結翔「作者自身も今後の展開を考えあぐねてるんだよなぁ」
こころ「メタ過ぎません…それ」
しぃ「そうだそうだ!考えあぐねてるんじゃない、真剣に悩んでるんだー!!」
みたま「出てきて話す意味、絶対に無いわよねぇ」
みふゆ「…皆さんのお陰で評価バーに色が着きました!これからもよろしくお願いしますね?と言う訳で、五十三話を楽しんでどうぞ!」
──結翔──
眠れていたなかった分を取り返すように眠った翌日。
十七夜さんと落ち合う場所である工匠区に向かう為、電車を使って移動することになった。
メンバーは、俺とまさら、ももこにいろはちゃんとやちよさん。
俺とまさらとももこは、家が隣同士なので、同時に出て同時に着いたが、何故かいろはちゃんとやちよさんは少し遅れ気味でやって来た。
しかも、若干だが顔に疲労の色が見える。
「はぁ………………」
「ふぅ………………」
「ちょ、ふたりともなんで早々に疲れてんの…」
「朝から一戦交えたからよ…」
「はい、大変でした…」
「…まさか、マギウスの翼と?」
だとしたら不味いな……動きが気付かれたのか?
良くない方向に行きそうになる思考を遮ったのは、なんとも言えないオチだった。
「いえ、フェリシアと二葉さんよ…」
「…はっ?」
「実は──ふたりが着いてくるって言って、言うことを聞いてくれなくて…。結局、実力行使で家に置いてきたんです」
「それは、朝からお疲れ様だね」
「まぁ。確かに洗脳の影響がどう残ってるか分からないしね」
「そうなのよ、もしもの時は呼ぶって言ってるのに……」
一瞬、やちよさんがお姉さんと言うより、お母さんに近く見えたのは…心の奥底にしまっておこう。
取り敢えず、集合は完了したので、俺たちは電車を使っての移動を済ませる。
…最近はあまり使っていなかった気がするので、電車に揺られる気分を味わうのは懐かしく感じる。
未だに残る眠気と抗いながら、目的の駅を目指す。
どれくらい経ったのだろうか?
途中からうたた寝していた俺は、まさらに頬をひっぱたかれた事で駅に着いた事を察した。
「痛てぇ…。もう少し、優しく起こしてくれても良くないか?」
「揺すっても起きなかったから叩いたのよ。貴方はうたた寝程度に感じてるけど、私からすればガッツリ寝てたわよ?」
ぐうの音も出ない。
言われてみれば、うたた寝と言うには申し訳ないくらい、深く落ちてた気がする。
そりゃ、揺すっても起きんわ、元々電車自体揺れてんのに。
駅から出て、少し散策しながら十七夜さんと落ち合う場所に向かっていると、いろはちゃんが尋ねてきた。
尋ねてきた内容は言わずもがな、十七夜さんについてである。
「それで、今日会う人って」
「和泉十七夜っていう魔法少女だよ」
「どういう人なんですか?」
「そうね、とても強くて…」
「ちょっと変わり者…かな?」
「へぇ…変わり者…?」
言い方に語弊を感じるが、概ね彼女に抱いている印象はそれだ。
魔法少女としての歴があり、強さも折り紙付き。
初対面では取っ付き難い人だと感じるが、話してみると案外面白い人だと分かる。
「昔のテリトリー争いの時はやちよさんと競ってて、ちょうど真ん中の中央区を取り合った事もある。…まぁ、結翔は二人が啀み合う度に頭を抱えてたけどな」
「…昔は殺伐としてたから」
「対立が激化する前に、街を守るって言う意味で俺が中立に立って、二人を無理矢理話し合いのテーブルに着かせたんだよ。やちよさんもその時に連絡先を交換して、折を見て相談してたって訳」
「魔女が増えてからは、やりとりも無くなっていたけど。まさか協力することになるなんてね」
「と、話をしてたら、あの姿は…」
話の途中、ボソッとまさらが、どうでも良かったが、魔女を狩り辛くて良い迷惑だったとボヤいていた。
…そういや、お前って中央区出身だったもんな。
学校もそっちの方だし…毎朝電車通学ご苦労様です。
心の中で軽口を言っていると、脇腹に一発良いのを入れられた。
痛てぇぞ、さっきの電車の中と言い、今日は当たり強くないか!?
