無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 結翔「前回までの『無少魔少』。みんなで海へ旅行に行ってテロリストと命懸けの鬼ごっこしたり、メルと来年も来る約束をしたりしたよ」

 まさら「テロリストと命懸けの鬼ごっこって、パワーワード感あるわよね」

 こころ「普通なら絶対組み合わせない同士単語ではあるね…」

 ももこ「それがあるのが、藍川結翔って奴なんだよ」

 みたま「さっすがぁ、一番の被害者が言うと説得力が違うわねぇ」

 メル「本気で怖かったんですからね!?冗談みたいに言わないで下さい!!」

 やちよ「…お待ちしていたかは分からないけど、四十一話をどうぞ」




四十一話「誰もが未来を想ってる」

 ──結翔──

 

 夏休み、それは学生が青春を謳歌する絶好の機会である長期休暇(バケーション)

 だが、俺はいつもと変わらず、みかづき荘に顔を出して宿題に励んでいた。

 

 

「…かったるい。早く終わんねぇかなぁー」

 

「結翔くん! そんな事より、占いですよ占い! 今日のボクは絶好調、どんな占いも良い方に転がるですよ!」

 

「あー、はいはい。ちょっと待ってなー」

 

 

 メルのウザやかましい声を聞き流しつつ宿題を進め、キリのいいところでペンを置く。

 八月も初旬、そろそろ真面目に宿題に手を付けないと不味いと言うのに、俺は親友であるコイツ(メル)が宿題をしている姿を見た事がない。

 本当に大丈夫か? 

 調子こいてると、夏祭り行けないで、居残って宿題三昧だぞ? 

 

 

 とまぁ、色々思う所はあったが、心の奥底に仕舞い、メルの方に顔を向ける。

 占い…か。

 やちよさんと話していた、メルの固有の能力を見極める良い機会かもしれない。

 

 

 俺は、おもむろにポケットからスマホを取り出し、ある画面を見せた。

 それは──

 

 

「お…おお…大石昌良さんの、神浜ライブ…限定百名。し、しかも、これって神浜市の人限定じゃないですか!? ど、どうしてこれを…?」

 

「俺、大石昌良さんのファンクラブ会員だし、神浜市の人間だし、そりゃあメールが来るだろ。…んで、九月第一週の日曜日がライブなんだけど、今日がチケットの抽選結果が出る日なんだよ」

 

「それの結果を占って欲しいと?」

 

「おう。丁度良いやつがそれぐらいしかなくてな」

 

「…未来を見るだけなら、未来視の魔眼でも事足りるのでは? ボクの占いはお役御免じゃないです?」

 

「いや、お前最初に言ってたじゃん。どんな占いもいい方に転がるって」

 

 

 未来視の魔眼を持つ俺に、未来を占う事に本来なら意味はない。

 だって、能力使って未来を視れば良いだけだからな。

 

 

 だけど、今回はそんな事しない。

 やちよさんの仮説が正しいなら、メルの固有の能力は未来誘導。

 占いで出た結果を未来に手繰り寄せる能力。

 

 

 今回の占いは、それを確かめる為のものだ。

 俺は、メルがタロットをいじって占いをするのを、ぼーっと見つめながら結果が出るのを待った。

 

 

 三分ほどの時を要して、占いは終わり、メルは俺に結果を告げる。

 

 

「…結翔くん。占いの結果ですが……」

 

「あぁ、ハズレだったか? まっ、残念だけどしゃあないな。あの人も人気のシンガーソングライターだし、百人の中に入るのは早々──」

 

「いや、当選しますよ。しかも、ペアチケットが」

 

「なんでだよ!? 今の表情と喋り方からしてダメなやつだったじゃん!」

 

「ペアチケットだったから…その…誰と行くのか気になって…」

 

 

 しおらしいメルの反応。

 なんだよ、その反応……まるで恋する乙女みたいだ。

 …んなわけない…よな。

 取り敢えず説明不足は補うか。

 

 

「友達だよ。俺と同じで大石昌良が好きな奴がいてさ、そいつもファンクラブ会員なんだけど。どっちかがハズレでも良いようにペアチケットで申し込んだんだ」

 

「…女の子ですか?」

 

「ないない、普通に男友達だよ。…でも、そいつ運悪くてさぁ、既に予定が埋まっちゃったんだよ」

 

 

 確か、家族旅行だっけ? 

 なんで夏休みに行かないのか気になるが、当たっても行けないから他の奴と一緒に行ってくれって言われた。

 でもなぁ…他に大石昌良好きな奴なんて…。

 

 

「…メル?」

 

「な、なんですか?」

 

「お前さ、大石昌良好きだった──」

 

「好きです!! 大好きです!! CDだって全部持ってます!!」

 

「お、おう。なら、一緒に行くか?」

 

「行きます!!! 流っ石、結翔くん! 太っ腹ですね! 大好きですよ!!」

 

 

 嬉しさの余り抱き着いてくるメルを受け止めながらも、俺はメールが来たことを報せるバイブがあったスマホを開く。

 メールの内容は、抽選の結果当選したのでお金を払って下さいと言うものだった。

 限定に限定を重ねたとは言え、まさか当選するとは……

 

 

 俺の運……だけじゃ、こうはならないよな。

 考察の為、天井を見上げて考えていると、買い物から帰ってきたみふゆさんとももこがやって来た。

 

 

「…何があったんだ? 勉強中じゃなかったのかよ、折角アイス買ってきたのに」

 

「遊んでいたなら、アイスは没収ですね」

 

「いや、ちょっと待って下さいよ!? 誤解です誤解! 色々と訳が──」

 

「メルに抱き着かれてるのもか?」

「メルさんに抱き着かれてるのもですか?」

 

「本当なんですー!」

 

 

 …その後、何とか誤解を解き、二人にもメルの固有の能力の検証を手伝ってもらった。

 ももこの占いの内容は、このままエスカレーター式で進学するべきか否か? 

