無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 こころ「前回までの『無少魔少』。結翔さんが過去の資料から、違和感に気付いた、さなちゃんやフェリシアちゃんが帰ってきたり、みふゆさんの優しさが垣間見えた話ですね」

 結翔「……本編的にアウトじゃね?」

 まさら「あらすじ紹介なんだからセーフよ」

 ももこ「そうかぁ?まぁ、別になんでもいいと思うけど」

 こころ「うぅぅぅ!酷いですよ!良いじゃないですか!私があらすじ紹介したって!出番が欲しいんですよ!」

 メル「いや、前回出番あったじゃないですか?」

 やちよ「はいはい、話は終わりにして。…皆さんは、楽しんで五十二話をどうぞ!」


五十二話「赤黒い殺意」

 ──結翔──

 

 フェリシアとさなの話を聞いて、俺は微かに残るみふゆさんの優しさを感じた。

 だけど、それ以上に……最悪の気分だ。

 常人より性能の良い頭が、不思議なくらいポンポンと、有り得なくない推測を立てていく。

 

 

 アリナの鶴乃に対する『沢山殺して貰う』と言う発言と、里見灯花のこころちゃんに対する『巴マミと同じになってもらう』と言う発言。

 前者は一見、情報が少ないように見えるが、ももことまさらが言っていた、最近良く聞くようになった、近々開園する遊園地の噂と関係があるとしたら? 

 

 

 どうだろう、下手したら数百人から数千人規模の死者が出ることになる。

 しかも……鶴乃の手によって。

 

 

 後者だって、相当不味い。

 俺の推測や勘がもし間違っていないなら、マミちゃんはウワサを纏っている、加えて精神も弄られて洗脳状態。

 ……こころちゃんもそうする気なのだろう。

 

 

 どうすれば死ぬかもしれない人を救えるのか? 

 どうすれば鶴乃に手を下させないで済むのか? 

 どうすればこころちゃんが纏うであろうウワサを剥せるのか? 

 

 

 色々な案が浮かんでは沈む。

 どれもこれも確実性に欠けるし、推測が正しい証拠がないから、先を上手く見れない。

 未来視の魔眼も、数時間後や数日後の未来視は断片的過ぎて、正直言って宛にすることも難しい。

 

 

 あーでもない、こーでもない。

 そうやって、頭を悩ませていると、聞きなれた声が聞こえたと同時にみかづき荘のリビングのドアが開かれる。

 入って来たのは……ももこだ。

 

 

「こんばんわー」

 

「ももこさんだ」

 

「よっす、やちよさん、いろはちゃん。それに、結翔とまさらちゃん。四人とも揃ってるみたいだな。お、それにフェリシアにさなもいるじゃん! だいぶ揃って…。って、なんで居るのさ!」

 

「さっすがももこ、期待を裏切らないタイミングだな。さっき、その話が終わった所だよ」

 

「なんて、タイミングだ…」

 

 

 煮詰まる思考を、一度切り離すように、俺はももこに軽口を叩く。

 ももこもももこで苦笑いをしながら、簡単な事情を聞いて、話を進めていった。

 先ずは、一番最初はこれまでの行動の結果報告。

 

 

「それで、街を周りながらうわさを消した成果なんですけど…。結局、何も得られませんでした…」

 

「うわさを守る羽根は何も知らなかったそうだしね…」

 

「はい…。鶴乃ちゃんやこころちゃんの居場所を探すにも拠点の方はさっぱりです…」

 

「けど、フェリシアとさなが帰ってきたならさ、拠点の場所は分かるんじゃないか? そこに鶴乃やこころちゃんが居るかもしれないんだろ?」

 

 

 当たり前過ぎる彼女の正論に、さなは申し訳なさそうに表情を曇らせる。

 …この感じからして、あまりいい答えは得られないだろう。

 口元をモゴモゴさせながら、さながももこの質問に答えた。

 

 

「それが、私たち移動するときは目隠しをされてて…」

 

「なーんも分からないんだよな」

 

「おう…マジか…」

 

「だけどね、他の方法で思わぬ成果が得られたのよ」

 

「はい、神浜うわさファイルのうわさを地図に纏めてみたんですけど…」

 

「結翔?」

 

「あいよ。全員見てくれ」

 

 

 みかづき荘にあるノートパソコンを拝借し、スマホと繋いで写真フォルダから地図を出す。

 そして、それを全員が見えるように画面を向ける。

 全体が埋まるレベルで印が付けられた地図、これを見て最初に口を開いたのはさなだった。

 

 

「わぁ、すごい数ですね…」

 

「これが、全部うわさなのか…?」

 

「あぁ。これまでに消したうわさと、場所が分かるうわさの全てだ。やちよさんのやつに東側のはないけど、俺はあるからな…余計分かりやすい」

 

 

 驚きの声を上げる面々、その中でまさらは睨むように、東の方にある台風の目のような、印が一切ない空白地帯を見つめる。

 周りの様子と見比べると、それがどれだけ異常か一目瞭然。

 

