無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 まさら「前回までの『無少魔少』。七海やちよの懸念を晴らす為に、私と環いろはがウワサ達と戦った話ね」

 結翔「ゼロワンネタが入れられた事に、作者は大層喜んでたよ」

 やちよ「あそこまでゴリ押しされるとは、正直思わなかったわ」

 いろは「そうですね…。私も、加賀見さんが強引に来るとは思いませんでした」

 みたま「強引なまさらちゃん…見たかったわぁ」

 こころ「…私もです!!」

 鶴乃「私の出番がやってこない!五十話をどうぞ!」


五十話「潰えぬ希望」

 ──結翔──

 

 右腕に感じる激痛。

 顔を顰めたくなるのを限界まで我慢して、相対する敵を見据える。

 口寄せ神社のウワサの時に出会った魔法少女…巴マミちゃん。

 

 

 だが、同一人物とは思えない程に、纏っている雰囲気が違う。

 どんよりと暗い瞳は底なし沼のように光がなく、見た者を引きずり込むような恐ろしさがあり、魔力も魔法少女のものでありながら何か不純物が混じってる感じがする。

 

 

「マミちゃん…だよね。出会ってそうそうぶっぱなすのはどうかと思うよ?」

 

「啓示を受けたんです。だから……しょうがないんですよ。解放の為に──救済のために、あなたたちは邪魔になってしまうから」

 

 

 …彼女たちにとって、俺たちは意思疎通が不可能な狂人判定でも食らったのだろうか? 

 まっ、邪魔者は消す、と言う単純思考で動いてくれるのは有難い…が、嫌な予感がする。

 脳が煩いほどに警鐘を鳴らし、逃げろと叫んでいる。

 真実を話して取り込んだ──ってだけじゃないな。

 

 

 腕を拾って、くっ付けて、仲間を連れて逃げる、簡単に見えるが恐ろしく難しい。

 まず、後ろを振り返る隙を与えてくれそうにないし、隙があったとしても背中を見せたくない。

 

 

 静止の魔眼で一瞬だけ動きを封じて、走り出す案もあるが……何秒止められるか全く分からない相手には悪手も良い所だ。

 チラリと右隣を見ると、やちよさんとまさらは既に臨戦態勢を取っている。

 判断が早くて、本当に助かるよ。

 

 

「まさら、やちよさん」

 

「五秒稼いで上げる。早く取ってきなさい」

 

「背中にも目を回しなさい、注意はこっちに寄せるけど、攻撃が絶対にそっちに行かないとは限らないから」

 

「すいません」

 

 

 そう言った次の瞬間、俺は無事な左手に合わせるようにグロックを魔力で編み、フルオートでマガジンに生成した赤い魔弾を撃ち尽くす。

 それを合図として、まさらが透明化でマミちゃんに攻撃を仕掛ける。

 ここからは賭けだ……

 

 

 警戒はしつつも、最高速で右腕を回収し、切れ目が合うようにくっ付ける。

 燃えるように熱く痛む右腕を睨みながらも、感覚を確かめる為に手をグーパーし確認。

 問題は…ないな。

 

 

 よし、反撃開始だ! 

 左手に持ってるグロックと同じ物を右手にも用意し、マミちゃんに突っ込む。

 

 

「まさら、代われ!」

 

「──っ!」

 

「…あなたが相手なら、本気でやらないと」

 

 

 銃のグリップ部分を殴り付けるように振り下ろすと、マミちゃんは不敵な笑みを浮かべながら受け止めた。

 …嘘だろ? 

