無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 鶴乃「前回までの『無少魔少』。わたしたちの通ってる学校で起こった集団昏睡事件!何と!それには魔女が関わっていたんだよ!」

 結翔「その時、丁度よくその場に居合わせた鶴乃やももこに力を貸してもらい、事故現場の調査や魔女退治したな」

 ももこ「まさか、結界内にまさらちゃんやこころちゃんが居たのは、完全に予想外だったけどね」

 鶴乃「何とか二人を助けて、魔女を討伐した結翔だが、まさらにまたも迫られてしまう」

 結翔「絶対に大丈夫だと信じていた案は、こころちゃんの無謀とも言える勇気の一歩で粉砕」

 ももこ「なし崩し的に始まってしまった同居はどうなのか?四話をどうぞ!」



四話「疑問は時に残酷で」

 ──結翔──

 

 いきなり始まった同居生活も一週間が経った。

 なんでも、一週間も過ごせば慣れるもので、二人は自分の家のように寛げている。

 流石に、下着姿で彷徨くと言った行動はなかった──訳ではなく。

 まさらが普通にやらした。

 

 

 …まさらちゃんの事をまさらと呼んでいるのは、そう呼んで欲しいと言われたからだ。

 こころちゃんはこころちゃんのままだが…。

 

 

 話を戻すが、まさらには色々なものが欠如しているのか、風呂上がりに堂々と下着姿で現れた。

 この行動には、こころちゃんも心底驚いていたようで、俺が注視する前に目を突いてある意味事なきを得た……いや、俺自身は事大ありだったけどね。

 

 

 幾ら、魔眼のお陰で治癒が早いとは言え、痛いものは痛い。

 

 

 それ以外にも、色々な事件が起こったが──それは隅に置いておこう。

 今日は、二人に魔眼の話をするのだ。

 出来るなら、ギリギリまで粘りたかったが無理そうなので諦めた。

 親しくなってから話した方が、色々と信じてもらいやすい。

 

 

 理由は幾つか有ったが、まさらとの約束を反故にする訳にはいかないし……それに、これ以上夜中に夜這い紛いの事をされるのは御免だ。

 お陰で、少なかった睡眠時間がゴリゴリと削られた。

 

 

 時刻は夜の九時過ぎ、リビングにある二人がけのソファに座る、パジャマ姿のまさらとこころちゃん。

 どちらも髪を下ろしているので若干雰囲気が違う。

 二人とも、少し大人っぽく見える。

 

 

 髪の長さでこうも変わるのか…と一人驚いていた。

 

 

「さて、魔眼についてだけど……どこから話そうか。…最初から最後まで、全部聞きたいよな?」

 

「ええ、一から十まで聞きたいわ」

 

「私も、出来るなら全部聞きたいです」

 

「そっかぁ。…じゃあ、一から話すよ? 時間かかるから眠くなってきたら言って。コーヒー淹れるから」

 

 

 コホン、と咳払いを一つすると、俺は話し出す。

 魔眼に纏わる諸々の事を、順を追って…。

 

 

「魔眼、それは悪魔との契約によって真の力を解放できる異能力。基本的には、家系の遺伝で魔眼が目覚める。魔眼の能力は十人十色、『○○の魔眼』って感じで能力に応じて○○に入る言葉が違う。千里眼や一部の魔眼以外はそうやって名前が決められている」

 

「…十人十色と言ったけど、具体的にどれくらいの魔眼があるの?」

 

「うーん。それはちょっと分からないな。俺の家系にある魔眼だけでも数十種類、微妙なのもあるけど全部魔眼だ」

 

 

 本当に凄い魔眼は、あらゆる物体を曲げられたり、因果を視たり、はたまた事象の上書きが出来たり。

 因みに、微妙な魔眼は、ただ透視が出来るだけだったり、鍵を開けるだけだったりなものも。

 

 

「…話を戻すけど、魔眼は基本的には魔力が無いと使えない。魔力がないものが使おうとすれば、脳に多大な負担をかけることになる。俺自身、魔法少女になる前は魔力がこれっぽっちもない体質みたいでさ、使うのに苦労したよ。酷い時は、使い過ぎで鼻血が出たりしたし」

 

「扱いが難しいんですね…。私だったら、怖くて使えないや…」

 

「逆に、使い方さえマスターしてしまえば、使い勝手の良い能力ね」

 

 

 二人の意見は最もで、慣れる前までは難しいが、慣れたらただの使い勝手の良い能力。

 

 

「最後に、契約についてだけど。俺は契約してない。本当なら、十歳の時に悪魔が契約するか聞きに現れるんだけど、何故か現れなくて。今の俺の魔眼は、レベル的にフェーズ1って所かな」

 

「真の力を発揮していなくても、この前の強さ……。最強の『()()()()』を自称していただけあるわ」

 

「ちょ、ちょっと! まさら!?」

 

 

 ヒーロー……ね。

 誰が言ったんだ? 

