのを待つ。
手持ち無沙汰なので、ただただぼーっと虚空を見つめる。
戻ってきた七海さんは、自分用と俺用と思わしきマグカップを持って来た。
「コーヒーしかないの、ごめんなさいね。ミルクと砂糖は好きにしてちょうだい」
「ど、どうも」
対面に座った彼女は、コーヒーの入ったマグカップと、コーヒーミルクとスティックシュガーが入った、可愛らしい箱を俺の方に寄せた。
適当にスティックシュガーとコーヒーミルクを入れて、スプーンでかき回し、完全に砂糖が溶け切ったのを確認してから口に含んだ。
慣れない苦味に顔を歪めながらも、落ち着きを取り戻した俺は先程の話を詳しくする為に口を開いた。
「…弟子入りの件なんですけど」
「モデル志望かしら? …悪いんだけど、それは私の方ではどうにも──」
「ち、違うんです!? そっちじゃなくて、魔法少女のあなたに弟子入りしたいんです!」
「…藍川くんだったかしら? 一体、何処でそれを知ったのか知らないけど、あなたが関われることじゃないわ、諦めなさい」
男の俺が言っても、やっぱり信じてもらえないよなぁ……
魔力は感じても、別の何かだと勘違いしてるんだろう。
だったら、証明するまで。
俺は制服のポケットから魔法少女の証であるソウルジェムを取り出し、一言。
「変身!」
刹那、俺の体が光に包まれ、変化していく。
魔法少女として、相応の体に。
昔の踊り子のような扇情的な衣装は、黄色を基調とした色合いで出来ており、赤と白のラインが刻まれている。
正真正銘、魔法少女としての俺がそこに居た。
「……………………」
「…あ、あの、七海さん?」
口を開けて、ポカーンとしている七海さんの肩を揺さぶって、正気に戻す。
正気に戻った彼女は、困惑の色が濃く出た顔で、俺に問掛ける。
「…本当に魔法少女なの? 藍川くんは」
「えぇ、まぁ。色々あって…」
「わ、分かったわ。…一応、私に弟子入りしたい理由も聞いていいかしら」
「えっと…。学校の先輩に聞いて、善い人なのは知ってたしベテランの魔法少女だって聞いたので…。あと、生傷が絶えないことを、幼馴染に怒られて、挙句泣きつかれたんですよ…それで弟子入りを。これ、菓子折です、後でどうぞ」
「御丁寧にどうも。…じゃないわね。はぁ…あなたの事について色々聞きたいのだけど良いかしら?」
「勿論、なんでも聞いてください」
そう言った次の瞬間、七海さんの口から出てきたのは飛んでもない話だった。
ピンポイントに狙ってるとしか思えない話だったのだ。
「割と最近の話なんだけど、自称ヒーローの魔法少女が東と西のテリトリーを行き来して、ピンチになった魔法少女を救ってるらしいの。しかも、あなたと全く同じ服装で、戦う時は右眼が水色に光っていたとか…」
「………………俺ですね。その、仕事の都合上、この街の中で魔女が出れば東や西とか関係なく行かなきゃいけないので」
「なるほどね…。でも、話を聞く限りじゃ、藍川くんは相当強いじゃない? 怪我なんてそうそう負わないと思うけど」
「…いや、ピンチの子を庇ってるとそうもいかなくて。倒す事は出来ても、どこかしらに怪我が残っちゃうんですよ」
苦笑まじりにそう返すと、七海さんは「そう」と短く言った。
数秒の間、静かな時が流れ、七海さんは顎に手を当てながら思い出したように聞いてくる。
「水色に光る右眼は、魔法少女としての固有の能力かなにか?」
「…あぁ、違いますよ。俺の固有の能力は──────ですから。水色に光る右眼は、魔眼を発動している証です」
「魔眼? …予想の斜め上を行く、ファンタジーな回答ね。…で、どんな力があるのかしら」
「俺が今持ってるのは、未来視の魔眼と千里眼だけですね。未来視はその名の通り、未来を視ることの出来る魔眼です。千里眼は半径1kn圏内を自由に見渡せる魔眼ですね」
懐疑的な視線が、俺に向けられる。
そんなの有り得ない、とは口にしては言わないが、視線が物語っていた。
証明する方法は幾らでもあるが…どうするべきか…
少しの間悩んだが、良い事を思い付いた俺は、声のトーンを上げて話し始める。
「今から、誰でもいいんでこの家に人を呼んでください。来た人を当てて見せます」
「…一回きりよ」
そう言うと、七海さんはスマホを取り出して、誰かに電話をかけ始める。
七海さんの事は少し調べたが、交友関係は全く手を付けてない。
そこまでプライバシーを侵害するのはどうかと思うし、弟子として親しくなればそれも関係ないと思ったからだ。
数分後、玄関の方でドアが聞こえる音がし、それに続くようにスタスタと廊下を歩く音が聞こえた。
そして、その音は、この部屋のドアの前で止まる。
瞬間、俺は未来視の魔眼を発動し、未来でドアの前に立つ──ドアを開ける人物を視た。
「一人は、白髪ショートで殿茶色の目をした優しそうな女の人で、もう一人は金髪ロングの目付きが悪い女の人です!」
「…正解よ。二人とも、入ってきてちょうだい」
「なんなんですか? 部屋の前で少しだけ立ち止まって欲しいって、ビックリしましたよ?」
「…私も……あんまりよく分からなかった…」
「取り敢えず、紹介するはね。今日から私の弟子になった、神浜市立大附属学校の中等部一年、藍川結翔よ」
「よ、よろしくお願いします!!」
この日、俺の魔法少女としての新しい生活が始まった。
次回もお楽しみに!
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