 警戒心MAXだったから、本気でやったのに…ビクともしてない。

 

 

 不敵な笑みに、言い表せない不快感を感じていると、一瞬の内に彼女が纏う雰囲気が──いや、魔力が変わった。

 魔法少女としての衣装は、黄金の装飾を身に付けた純白に。膝下にかかるほどの広いヴェールをかぶり、その上に王冠を被る。

 背後には無数の矢が突き刺さった光背のような環を背負っている。

 

 

「良いねぇ、フォームチェンジ? 俺は嫌いじゃないよ、そう言うの。…纏ってるのがウワサの魔力じゃなきゃね!!」

 

「ふっふふふ、あははははははははははは!!」

 

 

 甲高く耳に響く笑い声が漏れるのと同時に、環の部分からマスケット銃が顔を出す。

 手に持ってる二丁と合わせて……軽く二桁には登っているだろう。

 洗脳されてるのは確実とは言え、まさか人の最大の枷である、殺人への忌避を取り除くなんて……どうかしてるぞ。

 

 

 それが無くなった人間は──もう、普通じゃいられない。

 マミちゃんは狂ったよう笑いながら、幾つもの銃口を俺に向けた。

 即座に未来視の魔眼を発動し、コンマ一秒でも早く放たれる銃から対処していく。

 

 

 …クソっ!! 

 二丁拳銃にしたのは、失敗だったか?! 

 

 

 有り得ない…そう言いたけど、現実にそれは起こる。

 洗脳されウワサの影響も受けている彼女はコンマ一秒のズレもない、正確無比な射撃を、明らかに正常とは言えない状態でやってのけた。

 

 

 未来視の魔眼から、急いで静止の魔眼にチェンジし叫んだ。

 

 

「静止!」

 

 

 十数発の弾丸とマミちゃんが俺の目の前で静止する。

 持って三秒…だが、俺にとっては命を繋ぐには十分過ぎる時間だ。

 短い時間を最大限活用し、俺は魔弾で彼女の放った弾丸を相殺する。

 

 

 全弾相殺する頃には静止状態から動き始めていたが、間に合ったならセーフだ。

 俺の魔眼の効果に、狂ったように笑っていたマミちゃんも少し動揺し動きを止めたが……俺はその隙を逃がさない。

 

 

 構など取らず、今一番上手く使える赤の属性魔力──炎を右足に纏わせ、マギアを放つ。

 本来なら威力も含めて、各属性の魔力をしっかりと混ぜた方が良いのだが、そんな余裕はない。

 

 

「喰らっとけ!!」

 

 

英雄の一撃(ヒロイックフィニッシュ)』は、マミちゃんの鳩尾辺りに入り、余程の威力だったのか、地面と平行線を描くようにに吹っ飛んだ。

 

 

「逃げるぞ!!」

 

「…は、はい!」

 

「分かったわ」

 

「…急ぎましょう。多分、すぐに起きるわ」

 

 

 変身を解除し、入口に向かう。

 夕暮れはとうに過ぎたのだろうか、街灯の明かりが頼りなくらいに薄暗い。

 俺は、乗ってきたバイクの飛び乗りキーを入れて、エンジンをかける。

 

 

「いろはちゃんは俺と一緒にバイクで! 二人は…公園で落ち合おう」

 

「わ、分かりました!」

 

「気を付けなさい。ここからは、援護なんて出来ない」

 

「それは、私たちも同じよ、加賀見さん…」

 

 

 てっきり、俺たちはマミちゃんが追ってくるものだと思っていたが、いつまで経っても彼女は現れず、目的の公園に着いた。

 記憶ミュージアムからそこそこ距離のある場所に位置する公園。

 

 

 ここまで来れば、一先ずは大丈夫だろう。

 ……後は、尾行している子をどうするべきか…それが悩みどころだ。

 

 

 ──いろは──

 

 何とか、記憶ミュージアムから脱出した私たちは、ある公園で一度足を止めて集まった。

 …何故か、結翔さんだけは考え込んでいる様子だったが、私が何か出来る訳でもなく、ただ彼が口を開くのを待った。

 

 

 すると、結翔さんは近くにあった小石を拾い、公園にある茂みに思いっきり投げ込んだ。

 一瞬、何をしているのか分からなかったが、答えはすぐに分かる事になる。

 結翔さんが小石を投げ込んだ場所から、カキンと鉄を打ったような音がして……一人の少女が顔を出した。

 

