無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 鶴乃「前回までの『無少魔少』。メルとの出会い、結翔たちの一年半の様子がざっくりと語られたね」

 結翔「本当にざっくりだったな。もっと詳しくやっても良かったけど…結構尺とるからな」

 まさら「メタいわね」

 こころ「メタいですね」

 メル「まで序盤も序盤で、ラブ展開もコメ展開も薄めですしね。しょうがないですよ」

 ももこ「次回からは頑張るらしいぞ」

 結翔「受験生の明日から頑張るや、ニートの明日から本気出すと同じくらい説得力がないな。…まぁ、皆さんは楽しんで三十五話をどうぞ!」

 


三十五話「運命ってやつだね!」

 ──メル──

 

「占い…?」

 

「そうです! ボクの占いは百発百中。悩み事があればどんどん来て欲しいですよ!」

 

「悩み事…ねぇ。あんまねぇなぁー。…あぁ、最近、みんなとの距離が近くなったのは良いんだけど、偶に俺を男だと忘れて話しかけてくるのが嫌だな」

 

「微妙です…。もっと何かないんですか?」

 

 

 ボクの言葉に、結翔くんはうーんと首を傾げるだけで、他の悩みは出てこなさそうだった。

 …と言うより、さっきの悩みはボクじゃなくて他の人に言って欲しいですよ。

 

 

 結翔くんが居る、七海先輩のチームに入ってから二週間。

 彼との距離は縮まりに縮まり、他のチームメンバーとも仲良くやれている…気がするです。

 七海先輩はクールだけど優しい人で、みふゆさんは良く言えばおおらか、悪く言えば大雑把な人で、ももこさんは明るくて元気な人。

 

 

 そして、結翔くんは底なしの光の人。

 明るくて、優しくて、元気で、周りに光を振り撒いてくれる人。

 

 

 まだ、何回かしか一緒に魔女を狩ってないが、ボクは既に二度は彼に命を救われてるですよ。

 誰かの為に命を懸けられる、そんな綺麗な自己犠牲が出来る彼を…少し怖く感じる時もある。

 

 

 でも…まぁ…善い人なのには変わりないし、光なのは変わりない。

 偶に良く分からないボケをかましてくるが……

 

 

「もういいですよ! ボクが勝手に占うですよ! 当たって驚いて下さい!!」

 

「…いや、良いけど。お前の占いと俺の未来視には近いものがあるから、もしかしたらお前の占い、俺は避けられるかもしれないぞ?」

 

「……マジです?」

 

「うん、マジ」

 

 

 短い返事の後…ボクは何も聞かなかったかのように、即興で頭に浮かんだオリジナルのメソッドを使い、バックの中から取り出したタロットカードで占いを始める。

 流れるような手付きで占いを始めたボクを、結翔くんは珍しそうなものを見る目で見つめた。

 

 

 数秒の静寂が流れ、出た答えは──

 

 

「むむむ、今日の結翔くんは乗り物に注意した方が良いですよ! 特に自転車、車レベルの速さの自転車に突っ込まれる可能性が高いです!」

 

「死ぬほど具体的な占いだなっ!? 普通、乗り物に注意…で終わりじゃねぇのかよ!!」

 

「ボクの占いは、細かい所までハッキリすることが多いですよ。そう言う意味で、結翔くんの未来視に似てるですね」

 

「似てるなんてレベルじゃねえ!? まんま同じじゃねぇか!! 怖いわ、お前は俺の人生の台本でも持ってんのか?!」

 

「そんな事聞かれても…困るです」

 

 

 態と恋する乙女っぽく、恥じらいを持ちながら顔を逸らすフリをすると、結翔くんは苦笑しながら呟いた。

 もういいよ、と。

 からかい過ぎたですかね? 