苦笑しながらそう思っていると、少し先の方から十七夜さんが小走りでやってきた。
「久しいな藍川! 七海に十咎も! それに懐かしいな。…それに? む、だれだ!?」
…いや、初対面の人にその言葉はないでしょ。
突然の言葉に困惑の表情を見せるいろはちゃんと、特に動揺も物怖じもしないまさら。
二人のフォローをする為にも、俺たちは一度場所を移し、近くにあったファミレスに入った。
適当なテーブルに座り、こちらの事情を出来るだけ細かく説明していく。
「なるほど、由比君に粟根君が…藍川や七海たちにとっては痛手だろう…」
「えぇ…。それで、こちらの問題ではあるのだけど。連れ戻すのを手伝ってもらえないかしら?」
「うむ、実に良いことだ。マギウスの翼が相手なら、喜んで手を貸そう。借りもあるしな」
「やったな、やちよさん、結翔!」
「一安心、だな」
「そうね」
昨日は快諾してくれたけど、それはこちらの事情を話していないから。
全て知った上で協力を承知してくれるのは、本当にありがたい。
これも日頃の行いのお陰…だったり。
「でも、喜んで手を貸すって十七夜さんも何か被害に?」
「あぁ、怒り心頭というやつだ。工匠の仲間を皮切りに随分と連れて行かれたからな。ひとりでいかがしたものかと考えあぐねていたところだ。だが、これ幸い、藍川からの提案ときた。手を結ぶしかないだろう」
「そんなに連れて行かれたの?」
「あぁ、東の魔法少女の多くが黒羽根や白羽根に混ざっている…」
「そうだったのね…」
悔しそうに歯噛みする十七夜さんは、普段の彼女を知っている俺からしたら、あまり見ていて気分の良いものじゃない。
自分にも仲間にも厳しい人だが、それと同じくらい優しい人だ。
東のボスとして、ひいてはリーダーとして情に厚い人柄を持っている。
ここまで来て…詰まっている訳にはいかない。
俺たちは情報の共有として、十七夜さんにうわさの事を聞いた。
「十七夜さんは、うわさって調べてたりします?」
「もちろんだ。彼女たちの泣き所だからな。触れない訳にはいかないだろう」
「それなら、その情報が欲しいわ」
「ふむ、それはまたどうしてだ?」
「あの、これを見てください」
そう言うと、いろはちゃんは昨日の内に俺が倒したうわさも印した、完成版に近い地図を見せた。
十七夜さんは、それを興味深そうに眺める。
ニヤリ、と口角が上がったのが見て取れた。
「これは面白いな工匠区で口を開いている」
「そうよ。…でも、もしかしたら結翔の知らないうわさを、あなたが知ってるかもしれない。悪いけど、思い当たるものを描いてもらえるかしら?」
「うむ、数は多くないがメモに纏めてある。ちょっと記してみよう」
ペラペラとメモ帳を捲りながら、印を描き足していく。
全てを描き終えた十七夜さんは、少し申し訳なさそうな表情をしていたが、推測が確信に変わっただけでも十分だ。
里見メディカルセンターのように印が重なる部分は現れなかったが、空白の円は完全なものとなった。
「済まない、あまり役には立てなかったようだ…」
「十分ですよ。お陰で、推測が確信に変わりました。…少なからず、ここに何かがある。もしくは、誰かが居る可能性は十二分にある」
「えぇ、想定通りだわ」
「十七夜さん、円の中心ってどこなのか分かりますか?」
「…恐らく旧車両基地だな。普段は子どもたちの危険な遊び場といったところだ。…実にいいな」
不敵な笑みを魅せる十七夜さん。
その笑みからは、サンタからのプレゼントを楽しみにする子どものように、純粋な喜びを感じる。
やっと尻尾が掴めた、そんな想いが溢れているのだろう。
「何が?」
「やつらの拠点を見つけたところで自分だけでは手に余るからな。正に僥倖、ひねり潰してやることができる」
……ごめん、前言撤回。
そんなに純粋なものじゃなかったわ。
明らかに怨恨も混ざってる悪どい感じの笑みだ。
一応、敵の拠点かもしれない場所に目星は付いた。
今すぐにでも動きたいが…まだ時間が早い。
「それじゃあ、さっそく」
「いえ、待ちましょう」
「七海の言う通りだな」
「えっ?」
「いろはちゃんは知らないかもだけど、魔法少女の活動は基本的に逢魔が時──分かりやすく言うと夕暮れ時からが多いのが定説と言うか、お決まりなんだよ。今から行って幹部が居ないと、それこそお終いだからね」
「そういうことよ。鶴乃や粟根さんが居なかった場合、次は聞く相手が必要になるわ」
「…時間は? ギリギリになるかも」
まさらの心配はもっともだ。
どうなるか分からない以上、無駄に時間は浪費出来ないが……現状、一回の失敗が大勢の死に直結している。
迂闊には動けない。
「そう焦るな加賀見君、気持ちには余裕がある方がいい」
「そうね。口を挟んで悪かったわ」
「じゃあ、少しお茶を飲んでから行きましょうか」
…とは言っても、ただお茶を飲むのではない。
車両基地の構造を十七夜さんから教えてもらい、立ち回りを考える。
聞く限りだと使われなくなった車両や、古い部品などが無造作に置かれている為、遮蔽物が多い。
銃は、跳弾による味方への誤射も有り得るので、使わない方が良い。
大鎌や大剣、槍と言った長物も、遮蔽物の多さから考えてやりにくいのは目に見える。
ももこが苦笑気味なのはしょうがのないことだろう。
…使える武器はダガーや短剣と言った短く小回りの効く武器か、ステゴロ──徒手空拳が無難か。
にしても…十七夜さん、バイトの方は余裕があるのかな?