 まっ、大方予想はつく。

 みたま先輩で、間違いはないだろう。

 何で喋ったのか分からないが、これ以上の事を喋る気はない。

 

 

「…取り敢えず。魔眼については以上だ。俺が持ってる魔眼については、使ってる時にその都度教えるよ」

 

「…まだ一つ、聞きたいことがあるの。良いかしら?」

 

「別に大丈夫だ。答えられる範囲で答えるよ」

 

 

 出来るだけ逃げやすい道を作る。

 話したくない事を聞かれた時、こうやって道を作っておけば簡単に逃げられる。

 ……我ながら、なんともカッコ悪い技術だ。

 

 

 俺の言葉を聞いたまさらは、ピクリと少しだけを眉を動かしたが、それ以上は特に反応せず質問してきた。

 

 

「何故、作り笑顔なんて貼り付けているのかしら?」

 

 

 思いもよらない所から飛んできた質問。

 内容が内容だったので、俺自身、鈍器で後頭部を叩かれたかのような感覚だった。

 

 

 ──まさら──

 

 魔眼の説明を聞いた事で、私の疑問は一つ減った。

 残る二つの内、一つは完璧な返答が返ってくるとは考えずらい。

 何せ、結翔自身が知らないor分かってない可能性があるからだ。

 だったら、もう一つの疑問を投げかけるべきだろう。

 

 

 ……だから私は、もう一つの疑問を質問として投げかけた。

 

 

「何故、作り笑顔なんて貼り付けているのかしら?」

 

「……………………」

 

 

 驚いているのか、返答は帰ってこない。

 …もしかしたら、もう少し慎重になるべきだったのかしら。

 過ぎた事は仕方ない、過去は変えることなど出来ないのだから、今後の行動をどうするべきか考えるのが先決だ。

 

 

「…答えられないものだった?」

 

「いや…そんな事はない。…ただ、少し驚いててな。バレてないと思ってたもんだから」

 

「こころも、分かってたんじゃない?」

 

「それは…その……」

 

 

 この子も良く、作り笑顔を浮かべる。

 無意味だと言うのに、何故そんな事をするのか私は理解出来ない。

 だって、それをしてなんの意味があるの? 

 他人に媚びを売るような行為は必要な時もあるけれど、何時も作り笑顔を貼り付けている意味は皆無だ。

 

 

「癖だよ。どんな時も笑顔で居た方が、助けられた側は安心するだろ? 笑えない時でも笑う。笑って、嫌なことを吹き飛ばす。案外、理にかなってると思うぞ」

 

「そうかもね。だけど、それはただの現実逃避の延長に過ぎないわ。…私やこころを助けてくれた時に見せてくれた顔の方が、余っ程良いものだったと思う」

 

「まさら!!」

 

 

 大きな怒鳴り声がリビングに響く。

 あまり、気分の良い話ではなかったと思うが、まさかこころにまで負担をかけていたなんて…。

 やり過ぎてしまったのかしら? 

 気の利いた話し方なんて知らない私は、思った事をストレートに伝えてしまう。

 

 

 私の話し方は、誰かを傷つけるものだと、久方振りに思い出した。

 

 

「今日はもう休むわ。お休みなさい」

 

「…すいません、私も休みます。お休みなさい」

 

「うん、二人ともお休み」

 

 

 好奇心は猫を殺す…だったか。

 ことわざや四字熟語はよく出来ているものだと、改めて思い知る。

 私たちの部屋は、結翔と母親が使っていた部屋らしい。

 結翔の自室の三メートルほど手前にある部屋だ。

 

 

 隣にある部屋だからこそ分かるが、この夜、彼が部屋に上がって来たのは夜中の一時過ぎだった。

 

 

 ──結翔──

 

 まさらやこころちゃんが上に行ってから十分程。

 俺は、少しぼーっとしながら、テレビの脇に置いてあるタロットカードを手に取った。

 そのタロットカードに過去の仲間を重ねて、震えた声を零す。

 

 

「…メル…かなえ、俺の作り笑顔ってそんなにわかり易いか?」

 

 

 返ってくる筈のない問は、静かにリビングに響いた。

 …もしメルやかなえが生きていたら、心配して同じ事を言っただろうか? 

 それとも、まさらと同じく呆気らかんと言ったのだろうか? 

 

 

 だが、幾ら考えてもIF(もし)IF(もし)

 現実にもしもの世界なんて、在りはしないのだ。

 

 

 俺はその日、珍しく占いをして、ピアノを弾いたが……気晴らしにしかならず、結局はあまり寝られなかった。

 

 

 思い描く偶像で理想(ヒーロー)は、遠く離れているような気がして、それが無性に悲しかった。

 

 

 




 主人公プロフィール

 名前:藍川 結翔
 性別:男性
 外見:身長は170前半で、赤褐色の眼、本人は普通だと言っているが中々のイケメンである。髪は黒。
 誕生日:2月3日
 血液型:B型
 星座:水瓶座
 好き:魔法少女仲間、ミルクティー、占い
 嫌い:無力な自分、
 趣味:読書、料理
 特技:ピアノ  
 出身地:神浜市
 学校:神浜市立大附属学校
 年齢/学年:15歳/高校1年生

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