 みふゆさんの占いの内容は、家族が準備したお見合いに行くか否か? 

 

 

 取り乱しそうになったが、寸でのところで抑え、メルの占い結果を待った。

 二人合計で十分程掛かった占いの結果は──

 

 

「ももこさんは模試の結果を見てからでも問題ないです。勉強できてなかったのが心配だったんでしょう?」

 

「あ、あぁ。最近、魔女狩りが忙しくて、どうにも時間が取れなくてな…」

 

「続いてみふゆさん。みふゆさんは行かない方がいい──いえ、行かないべきです」

 

「な、なるほど…。分かりました、親に相談してみます」

 

 

 断言したな。

 二人の占い結果がどうなるのか…分かるのは明日。

 ももこの模試の結果が届くのも、みふゆさんのお見合いも丁度明日だ。

 

 

 …まぁ、明日まで待つなんてまどろっこしい事、俺はしたくないので未来視の魔眼を使うが。

 断片的に明日の未来を掻き集める。

 未来視の魔眼の良い所は、近い未来であればある程情報を集められる事。

 

 

 出来るなら、数秒後や数十秒後がいいのだが、致し方ない。

 限界まで未来視の魔眼で情報を集め、パズルのピースのように少しづつ当てはめていく。

 

 

 そして、視えて未来は──

 

 

「…正解だな」

 

「ん? どうしたんですか、結翔くん?」

 

「メル」

 

「はい?」

 

「お前、当面占い禁止な」

 

「…………えっ?」

 

 

 固まってるメルを無視しながら、やちよさんにメールで報告する。

 コイツの占いは危険だ。

 俺が関与できる範囲なら構わないが、なりふり構わず占いをしていたら、死者が出る可能性がある。

 

 

 …それに、もしかしたら、自身の占いで命を落とす可能性だって0じゃない。

 スマホに目を落としていた俺が、もう一度顔を上げてメルの方を見た。

 静かだった、普通に叫び散らすかと思ったのに。

 

 

「ひっく…えっく…うぇ…うぇぇぇぇん!! ゆいとくんがぁ…ゆいとくんがぁ…!!」

 

「ちょっ、メル!? いや…お前…ガチ泣きって…」

 

「結翔…」

「結翔君…」

 

「やめて!? そんな目で見ないで!!」

 

 

 わんわん泣く親友(メル)に、軽蔑の視線を向けてくる幼馴染(ももこ)先輩(みふゆさん)

 居心地が悪いなんてものじゃない。

 癒しのポイントがあるなら、メルの泣き顔ぐらいだ……滅茶苦茶可愛い。

 ……じゃなくて!! 

 

 

 急いで、メルを泣き止ませないと、俺が死ぬ…社会的に!! 

 

 

「わ、悪かったメル! 占いしていい、していいから! 泣くのやめてくれ!」

 

「…ぐす。…ほんと?」

 

「ほんとにほんと。嘘だったら何でも言うこと聞くよ」

 

「…分かった…です」

 

 

 その後は、占い禁止を言った意図を伝え、占いをするのは良いが、悪い結果になったら報告するように言って、その日は終わった。

 なんだかんだで、休みなのに疲れる一日だったよ…全く。

 

 

 ──メル──

 

 …うぅ…思い出すと恥ずかしい。

 なんで、結翔くんの前であんななきかたするんですか、ボクのバカバカバカ! 

 

 

 …はぁ、もう。

 こう言う時は、気晴らしに占いでもしましょう。

 占うのは…そうですね、分かりやすく。

 …近い未来なんて良いかもしれません! 

 

 

 じゃあ、早速っと。

 ボクは、手早くタロットカードをポケットから取り出し、頭に浮かんだオリジナルのメソッドに従い、カード引いていく。

 数分後、占いに出た結果を、一枚の紙に纏めた。

 

 

 その内容は──

 

 

『神浜に異変が起きたとき、何か大きな変化が訪れるかもしれない。

 だけど、そこにはいくつもの点が集まり柔らかな円を描いている。

 多分これは人の円、ボク達魔法少女が紡ぐ円。

 この時はきっと今よりも危険だけど一緒に優しさも満ちている。

 そのきっかけを作る星がみっつ。この星はきっと人を表している。

 

 

 そして、やちよさんの近くにひとつと、結翔くんの近くにふたつ落ちている。

 この人たちが原因なのかは分からないけど、今から会うのが楽しみ。

 やちよさんと結翔くんの近くに落ちてるってことはボクもきっと会うと思うから。』

 

 

「…こんな所…ですかね」

 

 

 紙への纏めを終えたボクは、そっと机にペンを置く。

 不思議な事に、ボクの存在は占いの中で結翔くんと重なっていた。

 あと、もう一人、雪野かなえ…と言う人の存在も結翔くんと重なっていた。

 

 

 これがなにを示すのか分からないが…きっと悪い事ではないだろう。

 むしろ、結翔くんと重なっているのは良い事だ。

 ずっと一緒に居られる…という事じゃないか。

 

 

 一人、ニヤニヤとしながら、ボクはその紙を見続けた。

 

 

「君とずっと先の未来でも…笑っていたいです」

 

 

 ──────────────────────

 

 安名メルと言う少女は、終ぞ自分の占いの本当の意味に気付かなかった。

 

 本来、重なる筈のない存在同士が、重なっている違和感に。

 

 彼女が書いた一枚の紙を少年が見て、占いの本当の意味を知るのは、もう少し先の話だ。

 

 泡沫の夢が覚めたあとの話だ。

 

 

 

 

 

 

 




 次回もお楽しみに!

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