まさら「最後のはいらない」
ももこ「えー、いるでしょ!それないと、読者さんやってられないよ?」
まさら「良いのよ。元々、この小説にラブコメタグ付けてないんだから」
結翔「ぶっちゃけるなよ…」
みたま「ラブコメ要素はないけど!みなさぁん、五十一話を楽しんでどうぞぉ!」
──結翔──
記憶ミュージアムの一件から、数日が経った──いや、経ってしまった。
手がかりは殆どなく、詰みに近い状態だ。
しかも、いろはちゃんたちが先日会った白羽根は、こう言っていたらしい。
『このふたりも由比鶴乃や粟根こころのように道具として使わせてもらおう』
『どれだけ喚いて捜しても仲間はもう助からない』
『覚えておけ、どうせお前らは後悔する』
逃亡する際に放った言葉でもあるので、負け犬の遠吠え…と割り切りたいが、そうもいかない。
マギウスの翼、その上に立つマギウスは危険だ。
人の心を持ってるのか、それを疑いたくなるレベルで。
刻一刻とタイムリミットは近付いてる。
俺は、家のリビングで、ノートパソコンと山積みになったファイルと睨めっこしながら、情報を整理していく。
マギウスの翼が関わる情報の全てを洗い出し、纏める。
昨日までで大分終わったが…お陰で寝不足だし、学校にもまともに行けてない。
出席日数の件で怒られるのは勘弁願いたいのだが……
「…やるしかない…よな」
ため息を吐きながらも、これまでに作った自分のレポートを読み進めていく。
外に出て魔女を狩ってくれてるまさらやももこ、陽動作戦のようにウワサを潰してマギウスの翼と接触を図ろうとしている、いろはちゃんとやちよさんの為にも、何でもいいから新しい発見が欲しい。
なけなしの集中力を犠牲に、目を走らせていると、俺は過去の自分の資料から、一つの地図を発見した。
それは、これまでに潰してきたうわさや、害はないので放置していたうわさの出現場所を印した地図。
うわさには少しだけ種類がある。
やちよさんの受け売りだが……
無条件で出現するうわさ。
特に理由はなく自然に発生するうわさ。
場所が限定されているものは少ない。
例として挙げるなら、『ミザリーウォーター(フクロウ印の給水屋)』。
特定の行動で出現するうわさ。
誰かの行動によって発生するうわさ。
場所が限定されているものは少ない。
例として挙げるなら、『絶交ルール』。
最後に、特定の場所に出現するうわさ。
特定の場所で恒常的に出現しているうわさ。
条件を満たさないと入れない場合がある。
例として挙げるなら、『口寄せ神社』。
この三種類、全てのうわさの出現場所を印した地図を、俺は既に描いていたのだ。
さっすがー、過去の俺!!
こう言う時、自分の面倒臭い性格が好きになれる。
そして、地図を確認していくと……ある事に気付いた。
地図のある部分が、台風の目のようにうわさがない。
場所的には……工匠区の旧車両基地…か。
罠かもしれないけど…行ってみる価値はある。
あと…他には……
そうやって、目を凝らしていると、もう一つ不思議な場所を見つけた。
うわさが出現した事を示す印が、幾つも重なっている場所だ。
…
取り敢えず、分かった事は伝えないと。
俺は、近くに置いていたスマホを手に取り、やちよさんに連絡を取った。
何回かコールが続いたあと、スピーカー越しに驚きの感情が混じった声が聞こえてくる。
『流石結翔ね。グットタイミングよ』
『
『冗談はよして。今ね、いろはと一緒にうわさが出現した場所を地図に描いてみたのよ。そしたら──』
『台風の目みたいな場所と、出現場所が複数重なる所が見つかった?』
『そうよっ! よく分かったわね』
『丁度、俺も過去の資料から地図が出てきたんですよ。うわさの出現場所を示した地図が。…今すぐ合流します』
『あなたなら場所は大丈夫よね。里見メディカルセンターに行くわ。一応、地図も持ってきてちょうだい』
了解です、の一言で締めて、俺は電話を切る。
中々にグットタイミングだったようだ…いや、バットタイミングになり掛けたけど……
それは、まぁ、良いだろう。
最低限の荷物であるスマホとサイフ、ソウルジェムと巾着袋を持って外に出て、約束の場所に向かった。
地図は、スマホで写真を撮って保存済みだ。
…鬼が出るか蛇が出るか、それは分からない。
──いろは──
結翔さんと合流してすぐ、私たちは里見メディカルセンター近くに足を踏み入れた。
自然と溢れてくる緊張感。
やちよさんが警告するように、口を開いた。
「この辺りから、うわさが増えるはずよ」
「病院の近くに拠点があるから、うわさも拠点を守るために…。なんて、ありますかね…?」
「それは考えに難い…かな。うわさって特定の条件を満たさないと現れないし、防衛向きではないからね」
「そっか…。罠みたいな内容のうわさもなかったですしね」
「えぇ…」
ここにあるうわさに規則性もなければ、罠になるようなうわさもない。
正直、私たちには、ここにうわさが集中している意味が、皆目見当もつかないのだ。
うわさを囮にして誘き寄せる罠…だったりして?