失礼かもしれないが、十七夜さんの家はあまり余裕がある経済状況じゃない。
バイトの掛け持ち三昧で、家族の生活費をようやく工面していると言っていた。
ももこも、それが気になっていたのか、暇を潰す次いでに聞いていた。
「そう言えば、十七夜さん」
「どうした十咎」
「前はバイト三昧だったけど今日は大丈夫なのか?」
「良い質問だな。実は最近ないいバイトを見つけたんだ。時給もそれなりで多少は楽させてもらってる」
「今は惣菜コーナーじゃないのね」
「あぁ、メイドカフェでメイドをやっている」
「──!? ゲホッゲホッ!」
「汚いは、結翔」
「いや、流石に今のは驚くわ!!」
「意外すぎる…」
メイドカフェでメイドさんって…。
そういや、この前連絡取った時にそんな話してたな。
彼女なりの冗談だと思っていたが、まさか本当だったとは……
驚きのあまり訝しむような目線を十七夜さんに送っていると、流石の彼女も不機嫌そうに言ってきた。
「失礼だな藍川に十咎。これでもそれなりのものだぞ」
「本当かよ…」
「俄に信じ難いな…」
「コホン…」
場の空気を改めようとしたのか、少しの咳払いの後、意味の分からない茶番が始まった。
「やぁご主人! よく来たな!」
「既に色々……いや、まぁいいか。…パフェください」
「うちが誇る自慢のパフェだ。さぁ、心置き無く食せ」
「…よくある愛情を注ぐあれは?」
「客に愛情なんてあるわけないだろ980円分なら既に注入済みだ」
「やっぱなんか違ぇよ! 絶対にそうじゃない!」
メイドとしての定義を、あらぬ方向にぶん投げだような振る舞いは、存外にも店では人気らしい。
…ネットで調べたら、色々出てきたよ、メイドの「なぎたん」。
色々言われているが、一番多い意見を取り上げるなら、「変わってるけどそこが良い!」らしい。
正直、変わり過ぎだと思うが…気にしないでおこう。
茶番のお陰か、ある程度時間を潰し終わった俺たちは、旧車両基地に移動を始めた。
外は夕暮れ時、空が暗くなりつつある時間。
ただただ遊びに来ただけだったら、偶にしか見ない景色に一喜一憂出来たのだが、そうもいかない。
「和泉十七夜。さっき、車両基地は、危険な遊び場と言っていたけど…。普通の子がいる、なんてことは無いの?」
「十七時の音楽が流れたら、子どもたちは帰るからな。それに、以前は夜になると、不良共が溜まっていたが…。マギウスの翼が現れてからはとんと姿を見なくなった」
「集まるのはちょうどこれからってとこね」
「そういうことだな」
「………………」
「…環君、そう警戒しなくてもいいぞ」
「ふぇ!?」
何か気を張り巡らせていたいろはちゃん。
十七夜さんはそれを自分に対する警戒と取ったのか、肩の力を抜かせるためにそう言ったが……逆効果だったのか、驚いて余計力を入れてしまった。
その後も、あーだこーだ警戒を解くために何か言っていたが、いろはちゃんは考え事をしていただけだった。
「…取り敢えず、お互い頑張ろう。自分も連れ戻したいヤツらが山ほどいるからな」
「そういえば、月咲ちゃんが連れて行かれたって」
「うむ、月咲君から随分とな。まったく、脆弱な部分を突いて人を集めるとは外道だ。許せん…」
「はい、私も許せません…。記憶ミュージアムでのことも、鶴乃ちゃんやこころちゃんのことも」
「…ここだけの話、藍川は大分辛いだろう。自分の直感だが、今一番無理をしているのは彼だ」
「力になれてると良いんですけど…」
会話は丸聞こえだが、特に気にする事はない。
強いて言えば、心配されてるのが少し嬉しく感じるくらいだ。
クスリと笑みを零しながらも、俺たちは旧車両基地の中に入っていく。
中には鉄道ファンなら、興奮を抑えられないだろう光景が広がっていた。
今では見る事の無い、古い車両が幾つも置かれており、それに合う古い部品がゴロゴロと無造作に置かれている。
確かに、子どもには持って来いの危険な遊び場だ。
かくれんぼ等をしたら、さぞ楽しいだろう。
「ここが、車両基地…」
「今となっては老朽化した車両が放置されてるだけだがな」
「………………。何も反応がないな」
「そうね。人の気配所か、魔法少女の反応も0よ」
「もしかして、あの地図の話、アタシらの勘違いってことか…」
「ここは拠点じゃない…? 遊園地のオープンまで時間が無くなってきますよね…」
「着々と…ね。勘づかれたかしら…」
「ふむ…」
動くに動けない。
そんな中、十七夜さんだけが、顎に手を当てて何か考えていた。
もしかしたら、何か他に思い当たる場所があるのか?