 

 騎士にも見える装いで、サーベルのような剣を持った──魔法少女。

 青色ショートの髪に水色の瞳、鶴乃ちゃんに似たどこか人懐っこい笑みを浮かべながら、変身を解除してこちらに歩いて来る。

 

 

「あたし、もしかしなくても、警戒されちゃってます?」

 

「…まぁね。色々とこっちにも事情があって、今は敏感なんだ。何か用?」

 

「さっきの建物で戦ってた…人。あたしの先輩で、巴マミさんって言うんですけど…。何があったか、知ってたりします?」

 

「…も、もしかして、まどかちゃんやほむらちゃんの…お友達ですか?」

 

「えっ!? まどかとほむらのこと知ってるの!? だったら、話が早いや。実は──」

 

 

 彼女の名前は美樹(みき)さやかちゃん。

 まどかちゃんやほむらちゃんと同じく、巴さんの後輩で、帰ってこない彼女を探しに来ていたらしい。

 そして、偶然にも、私たちが巴さんと戦っているのを発見して追ってきた…との事。

 

 

「本当は、すぐにでも出て行って仲裁したかったんですけど…。全然、私の知ってるマミさんじゃなくて。信じて貰えないかもしれないですけど、凄く優しい人で、あたしたちにとって良い先輩なんです!! …あんな事する人じゃ──」

 

「分かった。君の言葉を信じるよ」

 

「…ほ、本当ですか!?」

 

「えぇ。今の彼女は洗脳されているようだし…。普段はしないような事をしても不思議じゃない。…取り敢えず、私たちが知っている情報の全てをあなたに話すわ。…少し重い話もあるけど、大丈夫?」

 

「…お願いします」

 

 

 やちよさんが丁寧に、話の筋を通して話していく。

 どうして、巴さんがあちら側に居るのか…その理由を。

 

 

「魔女化…。ごめん…ぜんっぜん処理しきれない…。それってマジなの? あたしたちが魔女になるって…」

 

「はい…私もやちよさんも、結翔さんに加賀見さんも、この目で見たことなんです…」

 

「ウソでしょ…。それで、マミさんもマギウスの翼…って言うのにいたってわけ? ダメ…信じらんない…」

 

「誰も、この目で見ないと信じられないよ。いや、信じたくない…と思う」

 

 

 美樹さんは上手く受け止められてないのか、少しだけど体が震えている。

 …それはそうだ、それが真実なら、今まで私たちが倒していた魔女は──元は同じ魔法少女と言う事になるのだから。

 

 

「じゃあ、あたしが倒してたのって…。くっ…! ちょっと、帰って頭冷やしてくる」

 

「美樹さん…!」

 

「あまり、根詰めて考えないで。もしも何か聞きたいことがあれば、いつでも来てちょうだい。まだ、あなたに話せることは色々とあると思うから…」

 

「はい…」

 

「あの、ごめんなさい。…急にこんな話を」

 

「いいよ、聞きたいってお願いしたのはあたしだし。…それに、いずれ知る事になるんでしょ? それが、今だったってだけだよ…。受け入れられないけど。…あたしの方こそ、ごめん。帰って、まどかたちと色々話してくる」

 

 

 そう言い終えると、美樹さんは足早に去っていった。

 加賀見さんは終始無言で、どこか虚空を見つめているようだ。

 …彼女を見て、何か思う事があったのだろうか? 

 

 

「あの子…大丈夫かな」

 

「ちょっと、話すのを早まったかもしれないわね…。もう少し丁寧に話せる場を用意するべきだったわ…」

 

「一応、まどかちゃんにも連絡を入れておきます…」

 

「えぇ…」

 

「話は終わり? なら、帰りましょう。これからの事、考えなきゃいけないでしょう?」

 

 

 無機質で感情を感じさせない声音に変わらない無の表情。

 最近になって見慣れたその顔に、怒りが垣間見えたのは…見間違い? 

