無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 結翔「前回までの『無少魔少』。真実を突き付けられた俺たちが、キュウべえを問い詰めたり、その過程で俺の意味不明な設定が明かされたな」

 まさら「ようやく出番ね」

 こころ「楽しみです!」

 結翔「誰もあらすじに触れてくれないの悲しいから、少しは触れてくれない?」

 ももこ「心配すんな、アタシが居るよ!」

 みたま「わたしも居るわよぉ!」

 メル「ボクもーー」

 結翔「はい、過去編から時間軸は元に戻り本編に。俺の過去を見た、まさらとこころちゃんはどう動くのか?楽しんで四十八話をどうぞ!」




三章「いつも誰かの手を取って」
四十八話「取り戻したもの、失ったもの」


 ──結翔──

 

「どうですか、結翔君? 思い出しました? 守れなかった過去を…」

 

「ええ、嫌なくらいハッキリと」

 

「じゃあ、こちらに──」

 

「行きませんよ、行く訳ないでしょ」

 

 

 濃霧の中に居るのは、俺とみふゆさんの二人だけ……じゃないな。

 もう一人…居る、出て来てないだけだ。

 

 

 夢見心地は最悪。

 心にのしかかるような後悔を感じる…が同時に、燻っていた──情熱と言う小さな火が、また燃え盛っている気がする。

 誓いは、俺の心にしっかりと刻まれていたんだ。

 

 

 色々なものが邪魔をして、小さく灯っていただけに過ぎない。

 記憶の追体験のお陰で、大分スッキリと片付けが出来た、それだけは感謝しなければいけない。

 

 

「また、大切なものを…失いたいんですか? メルさんや…かなえさんのように?」

 

「嫌ですよ。嫌に決まってる。けど…俺は、マギウスの計画に賛同出来ない。確かに、魔法少女の解放は魅力的です。でも、関係ない無関係の人間を巻き込むのは──犠牲にするのは違うでしょ?」

 

「いやーなくらい、せいろんだにゃー。でも、ヒーローさんだって、わたくしたちと同じで、自分を犠牲にしてるよね? それは良いの?」

 

「良いんだよ、俺は。お前らと違って、残機が無限なんでな。幾ら犠牲にしたって構わない」

 

「その所為で、誰がが悲しむとしても?」

 

「あぁ。…それに、もしもの時はケアするさ」

 

 

 カラカラと笑って、里見灯花に俺はそう返した。

 ヒーローとしての勘が言っている、コイツは不味いと。

 …あのキュウべえ(クソ野郎)と同じで、人の弱さにつけ込む所が特に。

 鶴乃とこころちゃん…考えうる限り、この二人は確実に持ってかれる。

 残りも、どうなるかは…正直分からない。

 

 

 だけど、俺はそれを踏まえても、マギウスにつくつもりはない。

 

 

「尊い自己犠牲なんて、在りはしないんですよ?」

 

「それでもです」

 

「…本当に変わりませんね」

 

「変わりましたよ…少しは」

 

 

 みふゆさんは悲しそうにそう言った。

 あれ程、敵だと言ったのに、そんな顔しないでくださいよ。

 コッチが悪者みたいじゃないですか……

 どうする事も出来ない俺は、待った。

 

 

 彼女の調子が戻るまで、ただただ待った。

 ──そして、戻った彼女は、俺にこう問い掛ける。

 

 

「何故、あの二人を傍に居させたんですか?」

 

「流れ…と言うか…勢いと言うか、最初はそんな感じでしたよ? …でも、時間と事件を重ねるにつれて、絆が深まって…みかづき荘に居た頃の、家族みたいな感じになったんです」

 

「家族…ですか」

 

「はい。俺にとっての家族は血の繋がりもありますけど、それと同じくらい強い絆で結ばれた相手で……居なくなって欲しくない人」

 

「ワタシも…その一人だったんですよね?」

 

「だった、じゃなくて、今でもですよ。…最後に付け加えるなら──あの二人はメルと同じで、運命を変えるものを持ってる気がしたんです。俺は…それを教えてもらいたい。要約するなら──ただのエゴですよ」

 

 

 お世辞にも、ヒーローとは言えない理由。

 けど、きっと人間らしい理由だ。

 弱くて脆い、人間らしい理由。

 …変わった俺も、変わってない俺も、全部引っ括めて俺なんだ。

 

 

 俺は、俺が信じた道を突き進む。

 ヒーローとして、正しいと思った道を。

 その過程で…どれほど傷つくことになろうとも。

 

 

「これで、終わりだ」

 

 

 夢から覚めるように濃霧が晴れて、俺は現実世界に引き戻された。

 

 

 ──まさら──

 

「結翔君の記憶、どうでしたか?」

 

「酷い、その一言に尽きるわ」

 

「これが、魔法少女の真実です。…まだ、ワタシたちに対立しますか? 大切なお友だちが、魔女になる可能性を消せるのに」

 

「…流石ね、私の事を理解してる。正直、私一人ならどうだっていいわ。元々、魔法少女になった時に、何時死んでもいいよう覚悟はしてきた。…まぁ、今はそれすら揺らいでるけど」

 

「なら──」

 

「嫌よ」

 

 

 私の、切り捨てるような言葉に、梓みふゆは動揺していた。

 …別に、何も可笑しいことは言ってない。

 酷いと思ってるのも確かだし、大切な友人であるこころが魔女になるのも──私は認められない、私だって…今は死にたくない、けど、それとこれとは話が別だ。

 

