無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 メル「前回までの『無少魔少』。鶴乃さんが色々吐露したり、結翔くんがそれを無意識の内に救っていたりした話ですよ」

 結翔「無意識の内に救っていたって結構凄いよな。なんで出来たんだ?」

 こころ「それは、私たちが聞きたいくらいですよ」

 まさら「そうね、なんで出来たのかしら?」

 鶴乃「結翔が優しかったからだよ!ふんふん!」

 ももこ「なんとも大雑把な理由だな…」

 みふゆ「あらすじはここまでに、皆さんは四十話をどうぞ!」


四十話「温かい非日常に、浸かっていたいんだ」

 ──メル──

 

 夏と言えば海、海なのです。

 ボクは憧れていました、友達と一緒に行く、夏休みの海水浴と言うものに。

 

 

 白い砂浜に、青い海、サンサンと照らす太陽。

 砂浜でお城を作ったり、ビーチバレーしたり、水の掛け合いをしたり、遠泳気分で泳いだり、ただただ浮き輪で波に揺られたり。

 

 

 最高のバカンスを楽しむものじゃないですか? 

 折角、海に来たんですから、日頃溜まった疲れを癒す為に、羽を伸ばすべきじゃないですか? 

 なのに…なんで…何で、ボクは…ジェットスキーでテロリスト相手に命懸けの鬼ごっこしなきゃいけないんですか!? 

 

 

 ひー! 

 撃たれてる、よく分からない長い銃で撃たれてる!? 

 

 

「死ぬ!? 死にます!? あんなの当たったら死んじゃいますよ!? もっと飛ばして下さい結翔くん!!」

 

「無茶言うな! 運転の制御が効く限界速度で走ってるわ!! と言うか、魔法少女はあんな鉛玉が当たったくらいじゃ死なねえから!? ソウルジェムだけしっかり胸に抱いとけ!」

 

 

 厳つい二人組が運転するジェットスキーから、結翔くんが運転するジェットスキーで逃げる。

 …どうしてこうなったのか? 

 それは、少し遡って話さなければいけない──

 

 

 ──────────────────────

 

 夏休み直前の週末。

 ボクは、七海先輩と一緒に商店街に買い物に来てたですよ。

 なんでも、商店街で買い物するとクジ引きの券が貰えるらしく、丁度それが溜まっていたからと言っていた。

 

 

 粗方買い物を終えた後、クジ引き会場に向かうと、偶然買い物に来ていた結翔くんとももこさんに遭遇したですよ。

 

 

「あら、二人とも偶然ね。そっちもクジ引きかしら?」

 

「そうなんですよ。商店街の知り合いが多いんで、顔を見に行く度に貰っちゃって……。そろそろ消費しようかなーって…。ほら、六等まで有りますけど、六等でも洗剤とか貰えますし」

 

「五等でタオルセット、四等で電気ケトル、三等でTwitch、二等で大型テレビ、一等は海の旅のファミリーチケット二泊三日…か。結構豪華だな」

 

「海の旅…! 結翔くん、結翔くん! 一等! 一等を当てて下さいですよ!!」

 

 

 一等の景品に、ボクの心は弾みに弾んだ。

 ファミリーチケット、と言うことは大人数で行く事を想定とされている筈。

 ボクたちは六人で一チームなので、可能性は十二分に有りますよ!! 

 興奮が収まりきらないボクは、クジ引きの抽選をしているお姉さんに、問い詰めるように言った。

 

 

「お姉さん! その一等のファミリーチケットは何人まで可能ですかっ!?」

 

「え、えぇ、そうね、ちょっと待ってちょうだい。………ええっと、六人までよ」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 よっし! 

 完璧、完璧ですよ! 

 クジ引きの屋台を見る限り、今日から抽選が始まったらしい。

 有る…チャンスは十分にあるですよ! 

 

 

 ボクは急いで、七海先輩と結翔くんの背中を押して、抽選をやらせた。

 よく見る、ガラガラを回して、出た玉の色で何等か分かるやつだ。

 期待の眼差しを向けるボクに、二人は渋々と言った様子で抽選の為の券を出した。

 

 

「お願いします」

 

「こっちも、お願いします」

 

「お二人分ご一緒でもよろしいですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「では、十五回分ですね。どうぞ、回しちゃって下さい!」

 

 

 営業スマイル前回のお姉さんにそう言われま結翔くんは、ガラガラを回していく。

 …白…白…白…白…白…白…白…白…白…白…白…白…白…白。

 …嘘でしょ? 