 

 

 その後、私たちは、家までの長い道のりを歩いて帰っていく。

 それはやちよさんが一言、「時間はかかるけど少し歩いて帰らない?」と、優しく笑いかけた気持ちが何となく分かったから。

 

 

 方向が少し違いながらも、結翔さんに加賀見さんも家に寄っていくと言って、歩いている。

 

 

 言葉も交わさずに歩みを進めると、少しづつ自分の胸が締め付けられてくるのが分かる。

 結局、私が誘いに乗ったからだ、相手をあなどっていたからだって、気持ちが溢れてくるから。

 

 

 それは、やちよさんや……加賀見さんも同じかもしれない。

 二人も歩き始めると、何も言わずに前を向いているだけだから。

 

 

 後悔に満たされたまま考えていると、自分がしたいことは簡単に見つかる。

 みんなの洗脳を解いて助けたい、ういを見つけたい、みふゆさんを連れ戻したい。

 

 

 この気持ちにウソはない。

 だから、落ち込んでなんていられない。

 自分のせいでこうなったことは反省して、もう一度立ち上がらないと、何も進まない。

 

 

 みんなを助けるとこなんて…出来ない。

 

 

「歩いて帰ってくると、かなり時間がかかっちゃうわね。これじゃ、明日の朝は起きられそうにないわ…」

 

「同感ですよ。…俺は寝られそうにもないですけど」

 

「やちよさん」

 

「ん?」

 

 

 やちよさんの言葉に、カラカラと笑いながら賛同する結翔さん。

 そんな二人の何気ない会話を邪魔したくはなかったが、お礼は言っておきたくて、彼女の名前を呼んだ。

 

 

「ありがとうございます。考える時間をくれて」

 

「別に、私だって今回のことはちゃんと反省して、自分でも区切りを付けたいと思ったから」

 

「私も気持ちに区切りを付けました」

 

「そう、それで、どういう気持ちになったの?」

 

「変わりません。ただ、自分の中で覚悟が決まっただけです」

 

「その覚悟、聞かせてもらっていい? リーダーの言葉聞きたいわ」

 

 

 私の目をしっかりと見据えて、やちよさんはそう言った。

 試してる訳じゃない、純粋に私の言葉が聞きたいだけなのだ。

 だから、私は期待に応えようとする訳ではなく、ただ自分の思いを述べる。

 

 

「はい…。マギウスの翼からみんなを助け出します。…私たち四人だけになってしまいましたけど…」

 

「俺たちも数に加えてくれてるんだ。嬉しいねぇ」

 

「茶化さないで、ポンコツヒーロー」

 

「んだと! 誰がポンコツじゃ!?」

 

 

 ボロボロになって負けて帰ってる筈なのに、私たちの心はめげずに前をむいていた。

 …これも、結翔さんのお陰なのかもしれない。

 以前より温かい、太陽のような存在感が私たちを優しく照らしてくれる。

 

 

 そうやって、少しだけど、笑いながら歩いた。

 時間を掛けて、ゆっくりと。

 

 

 ようやく見えた、見慣れたみかづき荘の外観。

 数時間離れただけなのに、もう何年も帰ってなかったような錯覚を覚える。

 しかし、それと同時に、違和感を覚えた。

 

 

 それは──

 

 

「あれ…電気が点いたまま…?」

 

「家を出るときに、ちゃんと消したはずよ…」

 

「もしかして…フェリシアちゃんたちが…?」

 

「あぁ、多分──」

 

 

 何かを言いかけた結翔さんを他所に、私は急いでみかづき荘に走った。

 玄関を開けて、靴を脱ぎ、サンダルを履いて廊下を走る。

 リビングのドアを開けて、私はもしもの可能性を信じて呼び掛けた。

 

 

「フェリシアちゃん! さなちゃん!」

 

 

 だけど、家に居たのは──苦笑いを浮かべたももこさんだった。

 

 

「えっと、ごめん、ももこでした…」

 

「そんな…」

 

「えぇ!? いろはちゃん!? そんな崩れるようなこと!? そりゃ、アタシはバットタイミングのももこだけど…」

 

 

 疲労もあってか少しばかりの期待が打ち砕かれたからか、私は膝から崩れ落ちるようにへたりこんだ。

 …期待、し過ぎたのかな…? 

