無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 結翔「前回までの『無少魔少』。俺とかなえとの仲が掘り下げられて、尚且つ不穏な未来が垣間見えた話だったな」

 まさら「本編に出て無いと、ここしか出番がないから困るは」

 こころ「だよね。暇だから、どこか行きたいけど、行ってる間にこの席取られるのやだし…」

 みたま「そんな事言っていいのぉ?わたしなんて、全然出れてないのよ?」

 ももこ「ダル絡みすんなよ、調整屋。アタシだって出れてないんだぞ?」

 結翔「はいはい。出れてない談議はその辺にして、皆さんは楽しんで三十三話をどうぞ!」


三十三話「なんで、死なせてすらくれないんだよ!!」

 ──結翔──

 

 あの不吉な未来視から一週間ほどが経った。

 特になにも起きること無く時間は過ぎていったが、俺は出来るだけ警戒を緩めないよう、気を張って生活をしていた。

 

 

 ……そして、今日。

 昨日、取り逃してしまった魔女の再調査をする事になった。

 未来視の事を誰にも言ってなかった俺は、かなえが集団行動が苦手な事を知っていたので、二人一組で調査することを提案し、彼女を一人にしないよう努め難を逃れた。

 

 

 調査の最中も、かなえの一歩前を行き、何時でも対処出来るよう魔眼を起動状態に保つ。

 脳への負担は掛かるが、泣きごとを言っていられる余裕はない。

 もしかしたらじゃなくても、かなえの生死が掛かってるのだ。

 慎重に慎重を重ねて、調査をする俺にかなえは疑問を覚えていたようだが、特に何かを言われることは無く、調査は進んだ。

 

 

 徐々に足取りが掴めてくると、魔女の逃げ場が建設放棄地だと知る。

 人通りが少ない為、逃げ場には丁度いいが、養分を蓄えるには向いてない。

 …昨日やり合って分かったが、もう既に手をつけ難いレベルで強くなっている。

 

 

 あれだけ強ければ、養分もそれ相応に必要だろうに……何故? 

 浮かんでくる疑問に、納得のいく答えが出せないまま目的の場所に向かうと、やちよさんにみふゆさんもやって来ていた。

 

 

「調査はお終いね」

 

「ですね。……お二人も、ここに来たってことは」

 

「間違いないと思います」

 

「…やるなら……早くやろう」

 

 

 全員が一斉に変身すると、魔女の結界が現れる。

 誘い込むように現れたそれに、俺たちは突入し辺りを見渡す。

 …少し離れた先に、魔女の姿が見て取れた。

 逆さまになった生首の姿をしており、先端がカールした髪と大きな鼻、唇を突き出した口が特徴。

 

 

 ……嘘だろ。

 何で、昨日より魔力が濃くなってるんだ? 

 ただでさえ厄介だったのに、比にならないレベルで強くなってる。

 

 

「…やられたわね。あそこまで成長したのは一晩でかなりの人間を捕食したみたい」

 

「…クソっ!」

 

「待ちなさい結翔!? 一人で突っ込んでも──」

 

 

 やちよさんの制止を振り切って、魔女に突っ込んだ。

 当然のように、俺の周りを使い魔が取り囲む。

 魔女の使い魔は、操り人形を吊るす木片を繋げた白い下半身の姿をしている。

 

 

 …だけど、そんな事はどうでもいい。

 俺は固有の能力を使って、あるものを体内に仕込む。

 その後は、体中を炎が包み込み、手近な使い魔に抱き着き叫んだ。

 

 

「ウルトラダイナマイト!!」

 

 

 叫び終えた瞬間、眩い閃光が辺りを包み大爆発を引き起こす。

 辺りに居た手下は灰も残らず吹き飛んでおり、無くなった筈の俺の体は光の粒子と共に再生される。

 奥の手中の奥の手、俺が知る中で最大級の自爆技。

 使用後の疲労は半端なものでは無いが、相手を倒す為ならしょうがない。

 

 

 それより今は、魔女を倒すのが先決だ。

 これ以上犠牲者を増やされて溜まるか! 

 街を──街で生きる人を守るって決めたんだ!! 

