結翔「ハブったって言い方に悪意を感じるんだが…」
こころ「まぁまぁ、良いじゃないですか、本編出れてるんですから」
まさら「そうよ、私とこころなんて一ミリも出てないのに」
結翔「そりゃあ過去編だからね!?お前らが出られるわけないでしょ!」
鶴乃「わたしたちは出れて良かったねぇ、ししょー」
やちよ「別に、喜ばしい事でもない気がするけど…」
みたま「わたしだって出番が欲しいわぁ!」
メル「…なんだか、あらすじ紹介の場より、ただの愚痴の言い合いコーナーになってる気がするですよ」
かなえ「気に…しない方がいい。…皆さんは、楽しんで……三十八話をどうぞ」
──ももこ──
六月も中旬、梅雨入りをし、ジメジメとした嫌な空気が覆う夏の日。
本来なら、学校でそのジメジメとした嫌な空気と暑さに耐えながら、授業を受けている筈だが、アタシとメルは二人して結翔の家に居た。
約束の最初の日、監視のためにアタシたち二人は態々学校を休んで、結翔の家に訪れている。
鶴乃も来る筈だったが、狡休みは出来ないと断られてしまった。
…なんだかんだ、結翔に似て真面目な奴だから、しょうがないと言えばしょうがない。
まぁ、そんな訳で、結翔の家に朝から行った訳だが酷いものだ。
しっかりとベットで寝ろと言ったのに、リビングのソファで寝てやがる。
テーブルに散らばった書類や、置きっ放しのノートパソコンを見る限り、昨日のギリギリまで仕事をしていたのだろうか?
やっぱ…コイツバカだろ。
あんだけ休めって言われたのに、約束の裏を突いてギリギリまでやるなんて……
呆れからか、アタシは声にならない小さい嗚咽とため息を漏らし、寝ている結翔の脳天にチョップをかます。
「痛てぇ!? 何すんだよ!」
「それはこっちのセリフだバカヒーロー。限界ギリギリまで仕事しやがって……はぁ……」
二度目のため息を漏らすと、アタシはテーブルに散らばった書類をかき集めクリアファイルにしまい、ノートパソコンの上に載せ端に寄せる。
その後は、手際良く、作ってきたサンドイッチが入ったタッパーをテーブルに置き、キッチンからコップや牛乳を持ってくる。
アタシが朝食の準備をしている間に、メルに結翔の顔を洗いに行かせ、時間の無駄を作らせない。
特にこれと言って急ぐ用事はないが、朝食はしっかりと朝に食べた方がいい。
今は午前九時過ぎ、そろそろ食べないと昼食が入らなくなる。
見たいと言うであろう結翔の為に、テレビをつけてコップの位置を調整する。
結翔の隣は──アタシで良いか。
メルと結翔は対面の方が話しやすそうだし。
適当に座る位置を決めて、二人が顔を洗ってくるのを待つ。
二分もしない内に、すっかり目が覚めた結翔とメルが帰ってきた。
…少しだけメルの耳が赤い気がするのは…気の所為だろうか?
「……おはよう」
「おはよう。ウチで朝食は作ってきたから、コップと牛乳だけ貰った」
「ん。さっきまで、眠くて頭が回ってなかったから聞けなかったけどさ…なんでお前ら居んの?」
訝しむような視線でアタシとメルを見る結翔。
大丈夫、こう言う時の為のしっかりとした理由は、二人で口裏を合わせてある。
その理由は──
『おばあちゃんが危篤になったって言って休んだ(ですよ)』
「何勝手におばあちゃん殺そうとしてんだっ!? お前らのおばあちゃんはピンピンしてんだろ!!」
「他に良い理由が無かったんだよ……。じゃあ、あれか? アタシたちは女の子の日なので休みます、って言う言葉を担任に言えば良かったのか?」
「振り切ってるよっ! お前らのアクセルは何時もMAXか!! もっとマシなのさぁ…あったじゃん。例えば、風邪気味でぇ…とか──」
「ボク! ボクは良いの思いついたですよ!」
アタシの投げやりな返しに結翔はツッコミ。
ツッコミの後に言った例えにメルが乗っかる。
風邪気味が良いなら、女の子の日って女子の中では無難だと思うんだけどなぁ……
「言ってみろよ、メル」
「ボクが思いついた理由は──占いの結果が悪いので休みます! ですよ!」
「うん、それを言うのはお前だけだし。絶対に普通の人には通じないから、二度とその理由で学校を休もうとするな。さっきの女の子の日の方がまだマシだ」
