しぃ「今回は文字数控えめだよ!やったね!」
結翔「前回のことを反省したのは良いから、早く本編の続きを書いてくれ」
こころ「今回の三章、半分くらいオリジナルが入ってるんですから、早め早めに書き終えておけば楽じゃないですか?」
しぃ「……いや、バイト…あるし」
ももこ「三万課金して推しを出せなかった悲しい敗北者だな。…取り敢えず、あらすじはここまで!」
みたま「皆さんはぁ、五十五話をどうぞぉ〜!」
──まさら──
ウワサに囚われた鶴乃を助ける為に、結翔が去ってから数分。
私とこころの戦況は酷いものだった。
彼女は私の攻撃を受けきり、ガラ空きになったボディに一発入れて返すだけ。
一度たりとも、まともに攻めてきていない。
手の内は全てバレている。
切れるカードは……悲しいが、殆ど残ってない。
未来を見通す眼など、私は持っていないが、それでも分かる。
勝てる未来は、万に一つ──いや、億に一つもないと。
それを、こころも分かっているのだろう。
こう言った。
「諦めなよ、まさら。これ以上戦っても、意味なんてない。解放されれば、傷付かないで…済むんだよ?」
「………………」
傷付かないで済む……か。
あの最悪な夢を見て、貴女はそう思ったのね…こころ。
確かに、結翔は傷付いた。
心にも、体にも、これ以上ない傷を負って、彼は立ち上がった。
ヒーローである為に弱さを隠し、人であるが故に嫌われるのを恐れて過去を隠した。
両極端だ、あまりにも両極端だ。
在り方が歪んでいる、醜く…そして、美しく。
だけど、結翔はただ傷付いただけじゃない。
重い覚悟と揺るがない誓を胸に、立ち上がったのだ。
「…まだ、終わってない」
「そっか…。じゃあ、悲しいけど、早く終わらせよう」
一瞬にして、目の前に居たこころが消えた。
脳が警鐘を鳴らす前に、直感が私を動かす前に、体はくの字に曲がって吹き飛ばされていた。
自分が体験している筈なのに、やけに他人事のように感じる。
地面との平行線をなぞるように体が飛ばされた。
攻撃と同時に電撃も流された所為か、痛覚を司る神経が麻痺し、痛みは感じない。
笑える、どうやって攻撃されたのか、それすら見えなかった。
電撃を流された事から、近接モードに切り替えた可変型トンファーで殴られたのは分かるが、戦闘で研ぎ澄まされていた筈の五感は、何も捉えられなかった。
地面に叩きつけられ、引きずるように転がる私は、ただ無力感に打ちひしがれる。
差があり過ぎる。
攻撃は通じず、防御は間に合わない。
しかも、一度食らったら瀕死ときた。
…魔法少女への変身は既に解除されている、私は何時死んでも可笑しくない状況にいるのだ。
そんな、私の前にこころはやってくる。
悲痛そうな面持ちで、傷付けた事を本気で後悔している…そんな所だろうか。
「降参して」
「……嫌…よ」
「喋れないくらい苦しいのに…まだやるの? 次は、死んじゃうかもしれないよ?」
煽っている訳じゃない、彼女は本気で心配している。
だが、それは無用だ。
圧倒的な差、私の心を支配する無力感、悲しみながらも敵対する友人。
状況は最悪だ…でも、悪くない展開だ。
私は痺れが残る体を無理矢理動かし、立ち上がる。
無理矢理起き上がった所為か、視界は揺れて焦点が上手く定まらないし、足はカクカクと震えて立っているのがやっとで、手だって武器どころか、その辺の小石一つ持つ事さえ困難なレベルで力が入らない。
上手く喋れない舌を噛みちぎりたくなるが、しょうがない。
私は自分の想いを叫んだ。
「…そうね、貴女の…言う通り。次は死ぬかもしれない。……私たちには、マギウスの計画を潰しても…解放に変わる代案はない。…お先真っ暗だわ」
「やっぱり…分かってるんだ。…なら、なんで? なんでそっちに居るの? こっちに来た方がーー」
「でもね、こころ。…私は、自分が信じた正義を貫きたいの。昔の私なら…こんなこと、絶対に思わなかっただろうけど。…今の私は違う」
だって、大切な家族に出逢えたから。
血の繋がってない、絆だけで繋がった、不安定で…それでいて温かい、最高の家族に。
生に拘りなんてなかった。
死に恐怖なんてなかった。
人はいずれ死ぬのだ、なら何故その死に怯えて過ごす必要があるのか?