そんな当たって欲しくない考えは、数秒後…現実になった。
うわさを囮にしたかは分からないが、複数の魔力反応を、やちよさんと結翔さんが感知した。
「複数の魔力の反応よ」
「多分、マギウスの翼です!」
「…とは言っても、鶴乃たちのことはどうせ知らないんでしょうね」
「でも、聞くだけ聞いてみましょう」
「そっちの情報が出なかったら、アジトだけでも吐いてもらわないとな」
「えぇ…。早く出てきなさい!」
やちよさんの言葉に反応するように舗装路の脇にある茂みから、複数の羽根が姿を現した。
白羽根は一人だけで、他は黒羽根を複数人従えている。
二桁は居ないけど…なんだろう。
違和感を感じる。
「ここのうわさを纏めて消すつもりかもしれないが。そうはさせない。行くぞ、三人を抑えろ」
「……………………」
「……………………」
「誰が抑えられるものですか」
「話は聞かせてもらうから! 鶴乃ちゃんとこころちゃん、フェリシアちゃんにさなちゃんの場所を!」
「力づくでも…ね!」
タンカを切って、戦いが始まろうとしたその時。
私の違和感は、確信に変わった。
複数居る黒羽根の中の二人から感じる魔力に…私は懐かしさと親しみを感じる。
あまりにも酷似している、フェリシアちゃんとさなちゃんの魔力反応に。
「ぇ、この、反応って…。フェリシアちゃんに…さなちゃん…」
「この黒羽根が…そうみたいね…」
「本当に、良心どころか、心が欠片もないみたいな行動するな。サイコパスの方がまだ良心あるぜ」
「……………………」
「ふたりとも駆り出されたのかもしれないわね。必ずここで確保するわよ!」
「はい!」
「了解!」
「仲間同時で潰し合うとは、これは見物だな」
フィクションに良く出る、悪党が言う定番セリフを口にした白羽根。
若干の怒りを覚えながらも、私たちはフェリシアちゃんとさなちゃんを確保する為に動こうとした…刹那。
二人の内一人、フェリシアちゃんが、黒羽根のローブを脱いで、一歩こちら側に着く。
「ハンッ! ざーんねーんでした!」
「えっ…」
「誰が見物になんかさせるかよ! オレは最初からいろは側だバーカ!」
「えぇっ!?」
「ちょ、嘘でしょ!?」
「馬鹿な…!?」
「あの子、洗脳は!?」
私とやちよさんが驚きの声を上げ、結翔さんが苦笑してる間に、もう一人のさなちゃんもローブを脱いで、一歩こちら側に着いた。
「私もです…。ここで、お家に帰らせてもらいます…!」
「さなちゃんも?」
「いろはさん…!」
「なっなっ、どういうことだ!?」
慌てふためく白羽根。
他の黒羽根に指示を出せないままで、二人は無事に戻ってくる。
抱き着いてきたフェリシアちゃんをやちよさんがキャッチし、さなちゃんも私の方に寄ってくる。
「いろはさん…!」
「さなちゃん! 大丈夫!? 無事!? 怪我してない!?」
「はい、私…元気です…!」
「良かったぁ…」
「…くっ、ふたりをこっちの黒羽根を返せ」
「返せ? ふざけんな、コイツらはお前らのじゃねぇ!」
結翔さんが一喝すると、白羽根たちは動揺したまま去っていき。
私たちは再会の喜びを、存分に分かち合った。
泣いて謝るさなちゃんを、私は抱き締めて。
お互いに謝り合うやちよさんとフェリシアちゃんも、抱き締め合った。
それを、結翔さんは微笑みながら見つめる。
だけど、その目には、僅かな悲しみが混じっていることに、私は気付かない。
一頻り、喜び合った後、私たちはみかづき荘に戻った。
途中で、魔女狩りをしていた加賀見さんとも合流し、家で落ち着いてから、二人の話を聞くことに。
「はい、ココア」
「おぉ、あったけー」
「ありがとうございます」
「あちっ、ふーふー」
「…ふー…ふー」
渡された温かいココアを飲んで、二人の顔が蕩けていく。
ゆったりとした落ち着いた雰囲気が漂う中、少しだけ申し訳なさそうな表情で、結翔さんが私たちが一番聞きたい質問をしてくれる。
「早速で悪いけど。二人とも、どうやって抜け出したの? こころちゃんと鶴乃は? 一緒じゃないの?」
「えっと、鶴乃さんと粟根さんは、分からないんです…。途中でどこかに連れて行かれちゃって…」
「連れて行かれた…?」
「そんな…。やっぱり、白羽根が言ってたのって…」
各地のうわさを潰すツアーの最中に出会った、白羽根が言っていた言葉。
嫌な言葉、耳に残る、嫌な言葉。
『どれだけ喚いて捜しても仲間はもう助からない』
『由比鶴乃や粟根こころの後を追わせてやれ』
脳裏に過ぎる、最悪の結末。
必死に妹探しを手伝ってくれた新しい友達であるこころちゃんに、みかづき荘の仲間である鶴乃ちゃん。
…もし、二人が死んでいたとしたら──私の!!