 

 

 そして、少しの間を置いて、やちよさんや結翔さんたちが入ってきた。

 

 

「ももこ…」

 

「あ、やちよさん…に結翔にまさら?」

 

「どうしたの、勝手に上がり込むなんて…」

 

「そりゃ、用事があるから上がり込んだのさ。合鍵の場所は定期的に変えた方がいいよ」

 

「余計なお世話よ。…で、用事って……あの事よね」

 

「分かるのか…?」

 

「えぇ…。レナとかえでに真実を話したのなら。あの解散の話が出てもおかしくないと思うわ…」

 

 

 ももこさんとやちよさん、互いに向かい合って話を続けた。

 どうしてか、二人の間には、重苦しい空気が流れている。

 

 

「お察しの通りだよ。アタシも自分の事にはちゃんとケリをつけたくてさ。もう一度、しつこく聞いてやろうと思ったんだ」

 

「しつこくしなくても説明するわ…。あなたにもずいぶんと迷惑をかけたから…」

 

「どういう心境の変化だよ…」

 

「いろはと…加賀見さんにね、体を張られて説得されてしまったのよ…」

 

「いろはちゃんと…まさらちゃんに!?」

 

「あ、はい…。急に解散って言い始めて、それで…」

 

「ふっ、まさか予想した通りになってるなんてね。グッドタイミングなんだか、バットタイミングなんだか…」

 

 

 呆れたような苦笑いを、ももこさんは零した。

 零れた理由は分からない、安心したからなのか、はたまた──

 

 

「まぁ、それはいいとして、聞かせてくれるんだろうね」

 

「えぇ…。納得してもらえるか、それは分からないけど。答える準備はできてるわ。解散した理由も…私が何を考えていたのかも…」

 

 

 それから、やちよさんは申し訳なさそうな表情で、一つ一つ話していった。

 時折、ももこさんは相槌を打っていたが、それ以上は何も言わず、ただ聞くだけだった。

 

 

 全てを話し終わって、やちよさんがこう続けた。

 

 

「だから私はね自分自身を疑うことはやめて、最後のチャンスを自分に与えることにしたわ…。ごめんねももこ…。あなたにはどれほど心配をかけたか知れないわ…。たとえ、私の願いのせいじゃなかったとしても、あなたを苦しめたのは私の罪。何を言われても、何をされても受け入れるわ…」

 

「その言葉に二言はないね、やちよさん…」

 

「もちろんよ…」

 

「じゃあ、ちょっと苦しいかもしれないけさ…勘弁してくれよ?」

 

「ももこさん…!」

 

 

 私が止めようと、間に入ろうとした時、結翔さんは無言で私の肩を掴んだ。

 首を横に振って、大丈夫だと目で語った。

 …私は大丈夫の意味が分からなかったが、成り行きを見守る。

 

 

 やちよさんは目を瞑り、ももこさんは思いっきり──抱き着いた。

 強く…強く…離さないように。

 

 

「ぐっ…ももこ…そんなきつく抱きしめないで…」

 

「良かった…。本当はアタシらがなんかしちゃったんじゃないかって。そうじゃなかったら、本当に変わったのかもしれないって、そう思ってたんだ…。けど、アンタの口から本当のことが聞けてよかった。本当に何も変わってなくて、良かったぁ!」

 

「ももこ…。本当にごめんね…」

 

 

 泣きじゃくるももこさんの背中を、やちよさんそっと撫でながらあやした。

 解けかけていた縁が戻ったその光景に、私も涙を零す。

 私がやった事は間違いじゃないと、証明されているようだったから。

 