 十四回引いて、その全部がハズレ賞なんて…どんだけ運ないんですか!? 

 

 

「結翔くん! ラスト、ラストですよ気張って引いて下さい!」

 

「そう言われてもなぁ…。出ないもんは出ねぇよ」

 

 

 ため息を吐きながら、結翔くんが最後の一回を回した。

 呆れと諦めの表情が混じった結翔くん。

 七海先輩とももこさんも、どうせハズレ賞だろう、と言った諦めの表情が見て取れる。

 …だけど、だけど、ボクは信じてます! 

 

 

 結翔くんは、やってくれる人だって! 

 コロッコロッ、と穴からでてきた玉は──

 

 

「うっそぉーん…」

 

「やった、やりました! 金です、金ですよ結翔くん!? 最っ高です、本当に最っ高です! 信じてたですよ、結翔くん! 大好きです!!」

 

「おめでとうございますっ!! 一等、一等賞になります!!」

 

 

 抱き着くボクと、驚き過ぎて顔が幼稚園児のお絵描き並になっている結翔くん、七海先輩やももこさんも同様に驚きで固まっていた。

 そこからは、トントン拍子で話が進み、夏休みの最初の週に行く事が決まった。

 みんな、何とか予定を空ける為に、早々にやる事を済ませ、そして旅行当日。

 

 

 保護者役が居ない事を、みふゆさんや七海先輩が渋っていたが、結翔くんと言う一応国家公務員が居ることを何とか盾にし、納得させた。

 みんな揃って電車に揺られ、着いた駅は磯の香りが感じられる程、浜辺が近い駅でした。

 

 

 天気は快晴、ボクたちはすぐに宿に荷物を置いて、必要な物だけを持って外に出た。

 ビーチパラソルにクーラーボックス、海用レジャーシートや折り畳み式のビーチチェア、数多の浮き輪と空気入れ、全員分のスマホや財布を入れられるエコバック。

 

 

 大分大荷物になったが、旅行なのだから、十二分に楽しむためにはしょうがないですよ! 

 大丈夫、大丈夫! 

 結翔くんが半分くらい持ってますから。

 

 

 ボクたち女子組が宿で水着への着替えを済ませる中、結翔くんは先に行って場所を取っています。

 浜辺の方にも脱衣所は有ると聞きますが、宿から浜辺まで歩いて数分なので問題ありません。

 

 

 一番に着替え終わったボクは、みんなより一足先に浮き輪の一つと空気入れを持って外に出た。

 待ち切れなかったボクは歩くなんて事は出来ず、走って浜辺まで向かう。

 

 

 着いた先に見たのは…圧巻の光景だった。

 キラキラと光って見える白い砂浜、それと同じく光の反射で光って見える青い海、そこで笑顔で遊ぶ多くの人たち。

 

 

 少しだけぼーっとして、その光景を見ていると、後ろから声を掛けられた。

 いつも通り…ではなく、少しだけテンション高めの低い声だ。

 聞き慣れた…声だ。

 

 

「結翔くん、結翔くん! 凄いですね、海って!」

 

「だな、久しぶりに来たから、少しワクワクしてる」

 

 

 男の子がよく着る迷彩柄の海パンと、白いラッシュパーカーを羽織り、彼は──藍川結翔はそこに居た。

 彼は、ボクを手招きし、取った場所へと案内する。

 海用レジャーシートが敷かれ、そこにビーチパラソルが刺さりしっかりと日陰ができ、クーラーボックスを重しに風で飛ばないようにしていた。

 

 

 場所は人が多くもなく少なくもなく、疎らな場所。

 完璧だ、理想とも言える場所取りと、理想そのものと言える見栄え。

 

 

「さっすがー! 結翔くんは場所取りの達人ですね!」

 

「よせよ、全く嬉しくないだろ」

 

「またまた〜! 照れてるだけなんですよー!」

 

「いや、場所取りの達人とか全く嬉しくないんだが」

 

「嬉しくないですか?」

 

「うん」

 

「…なら、今度から結翔くんには場所取りの全てを任せますね?」

 

「ごめん。お前、鼓膜機能してる? 俺の話聞いてる?」

 

 

 取り敢えず、無視に無視を重ね、結翔くんの意思は遮っておいた。

 ……こんなバカみたいなやり取りは嫌いではないが、思う所がある。

 普通、女の子が水着で来たら、「似合ってるな」の一言ぐらい言ってくれてもいいんではないか…と。

 

 

 ボクと結翔くんは親友です。

 でも…それでも、ボクだって列記とした女の子ですよ? 