「鶴乃ちゃん…こころちゃん…」
「みふゆ…あの子、鶴乃や粟根さんに…本当に手をかけたっていうの」
「…もし、それが本当なら。私は、梓みふゆを──」
「ち、違うんです…!」
重い話題に、顔を顰める結翔さんにやちよさん。
あの加賀見さんでさえ、みふゆさんに本気の敵意を向けようとした時、さなちゃんが待ったをかける。
「みふゆさんは、あの人は…!」
「だけど、連れて行ったんでしょう?」
「白羽根が言っていたわ、仲間はもう助からないって」
「じゃなくて、あの…私たち…!」
「そうだぞ、オレたち。あのねーちゃんに助けて貰ったんだ」
「はい…。さっきの戦った時も私たちが紛れ込めるように、わざわざ手配までしてくれたんです…」
噛み合わない会話。
みふゆさんの事に関して、私たちの中で食い違ってる部分がある。
何が食い違ってるのか…聞かなきゃ!
「…さなちゃん、フェリシアちゃん、詳しく話して貰っていい?」
「俺からも、頼むよ」
「…はい」
何かを考えるような難しい顔付きのまま、結翔さんもさなちゃんとフェリシアちゃんの二人に、何があったのかを詳しく教えてもらうよう頼んだ。
私たちは、その話を聞いて。
みふゆさんに残っている、優しさの欠片を垣間見た。
──みふゆ──
ワタシたちのアジトである、ホテル『フェントフォープ』。
その一室にて、鶴乃さんたちは捕らえられていた。
監視と洗脳の持続確認が、当面のワタシの仕事。
だから、こうして彼女達の監視をしている訳だが、洗脳で操られている様は…とても痛々しい。
「だーもう。いつまでこんなところで待ってなきゃなんないんだよ。オレたちも解放のために色々やりたいよな」
「うん、そうだね。せっかく
「はい…。ウワサを使っても魔女を使っても解放に繋がるのなら…。私、なんでもやりたい…」
「これ以上、傷付けさせない為にも、全ての魔法少女を解放しないと」
それぞれが違う理由を持ってここに居る。
…その中でも鶴乃さんとこころさん、二人は特に危ない感じがする。
コールタールのように、暗く淀んだ瞳からは、光が見えない。
結翔君の記憶は酷く、彼女たちに作用している。
それもその筈か…。
なにせ、彼が誰よりも希望を持っていて、彼が誰よりも絶望を身に受けたから……
「今のマギウスが相手ではそれだけでは済みませんよ」
「みふゆ…」
「いいんですか? あなた自身も捧げないといけないかもしれないのに。特に、やっちゃんと結翔君の仲間だった…あなたたちなら、なおさらヒドイ目に遭ってもおかしくありません…」
「いいに決まってんだろ。それぐらいの覚悟出来てるし」
「はい…。いくらでも私を使ってください…。どうせ透明人間ですから…」
「わたしだってなんでもするよ。みふゆの頼みだったら、もっと頑張るからね」
「私も幾らでも頑張れます。ずっとずっと我慢してきた、あの人の為にも」
「…鶴乃さん…こころさん。駄目ですよ…それは…そこまでするのは駄目です」
だって、彼はそんなの望んでない。
そんなの、ワタシが一番分かってる。
…ワタシがここに居るのは、責任が有るから。
ワタシを信じて着いてきてくれた羽根たちを、解放に導く責任が有るから。
「でもさ…じゃあオレたち何のために」
「みなさん。もう一度、思い出しでください! 本当の気持ちを…!」
「本当の気持ち…?」
「そう言われてもなぁ…」
「………………。まさか、幻覚の力を治療で使うとはい思いませんでした」
変身したワタシは、彼女たちに固有の能力──固有魔法である幻覚をかける。
帰るべき場所を示し、有耶無耶にされた目的を思い出させる。
フェリシアさんとさなさんは、これでどうにかなった…だが、鶴乃さんとこころさんはどうにもならない。
幻覚が届かない深くまで洗脳が侵食しているのか…あるいわ、何か違う想いがあってここに居るのか。
…知っている、鶴乃さんが安心する場所かここじゃない。
