無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 メル「前回までの『無少魔少』。かなえさんの死によって真実の一つが浮き彫りになったり、結翔くんの秘密が少し分かった話でしたね」

 結翔「今回からは第二部って感じだけど…ラブコメ要素はあるのか」

 まさら「あっても構わないけど、私たちの出番は?」

 こころ「過去編になってから悲しいくらい何も無いよね」

 ももこ「いやいや、しょうがないでしょ?二人はまだ、結翔に会ってすら居なかったんだから」

 メル「そう言う事です!大人しく、ボクのヒロイン力を見ているですよ!」

 結翔「いや、まだ今回はプロローグ回で、次回からが本編なんだけど……。まぁ、いいか。皆さんは楽しんで三十四話をどうぞ!」


三十四話「安名メル! それがボクの名前です!」

 ──やちよ──

 

 魔法少女の真実に近付いた日から──いや、かなえの死から一週間が経った。

 葬式やら告別式やらはとうに終わり、いつも通り…から少し欠けた日常に、歯車は戻り始めている。

 

 

 ……筈なのに、結翔を見たら私はそうは思えなくなった。

 先程も言った通り、葬式やら告別式やらはとうに終わっている。

 だが、その式典に結翔の姿はなかった。

 大切な日に遅刻や欠席なんて、彼がする筈がないと分かっていた私とみふゆは、何度も電話したが……その日、電話越しに彼の声を聞くことはなかった。

 

 

 そして、今日、ようやく結翔がみかづき荘に顔を出した。

 恐ろしい程にニコニコとした笑顔で、瞳の奥にドロドロとした黒いモノを宿したまま。

 明らかに可笑しかった。

 いつも通りな筈なのに、とてもそうは思えない。

 

 

 瞳の奥にある黒いモノが、私にそう思わせる。

 もう少し、早く気付くべきだったのだ。

 彼がまだ、幼い子供だと言う事に。

 大切な人との二度目の別れは、結翔の心に私たちじゃどうしようもない、傷を植え付けた。

 

 

 それから、一ヶ月もしない内に結翔の幼馴染である十咎ももこが、私たちのチームに加入した。

 理由は単純明快、「結翔が心配だから」だそうだ。

 ……まぁ、それもそうだろう。

 

 

 あの日から、私たちでも分かるほど可笑しくなった結翔を、一番近くに居て、一番多くの時を過ごしてきた幼馴染が分からない訳が無い。

 

 

 未だ無くならないかなえの死から生まれる暗い悲しみは、「結翔をどうにかしなければ」、と言う強い決意で捩じ伏せた。

 苦しいし、辛い。

 誰も、私の傍に居なかったなら、泣き叫んで嗚咽を漏らしたい。

 

 

 だけど、それは駄目だ。

 私は、このチームのリーダーであり年長者なのだから。

 支えられる側ではいけない、支える側で無ければいけない。

 

 

 かなえが守ってくれた──繋いでくれた命を無駄な時間に使えない。

 

 

 一年半、私は──私たちは、結翔の傷が癒えるように努めた。

 日常と非日常を繰り返す中で、結翔が「誰も失いたくない」、と言う言葉から彼を鍛え上げた。

 

 

 時に遊び、時に鍛え、日々を過ごした。

 あの日を境に魔法少女として著しく弱体化した結翔を、限界まで鍛え上げる。

 固有の能力も、一部以外全てが封印され、残されたのは自傷系の力が殆ど。

 出来るだけ、それを使わせない為に鍛え上げた。

 

 

 結果は……まぁ、最悪のものだ。

 危機的状況に陥ったら、結翔は必ず自分を犠牲に他者を生存させる。

 

 

 そんな戦い方を続けて一年半、瞳の奥にある黒いモノはなりを潜めた頃。

 私たちは高等部三年、結翔たちが中等部二年に上がって間もない日。

 転機は訪れた。

 

 

「東から逃げてきた魔女を狩って来い?」

 

「えぇ。あなただけなのよ、テリトリー外やその付近に行けるのは。何処も彼処も魔女不足だから…」

 

「この前の席で、そこだけはハッキリさせられて良かったです」

 

「まぁ、昔から結翔は色々やってきたし、その功績が称えられてってやつだろ?」

 

「……俺一人でも良いんですか?」

 

 

 バツの悪い表情で、結翔はそう言った。

 この子は何を言ってるのかしら? 

 あなた、私がダメと言っても行くでしょう? 

 と言うか、こう言う言いつけを守ったためしがないでしょうが。

 

 

 命が懸かった物事で、結翔に待ったは通じない。

 だったら、放し飼いにした方がまだマシだ。

 その為に、先日の十七夜との会談で、結翔だけを例外とし、テリトリー外を移動出来るようにした。

 

 

「…追加事項よ。これは十七夜からの依頼で、魔女に追われてる魔法少女が居るらしいの、その子の回収もお願い。あなたの眼なら詳しい場所も分かるでしょ?」

 

「!? 分かりました! 特急で行ってきます!」

 

 

 私がそう言うと、結翔は一目散に飛び出してみかづき荘を出た。

 ももこもみふゆも、結翔の慌てっぷりを見て苦笑していた。

 そう言う所が、結翔らしい…と言うべきか…なんなのか。

 結局、私も二人につられて苦笑した。

 

 

 ──メル──

 