 

 

 ……この時、俺は冷静じゃなかった。

 早く気付けば良かったんだ、目の前からじゃない、死角から迫る脅威に。

 

 

 訳も分からぬまま咄嗟に、俺の体が突き飛ばされた。

 振り向くと、そこにはかなえが居た。

 その後ろには、使い魔に拘束されて動きが封じられているやちよさんとみふゆさん。

 

 

 俺を突き飛ばしたかなえにな絡みつく使い魔。

 そして、それを狙ったように口からレーザーを発射する魔女。

 かなえは、ギリギリ動かせる腕を駆使し、武器である鉄パイプでレーザーを受け止める。

 

 

 ……早く、助けなくちゃ。

 そう思っても、体が動かない。

 否、動かせない。

 さっきまでは、怒りの所為でアドレナリンがドバドバ出ていたから立っていられたが、一度途切れてしまえばお終いだ。

 

 

 ウルトラダイナマイトの影響で、まともに体が動かない。

 ただただ、俺は涙を流しながら、彼女の背中を見つめる事しか出来なかった。

 一瞬、彼女は振り返って、俺にだけ届く声で言った。

 

 

「約束……守れそうにない」

 

 

 こんな時になっても、彼女はそう言ってくれた。

 俺が守る筈だった、俺が約束を守らせる筈だった。

 なのに…なのに、俺は……

 

 

 悔やんでも悔やみきれない。

 彼女の奮闘のお陰で、俺たちは三人は救われた。

 …代わりに、大切な仲間である彼女──雪野かなえを失う事で。

 

 

 結界が解かれ、俺は砕けたソウルジェムを必死に集めた。

 砕けたなら直せる。

 そんな甘い考えの元で、俺は死に物狂いで集めた。

 

 

 でも、それは無駄な事だと、無慈悲なキュウべえからの宣告が聞こえる。

 

 

「ソウルジェムは君たちの魂その物だ。君の能力がどんな物でも治せるわけが無い」

 

「……は? …じゃあ、なんだよ。かなえはもう死んでるって事か?」

 

「? 何を言ってるのか分からないな。君たちの体は既に死んでるのと同じだよ? 魂を抜き取ってソウルジェムとしてるんだ、魂であるソウルジェムが無くなったらただの抜け殻さ」

 

「……なんだよ、それ……!」

 

 

 心がぐしゃぐしゃに握り潰されたような感覚。

 父さんが死んだ時と同じか、それ以上の絶望だった。

 そして、その絶望がキーとなり、新しい魔眼が目覚める。

 ……どこまでも遅い目覚めだった。

 目覚めた魔眼は俺が集めていたソウルジェムの欠片を、完全に復元して見せたのだ。

 

 

 ……だが、かなえは起きる気配がない。

 代わりに、キュウべえが抑揚のない声で語り掛けてきた。

 

 

「…流石だね、結翔。まさか、ソウルジェムを──魂を復元するなんて、一体君は何者なんだい? 興味が尽きないよ」

 

「……そんなの知るか!! 治したんだから! かなえは起きる筈だろ! なんで起きない!!」

 

「一度散り散りになった魂が、完璧に復元された程度で治るとでも? 魂はそんな生易しい物じゃないよ。ボクたちですら、扱いを間違えるんだからね」

 

 

 何故起きないかの証拠のように、綺麗な紫色だったソウルジェムは無色透明なものになっており、輝く事も穢れが映ることも無い。

 やちよさんもみふゆさんも何も言わない。

 ただただ、嗚咽を漏らす俺の背中を摩っていた。

 

 

「約束……したじゃんか! 一緒にライブやるって…約束…したじゃんか! 守らせる筈だったのに…なんで…なんで! お前が俺を守ってんだよ! 逆だろ! お前が守られるべきだっただろ!」

 

 

 無茶苦茶な言葉を涙と一緒に吐き出して。

 最後には、悲しみが怒り──いや憎悪に変わり、その場を飛び出した。

 アイツを死に追いやった、魔女が許せなかった。

 ──それと同じくらい、自分が許せなかった。

 

 

 何度も何度も、変身と再変身を繰り返し、ボロボロになっても治る体で戦い続ける。

 魔女を三体倒した所で、八つ当たりのような復讐になんの意味もない事に気づいて、事務所に向かった。

 

 

 報告しなければならないから。

 魔女との戦闘での結果を、報告しなければならないから。

 変身と再変身を繰り返して、治りかけのボロボロな体を引きずって歩き、辿り着いた先で咲良さんに迎えられた。

 

 