 

 

 けど、結翔くんも悪い所はあるですよ。

 ボクの占いが外れるかもしれない…なんて。

 有り得ない…それこそ有り得ないですよ。

 

 

 どれだけ…どれだけボクがこの占いに悩まされてきたか…

 

 

「こらそこ! なんで止めないんだよとか言わないですよ! ボクと言えば占い、占いと言えばボク。そんな相互関係なのですよ!」

 

「…誰に向かって喋ってるんだ?」

 

「え? 結翔くんですけど?」

 

「言ってねぇよ! 思ったけど…少しだけ思ったけど。一言も言ってねぇから!」

 

「…可笑しいですね、そしたらボクは誰に向けて言ったんですが?」

 

「俺が聞きてぇんだよ! なんでお前が疑問形で俺に聞くんだよ! 逆だろ、普っ通逆だろ。俺がお前に聞く所だろ!」

 

 

 キレ気味なツッコミをかます結翔くんを華麗にスルーして、ボクは学校の宿題に取り掛かる。

 ……前に、一つだけ疑問に思った事を聞いておこう。

 

 

「対処法は、聞かないんですか?」

 

「あぁ? 別に良いよ。ぶっちゃけ、俺よりぶつかってくる奴の方が災難だからな。下手しなくても、チャリはぶっ壊れるし」

 

「相手の心配だけ…ですか?」

 

「まぁな」

 

 

 …時々見える、彼の少し怖い部分。

 それが、今見えた。

 こういう所だ、こういう、本来なら自分の心配、良くて相手の心配を少しする程度なのに、結翔くんは相手の心配だけしかしてない。

 

 

 まるで、自分の命なんてどうでも良いと言うように。

 見知らぬ誰かの事を心配する。

 美しい自己犠牲にも限度がある…ボクはそう…思った。

 

 

 ──結翔──

 

 メルとのやり取りが落ち着いた後、暇を持て余してスマホを弄っていた所、やちよさんに頼み事をされた。

 頼み事の内容は、テリトリーを破りまくり、強い相手に決闘を申し込む魔法少女、通称決闘少女を、調きょ──ではなく教育の為に捕縛してきて欲しいとの事。

 

 

 なんでも、東のテリトリーの長である十七夜さんも手を焼いているらしい。

 早急に事態に対処するように…と。

 咲良さんから幾分か事情は聞いていたし、組織の方から任務として依頼されるのも時間の問題だった。

 

 

 頼み事だから強制はしない、と言われたが、俺は頼み事を断れる質じゃない。

 知っててやったのか、本当に善意でそう言ってくれただけなのか……半々だな。

 

 

 面倒事の予感しかしないが、俺はその決闘少女をを探す為に外に出た。

 良く現れるのは参京区だと聞いていたので、その辺をフラフラしていると……

 

 

「…んんん??」

 

 

 少し奥に見える坂の方から、物凄いスピードで下ってくる自転車が見えた。

 有り得ない事に、隣を走る車と並走どころか、それ以上の速さで走っている。

 そこまで傾斜が高い坂じゃないので、あれ程速度が出るなんて可笑しい。

 

 

「原付…じゃないよな」

 

 

 態々千里眼まで発動して良く見ると、それが正真正銘自転車だと言う事が分かった。

 ……しかも、乗っているのは俺やももこ、やちよさんが通っている神浜市立大附属学校の制服を着た少女。

 サイドテールに纏めた明るい茶色の髪と、情熱の炎を幻視させる赤橙色の瞳、あどけなさがあるものの整った顔立ち。

 

 

 特徴と言えばそんなものだろうか。

 …あと、一つ付け加えるなら、見目麗しい美少女だと言う事だ。

 なんで、俺の周りには綺麗な人や可愛い奴が多いのか…? 