 褒められたいって、至極当然に思うじゃないですか? 

 

 

 ジーッと、結翔くんを見つめた。

 数秒、これを無言で続けていると、結翔くんも気付いたのか、納得したように頷いてこう言った。

 

 

「髪型変えたか?」

 

「違う! 合ってるけど…合ってるけども…違う!!」

 

「あれ、違ったかぁ……」

 

 

 確かに、確かに、海で邪魔にならないように、いつもポニーで纏めている髪をお団子にしましたが……違うんですよ! 

 そこじゃないんですよ! 

 

 

 もう言いです、直接言ってやります! 

 

 

「結翔くん! ボクの水着……………」

 

「…ん、水着がどうした?」

 

「いや……だから……その……水着……」

 

 

 あ、あれ? 

 どうして? 

 上手く言えない…何時もだったら、思ったことなんて後先考えずすぐに言えるのに。

 なんで? どうして? 

 

 

 緊張? もしかして緊張してるんですか? 

 相手は、相手はあの結翔くんですよ? 

 時々ポカをやらかすバカヒーローですよ? 

 ボクの親友ですよ? 

 

 

 今になって、なんでこんなに鼓動が早くなるんですか? 

 可笑しいでしょ…あれ? 

 もしかしたら、全然可笑しくないのか? 

 

 

 …だって、初めて会った時もそうだったけど。

 結翔くん、顔面偏差値カンスト勢だし、オマケに優しいし、超がつくほどのお人好しで、困った時はいつも助けてくれて。

 そんな所がボクは大好きで……って、違う違う違う!! 

 

 

 そうじゃないでしょ! 

 ああ、もう! 

 言え、言うんですよ、ボク。

 水着、似合ってますか? 

 

 

 この一文を言えば終了です。

 …七海先輩やみふゆさん、ももこさんや鶴乃さんと一緒に選んで買ったんです。

 オシャレ度が偏差値換算されるなら、東大だって難しくないレベルの筈ですよ。

 

 

 緑主体で水玉模様の、パレオタイプの水着。

 …大人っぽいかもしれないけど、背伸びしてるかもしれないけど──

 

 

「水着、似合ってますか?」

 

「…ああ、そういう事か。…似合ってるよ、可愛いと思う」

 

「…そ…そうですか。なら、良いです」

 

「はぁ〜、でも、こうなると憂鬱だな」

 

「…ちょ、ちょっと待って下さい! な、何が憂鬱なんですか! 失礼です」

 

「お前に対して言ったんじゃねぇよ。…この後来る面々も、俺にお前と同じ言葉を問い掛けられたら、しっかり答えなきゃいけないからな」

 

 

 本当にどこか、憂鬱そうだ。

 …もしかして、結翔くんって女嫌──

 

 

「あぁ、別に女嫌いじゃないぞ。人並みには好きだ。だけどなぁ? お前らは意識してないかもしれないから言っとくけど! 全員、全員が美少女なんだよ、お前らは! そんな奴らに、チェリーボーイである俺が水着似合ってるか聞かれるんだぞ? 冗談じゃない!」

 

「…まず、チェリーボーイってなんですか?」

 

「…端的に言えば、女慣れしてない男の事だ」

 

「嘘じゃないですか、結翔くんはボクたちといつも一緒に居ます。それに、他の魔法少女の知り合いも多いじゃないです?」

 

「あのな、俺が日頃からお前らを女性として意識してると思うか? する訳ないだろ。理性が壊れるわ。俺は、お前らと接する時はしっかりと一線引いてる。やちよさんやみふゆさんだったら、仲間とか先輩。鶴乃は姉とか友達。ももこは幼馴染や親友。メルだって親友。その一線があるから、俺の理性が壊れることはまず無い。だけど…だけどなぁ」

 

 

 なんだろう、結翔くんが苦労人に見えてきた、可哀想な人に見えてきた。

 