 

 マギウスの思想は共感できる部分もある、だがやり方には賛同も共感もできない。

 …そもそも、私たちは──

 

 

「どうして〜? こっちに来れば、助かるんだよ? わたくしの言ってること、理解してるよね〜?」

 

「どうしたもこうしたもないわ。無関係の人間を犠牲にするのは悪い事。頭の良い貴女なら分かるでしょ? …それに元々、私たちは自分から望んで魔法少女になった。例外はあれど、殆どの場合がそう。なのに、真実を知った途端、今まで守ってきた恩を返せと言うように、無関係の人間を犠牲にする。可笑しいと思わない?」

 

「……みんながみんな、あなたみたいに強い訳じゃ──」

 

「強い、弱いは関係ない。自分が契約したから魔女と戦わなきゃいけなくなった、一般人を守るのは次いでよ──副次的効果に過ぎない。なのに、あたかも守ってあげましたと言うのは……気に食わない。守ってあげたとか、声高らかに言いたいなら、少なくとも結翔みたいに全力で命を懸けてからにしなさい」

 

 

 私の言葉に、二人は黙りこくる。

 当然だ。

 私は間違ったことは言ってない。

 結翔を引き合いに出したが、出来るだけ客観的な判断をした。

 

 

 元を辿れば、結局は自分たちの自業自得。

 キュウべえに非はあるが、契約したのは自分で、魔女と戦うと決めたのも自分。

 その責任を、守っていた無関係な人間に載っけるのは──違う。

 犠牲にするのは──違う。

 

 

「話は終わり? なら、出させてもらうわ。…結翔の記憶を見せてくれた事、それだけは感謝しておくわ。ありがとう」

 

 

 そう言うと、霞のように二人の姿は消えて、濃霧が晴れた。

 夢の覚め時だ。

 

 

 ──こころ──

 

「結翔君の記憶、どうでしたか?」

 

「…こんなのって…こんなのってないですよっ!! なんで…なんで! あんなに頑張ってた結翔さんが、酷い目に遭わなきゃいけないんですか!? 理不尽ですよ! 不公平ですよ!」

 

 

 なんなんだ、なんなんだ、今見た記憶は! 

 酷いなんてものじゃない。

 今まで感じた事の無いような不快感が込み上げてくる。

 意味が分からない、訳が分からない。

 

 

 結翔さんが──分からない。

 狂えた方が楽だったのに、なんで笑えるの? 

 怖い…優しく見えていたあの笑顔が、今となっては恐怖の対象でしかない。

 …そして、それと同じくらい悲しい。

 

 

 誰よりも頑張ってきたあの人が、報われないなんて間違ってる。

 私は…自分が魔女になることよりも、親友であるまさらが魔女になるよりも、結翔さんが傷付くのが嫌だった。

 だって…だって…そうじゃないか!! 

 色々なものを背負ってきたのに、傷だらけになって走って来たのに。

 

 

 これ以上…これ以上、背負ったら、これ以上傷付いたら、結翔さんは本当に壊れてしまう。

 そんなの…そんなの…私は認められない。

 

 

「…どうすれば…結翔さんを救えるんですか?」

 

「魔法少女が解放されれば、結翔君を救うことに繋がります」

 

「マギウスのやり方に賛同は出来ません…出来ませんけど、結翔さんを救う方法がそれしかないなら私は──マギウスの翼に入ります」

 

「歓迎するよ〜! 丁度、粟根こころに合う実験があったんだー!」

 

 

 くふふ、と嬉しそうに笑う里見灯花ちゃん。

 みふゆさんも、心做しか微笑んでいる。

 

 

 それを見て、少しだけ後ろめたくなった。

 …ごめん、ごめんなさい、結翔さん、まさら。

 

 

 私は──そっちには行けないよ。

 だって、結翔さんを救わなきゃいけないから。

 

 

 ──結翔──

 

 意識の覚醒に合わせて、寝起きで歪む視界が修正されていく。

 まだ、ウワサの中…か。

 辺りを見渡すと、まさらとこころちゃんが倒れている事がわかった。

 

 

 やちよさんと入った筈なのに…都合良く飛ばされたって事か。

 取り敢えず、俺は近くに居るまさらに最初に声を掛けた。

 

 

「まさら、まさら! 大丈夫か!」

 

「…うぅ。…最悪の目覚めね、もっと良い夢が見たかったわ」

 

「残念。軽口が言えるってことは──」

 

「洗脳はされてないわ。お陰様でね」

 

「どういたしまして」

 

 

 まさらの無事は確認出来た。

 あとは、こころちゃんだ。

 期待は出来ないが、0%じゃない。

 運ゲーも良い所だが、今回は賭けるしかないんだ。

 

 

「こころちゃん、こころちゃん!」

 

「起きてちょうだい、こころ!」

 

「……ん…あぁ」

 

「良かった!」

 

「………………ひっ!?」

 

 

 無事に意識を取り戻したこころちゃんに、俺は安堵の笑みと手を向けたが…彼女は小さな悲鳴と共に俺の手を弾く。

 ……見間違いじゃなければ、こころちゃんは俺の事を、理解できない怪物を見る目で見ていた。

 そこで、思考が停止してしまい、俺は去って行く彼女を追いかけられなかった。

 

 

 一瞬、握っていた手を離してしまったような幻覚が、俺の目に映った。

 そこで気付いた、どう足掻いても、今回の件は一筋縄じゃ行かないことを。

 




 次回もお楽しみに!

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