 知っていた、全部知っていたのに、彼女は俺の話を何も言わず聞いてくれた。

 全部話し終わった後に、彼女はこう言ったのだ。

 

 

「……お疲れ様。今回の件は…残念だったわ。でも、ここで終わるなんてダメよ。もし、あなたが彼女の死を無駄にしたくないなら、こんな事が二度と怒らないよう努めなさい。それが、ヒーローってものでしょう?」

 

「……はい。分かり…ました」

 

 

 死を無駄にしたくないなら……か。

 俺はその言葉を聞き終えたあと、静かに事務所を出て、建て替えが予定されている廃ビルに行った。

 

 

 廃ビルの中には誰も居ない…それもそうだ。

 経年劣化で今にも崩れそうな場所だから、誰も寄り付かない。

 

 

 好都合だった。

 一生、後悔を背負って生きて行くなんて、俺には出来ない。

 もう一度、あるかもしれない大切な人の死に怯えて暮らすなんて、耐えられる訳がない。

 

 

 だったら、いっそ、ここで死んでしまえれば楽じゃないか。

 丁度よく、自分の事を殺したいとも思っていたのだ、一石二鳥だ。

 歪みに拍車が掛かった俺は、意味不明な理論を構築し自分の死を勝手に肯定した。

 

 

 なんとなく分かる、新しく目覚めた魔眼は契約してないと、致死の傷は治せないし──即死は勿論ダメ。

 そこから俺は、色々な自殺法を試した。

 焼死、窒息死、服毒死、中毒死、失血死、感電死、拳銃自殺、凍死。

 属性魔力や武器を使って出来うる限りの全てを試した、だが…結果は──

 

 

「…ふざけんなよ…なんで…なんで、死なせてすらくれないんだよ!!」

 

 

 時間が巻き戻るように、俺は死んでもその死を無かった事にするレベルで治された──いや、直された。

 …最後の手段は、まだ有る。

 俺は、ネックレス型のソウルジェムを無理矢理引きちぎり外すと、それを近場の地面に放り捨てた。

 

 

 そして、右手に限界まで魔力を溜めて、全てを放出するように殴り付ける。

 ソウルジェムが砕けたら死ぬ、それは実証された。

 なら、そうすればいい。

 

 

 今までの自殺法とは比べ物にならない激痛が体中に響き渡る。

 悶絶する程の痛みは確かに届いたが……ソウルジェムは砕けるどころかヒビが入った程度で、それもすぐに修復されてしまった。

 

 

 …ここで、ようやく理解した。

 自分が死ねない事を、死ぬ事すら許されなくなった事を。

 

 

 狂えたら、どれだけ楽だったろうか。

 中途半端な心の強さが、狂う事さえ許してくれず、ただただ歪むだけだった。

 

 

 ──────────────────────

 

 藍川結翔から、その日、純粋さは薄れていった。

 ヒーローへの憧れも、強さへの渇望も、純粋な想いは薄れて消えていく。

 唯一、消えなかった純粋な優しさも、後悔と言う名の強迫観念に侵食されていった。

 

 

 残ったのは、どうしようもない希望の光と、諦めきれない情熱の炎だった。

 

 

 ──英雄(ヒーロー)偽善者(フェイカー)に成り下がる。

 

 

 

 




 ※ネタバレ気味な解説
 六話「垣間見える過去」より、七海やちよの言葉を一部抜粋。

 ──────────────────────

 英雄になる素質があったのに、英雄になる努力を惜しまない少年だったのに……
 彼は──藍川結翔と言う人間は、どこまでいっても英雄に向いていなかった。


 山あり谷ありな結翔の人生は、英雄であり偶像(ヒーロー)になりたい少年の心を弱く作り過ぎてしまったのだ。

 ──────────────────────

 結翔くんは英雄になる素質がある事を、英雄になる努力を惜しまない人間だと言うことを周りの人間は知っていて、それは事実です。


 英雄になる素質が有るからこそ、ソウルジェムは全力のパンチでも壊れずヒビが入っただけ。
 心が弱いから、仲間の死に完全に耐えきれない。

 
 今回の話で分かったと思いますが、結翔くんは死にません…てか死ねません。
 彼のソウルジェムはそう易々と砕けませんから。
 何故なら、英雄になる素質が有る人間の魂ですからね。


 以上、ネタバレ気味な解説でした。

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 次回もお楽しみに!

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