まさら「不調と言うよりか、今にも死にそうな感じよね」
こころ「うん。いっつもボロボロになって戦うイメージがあるけど、ここまで来ると…なんか…ね」
結翔「あの時は…本当に辛かった。でも、生きてる実感がある分マシか。痛いってことは、まだ生きてるって事だしな」
ももこ「……と、取り敢えず、今の発言は聞き流して三十七話をどうぞ!!」
──やちよ──
「結翔の様子が可笑しい?」
「そうなんだ。…それで、みんな何か知らないかと思って…」
みかづき荘のいつもの溜まり場で、結翔を覗いた五人が集まって、今にも泣きそうなももこの話を聞いていた。
なんでも、ここ最近の結翔の様子が可笑しいらしい。
…私も、そう言われると、最近の結翔には違和感を覚える部分はある。
「気の所為かもしれないけど、最近のあの子は私の料理を食べても、ただ美味しいって言うんじゃなくて、美味しいと
「…アタシの時も同じです」
「可笑しいと思う点ですか…。ボクとしては、最近の結翔くんは占いの付き合いが悪いですよ。しかも、偶に何か我慢するように顔を顰めてるです」
「あー!? わたしもあるよ、可笑しいと思う所! 最近の結翔の笑顔は、作り物みたいな感じが凄い!」
私の話に続くように、メルと鶴乃が自分自身が気付いた可笑しい思う点を言う。
一人一人、違う事を言っているが、そのどれもに共感するように全員が頷く。
仲間や友達、家族として近い距離感で接してきたからこそ、誰かに言われればそれに気付ける。
話し合いは続き、探せば探すほど、結翔の可笑しい点や違和感は湯水のように溢れ出てくる。
ここでようやく、みんなが危機感を持ち始めた。
今のまま、結翔を放置するのは危険だ…と。
そして、それを後押しするように、みふゆが最後の爆弾を投下する。
「ワタシの勝手な勘違いじゃなければなんですけど…」
「何かあるの、みふゆ?」
「教えてください! みふゆさん!」
「…分かりました。皆さんの話を聞いて思い出したんです、勘違いや見当違いかもしれませんが…。…最近の魔女狩り、結翔君はあの自爆技を、ほぼ絶対と言える程に使用してるんじゃないか…と」
…みふゆ、あなたの話は見当違いなんてものじゃないわ。
もしかしたら、核心を突くような鋭いものよ。
「…ありがとう、みふゆ。大体の答えは分かったわ」
「ほ、本当かよ! やちよさん!?」
「えぇ。…結翔にね、約束をしたの。自爆技は危険だから、魔女狩り一回に対して一度まで…って」
「…それが、答えにどう繋がるんです」
「…!? まさか、やちよししょー!?」
「そのまさかよ。結翔は人命が掛かってる時は、基本私の言う事なんて聞きやしないわ。だけど、自爆技に関しては違う。あれは、使えば使う程に体力を大幅に消耗する、デメリットも多い技なの。だから、結翔は大人しく、律儀に従ったわ。……でも、もし…もしの話しよ。魔女狩り…それが、一日に一回じゃなかったら?」
「…何度も、自爆技を使える──いや、使うって事か…」
威力に対してデメリットは相応しいものだ。
体力の消耗は激しいし、戦闘を続行するのだって、経験を積んでいても難しい。
なのに、結翔はさも当然のように戦闘を続行するし、仲間がピンチになったら庇って怪我をする。
継続して戦闘ができるのなら、結翔は全く以て自己を省みない戦い方をする──彼はそう言う人間だ。
「私の方から、結翔に一週間魔女狩りも仕事も休むよう言っておくわ」
「いや、アタシの方から──」
「ももこじゃダメよ。あなた、あの子に強く言えないでしょ?」
「──っ!? …そうだな。やちよさんに…任せるよ」
幼馴染だからこそ遠慮無くものを言える…が、それは時に通用しない。
それに加えて、ももこはこう言う時、あまり強く言えないタイプだ。
結翔の思いを一番理解し、尊重してるからこそ、強く言う事は出来ない。
一番の理解者、と言うのは最悪な事に重すぎる足枷になるのだ。
…ももこの為にも、早くあのバカヒーローを一喝しなければ。
私はそう決意した。
──結翔──
昨日はみかづき荘に来るなと言われたのに、今日は来いと言われた。
正直訳が分からなかったが、来いと言われて行かない訳にもいかないので、俺は今日やる筈だった組織の仕事を明日にスパーキングして、みかづき荘にやって来た。
中に上がると、なんと言うか……言い表し難い雰囲気が溜まり場──と言うよりリビングのドアから漏れ出ている。
入りたくない……物凄く入りたくないが、俺は意を決して部屋のドアを開けた。
すると、明らかに怒ってますと言った顔付きのやちよさんが、ソファに腰掛けながら俺を睨みつける。
…俺、そんな不味い事したか?