魔法少女として、日常的に命のやり取りをするようになっても、私のこの思想は変わらなかった。
いいや、本当ならその先も変わる筈がなかったのだ…彼女と、粟根こころと会わなければ。
不思議な子だった。
私と居ても、メリットなんて何も無いのに、彼女は傍に居たがった。
魔法少女としても強くはなくて、私に着いてくるのも精一杯なのに、ピンチになったら勝手に割って入って怪我をする。
不快だった。
訳が分からなかったが、彼女が傷付くのが不快だった。
…そこからだ、私が変わり始めたのは。
こころから、少しづつ…少しづつ、色々な感情を教わった。
知識としてしか知らなかった多くの感情を、実際に体験させてもらうことは、得難いものだと自負している。
そうして、変わりつつある私にトドメを刺したのは、紛れもなく…彼──藍川結翔だ。
不思議…そんな言葉では表せない程に、結翔は私の常識の埒外に居る人間だった。
ブレーキのない、アクセルだけの自己犠牲の精神。
加えて、優し過ぎる、お人好しな性格。
理解不能だった。
他人の為にそこまで出来る、彼の在り方が。
こころもそうだが、その優しさは度を超えている。
一度、何故そこまで優しくなれたのか、どうしてヒーローに固執するのか聞いてみた。
その時出た答えは──
『ただのエゴだよ。優しくしてるのも、ヒーローになりたいと思うのも、俺がそう在りたいと思ってるからさ。…誓と夢の末路だよ』
今なら分かる。
だけど、当時の私は分かる筈もなく……
その後、洗脳を受けるように、私は彼に特撮ドラマを見せられ続けた。
正直、私はテレビのフィクションより、実際に体験できる方が好きなのだが……何故か、驚く程自然に惹き付けられた。
そこで、ようやく答えの一部が見える。
彼はずっと前から惹かれていたのだ。
どんな逆境も、どんな絶望も、希望と絆で乗り越える
「空っぽだった私は、もう居ない。居るのは、貴女と…バカヒーローに毒された──ううん、満たされた私だけよ。笑顔を守って、困っている誰かの手を取る。簡単そうで、凄く難しいこと……それが私の信じる正義」
「…そんなのじゃ、誰も救えないよ。誰も、救われないよ」
「あら、そうかしら? …それじゃあ、手始めに、貴女を救うわ。…最初に手を取ってくれたのは、貴女だったわよね? 安心しなさい、今度は……私がその手を取るから!」
再変身し、ウワサを纏ったこころを見据える。
マギアは通用しない、他の技もダメ。
なら、新しく一から作ればいい。
見本は嫌ってほど、隣で見せて貰えた。
今なら……出来る!!
ダガーを編んだ右手に、魔力を集中させていく。
彼のような豪炎ではなく、優しく燃える蒼炎を纏わせ、構える。
「無駄だよ…そんなの効かない!!」
そう言った、彼女は出力を最大まで上げた電流を、可変型トンファーに流す。
振り絞った一発だ。
失敗は許されないし、失敗したらそこで終わり。
絶望的な状況なのに、私は笑みを零した。
こうやって、彼女と正面切って争うことは無かったから…少しだけ嬉しい。
喧嘩するほと仲がいい…だったか?
フィクションによくある河川敷での喧嘩。
どことなくそれに似ている。
場所も違えば、取り囲む事情も違う…けど、喧嘩してから仲直り、その過程に間違いはない。
「これで…終わり!!」
「私は! 負けない!!」
お互いの武器が触れ合った瞬間、辺りを閃光が包み、衝撃波が私たちを吹き飛ばした。
先程飛ばされた時よりはマシだが、痛覚が戻り始めた所為か、地面を転がる感触は最悪の一言に尽きる。
時々刺さる小石の感覚は、明日まで残るだろう。
…しかし、そんなのはどうでもいい。
今、重要なのは、こころからウワサを剥がせたかどうかだ。
本音を言えば、あの攻撃で纏っていたウワサを倒せてれば良いが…そうも上手くはいかない筈。
なら、少なくとも、こころからウワサが剥がれていれば良い。
期待を胸に、体を起こす。
再変身した筈なのに、魔法少女の衣装は消え去っている…強制解除されたようだ。
「ここ…ろ」
視界の先に、彼女を捉えた。
纏っていたウワサは……私の蒼炎に燃やされている。
天使の翼も…輪も、蒼炎が焼き尽くしていた。
侵食されて、明るい黄色から純白になっていた魔法少女の衣装も、元に戻りつつある。
どうやら、やり遂げたようだ。
フラつく足取りで、横たわる彼女の下まで歩く。
たった数メートルの筈なのに、それが果てしなく遠く感じる。
途絶えそうになる意識を限界まで引き伸ばし、体より先を行こうとする魂を押さえ付ける。
「…ま…さら?」
「起きたのね、こころ?」
「わ…たし、今まで、何を──」
起き上がりながら開いた口から出てくる声は──言葉は、不自然に途切れた。
…あぁ、私の姿を見て思い出したのか。
制服には所々穴ができており、そこから生々しい傷跡が見え隠れしている。
見えないが、顔にも少し傷ができているだろう。
青白く顔色を変えていくこころを見て、私は呆れたように笑った。
貴女は悪くないのに、なんでそんな顔するんだ…と。
立つことはなく、座ったままの状態の彼女を、私は抱き締める。
とうに蒼炎は消え、今ここに居るのは、正真正銘粟根こころただ一人。
だから、私は抱き締める。
「貴女は悪くないわ」
「…だけど! 私…結翔さんやまさらに、酷いこと…いっぱい!!」
「分からず屋ね、全く。…もう一度、言ってあげる。これが最後よ?」
私は彼女の両頬に手を添え、面と向き合う。
しっかりと瞳を見据えて、その奥にある不安や後悔を取り除くように、私は言うのだ。
「貴女は悪くないわ」
「まさら……まさらぁ……!!」
涙を流す彼女の頭を撫でながら、ウワサの結界に居るであろう、ヒーローを思う。
「頼んだわよ、結翔」
鶴乃を助け出せれば、それでゲームセットだ。
次回もお楽しみに!
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