結翔「名前ありの男って珍しいよなぁ」
まさら「今後出てくるのかしら」
こころ「結翔さんの同僚ですから、もしかしたら…」
しぃ「いや、多分全く以て出ないよ」
まさら&こころ「早く記念物語出し(なさい・て下さい)」
みたま「はいはーい!調整屋さんも出たいでーす!」
結翔「誰が出るかは…まぁ、お楽しみと言う事で」
メル「皆さんは、三十九話を楽しんでどうぞ!」
※この作品内では諸々の時系列が狂っています。
──鶴乃──
夢を見ていた、温かい背中の上で。
幼い頃の夢。
尊敬するお爺ちゃんの作文を学校で読んで、お爺ちゃんに優しく諭された夢。
由比家の復興の為、大統領になってホワイトハウスでラーメンを出す。
突飛で、多分、わたし以外の人が見ないであろう夢。
お爺ちゃんは、「鶴乃は鶴乃の幸せを探して大切にしたらいい」って言ったけど、わたしの幸せはお爺ちゃんの夢を叶える事。
留学しているお姉ちゃんと一緒に、由比家の栄光を取り戻す為に頑張って、そのために偉業を成すこと。
でも、でも…お姉ちゃんは──
『わたしたちがしようとしていたお爺ちゃんの夢を叶えるって目標…もしかしたら悪いことだったのかもしれない…』
悪いこと…どういうことなの?
『最近お爺ちゃんの言葉を思い出したの。
そうだよ、だからわたしはお爺ちゃんの夢を叶えるって、由比家の栄光を──偉業を成して取り戻そうって二人で──
『この言葉って実は、お爺ちゃんなりの拒絶だったと思わない? 自分の夢に踏み込もうとするわたしたちへの優しい拒絶…』
拒絶?
拒絶って何?
わたしの──わたしたちのやってきた事は?
『だとしたらわたしたちがそれを無碍にしてお爺ちゃんの夢に踏み込んでいた…独りよがりで勝手に…』
違う…違うよ!
わたしとお姉ちゃんは、良かれと思って……大好きなお爺ちゃんの為に……
『お姉ちゃんね、留学してから夢を持ったの由比家の再興や偉業なんて関係がない夢を…』
なんで…どうして…?
由比家の再興は? 偉業は?
『自分でそれを追いかけるようになってからそんなこと考えてた』
なに、何を考えてたの?
教えてよ、分かるように…ちゃんと。
『わたしなら自分以外に自分の夢を背負われるのは嬉しい反面、申し訳なかったり場合によれば嫌かもしれないって…』
そんな…じゃあ…今までの時間は? 頑張りは?
なんだったの?
一体何のためにあったの?
『ごめんね…。面と向かって話せない以上はなるべくちゃんと伝わる形を選ぼうと思ってこうして手紙という形にしました…』
…会いたいよ、会って話したいよ。
何が、お姉ちゃんを変えたの?
わたしも知りたい、どうしたら変われたの?
『鶴乃も一度、考えてみてください…』
無理だよ。
今更、そんなの無理だよ。
いっぱい、いっぱい迷惑掛けてきた。
最強になる為に強い人に決闘を申し込んで、ししょーを作って教えを乞うて、全力勝負で突っ走って…今日だってそれで…。
あれ?
…じゃあ、今、わたしはどこに?