 

「東の方…台風の目のようになってるわ」

 

「それが言いたかったんです!」

 

「ははぁ…なるほど…。もしかしたら、ここがうわさの発信源かもしれないってことか?」

 

「はたまた、この辺りにはうわさがない理由があるとかね」

 

「どちらにしても、うわさが関係している以上、マギウスの翼の拠点かもしれません。ここに行けば鶴乃ちゃんやこころちゃんのことだって分かるかも…」

 

「それ以前に鶴乃やこころちゃん自身がここに居るかもしれないな」

 

 

 全員が悩む中、ももこはもう一つの不可解な場所である、印が重なる里見メディカルセンターの事を聞いたが、ここにはさなやフェリシア以外、なんの手掛かりもなかったと伝えると苦笑を零した。

 また、バットタイミングだった…と。

 

 

「取り敢えず、今気になるのはこの台風の目だけって事か…」

 

「そうですね…」

 

「ふむ…」

 

「ももこさん…?」

 

「いや、それならさ、アタシも話したいことがあるんだけど」

 

 

 そう続けて、まさらと一緒に遊園地のうわさの事を話した。

 いろはちゃんややちよさんも、聞いたことがないと言っていた…それもその筈だろう。

 恐らく、まだ出来て間もないうわさだからな。

 

 

 …だからこそ、分からない。

 うわさの内容も、その一切が謎だ。

 分かることは一つ、それは──

 

 

「東の方からうわさが伝わってる気がしてさ」

 

「私は、学校の方で、ももこが知る前から聞いていたけど、どうでもよかったから気にしていなかった。…でも、この伝わり具合は異常。うわさと断定てしも間違いではないと思うわ」

 

「東…」

 

「それってあれじゃん! 地図と一緒じゃん!」

 

「東から流れてくるうわさ…東の方にある台風の目…」

 

「どうよ、関係ありそうじゃない?」

 

「はい、気になります!」

 

「因みに地図に描くと…」

 

 

 そう言って、ももこは、パソコンの方ではなく、やちよさんたちが持っていた地図に描きこんでいく。

 俺は、それを傍目に見ながら、考えを巡らせていく。

 …やっぱり、遊園地のうわさは…色々と関係がありそうだ。

 形振り構ってる状況は、とっくに過ぎ去ったらしい。

 

 

「ざっとこんな感じだな。これなら、栄で一番広がってるのも、アタシらが知らないのも頷けるだろ?」

 

 

 矢印で広がり具合を示しているのだろう。

 東にある台風の目から栄、水名、新西と言った感じに描かれている。

 近い順に並べると、そのまま、栄、水名、新西だ。

 

 

「やちよさん、やっぱりここ、行ってみるべきだと思います」

 

「鶴乃が居なかったとしても、幹部クラスは居そうね」

 

「もし、ここがうわさの拠点なら急いだ方がいいぞ」

 

「なにか不味いんですか?」

 

「あぁ、その遊園地、明後日の夜明けにオープンらしい」

 

「…はぁ、夜明けにオープンなんて怪しさてんこ盛りだな」

 

「でも、問題がありませんか? ここって東だから簡単に入っちゃいけないって。やちよさん、言ってませんでした?」

 

 

 なんだ、いろはちゃんも東西の話を聞いたのか? 

 …魔女の少ない時は、本当に戦争状態だったからな。

 自慢じゃないが、俺がギリギリの綱渡りをして、均衡を保っていたと言っても過言じゃない。

 

 

「えぇ、だから連絡を取るしかないわね。もしかしたら、彼女が結翔も知らないうわさを知ってるかもしれないし」

 

「っつーことは、頼るのか?」

 

「頼らざるを得ないだろ、東のボスに」

 

「東のボス?」

 

「あぁ。工匠区と大東区を預かる魔法少女で、今の魔女がうじゃうじゃいる神浜になる前は敵に近い存在だった」

 

 

 彼女の名前は和泉十七夜。

 ショートカットの白髪に銀色の瞳、それを噛み合せるようなクールな顔付き。

 魔法少女の衣装は軍服を思わせるような純白のデザインで、右目にはモノクルがあり、それにソウルジェムが埋め込まれている。

 

 

 変身後のソウルジェムは人それぞれ、千差万別に形を変えるが、モノクルに変わるのは非常に珍しい例だろう。

 もっとも、その理由は、彼女の固有の能力──固有魔法である読心に起因してるのかもしれないが……

 

 

 電話は俺の方から入れた。

 やちよさんの方から入れても良かったが…こんな混沌とした状況だ、十七夜さんからの信頼度だけで言えば俺のほうが上なので、俺がかけた。

 数コールめで電話に出たが、様子が可笑しい。

 

 

『済まない、少し用事でな、聞き取り辛くなる。許せ』

 

 