 占いの結果は最悪、命の危機が迫ってるから今日は外に出ないと決めた矢先に、十七夜さんがボクの家に来て、無理矢理ボクを引っ張り出した。

 その後は散々なものだった。

 魔女に執拗に狙われるし、車に引かれそうになって十七夜さんと離れちゃうし、挙句さっきの魔女に捕まって今にも死にそうですよ。

 

 

「……もう、お終いですよ?! 誰か、助けて下さいです!!」

 

「そっか、じゃあ助ける」

 

「……へ?」

 

 

 目の前に現れたのは一人の魔法少女。

 無造作に伸ばされた艶のある黒髪に、燃えるように赤褐色の瞳、端正な顔立ち。

 同性であっても見惚れるような容姿。

 纏っている衣装は、昔の踊り子が着るようなどこか扇情的な物で、淡い黄色に真紅のラインが入っている。

 

 

 武器は特に持っておらず、目の前に居る彼女は、素手でボクが苦戦していた魔女の使い魔の攻撃を受止め、蹴り一発で沈めた。

 

 

「怪我はない? 大丈夫?」

 

「は、はい。大丈夫です…」

 

「良かった。俺の名前は藍川結翔。……東のテリトリーの子だよね? 十七夜さんから依頼されて助けに来たよ」

 

「か、十七夜さんから?! ……あれ、もしかしてここってもう……西のテリトリーです?」

 

「うん。ここは水名区で、西のテリトリーだよ。随分逃げてきたんだな」

 

 

 優しそうな笑顔で言う結翔さんは、ボクの方を見ながら迫り来る使い魔をワンパンで倒し、徐々に数を減らしていく。

 ……十七夜さんが言うには、西のテリトリーの魔法少女は厳しい…って感じだったのに、あんまりそうは感じないです。

 

 

 強いて言うなら、結翔さんの強さにドン引きしてくらいです。

 そのまま、結翔さんはボクを守りながら、ずんずんと進み魔女の結界の奥深くまでやってきた。

 魔女が遠目に見えるようになった所で、結翔さんは変な構えをしだした。

 

 

 

 両の手で半円を描くように頭上まで持っていき、丸いナニカを落とし込むように胸に手を下ろす。

 すると、胸の辺りにはハンドボールくらいの炎球? 光球? が作られており溜まったそれを、野球ボールを投げるように魔女へと投げつけた。

 

 

「デラシウム光流!」

 

 

 技名かなにかだろう、そう結翔さんが叫んで投げつけたデラシウム光流は、魔女へと当たると内側から爆発するように、魔女は砕け散る。

 

 

 呆気ない、ボクを殺そうとした魔女はあまりにも呆気ない終わり方でいなくなった。

 結界が解けると同時に、ボクと結翔さんは魔法少女への変身を解除した……が、眩い光が引いた後、目の前に居たのは結翔さんではなく──結翔くんだった。

 

 

 沈黙、後に絶叫。

 見惚れるような美人──美少女だった結翔さんは、見惚れるような美少年に変わっていたのだ。

 見惚れるような…と言う部分は変わってないが、それ以上に変わっていはいけないものが変わっていた。

 

 

「きゃぁぁああああ!!!」

 

「……あ。やっべ、やらかしたかなぁ…」

 

「おと、おとおと、男の子!? だだだ、だって、さっきまでは女の子で……て言うか魔法少女なのに男の子って…! ああ、もう、やっぱり今日は最悪の日ですよ!!」

 

「…えぇ、助けたのに、この言われようって……」

 

 

 ボクがそうやって騒いでいると、鉄のタライが頭に落ちてきた。

 ……痛い…ギャクチックなのに、普通に痛い。

 二重の意味で最悪だ。

 やっぱり、占いの結果を信じて、家を出ない方が良かった。

 

 

 帰るにしても、ここから家へ帰るには時間が掛かる。

 

 

「うぅぅ…家に帰りたいです」

 

「…なぁ、それだったら家に来ないか? ……いや、あそこは俺の家じゃないけど」

 

「…へ、変な事しませんよね?」

 

「する訳ないでしょ。怯えてる女の子にそんな事するやつ、ヒーローじゃないし」

 

 

 彼はそう言うと、「着いてきて」と言わんばかりに手招きをして歩き出した。

 ボクはまだ、自分の名前すら言ってないのに、家に上げようとするなんて……お人好しが過ぎるんじゃないだろうか? 

 

 

 …でも…まぁ、悪い人じゃない…のかな。

 

 

「ボクの名前、まだ言ってないですよ」

 

「……聞き忘れてた。名前は?」

 

「安名メル! それがボクの名前です!」

 

「さっきも言ったけど、藍川結翔。藍川でも、結翔でも好きな方でどうぞ。渾名は自由」

 

「じゃあ、結翔くんで!」

 

「了解。それじゃあ、俺はメルって呼ぼうかな。よろしく、メル」

 

「はい、よろしくです!」

 

 

 まだあって間もなくて、お互いの事を名前以外まともに知らないのに、何故か十年来の親友のように、彼とは上手くやっていけそうな気がした。

 これも、一重に結翔くんの人柄の影響だろうか? 

 

 

 取り敢えず言えることは二つ、結翔くんは顔と性格がすこぶるイイ、それだけだ。

 

 

 ──────────────────────

 

 二度目の始まり。

 彼女たちの行く末は地獄と決まっている。

 だが、それまでの道のりは儚くも温かい、天国のようなものだった。

 

 

 彼はそれを、しっかりと憶えている。

 何せこれは、彼の記憶の一部なのだから。




 次回もお楽しみに!

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