 正直に言って目の毒だ…まぁ、偶に目の保養にもなるが、基本毒だ。

 

 

 これ以上目が肥えると、並大抵の女性に関心を抱けなるかも…と、どうでもいい心配をしていると、辺りをツンザクような大声が──絶叫が聞こえた。

 

 

「とーめーてー!?!?」

 

「…前言撤回したくなってきたな。美少女だけど、美少女とは言い難い」

 

 

 見目麗しい美少女から、残念美少女に認識をチェンジして、近くまで来た自転車を静止の魔眼で止めた。

 …恐らく、それが最初の間違いだった。

 自転車を止めたのは良かったのだ、()()()()止たのは……

 魔眼の対象外だった少女は、慣性の法則に従い前方に投げ出され、何故か俺に向かって落ちてくる。

 

 

 …しかも、出前のバイトでもしていたのか、アルミ製の出前缶も次いでと言わんばかりに落ちてきた。

 

 

 やっべ。

 口からそう漏れる前に、少女に押し倒されるような形でアタックされ、挙句顔面に出前缶が着地した。

 不幸中の幸いは、少女が俺の胸ら辺にアタックしてきた事だろう。

 お陰で、彼女に出前缶が当たることはなかったが…やばいちょっと泣きそうなくらいに痛い。

 

 

 どこまで強くなっても、痛みは慣れない。

 アルミ製の缶とは言え、中に食器が入ってればそれなりに重いのでそこそこ痛いのだ。

 

 

「……痛てぇ」

 

「ごごご、ごめんね! 重かったよね、痛かったよね! 本当にごめんね! 久しぶりの出前で気分がうなぎ登りで…調子乗っちゃって…」

 

「…大丈夫だから、一旦離れて」

 

「う、うん…」

 

 

 少女に離れてもらい、顔面に着地した出前缶をどかす。

 少し痛みは残るが、気にしても意味は無いので、静止の魔眼で止めていた自転車を動かし、壊さないように前輪を掴んで止める。

 …もし、彼女が普通の少女だと分かった暁には、記憶処理を頼む事になるがしょうがないだろう。

 

 

 手の平の皮が少し剥けて、ヒリヒリと痛むがすぐに再生し元通りになる。

 それを、少女はポケ〜っとした表情で見つめていた。

 …流石に、俺がヤバイ奴だと気付いたのだろうか? 

 説明するのが面倒臭い…が、少しは説明しないとダメだろう。

 

 

 そうして、俺が口を開こうとした途端、彼女が限界まで詰め寄ってきた。

 

 

「ねぇねぇねぇ!? 今のってなに! 凄い、凄いよ! もしかして…君──」

 

 

 …まさか、今ので俺が魔法少女だって──

 

 

「超能力者!?」

 

「…惜しい」

 

「え? え? え? どこが惜しいの!? どこ、どこが惜しいの!? ねぇねぇー!」

 

「色々とだよ…はぁ…」

 

 

 察しが良いのか悪いのか…彼女は、俺の事を魔法少女ではなく超能力者と勘違いしてしまった。

 超常的な力を使う、そう言う意味では間違ってないが…惜しい。

 そこまで察せるのなら、自転車の前輪を腕力だけで止めた所も異常に思ってくれ……いや、男の時点で難しいか……

 

 

 取り敢えず、一応警察官なので、どうしてああなったのか理由を聞いた。

 

 

「…さっきも言ったけど、久しぶりの出前で気分がうなぎ登りで……。わたしの家、中華飯店『万々歳』って言うんだ。聞いた事ある?」

 

「あぁ…五十点料理だっけか? 可もなく不可もなくの飯屋だって聞いてる」

 

「だよねぇ……」

 

「…なんか、ごめんな」

 

 

 数分の間、静寂がその場を支配したが、何とか少女立ち直り自己紹介を始めた。

 

 

「わたしの名前は由比鶴乃! 最強の由比鶴乃だよ! よろしくね!」

 

「俺の名前は藍川結翔。神浜市立大附属学校の中等部三年生。よろしく」

 

「はっ!? 結翔も同じ学校だったんだね! 偶然会った超能力者の子が同じ学校の後輩だったなんて……これはアレだね! 運命ってやつだね! ふんふん!」

 

 

 鼻息荒げにそう言う彼女──由比鶴乃は、コロコロと表情を変えて、最後にはニコニコとした人懐っこい笑みを浮かべた。

 俺の勘と推理が間違いなければ、彼女は十中八九魔法少女。

 まず初めに、普通の少女じゃ、あの坂の傾斜で車を追い抜くのは難しい。

 歳をとったおじいさんでも無理なく歩けるレベルの坂道だ、緩やかなものだろう。

 