彼女が安心できる場所は、家である万々歳でありみかづき荘…そして、彼の──結翔君の隣だ。
こころさんも同じ、結翔君への想いを利用されている。
本当は彼がこんな事、望まないのも知っているのに、グチャグチャに想いを捻じ曲げられてここに居るんだ。
「…おふたりは上手く解けたようですね」
「どうして私たちのこと…」
「そうだぞ。オレたちのこと洗脳しといてわけわかんねーぞ」
「………………。マギウスが越えようとしているからです。越えてはいけない一線をあなたたちを利用して…。それは、ワタシの本意ではありません。あくまでワタシは、皆が解放されるのを望んでいますから」
嘘だが…嘘も方便という。
本音も混ぜているのだから、どうか許して欲しい。
越えてはならない一線を、ワタシは彼女たちに踏み越えて欲しくない。
…見る人が見れば滑稽だろう。
想い人の家族だから、友人だから、犠牲にしたくない…なんて。
間接的とは言え、ワタシたちは既に人を手に掛けている。
今更、そんな事…と言われてもしょうがない。
でも…ワタシは……
「………………。それなら、鶴乃さんに粟根さんは…? 二人のの洗脳も解いてあげてください…!」
「…試しては見ました。ですが……深過ぎます。ワタシの力では敵いませんでした」
「そんな…」
さなさんの悲しそうな顔が、ワタシの胸を締め付ける。
良心なんて、一番最初に捨てられれば、もっと上手くやれていたんでしょうか?
……無理ですね、ワタシがそれを捨てたらこの組織は崩壊してしまう。
解放が遠のくのだけは、絶対に回避しなければ……
そう、深く考えていると、ガチャリとドアが開く音が聞こえた。
「いけない…。灯花とアリナが…。ふたりとも暫く洗脳されたフリをしてください!」
「ねーねー、まだみんな洗脳は続いてるかにゃー?」
現れた灯花とアリナに、洗脳が解けてない二人も、解けている二人も、従順の意を示す。
幸運にも、何とか洗脳が解けているのはバレずに済んだが、鶴乃さんとこころさんが持って行かれてしまった。
…何をするのか、それだけは聞きたくて、ワタシは二人に問い掛ける。
「鶴野さんとこころさんに、何をするつもりですか?」
「決まってるでしょー? イブの孵化が近いんだよ? これ以上は足踏みできないの! あとちょっとなのに、ベテランや環いろはたちがうわさを消してイライラするし、どーせ止めないんでしょー? それなら、もうゆっくりしてる必要なんてないよねー? パッと終わらせたいの」
「でも…」
「ほら、一緒に行こう最強さんに我慢さん!」
「うん、わたしにできるならなんでもやるよ」
「はい、私がやれることならなんだって」
不味い、肝心の内容が…!
止めないと…聞かないと…終わってしまう前に。
「待って! 灯花、アリナ、教えてください。鶴乃さんとこころさんを…どうするつもりですか…?」
「別に単純なんですケド。この最強には沢山殺して貰おうと思うワケ」
「殺す…いったい何を…!?」
「うわさも、たっくさん消されちゃったからねー。我慢さんは巴マミと同じになってもらうよー? くふっ」
年相応に無邪気に笑っている筈なのに、ワタシは彼女が怪物に見えた。
善悪の概念、そんなの全く知らない無邪気な子供が、解放と言う大義の為に……
考えただけでも、恐ろしい現実だ。
ワタシは、自分の権限を駆使して灯花とアリナに、二人の処遇──フェリシアさんとさなさんの今後を話した。
『我々の夢を踏みにじる者同士、傷つけ合ってもらうのがいい』
この言葉の意味、それはやっちゃんたちに洗脳状態──だと思わせた彼女たちを嗾ける作戦。
作戦を聞いた、灯花とアリナは当然快諾し、ワタシは彼女たちを送り出した。
願うなら、幸せであって欲しいから。
次回もお楽しみに!
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