 そう言って、スピーカーから聞こえる魔法の音や、しなる鞭の音。

 …戦闘を、少しの用事と考えるのは、強さ故だろうか。

 諸々の事情を伝え協力を打診すると、あっさりOKを貰えた。

 

 

『うむ。ぜひとも情報を共有しながら協力しようではないか』

 

『助かります』

 

『なに、藍川には恩がある、自分から頼みたいぐらいだ。それに、かつてのライバルである七海たちとの共闘。…ドラマだな! 明日を楽しみにしている!』

 

 

 電話が切れたので、そのままの流れで話を続けた。

 

 

「どうだったの、結翔?」

 

「快諾でしたよ。戦いながら電話してたみたいですし、俺の知らない所で向こうも手を焼かされてるみたいです」

 

「た、戦いながら…!?」

 

「相変わらず、えげつないな…」

 

「相変わらずって、昔からなんですね…」

 

「あぁ、昔から強いよ。やちよさんや結翔と肩を並べるぐらいに…」

 

「…取り敢えず、行動は明日からだ。今日は早く寝て、明日に備えよう」

 

 

 形振り構っていられないが、俺は一旦休まないと不味いし、フェリシアとさなもダウンしている。

 …少しづつ霞がかかる意識。

 家まで持てば御の字だろう。

 

 

「でも、遊園地のオープンは…!」

 

「分かってるよ。でも、一旦休もう。明日は十七夜さんもきてくれるし。今日はみんな疲れてる…それに、フェリシアとさなも寝ちまったしな」

 

「くぴー…すぴー…」

 

「すー…すー…」

 

「ま、そっか…」

 

 

 穢れが溜まっているのは、先に気付いていたので、急いで…生と死の魔眼で浄化する。

 ……やっぱり、これでも出来るんだな。

 

 

 ソウルジェムは魂そのものを形にした物であり、寿命を魔力に変える変換装置のような役割を持っているんだと…俺は思う。

 穢れは寿命の減少──生命力の減少を表している…なら、他者に生命力を与える生と死の魔眼で穢れを除去できる。

 

 

 力技なトンデモ理論にしか思えないが、出来てしまった。

 でも、これで一つ分かったことがある。

 鶴乃もこころちゃんも穢れが溜まっていると言う事だ。

 魔女になる可能性が低い…とは言え、絶対とは言いきれない。

 

 

 いろはちゃんとももこが、フェリシアとさなをベットに運んだ後、一言こう言った。

 …絶対に言わないと思っていた言葉、絶対に向けないと思っていた意志を抱いて。

 

 

「いろはちゃん。…これだけは、覚悟しておいて。もし、今回のマギウスの計画が成功して、人が死ぬような事があれば……」

 

「あれば…?」

 

「俺はマギウスを殺す。次が起こる前に…必ず」

 

「──っ!?」

 

「結翔!?」

 

「な、何言ってんだよ…お前!?」

 

 

 まさらとももこの声が聞こえたが、俺は反応はせず、みかづき荘を出る為に腰を上げた。

 ……越えてはならない一線に、少しづつ近付いている気がした。

 

 

 ──まさら──

 

 家に帰ってから、結翔は無言でリビングに行き、ソファに寝っ転がった。

 …先程の言葉に、嘘偽りはない、私はそう思っている。

 藍川結翔に二言はない、やると言ったらやる…そう言う人間だ。

 

 

「…結翔、本当に殺す気なの?」

 

「……もしもの話だ。そうならない為にも、死ぬ気で戦うさ」

 

「一つ、聞いていいかしら? …貴方の魔眼、何時から()()()光るようになったの?」

 

「いきなりどうしたんだよ? 俺の魔眼は水色に光ってる筈だろ?」

 

 

 確認の為に、結翔は魔眼を発動する。

 色は……水色だ。

 なら──さっき、みかづき荘で見た時の赤黒い光は一体……

 

 

「フェーズ1.5って所か…都合が良いかもな」

 

「何か言った?」

 

「んや、何も」

 

 

 そう言って、結翔は睡眠不足を補うように、静かに瞼を下ろした。

 数分もしない内に規則的な寝息が聞こえてきた。

 …相当無理していたのだろう、眠気が限界だったらしい。

 

 

 私は彼の寝顔を見守りながら、ここに居ない親友を想う。

 彼女が居ないだけで、日常に物足りなさを感じる。

 早く、連れ戻さなければ……それに……

 

 

 結翔の精神安定剤として、鶴乃も必要だ。

 彼女も連れ戻す。

 

 

 それまでは、赤黒い光は保留にしておこう。

 …もしかしたら、勝手に結翔が話してくれるかもしれない。

 聞こえないフリをしたが、バッチリ聞こえていた。

 フェーズ1.5…だったか? 

 

 

 契約してフェーズ2だと言っていたので、無理矢理フェーズをシフトしようとして、中途半端に止まった状態を指しているのだろう。

 

 

 あの赤黒い光に、明確な殺意を感じたのは…私自身の気の所為だと願いたい。

 

 




 次回もお楽しみに!

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