そんなこんなで、学校を休む無難な理由の議論をしながら朝食は進んだ。
結翔はツッコミながらも、時折テレビを見てニュースを確認したりしていたが、めぼしいものは無かったのかすぐに食事に意識を戻していた。
食事後はクーラーの効いた涼しく快適な部屋で、暇を潰すためにどうしようかと駄弁っていると……
「……あれ? これってTwitch! 天々堂の最新ゲーム機のTwitchじゃないですか!? スマプラも有ります!!」
「あぁ、そういや、ももこんとこの弟たちにせがまれて買ったんだっけ? やるか? 暇潰しには持ってこいのゲームだぞ? ……友情が崩壊するかもしれんが」
「やるやる! やるですよ! …ちょっと待って下さい?! 最後、最後なんて言いました?!」
「大丈夫、大丈夫だよメル。アタシたちの絆は、そう簡単に壊れないって!! ……まぁ、アタシは結翔とこのゲームをやった後に大喧嘩した事あるけど」
「フォロー! フォローが雑です!? なんで二人共最後に爆弾落とすんですかっ!!」
メルが偶然発見した天々堂の最新ゲーム機であるTwitchと、同じく最新ソフトであるスマプラspecial。
少し前に、ウチの弟たちにせがまれて結翔が買った物で、暇な日は良く遊びに来てやっている。
かく言うアタシも、弟たちを家に帰した後、結翔と二人で世界大戦に潜ってる事もあったりなかったり……
その関係で、アタシと結翔はお互いにそこそこ強いが、負ける時はトコトン負けるので、一度大喧嘩した事がある。
…まぁ、敗因を押し付け合って喧嘩になったと言う、幼稚な理由なのだが…言わなければ良いだけだ。
Twitchのリモコンは取り外し可能だが二個までしかないので、予め買っておいた予備リモコンを使い、三人での大乱闘が始まる。
スマプラは内輪の中でやるなら、みんなでワイワイできるパーティ型格ゲーで、使えるキャラは大抵が天々堂のキャラ、一部別ゲーのキャラも居て、バラエティーに富んでいて、中々に楽しくできる。
アイテムも豊富で一発逆転だって不可能じゃないのが、このゲームの良い所。
初心者でも、上級者に勝てる可能性が1%は確実に残るゲームだ。
……本当のプロが相手だと、アイテムが有っても勝率なんて無いに等しいが、言わぬが花だろう。
テレビの大画面にゲームの画面が映し出され、キャラ選択に移行する。
「アタシは、どうしようかなぁ…」
「ボクはアイクで行きます! 重量級のパワーを見せてあげますよ!」
「俺はデデデで行こーっと」
「…お前…ガチかよ。なら、アタシもピチューで行こ」
アイクはあまり勝手が分からないが、ピチューはコンボキャラで繋げに繋げれば、十秒そこらで30%ほどダメージを与える事が出来るのだ。
ゲームの仕様上、%が増えれば増えるほど吹っ飛びやすくなり、場外に吹っ飛ばせれば勝ち、相手の残機──ストックを減らせる。
因みに、結翔が使うデデデはゴルドーと言う自分の配下を飛ばしてくる攻撃が厄介で、%をそれで貯めた後に下Bの必殺技で大体の敵はやれる。
見た所、メルは初心者だ。
それ相手にガチで行こうとしているアタシと結翔。
…アレだな、ハッキリ言って弱い者イジメしてるみたいで、なんだか可哀想になってきた。
だって、案の定、結翔とアタシにボコられて、最初に三ストック全部無くなって退場してるもん。
……うわぁ、見てるよ。
今にも泣き出しそうなのを必死に我慢して、睨み付けてるもん。
だけど…うん…余計に可哀想な事に、顔が可愛いからあんまり怖くないし、泣きそうなのを必死に我慢してるのが、可愛さに拍車をかけてるな。
ちょっとだけモフりたい気分だ。
そうして、アタシが遊んでいたのもあって、一回戦目は結翔の圧勝。
一ストックは削れたが、その後は削れずアタシが負けた。
そして、試合が終わると同時にメルが猛抗議をしてきた。
「ズルいですズルいです!! 二人揃って強いじゃないですか!? ボク、全然攻撃できないままやられたですよ!!」
「だって、本気でやらないと失礼だし」
「アタシも、やる以上負けたくないし」
