無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 結翔「前回までの『無少魔少』。メルが魔女化して……それで…」

 まさら「台本を考えた人はドクズなのかしら、良心がないように見えるわ」

 こころ「…うん、私も流石にこれは酷いと思う。…前回は、メルさんが魔女化してしまって、結翔さんがそれを倒して、もう一体の魔女も倒しに行ったって話ですね」

 メル「ボクが結翔くんの正妻になった話ですね!」

 みたま「でも、付き合ってはないから、概念的な元彼女よねぇ?」

 ももこ「…生々しい話は、楽屋裏でやってくれ。取り敢えず、四十七話をどうぞ!」


四十七話「運命と言う名の筋書き通り」

 ──結翔──

 

 魔女狩りが終わったあと、俺たちはみかづき荘に集まり、キュウべえから話を聞く事になった。

 …当たり前と言えば当たり前だが、空気は重い。

 何時もだったら率先して空気を変えようと務める俺やももこも、一言も喋ろうとしない。

 

 

 …だが、キュウべえが来てから、空気が変わった。

 先程見せられた衝撃的な光景の説明を、キュウべえに求めた。

 

 

「キュウべえ…魔女って、魔法少女ってなんなんだ?」

 

「この国では、成長途中の女性の事を少女って呼ぶんだろ? だったら、やがて魔女になる君たちの事は、魔法少女と呼ぶべきだよね?」

 

「クソ野郎が…! じゃあ、俺たちが今まで倒してたのは──」

 

「結翔っ!」

 

「だけど! やちよさん!」

 

 

 俺の言葉を遮るやちよさんを他所に、キュウべえは話を続ける。

 感情を度外視した、無機質な声色で、メルヘンな見た目からは想像もできない現実的な答えを言い放つ。

 

 

「結翔、そんなに嘆く事じゃないよ、全てはこの宇宙の寿命を延ばすためなんだ。長い目で見れば、これは君たち人類にとっても得になる取引だって分かってもらえる筈だよ? それに、君の目指す街の平和にも関わってくるものじゃないかな?」

 

「…ざっけんな!! 誰かを犠牲にして得たものなんて──」

 

「でも、君だって自己犠牲をして街の平和を維持してるだろ? 大して差はないんじゃないかな? 自分は良いのに他人はダメなんて、君の方が身勝手だよ?」

 

 

 神経を逆撫でするような言い分。

 正論だ、間違ってる訳じゃない…訳じゃないけど、それは違うだろ!! 

 じゃあ、なんなんだ? 

 俺が倒してきた──俺が殺してきた魔女はみんな、この街を守ってたって事なのか? 

 

 

 メルも………………

 違う、絶対に違う。

 そんなはずない! 

 もし、そうだったとしたら、俺がやってきた事は……一体なんだったんだ? 

 

 

 街の平和を守る為に、街に居るみんなを守る為に、俺がやってきた事は、ただの手柄の横取りだったんじゃないか? 

 

 

「俺がやってきた事は…一体…なんだったんだよ!」

 

「君がやってきたこと? ヒーローごっこの事かい? ボクから言わせてみれば、本物のヒーローは倒された彼女たちさ。君は彼女たちの功績を打ち消して──横取りして後釜に座っただけ。偽りのヒーロー……いや、ヒーローを演じていただけに過ぎないよ」

 

「………………」

 

「そもそも、君一人が魔女になっていれば、宇宙の寿命を延ばすこの行為は終了する」

 

「……はっ?」

 

 

 …俺一人が魔女になれば、他の誰かが魔女化する事も、魔法少女になることも……ないって言うのか? 

 キュウべえの言葉が本当なら、俺って……なんなんだ? 