 

「水着が似合ってるか聞かれたら、見なきゃいけないだろ? テキトーに答えたら失礼だし。ただでさえ、最近の水着は布面積が少ないのに、それをお前らが着たら、俺はお前らに一線を引けない。どう足掻いても女性として認識してしまう」

 

「……まるで、悪いこと見たいですね」

 

「悪いに決まってるだろ! ファミリーチケットだから、今日に至っては寝る場所も同じなんだぞ!? お前や鶴乃なら…まだなんとかなるけど。他三人はマジで無理だ」

 

「ボクと鶴乃さんは結翔くん的に女性じゃないと?」

 

 

 若干怒気を混じえた語調でそう言うと、結翔くんは冷静且つ真面目な顔で、「いや、違う」と返した。

 

 

「…じゃあ、ボクと鶴乃さん、他三人の違いはなんです?」

 

「分かり難いかもだけど…お前らはどっちかと言うと、可愛い系なんだよ。愛でたくなるような感じの…美少女なんだ。でも、他三人は違う、ももことみふゆさんは…色々と目に毒だし。やちよさんもモデルやってるだけあって、既に大人の女性感が強い。美少女と言うよりは美人寄りなんだよ…」

 

「……あぁ。なんとなく分かりました」

 

「分かってくれたか…良かったよ、流石は俺の親友」

 

「はいはい、いつもどうもですよ親友」

 

 

 …さっきまでのドキマギした感情を返して欲しい。

 胸が苦しくなるような、そんな感情を返して欲しい。

 今の話の所為で、モヤモヤした胸に引っ掛かる感情しか、残ってないじゃないですか。

 

 

 結局、結翔くんは後から来た四人にも、ボクと同じ言葉を言われていた。

 付き合いの長い、七海先輩やみふゆさん、ももこさんは当然と言った感じで聞いていたし、鶴乃さんも食い気味に聞いていた。

 

 

 …鼻血が出かけていたが、結翔くんは気合いで耐え、何とか問答を済ませ、ビーチチェアに寝っ転がる。

 感想を聞き終えた七海先輩たちは二対二でビーチバレーをしており、結翔くんはぼーっとそれを見つめる。

 

 

 …ダメだ、これじゃあ時間が無駄になってしまうですよ。

 チラリ、と四人にも目を向けながら、昨日から調べていた情報を頼りに当たりを見渡す…すると目的の物が見えた。

 ジェットスキーの貸し出し。

 珍しい事に、この浜辺ではジェットスキーの貸し出しを個人がやっている。

 

 

 しかも、三時間コースで千円と言う破格ぶりだ。

 

 

 うる覚えだが、結翔くんは乗り物の免許を色々持っている。

 その中に、水上バイクの免許もあった気がするのだ。

 

 

 ……本来なら、年齢的に免許は取れない筈だが、何故か持っている。

 不思議だ…だけど、今はそれが有難い。

 

 

「結翔くん? 暇だったら、少しアレに乗ってみませんか?」

 

「ジェットスキー? …いや、良いけど、どうしたんだよ急に? 浮き輪に乗って波に揺られたりとか、水の掛け合いとか、今やってるビーチバレーとか、色々やりたかったんじゃなかったのか?」

 

「昨日の内に調べてたんですけど、この浜辺の近くに小さい島があるらしいんですよ? 無人島で、しかも面白半分で行った人が行方不明になるって噂があるんですよ。…どうです、行きたいと思いません?」

 

「え? 何それ、めっちゃ男心擽られる。行きたい、ってか何かあるかもだしヒーローとして放っておけない!」

 

 

 好奇心とヒーローとしての使命感、それが半々で混ざりあっている感じの結翔くんは、ニコニコとした笑顔でボクの話に乗った。

 エコバックから財布とスマホを取って、すぐにジェットスキーを借りに行った。

 

 

 最初は門前払いを食らいそうになったが、なんとか免許を見せて納得くしてもらい、二人してジェットスキーに跨った。

 チラチラと、結翔くんが後ろを気にしているのが気掛かりだったが、それ以上の興奮がボクを突き動かし、彼を囃し立てる。

 

 

「はーやーくー! はーやーくー!」

 

「はいはい、行くぞ!」

 

 