「ぐぬぬぬぬ。良いです! 鶴乃さんが来てから相手してもらいますから!」
……それは、止めた方がいいぞ。
鶴乃って、普段は猪突猛進の熱血バカみたいな感じだけど…アイツにあれでも学年トップの成績だし、運動神経抜群でゲームとかでも負けなしだ。
アタシと結翔がタック組んでようやく勝てるレベルだし…
「…メル。鶴乃は止めとけ、痛い目見るぞ」
「何を言ってるんですか! 鶴乃さんですよ! 流石のボクでも勝てるですよ」
「お前は知らないかもしれないけど、アイツはあれでも相当スペック高いぞ。成績は学年トップだし、運動神経抜群だし、加えてゲームでアイツが負けた所を、俺は数えられる程しか知らない」
「えぇ〜!! そんなぁ…じゃあ、ボクは今日、一勝も出来ないってって事ですか?」
アタシと結翔はそっと、顔を逸らした。
…なんと言うか、居た堪れない雰囲気が溢れていたから。
結局、この日、メルがスマプラでアタシたちに勝つ事はなかった。
──結翔──
時刻は十時過ぎ、メルと遅れてやって来た鶴乃は帰り、ももこだけが残って俺と駄弁っていた。
月夜が輝くいい時間、俺たちが眠りに就くのもそろそろだろう。
寝支度に入ろうと、ソファを立ち上がった瞬間、玄関からドアをノックするような音が聞こえた。
…インターホンがあるのに、態々ノックする理由はない。
もし理由があるなら、姿を見られたくない…とか、そう言う理由だ。
明らかに怪しい雰囲気が漂う中、俺は渋々立った次いでに事を済ます。
一瞬、ももこもソファから立とうとしたが目で止めた。
こう言う時、幼馴染と言うのは助かる。
アイコンタクトが取れるのは楽で良い。
玄関でスリッパを履き、ドアを開けると……
そこには、如何にも優男と言った雰囲気の奴がいた。
焦茶色の髪を適当な長さで揃えられ、栗色の瞳は俺を優しく見据える。
中性的な顔立ちで、柔和な笑顔を貼り付けた姿は、探せば居そうな優男…と言ったところだろうか。
俺は、コイツを知っている。
公安Q科の数少ない同期であり、俺と同い年の少年、名前を──
異能力は重力操作…俺よりコイツの方がチートじみてると思う。
確か、今は俺と同じで他の街の魔女班に入ってる筈だが…どうしてここに?
「なんで来たんだよ、暇か?」
「同期が体調を崩したって報せを聞いたら、誰だって見舞いに来るさ」
「咲良さんかぁ…ったく。んで、見舞いに来たのに、見舞い品の一つもないのか?」
「辛辣だなぁ…。少し話がしたくてね」
見舞いはフェイク……そっちが本命か。
話…か、一体何を……
俺がそう考え込んでいると、誠司は笑顔を剥がし真剣な顔付きで話し始める。
考え込むなら聞け、ってことか。
「…魔法少女の真実について、君はどこまで知ってる?」
「ソウルジェムが魔法少女の魂そのもので、あれが割れたら死ぬって事ぐらいだな。…もう一つは、俺たちの体は既に魂が抜き取られた人形って事だ」
「やっぱり、そこまでか…」
「なんだよ、お前は他に知ってんのか?」
「…いいや、僕だってそこまでだよ。でもね、上司に掛け合って何とか情報を引き出した──いや、訂正するよ。忠告はして貰えた」
やけに遠回しな言い方をする誠司。
まるで、回答を急ぎたくないみたいだ。
…急ぐほど、忠告がヤバかったって事か?
「で、その忠告は? どんな内容なんだ?」
「穢れを溜めすぎるな…ってさ。言っても信じてもらえない、とも言ってた」
「…ありがとな、一応警戒はしておく。お前の方も気を付けろよ?」
「分かってるよ、僕はあくまで魔法少女じゃなくて超人だからね」
取り敢えず、話は終わったのか笑顔で誠司は去っていく。
手を振ってくるアイツに、俺も手を振り返し見送る。
…穢れを溜めすぎるな…か。
しっかり注意することが、また増えたな。
ため息を吐きながらも、俺は玄関のドアを開け自宅に戻る。
休みはまだあるんだ、有効活用して色々と考えよう。
俺は、今後の事を頭の中で描きながら夜を過ごした。
次回もお楽しみに!
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