 訳が分からない、言っている意味が分からない。

 

 

 これ以上聞くなと、頭が警鐘を鳴らしているが、心が聞けと叫んでいる…逃げるなと鼓舞してくる。

 逃げられない、逃げたら……俺は自分で立てた誓いにも背く事になるから、それだけは嫌だ。

 

 

 絶対に…嫌だ。

 

 

「…どう言う意味だ」

 

「結翔君、これ以上は──」

 

「そうだよ、結翔! もうやめ──」

 

「黙っててくれ。大切な事なんだ」

 

 

 みふゆさんもももこも止めようとしたが、黙らせた。

 聞かなきゃいけない、たとえハリボテの心が砕けることになっても……

 俺は──

 

 

「早くしろ、キュウべえ」

 

「分かったよ。先ずはボクたちの目的とエネルギーの回収方法について話すけど、良いかい?」

 

「ああ」

 

「ボクたちの目的は、宇宙の熱的死──わかり易くすると、エントロピー増大を回避する事。そして、ボクたちは代替エネルギーとしての感情エネルギーの発生源を求めて、地球に飛来した異星生命体──君たちから言わせれば宇宙人ってやつかな?」

 

「…………大体は分かった、続けろ」

 

「エネルギーの回収は、数ある人間の感情の中でも特に強大な、第二次性徴期の少女が幸福から絶望に転じた際の感情エネルギーを採取すれば完了だ。魔法少女から魔女になる瞬間が、相転移エネルギーの回収効率が一番いいね」

 

「第二次性徴期の少女……か。俺が魔法少女になれた理由は、幸福から絶望に転じた際のエネルギー効率がいいと判断したから…か?」

 

「そういう事になるね」

 

 

 面倒臭い説明が入ったが、分かったことがある…コイツらは天性の屑だ。

 エネルギーの回収効率がいいから、第二次性徴期の少女を選び、そして『奇跡』と言う餌をぶら下げて契約させる。

 その後は、魔女になるのを待つだけ。

 …多分、魔女になる道筋を作る事だって、コイツらはやる。

 

 

 宇宙の存続の為だったらなんだって。

 

 

「君は本当に特別だよ、まさにイレギュラーさ。多感な第二次性徴期の少女より希望に満ち溢れていて、絶望に自ら足を運んでいくんだから。まぁ、同情も出来るけどね。因果律の収束具合から見ても、君は産まれる前から()()()()()()()。地球に意思がある──『神』が居る良い証拠だ」

 

「…………ハハッ、そうかよ…そういう事かよっ!!」

 

「ここまでは、地球に宿った意思──所謂『神』が書いた筋書き通り…と言った所かな?」

 

「父さんが死んだのも、俺が魔眼に目覚めたのも、魔法少女になったのも、かなえが死んだのも、メルが魔女になったのも…運命だったてことか?」

 

「そうなるね」

 

 

 ずっと、掌の上だったって事か。

 キュウべえ(クソ野郎)に騙されて、組織にも騙されて、神には踊らされて、ヒーローを気取ってた……だけ。

 バカみたいだ……今までやってきた事が。

 全部全部決められた事で、死ぬ事さえ許されない。

 

 

 段々と、ハリボテの心が壊れていくのが分かった。

 ポロポロと、落ちていくのが感じられる。

 折れたい、ポッキリと折れて、立ち直れなくなりたい。

 

 

 なのに、なのに、俺は──

 

 

「…………続ける」

 

「ヒーローごっこを、かい?」

 

「そうだよ。…アイツは、運命を変えた。自分で定めた運命をひっくり返した。…だったら、俺に出来ない言われは無いだろ? 本物のイレギュラーに──ヒーローになってやるよ」

 

「それも筋書き通り、かもしれないよ?」

 

「かもな。だけど…諦めるなんて、俺には出来ねぇ」

 

 

 ソファに寝かせていたメルの手から、グリーフシードを取り、かなえのソウルジェムを入れていた巾着袋に仕舞い込む。

 …死んでるなんて思えないほど、穏やかな顔だった。

 とても、幸せそうな…顔だった。

 優しく頭を撫でて、みかづき荘を出て行く。

 

 

 外に出ると、雨なんて降ってない筈なのに、頬に水滴が垂れる。

 可笑しく思って空を見上げると、夕焼けが目に染みるほど輝いていた。

 

 

「……さよなら、メル。…いつか、また」

 

 

 帰路を歩く俺の目からは、止めどない涙が溢れた…溢れて出て止まらなかった。

 大好きだった彼女に会いたくて、もう会えないのなんて分かっていて、悔しくて…苦しくて、涙が止まらない。

 

 

 結局、俺は彼女の葬式に、顔を出せなかった。

 …だって、出せるわけないだろ? 