 結翔くんはエンジンをかけて、モーターが動き出したところでアクセル全開で走り始めた。

 上がる水飛沫と風を切るような感覚。

 無人島まで、これだったら十分もせずに着きそうだ。

 

 

 スピードが早い分、振り落とされないように彼の腰をしっかりと掴む。

 テンションがハイになってるお陰か、あっと言う間に時が過ぎ、小さいながらも段々と無人島が見えてきた──が、何故か結翔くんはジェットスキーの速度を落とし始めた。

 

 

 そして、ゆっくりと後ろを振り向く。

 ボクも、それに釣られるように後ろを振り向くと……後方からボクたちを追うようにもう一つのジェットスキーが現れる。

 ……魔法少女の能力を限界まで駆使し、よーく見据えると。

 

 

 乗っているのはボクたちと同じ二人組で、一人は長い銃のような物を持っているのが分かった。

 最初は水鉄砲かとも思ったが…そうでは無いらしい。

 

 

「あ、あの、結翔くん? あれって……」

 

「悪い、メル。巻き込んだかも」

 

 

 突然の言葉をボクは理解出来なかった。

 悪い、巻き込んだかも、二つの言葉から…導き出される答えは? 

 

 

 ……そう言えば、今日の朝の占いで二人乗りは気を付けろって──

 

 

「多分、アイツらテロリスト集団の構成員だ。それか、どっかの国の秘密組織…かな? まぁ、答え合わせはどっちでもいい。…取り敢えず、アイツの狙いは俺の眼だ」

 

「魔眼…ですか?」

 

「そゆこと。さぁーて、どうするかな…メル居るしなぁ」

 

「もしかして…もしかしてですけど、ボクも狙われたり?」

 

「そりゃあ、俺の背中に引っ付いてりゃ剥がす為に撃ってくるだろうな」

 

「……です」

 

「ん? 今なんて──」

 

「アクセル全開です! トップスピードで逃げて下さい!!」

 

 

 ──────────────────────

 

 遡り終了。

 今現在も、ボクたちはテロリスト二人組に狙われたりまま、ジェットスキーで鬼ごっこをしています。

 

 

「どうにかして下さいよ! このままじゃ、いずれジェットスキーの方に玉が命中しちゃいますよ!?」

 

「分かってるよ…!」

 

 

 彼はそう言うと、ようやく反撃に出た。

 魔法少女に変身し、一本の短剣を作り出したのだ。

 片手でジェットスキーの操縦をして、半身を逸らして反対の手で短剣を投擲する。

 

 

 投げられた短剣は無回転で飛んでいき、ピンポイントでハンドルの付け根に当てて粉砕した。

 一瞬、投げられた短剣が曲がったように見えたが、あれは見間違いではないだろう。

 

 

 ハンドルが逝った所為で操縦不能となり、テロリストの乗ったジェットスキーはアクセル全開のままどこか遠くに去っていった。

 

 

「…あれ、どうするんですか?」

 

「後で、捜索隊の要請でもするさ。運が良ければ、一日かそこらで見つかる。見つからなかったら…まぁ、自業自得だな」

 

「そう…ですね。早く帰るですよ」

 

「無人島は?」

 

「何と言うか…同じ人間相手だと肝が冷えたですよ。大人しく浅瀬で水の掛け合いが、砂浜でお城でも作るです」

 

「賢明だな」

 

 

 その後は、何事もなく楽しい一日でしたが、色々な意味で衝撃的な一日でした。

 

 

 ──結翔──

 

 旅行の日の夜、俺は一人眠れず、暇を潰すために砂浜に足を運んだ。

 昼間はあれだけ人が居たのに、今は人っ子一人居ない。

 まぁ、夜中の一時だしな、そりゃ誰も居ないか。

 

 

 特に何をするでもなく、ただただぼーっと海を見つめる。

 …こんなに…こんなに、幸せに生きて良いんだろうか? 

 

 

 アイツの分も生きると誓ってから、アイツの死を無駄にしない為に絶対にヒーローになると誓ってから。

 かれこれ、もう一年半が経った。

 

 

 長い一年半だった気もするし、短かった気もする。

 ヒーローを名乗っているが、俺はきっとヒーローじゃない。

 あの日、アイツが死んだ──俺が助けられなかったあの日に、分かった。

 

 

 だから、なると誓った。

 だから、名乗り続けた。

 そう在り続ければ、きっとなれると疑ってなんていなかったから。

 

 

「俺は──」

 

 

 ヒーローに近付けているのか? 