夢現な気分は完璧に抜け切り、視界がドンドンとクリアになっていく。
自分のとは違う鼓動が伝わってきて、少し揺れる感覚と胸から伝わる温かい温度が、自分の今の状況を教えてくれる。
…わたし、背負われてたんだ。
申し訳なさでいっぱいになって、自分を背負っているであろう少年に──ヒーローに声をかけた。
「ごめんね、結翔。寝ちゃってたよ。…お休みの期間、終わったばかりなのに」
「良いよ別に、今日は後方支援であんまり動いてなくて疲れてないしな」
一週間の安静期間をやっと終えた翌日、腕の訛りを解消するため魔女狩りに行った。
流石に前衛を任せる訳にはいかないので後衛に任された結翔だったが、わたしがさっき夢の中で見た手紙──現実でも来ていたものを読んで焦って突進した所を、彼は間一髪で救ってくれた。
そっか、わたし気絶してたんだ…恥ずかしいなぁ。
下ろしてと言おうにも、彼は一切下ろそうとしないだろう。
それなら、優しさに甘えるのも悪くない。
心に渦巻く不安、頭を回るお姉ちゃんの手紙の言葉。
溜め込むなんて不可能だった、どこかに吐き出してしまいたかった。
わたしは、そっと結翔の肩を叩き、ある場所へと誘導した。
「行って欲しい場所があるんだ。良いかな?」
「…分かったよ。でも、遅くならない内に帰るぞ。鶴乃のお父さんも心配するし」
やっぱり優しい、わたしの思いも聞いてくれるし、ここに居ないお父さんの思いも汲み取ってくれるなんて。
本当に、優しい子だ…。
誘導すること数分、参京区の少し外れにある公園に到着した。
寂れた公園だ。
遊具なんて、滑り台とブランコ、あとは砂場ぐらいしかない。
でも…ここは、わたしの思い出の場所だ。
初恋の人に会った場所で、お姉ちゃんとの楽しい思い出が詰まった場所。
結翔は、わたしをそっとブランコに下ろし、自分も隣にあるブランコに座った。
そこから、少しだけ声の出ない静寂が過ぎて…。
わたしは、必死に頭をフル回転させながら、今まで起きた話を色々と作り替えて、例え話として結翔に話した。
心配されたくない…だけど、心の底では彼の救いの言葉が欲しくて、辻褄が合うように必死に繋げて、彼に伝えた。
「…その子がやってきた事は──頑張ってきた事は無意味で無価値…だったのかな?」
「さぁな、俺には分からねぇ問題だよ。どっちかって言うと、お前の方が分かりそうだけどな?」
「…だね。でも、結翔の意見も聞きたいんだ? ダメ…かな?」
「偉業を成せなかったら無意味、偉業を成しても無価値…そうかもしれない。けどさ、やってきた事が──頑張ってきた事が全部そうなるとは分からないだろ? 確かに、色々な人に迷惑を掛けたかもしれないけど、その迷惑で助かった人が一人でも居るかもしれない。もし、ソイツが自分の幸せを探し直すなら、周りを見ろって伝えろよ。悪い奴じゃないなら、きっと優しい友達が探すのを手伝ってくれる」
結翔はそう言うと、空いた時間を潰すように、ブランコであそび始めた。
…周りを見ろ…か。
…居たね、優しい友達、わたしの周りにはいっぱい。
まだ、幸せを探すのは時間がかかりそうだけど……頑張ろう。
気合いを入れ直すように、両手で顔を叩き、ブランコから立ち上がろうとした瞬間、目眩と元に視界が揺れて足取りがふらつく。
倒れる!
そう思ったその時、わたしの体を結翔は優しく支えた。
あぁ、覚えてる。
この感覚を、わたしは覚えてる。
既視感を感じた光景に、思わず涙が零れた。
「ったく、大丈夫かよ」
『ったく、心配させんなよ』
「鶴乃」
『鶴ちゃん』
違うセリフだった、違う呼び名だった。
遊んだのも会ったのも、過去のあの一日だけ。
お爺ちゃんに優しく諭されたあの日、わたしはここで泣いていて、それを結翔が慰めてくれた。
まるで、ヒーローのように、落ちそうになっていたわたしを救い上げてくれたんだ。
「ありがとね、結翔」
『ありがと…結くん』
助けてくれた彼に、わたしも昔と同じ想いで、それでいて昔と違う言葉で返した。
その日、わたしは姉であろうとするには邪な想いを取り戻した。
時々、顔を出してしまう、温かい想いを──取り戻した。
──結翔──
鶴乃を送って帰った後、俺は一人、自分の家への帰り道を歩いていた。
変な例え話だったが、答えを間違えなかっただろうか?
それだけが、俺は心配だった。
だけど、気付けば良かった──気付ければ良かった。
彼女が──由比鶴乃と言う強い仮面被った少女が見せてくれた、本当の素顔に。
少女らしい、弱い部分に。
そうやって、何時だって俺は、終わった後に気付いて後悔する。
ヒーローとして在り続ける彼は、例え無意識下でも人を救い続ける。
代償は、もう支払った。
次回もお楽しみに!
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