 

 二人の蟠りも無くなり、話が終わった後、今後の事についてももこさんに聞かれた。

 マギウスの翼に連れて行かれたみんなを取り戻す事を伝えると、心許ないグリーフシードを集めると言い出してくれて、本当に嬉しかった。

 

 

 まどかちゃんからも返信がきて、またこちらに来る…との事だった。

 まだ、終わってない。

 まだ、希望は潰えてない…その事を実感した。

 

 

 ──結翔──

 

 今後の事を少し話したあと、俺たちは家に帰っていた。

 ももこも、今日は疲れたのか大人しく自分の家に帰り、藍川家には俺とまさらと二人だけ。

 …特に何をする訳でもなく、マジカルダイナマイトとマミちゃんとの戦闘で疲労がピークに達しつつあった俺は、そのままソファにダイブする。

 

 

「ご飯とお風呂、どうする?」

 

「作る気も起きないし…風呂もシャワーで済ませる」

 

「そう。…大丈夫──じゃないわよね」

 

「…………そうだな、大丈夫じゃない」

 

 

 忘れるに忘れられない、最悪な過去の追体験。

 さっきまではみんなの手前、なんでもないように振る舞っていたが、家でまでそんなのできっこない。

 グルグルと頭を巡る考えを吐き出すように、まさらに問い掛ける。

 

 

「なぁ…まさら。お前だったら、どうしてた?」

 

「…分からないわ。私はあなたじゃないから、あなたの感情なんて分からない。だから、どう行動すれば良かったのか…そんなの分からない。それに、私が最前の答え、完璧な答えを出したとしても意味なんてないわ。過去は過去、()()()()()()()()()()()()()なのよ?」

 

「たらればでも、聞きたいもんは聞きたいんだよ」

 

「運命を恨めば? それか、その運命を作った神様を恨めばいい。それじゃダメなの?」

 

「恨んださ、恨んで恨んで恨み尽くした。…けど、結局は運命を変えられなかった、無力な自分を恨んだ。殺したいくらいに…な」

 

 

 なにも、変えられなかった。

 彼女は変えて見せたのに、俺は変えられなかった。

 無力で、無知で、俺は何一つ成せていなかったのだ。

 

 

 救えてるようで救えてなくて、助けてるようで助けられてなくて。

 救っているようで救われていて、助けているようで助けられていて。

 

 

 自分自身が、ヒーローでもなんでもない、偽善者に見えてしょうがない。

 でも、周りに居るみんなが俺をヒーローだと言ってくれるから頑張ってこれた、誓があったから折れずにやってこれた。

 

 

 ……まだ、諦めるには早い。

 運命は変えられる、いや、変えてみせる。

 

 

「こんな所で、終われないよな」

 

 

 重い体を持ち上げて、シャワーにでも入ろうとリビングを出ようとしたその時、何故かまさらに抱き締められた。

 しかも、胸を押し付けるような形で、抱き締められたのだ。

 世間一般の男から見れば、「おい、その場所変われ!」と言われる場面だが…良く考えて欲しい。

 

 

 柔らかい感触は確かに最高だ…最高だが、息ができない!! 

 疲れも相まって力が入らず抜けられない…! 

 必死にタップして、危険を伝えると、まさらは手を離した。

 

 

「はぁ…はぁ…いきなり何すんだよ、死ぬかと思ったわ」

 

「…こころは、こうされると落ち着くと言っていたから。あなたも、そうかと」

 

「……ありがとな、心配してくれて」

 

「…私たちは、家族…でしょ?」

 

「…そうだな。よし! 明日からは頑張ってもう一人の家族を探しに行くぞ!!」

 

「えぇ、そうね…」

 

 

 えい、えい、おーと拳を上げると、まさらは、らしくない笑みを浮かべながら、俺に習って拳を上げた。

 

 

 …絶対に、こころちゃんやみんなを取り戻すと、俺は心に決めた。




 次回もお楽しみに!

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