 広い海を見つめながら、自問自答を繰り返す。

 繰り返して、繰り返して、繰り返して。

 それでも答えが出せない自分に呆れて、海の代わりに空を見上げた。

 

 

 座っていた足を崩し、寝っ転がる。

 浴衣に砂が入るが…どうでもいい。

 

 

 何もかもがどうでも良くなって、乾いた笑いがこぼれた。

 幸せ恐れる自分、ヒーローに近付けてるか分からない自分、叶わぬかもしれない夢を見ている…愚かな自分。

 

 

 全てがどうでも良くなった。

 幸せを恐れても、ヒーローに近付けてるか分からなくても、叶わぬ夢を見てるとしても、どうでもいい。

 今は……今はただ、この温かい非日常に浸かっていたいんだ。

 

 

 誓いを胸に、この温かい非日常を、街を──街に住む人を守れればいい。

 

 

 空を見上げて、俺はそう思った。

 そして、そんな俺の隣に──親友が寝転んだ。

 

 

「隣、失礼しますね」

 

「既に失礼してるだろ。…どうしたんだよ、明日が楽しみで眠れなかったか?」

 

「違いますよ。ぐっすり寝てましたです。でも、さっき少し目が覚めて、隣に君が居なかったから……」

 

「起こしちまったのか、悪かったな。…眠れなくてさ、暇潰しに来た」

 

「へぇー。何かあったんですか?」

 

「別に。眠れなかっただけだよ」

 

 

 その後、少しだけ間が空いて、メルが話を続けた。

 

 

「楽しかったですね。まだ一日、自由はありますけど…。来年も来たいです!」

 

「…来年って、お前、受験生だろ? 良いのかよ」

 

「うぐぐ…。だ、大丈夫です。ゆ、優秀な家庭教師を雇いますから!」

 

「時給は千円な」

 

「高いですよ!? 親友価格にならないんですか?!」

 

「それとこれとは話が別だ。…まぁ、来年も来たいってのは同意だな」

 

 

 楽しい時間だった。

 こんな時間がずっと続いてくれたら、どれだけ喜ばしいことか。

 ……本当に来年も来たい、そう思える旅だ。

 

 

「じゃ、じゃあ、宿代とかは結翔くん持ちです!」

 

「言っとくけど、俺の財布の紐はやちよさんとももこが握ってるからな? 頑張って緩めろよ〜」

 

「えぇ…。稼いでるのに、お小遣い制なんですか?」

 

「まぁな。この間なんて、欲しい物があったのにお金が足りなくてさ。何とかももこややちよさんを説得しようと思ったけど無理で……」

 

「諦めたんですか?」

 

「いや、咲良さんに頭下げて給料前借りした」

 

「そこまで!? そこまでしたんですか!?」

 

 

 あの時ばかりは、咲良さんもドン引きしてたな。

 まさか、たかがオモチャの為に頭下げるなんて、普通の人は思わないしな。

 

 

 …だって、しょうがないじゃないか、限定商品だったんだから。

 一ファンとして、買うしかないでしょ。

 

 

 結局、俺たち二人は、お互いが眠くなるまで喋り倒し、宿に帰ったのは三時過ぎだった。

 …翌日、夜中に外に出たのがバレ、二人揃って怒られたのは良い思い出だ。

 

 

 ──────────────────────

 

 遊び尽くした旅行の最終日、お土産屋巡りを終えた一行は、帰りの電車の中で眠っていた。

 …約二名を覗いて。

 

 

「疲れたー。けど、楽しかったな…」

 

「本当ですよ! 最っ高の旅でした。…結翔くん、一昨日──いや、、昨日の話覚えてます?」

 

「…来年も行きたいってやつか? それとも財布の紐緩めるってやつ?」

 

「どっちもですよ。どっちも。…約束です、また一緒に行くですよ。全員で」

 

「…あぁ。予定、しっかり空けとくよ」

 

 

 また、約束をした。

 あの時と同じく、絶対に守らせると固い決意の上で結んだ約束。

 

 

 その約束が果たされることは──なかった




 関係の無い一言
 誰か、私の代わりにゆゆゆのRTAを書いてくれ。


 次回もお楽しみに!

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