……いや、心当たりは大いに有るが…バレてない筈。
恐る恐る、ドアをくぐり中に入ると、彼女は手招きをして俺をもう片方のソファに座らせる。
そして、俺が座ると同時にこう言った。
「あなた、明日から一週間、仕事と魔女狩りを休みなさい」
「……はっ? いやいや、何言ってるんですか!? そんなの出来るわけないでしょ!?」
冗談じゃない。
魔女狩りも仕事も、どっちも休めだなんて……
それじゃ、街を守れない。
食ってかかるように、俺は叫んだ。
「…冗談じゃないわ。あなたも、思い当たる節や心当たりの一つや二つ、有るんじゃない?」
「……それとこれとは話が別です。仕事も魔女狩り、人命が懸かってるんですよ? 休める訳ないじゃないですか!!」
あくまで、俺の意見を聞く気は無いのか、やちよさんは徐に立ち上がった。
そして、立ち上がった次の瞬間、彼女の体に靄がかかり姿を変えていく。
靄が晴れた後…俺の目の前に居たのは、やちよさん──ではなくみふゆさんだった。
やられた…騙された。
まさか、俺の不調を探る為に幻覚まで使われるなんて……
どこまでも冷静に、七海やちよと言う人間は頭が回る。
確実に、今ので俺の不調はバレた。
「少し前のあなたなら、この程度の幻覚しっかりと見破れた……そうじゃないかしら?」
「……………………」
「あのね、結翔。私たちはあなたに意地悪がしたい訳じゃないの。それぐらい分かるわよね?」
彼女の言葉に、押し黙ったまま俺はこくりと頷いた。
分かっている…そんなの分かっている。
だけど、一週間…一週間で何か大変な事件が起こるかもしれない。
魔女の所為で誰かが死ぬかもしれない、異能力者によって街が滅茶苦茶にされるかもしれない、何が起こるかなんて誰にも分からないのだ。
怖い…怖い…怖い…。
誰かが死ぬのはもう嫌だ…嫌なんだ。
力があるのに、救えないのが嫌なんだ。
伸ばした手で誰の手も掴めないのが、嫌で嫌でしょうがない。
大切に思われてるのは分かる、心配してくれてるのも分かる。
だけど、納得出来るかとは話が別だ。
反論する、頭を必死に回して反論する。
「…俺の仕事は誰がやるんですか? 危険ですし、素人がやれるもんでもない。魔女狩りはどうするんですか? 幾ら魔女の数が減ったからって、被害者が0になった訳じゃない。俺がいなくなったら、戦力だって──」
「仕事は私とみふゆでやる。魔女狩りだって、あの子たち三人でも務まらないことはない。あなたが居なくても、十分回せるわ」
「で…でもっ!!」
「でももなにもないのよ! いい加減気付きなさい! 全部全部、あなたの為に言ってるのよ!?」
「ワタシからも、お願いします…」
やちよさんが怒鳴って、みふゆさんが頭を下げて……俺がノーと言える訳がない。
従う以外の道は、完全に絶たれていた。
良く知ってるからこそ、俺の行動パターンは理解される。
少し間を開けて、やちよさんが再び喋り始めた。
「体の調子はどうなの? どこまで悪いか…正直に話しなさい」
「…吐血と一時的な味覚障害。医者からは、過度な身体的疲労かストレスが原因じゃないかと」
「過度な身体的疲労かストレス…ねぇ。大方当たりじゃない? 自爆技の使い過ぎで、生と死の魔眼でも完璧に治しきれなくて、治しきれないまま使うから、疲労やストレスが溜まってこうなった…でしょ? 一日、最高で何回使ったの」
「……三回」
「嘘を付かない。少なくとも五回は使ってるわね?」
…なんで、本当に何でもお見通しなんだよ。
俺の私生活監視してるんじゃないか?
そう疑いたくなるような、鋭い指摘。
勿論、三回で済むわけない。
本当は──
「…八回…です」
「よろしい。…明日から、鶴乃かももこかメル、三人をあなたの監視に付けるわ。まぁ、もしかしたら、全員かもしれないけど」
「…分かり…ました」
「ゆっくり休みなさい。学校には連絡を入れておくから」
大人しく、俺は頷いた。
逆らってもいい事なんてないし、これ以上、やちよさんやみふゆさんに悲しい顔をさせる訳にはいかない。
…久しぶりの休みだ、偶にはゆっくり羽を休めよう。
俺はそう決めて、一週間の安静期間を過ごす事にした。
次回もお楽しみに!
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