 最終的に彼女を──メルを殺したのは俺なんだから。

 

 

 親に顔向けなんて…出来ない。

 泣いて、泣いて、泣いて、涙が枯れ果てる頃には、一週間の時が経っていた……

 

 

 ──ももこ──

 

 結翔は一週間の時を経て、ようやく学校に顔を出した。

 その時の顔はいつも通りで──いつも通りだからこそ、異常に感じる。

 見慣れた顔なのに、全く知らない顔に見えた。

 

 

 キラキラと輝く瞳なのに、ドロリとした闇が垣間見える。

 矛盾していた、寒気を覚える程に、矛盾していた。

 いつも通りなのに、いつも通りじゃない。

 輝いている筈なのに、底知れない闇が見える。

 

 

 アタシは……一言も声を掛けられなかった。

 だけど、アイツは何事も無かったかのように声を掛けてきて、一緒にみかづき荘に顔を出した。

 

 

 やちよさんもみふゆさんも、鶴乃でさえも、結翔の異常に気付いていて、それでも、誰も何も言えなかった──いや、結翔の纏う雰囲気が暗に言うなと語っていた。

 

 

 そして、結翔は──

 

 

「遺品整理、手伝いますよ」

 

 

 率先して、誰も手を付けていなかった──誰も手を付けられなかった遺品整理を買って出て、テキパキと片付けていった。

 時折、やちよさんに何かを確認していて、聞けば遺品の幾つかを貰っていいかの相談だったらしい。

 

 

 やちよさんも、メルの親から言われていたのか、幾つかだったら…と許可を出していた。

 

 

 ……アタシ、最低だな。

 ライバルが居なくなったことに、少しだけホッとしている。

 結翔をアタシの隣から奪う存在が居なくなったことに、心底安堵している。

 悲しんでいる筈なのに、嬉しくて。

 嬉しい筈なのに、悲しくて。

 

 

 中途半端な感情がせめぎ合って、ただ見ている事しか出来なかった。

 午後四時過ぎから始めた遺品整理は、九時前には終わって、今日はそのまま解散…そんな流れだった──筈なのに。

 結翔は思い出したように、リビングのドア手前で止まってこう言った。

 

 

「俺、チーム抜けます」

 

「……分かったわ」

 

「や、やっちゃん!?」

 

「し、ししょー? な、何で?! 止めないと、簡単に抜けるなんて──」

 

「みふゆ、鶴乃、良いのよ…何も言わないで」

 

 

 みふゆさんと鶴乃は反応していたが、アタシは何の反応も出来ずにいた。

 ……さっきまで、そんな感じ微塵もなかったのに…なんで? 

 どうしてなんだ? 

 

 

 一言、その言葉が口を出なくて、アタシは俯くだけ。

 結翔はそのまま話し続けた。

 

 

「色々考えたんです。考えて考えて、分かったんです。俺は、ここに居たら弱いままだ。パワーダウンした分、取り戻さないと! …だから、抜けます。でも、縁が切れた訳じゃないです。何かあったら呼んでください、絶対に助けになりますから」

 

 

 見なくても、分かる。

 コイツは、きっと笑顔でそう言うんだ。

 怖いくらい歪な笑顔で、そう…言うんだ。

 

 

 そして、それから数ヶ月の時を待たずに、アタシたちチームみかづき荘は解散した。

 これが、約一年前までに起きた事件。

 魔法少女の真実に辿り着いた時の…話だ。

 

 

 ──────────────────────

 

 ロスタイムの話は終わった。

 ここからは、絆を確かめる物語。

 

 

 解けかけた縁を結び直す物語が始まる。

 

 

 燃え上がる炎は、怒りか──憎悪か。

 




 次回からは三章に入ります、三章は『いつも誰かの手を取って』。

 次回もお楽しみに!

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