「十七夜さん? 何か考えがあったりします?」
「考えにくいが新車両基地の可能性もある」
「そっちに場所を変えたって事ですか?」
「捨てきれん可能性だ。自分が確認してこよう。土地勘がある方が調べるのも早いだろう」
「えぇ、お願いするわ」
「うむ、分かった。しばし待っていろ」
新車両基地を捜索する為に十七夜さんが出て行った後、俺たちも俺たちで旧車両基地の捜索を開始した。
もしかしたら、なんて事があるかもしれないからだ。
みんなは足で、俺は千里眼を駆使して、捜索をしたが──手がかりになるような物は見つからない。
時間だけが過ぎていく状況だ。
最悪の結末が、一歩づつ足音を立てて近付いているのが分かる。
「やっぱりいないわね」
「くそっ、空振りか…」
「十七夜さん戻ってきませんね…」
「向こうの状況も聞きたいところなんだけど…」
やちよさんがそう呟いた瞬間、魔女の反応を俺たちはキャッチした。
…嘘だろ、さっきまでなんもなかったぞ?
いや、知ってる。
俺は……これを知ってる、アリナのキューブ結界か!?
クソっ!
罠だったのか!!
急いで魔法少女に変身し、拳を構える。
みんなも、俺に続くように変身していく。
一つ……二つ……三つ……四つ……五つ。
ご丁寧に、人数分の魔女が現れた。
そして──
「静かに燃える魔力の炎。飛び込んだのは五月蝿い羽虫」
「もしも燃えてくれぬなら、我らの音色で蹴散らしましょう」
面倒だけど、都合良く。
唯一顔が割れている白羽根であり、幹部に近い存在。
天音姉妹が優雅な微笑みのまま、降りてくる。
イラつく文言を次いでに。
「深みにはまってくれたね月夜ちゃん」
「そうでございますね月咲ちゃん。今回こそ汚名を晴らし功績を立てる機会でございます!」
『ねーっ!』
「月夜ちゃん、月咲ちゃん…!」
「あの笛姉妹が魔女を…駒を握らされて来たってことね!」
ここで、コイツらをとっちめられれば、遊園地のうわさやら、鶴乃やこころちゃんの事を聞き出せる。
ピンチはチャンス、ここでものにしてみせる!
「ここはうわさを知りすぎた人が吸い込まれる蟻地獄」
「病院に向かった時点で命運は尽きたでございます」
「すぐにここに来るのは、分かってたから」
「ねー」
「ウチらの拠点が知りたかったんだろうけど、残念だけど不正解だよ」
「これ以上、私たちの解放を邪魔はさせません。静かに冥府への道を辿るでございます!」
「罠にかかっちまったけど、チャンスだ。ボコって聞き出す! 先ずは、魔女を片付けるぞ」
俺の言葉を聞いたいろはちゃんたちは、それぞれ魔女の結界に入っていく。
だけど……俺は入らない。
昨日、まさらが言ってた事が本当なら、今の俺は無理矢理フェーズを上げられる所にいる。
殺意は……簡単には抱けない、怒りで、俺はこじ開ける!!