 

 あと一つ、自転車を止めた時に気付いたが、チェーンが緩んで外れかけていた。

 新車のようで、見た所買って一ヶ月から二ヶ月。

 普通の女子高生はどんなに荒い乗り方をしても、買って一ヶ月から二ヶ月でチェーンが外れかけるほど緩むことは無い。

 

 

 純情そう、と言うか正直そうな彼女に、鎌をかけるのは意味をなさない可能性が低い……

 当たって砕けろ作戦*1で行くしかない…か。

 

 

「…由比さんは──」

 

「鶴乃でいいよ? 鶴乃おねーさんでもいいよ?」

 

「鶴乃はさぁ、魔法少女って知ってるか?」

 

「鶴乃かぁ……。!? ちょ、ちょっと待って、今なんて言ったの?!」

 

「だ、だから、魔法少女について知ってるかって」

 

 

 俺が聞く限り、本日二度目の驚きの絶叫を上げた鶴乃は、まくし立てるように、俺に質問攻めをする。

 

 

「なんで、なんで結翔がそれを知ってるの! どこで知ったの!? と言うより、どうやって知ったの!? なんでわたしにそんなの聞いたの!? 答えてよ!!」

 

「近い近い…と言うより、いきなりまくし立てるなよ。返し辛いだろ」

 

「ご、ごめん…」

 

「…一から話すから少し長くなるぞ」

 

 

 俺は自分が魔法少女になったと経緯や願いの内容、加えてその後の道程を話した。

 かなえの死は……幾分か濁して。

 伝えられるだけ伝え終えると、泣きながら抱き着いてきた。

 

 

 どうしていいか分からず、彼女の背中を叩きながら、俺は泣き止むのを待った。

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん…。結翔は…さ、辛くないの?」

 

「辛いよ。だけど、アイツの死に向き合わない方が余っ程辛いから」

 

「そっか…。ねぇ、結翔って強いんだよね? …決闘しようよ、わたしと」

 

「おいおい…待てよ、まさかお前が決闘少女か!?」

 

「まぁね。最っ強の魔法少女を目指してるから、その為に。…もし、わたしが勝ったら、結翔を守らせてもらう」

 

 

 強い信念を感じる瞳で、鶴乃は俺を見据える。

 話に脈絡がない気がするが、彼女にとっては違うのだろう。

 …望むところだ。

 誰であろうと、負ける気はしない。

 

 

 ヒーローとして、負ける気訳にはいかない。

 いつもの建設放棄地にて、俺たちは戦った。

 今までやってきた対人戦の中で、一番神経を使う戦いだったような気がする。

 

 

 鉄の扇──鉄扇に火を纏わせてブーメランのように飛ばしたり、そのまま打撃や斬撃に持ち込んだり、大技として炎の渦を打ち出してきたりもした。

 お互い全力で戦って…勝ったのは俺だった。

 

 

 昔は全ての属性魔力に適性があったが、今は違う。

 青と緑、水や氷、木や風の力は上手く使えなくなってしまったし、固有の能力も一部を除いて封印された。

 一重に弱体化が原因だろう。

 だがしかし、悪い事ばかりではなかった。

 

 

 昔より、赤、炎との相性が良くなったのだ。

 他にも、黄と紫、光や電気、闇や毒との相性も良くなった。

 だからこそ、俺は鶴乃に勝つ事が出来る。

 

 

 勝ったあと、鶴乃にどうして強いのか聞かれ、俺が師匠──やちよさんのお陰だと言うと、紹介して欲しいと言われ、次の日から彼女もみかづき荘のメンバーとなった。

 

 

 少しづつ、昔のように明るい世界が俺の周りで広がっていく。

 それが少し嬉しくて、怖かった。

 ……次は何時壊れるのか、分からないから。

 

*1
正面突破や直接手段に頼る作戦




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