破壊の魔眼と直死の魔眼を同時発動し、結界を見定める。
右目から発せられる光は……赤黒い。
視える……死の線ではなく、そこを突けば死ぬ死の点が。
フェーズ1.5になったお陰で、概念や事象にまで関与できるようになった。
しかも、死の点まで視えるおまけ付き。
死の点をしっかりと見つめて、俺は小さく呟いた。
「破壊」
瞬間、結界が音もなく崩壊していく。
結界の出入口と言うより、結界自体を破壊したので、中にいる魔女も生きてはいないだろう。
養殖、しかもあまり強くない魔女なら、今の俺は相対せずに倒せるようになった訳だ。
自分のチートぶりに呆れて、笑いが込み上げてくる。
まぁ、それを見ていた、天音姉妹は驚いて口をアワアワさせていたが。
さて、ここに居るのは…黒羽根が二十人か。
千里眼で大体の位置を把握し、どこから出てきても対応出来るように、全神経を集中させる。
「な、な、何をしたんでございますか、結翔様!?」
「あ、有り得ないよ!! 結界を…結界を破壊するなんて!?」
『ねーっ!』
「別に、出来たからやった。それだけだよ」
「……月夜ちゃん!」
「行くでございます、月咲ちゃん」
『笛花共鳴』
彼女たちが笛を吹く。
前回、ミザリーウォーターの時に喰らったものとは、比較にならないほど頭に響く。
ガンガンと頭で鳴り響く音が、集中力を削ぎ落としていくが……今の俺なら!!
「破壊!!」
頭に直接響く音自体を破壊し、障害をかけ消す。
…完璧ではなかったのか、少し残響が残っているが戦闘に支障はない。
迎え撃つ!
「出てこい! 黒羽根!」
「月夜様、月咲様、お下がりください」
「ここからは私たちが…!」
五人一組でチームを組んでいるのか、前後左右から同時攻撃を仕掛けてくる。
…甘いな、タイミングが少しズレてる。
たった一歩か二歩の差だが、俺にっては大きな差だ。
前方から来る敵には足止め代わりに、固有の能力──固有魔法の一部である、
驚いて足を止めた、左右と後方の黒羽根たち。
一番近くにいた後方の黒羽根たちに近付き、そこから人数を減らしていく。
鉤爪や鎖を使って抵抗しようとするが…意味がない。
未来視で全てが見えてるのだから、当たる筈もなく、俺は一人、また一人と鎮めて行った
まず、目の前に居た黒羽根に前蹴りを叩き込み落とし、その両隣に居た羽根は、片方の羽根のローブを掴み、振り回すことで、巻き込み吹き飛ばす。
後ろに居た羽根は鎖で拘束しようとしてくるが、届く前に
次は左右の敵。
恐れながらも立ち向かってくる十人。
纏めて倒す為、俺は身体中に炎を纏い、叫んだ。
「マジカルダイナマイト!!」
瞬間、爆風で左右の羽根は吹き飛ばされ、威力が大き過ぎた所為か基地全体が震えた。
爆発の中から立ち上がったのは…俺一人だ。
前方に居た敵は、既に戦意喪失しているのか、攻撃を仕掛けようとして来ない……が。
動かれても面倒なので、取り敢えず意識を狩り取っておく。
流れるような動きで相手に近付き、後頭部に重い一撃をかます。
「どうする? 残ったのはお前たちだけ。しかも、さっきの技はもう二度と効かないぞ? あんなのただの初見殺し、二度目はないし、未来を視てる俺には通じない」
「くっ! …殺すなら殺すでございます」
「拠点の場所は絶対に吐かないから!」
「……十七夜さん? 居るんでしょ? 早く覗いてくださいよ。時間が惜しいんです」
「…なるほど、やはり二人の話は嘘だったわけか。…まぁ、こんな時にテリトリーを奪いに来るなんて、可笑しい話だと思ったんだ。自分に嘘をつくんだったら、心の底から嘘をつけ!! こんなダメな後輩になって、悲しい限りだ」
そう言いながらも、彼女はしっかりと心を覗いた。
分かりやすく笑っているのが、その証拠だ。
「やけに雑念を混ぜられたが、概ね大丈夫だ」
「了解」
しまった、と言う顔をする双子の天音姉妹。
面倒事は終わりだ、さっさと二人を取り戻さなければ。
情報は揃った、あとは天音姉妹の意識を刈り取るだけ。
「……悪いな」
解放と言う夢に縋りたい気持ちは分かる。
だけど、それで無関係の人間を巻き込み、殺すのは間違っている。
…一線、その一線だけは何人も越えてはならない。
次回もお楽しみに!
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