無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 まさら「前回までの『無少魔少』。遊園地のうわさと鶴乃やこころが居ると言われた観覧車草原に行くと、マギウスの翼やマギウスに出迎えられ、ウワサの一部となった鶴乃とウワサを纏ったこころと対面した話ね」

 しぃ「今回は文字数控えめだよ!やったね!」

 結翔「前回のことを反省したのは良いから、早く本編の続きを書いてくれ」

 こころ「今回の三章、半分くらいオリジナルが入ってるんですから、早め早めに書き終えておけば楽じゃないですか?」

 しぃ「……いや、バイト…あるし」

 ももこ「三万課金して推しを出せなかった悲しい敗北者だな。…取り敢えず、あらすじはここまで!」

 みたま「皆さんはぁ、五十五話をどうぞぉ〜!」

 


五十五話「優しき暗殺者の蒼炎」

 ──まさら──

 

 ウワサに囚われた鶴乃を助ける為に、結翔が去ってから数分。

 私とこころの戦況は酷いものだった。

 彼女は私の攻撃を受けきり、ガラ空きになったボディに一発入れて返すだけ。

 一度たりとも、まともに攻めてきていない。

 

 

 手の内は全てバレている。

 切れるカードは……悲しいが、殆ど残ってない。

 未来を見通す眼など、私は持っていないが、それでも分かる。

 勝てる未来は、万に一つ──いや、億に一つもないと。

 

 

 それを、こころも分かっているのだろう。

 こう言った。

 

 

「諦めなよ、まさら。これ以上戦っても、意味なんてない。解放されれば、傷付かないで…済むんだよ?」

 

「………………」

 

 

 傷付かないで済む……か。

 あの最悪な夢を見て、貴女はそう思ったのね…こころ。

 確かに、結翔は傷付いた。

 心にも、体にも、これ以上ない傷を負って、彼は立ち上がった。

 

 

 ヒーローである為に弱さを隠し、人であるが故に嫌われるのを恐れて過去を隠した。

 両極端だ、あまりにも両極端だ。

 在り方が歪んでいる、醜く…そして、美しく。

 

 

 だけど、結翔はただ傷付いただけじゃない。

 重い覚悟と揺るがない誓を胸に、立ち上がったのだ。

 

 

「…まだ、終わってない」

 

「そっか…。じゃあ、悲しいけど、早く終わらせよう」

 

 

 一瞬にして、目の前に居たこころが消えた。

 脳が警鐘を鳴らす前に、直感が私を動かす前に、体はくの字に曲がって吹き飛ばされていた。

 自分が体験している筈なのに、やけに他人事のように感じる。

 

 

 地面との平行線をなぞるように体が飛ばされた。

 攻撃と同時に電撃も流された所為か、痛覚を司る神経が麻痺し、痛みは感じない。

 笑える、どうやって攻撃されたのか、それすら見えなかった。

 

 

 電撃を流された事から、近接モードに切り替えた可変型トンファーで殴られたのは分かるが、戦闘で研ぎ澄まされていた筈の五感は、何も捉えられなかった。

 地面に叩きつけられ、引きずるように転がる私は、ただ無力感に打ちひしがれる。

 

 

 差があり過ぎる。

 攻撃は通じず、防御は間に合わない。

 しかも、一度食らったら瀕死ときた。

 …魔法少女への変身は既に解除されている、私は何時死んでも可笑しくない状況にいるのだ。

 

 

 そんな、私の前にこころはやってくる。

 悲痛そうな面持ちで、傷付けた事を本気で後悔している…そんな所だろうか。

 

 

「降参して」

 

「……嫌…よ」

 

「喋れないくらい苦しいのに…まだやるの? 次は、死んじゃうかもしれないよ?」

 

 

 煽っている訳じゃない、彼女は本気で心配している。

 だが、それは無用だ。

 圧倒的な差、私の心を支配する無力感、悲しみながらも敵対する友人。

 状況は最悪だ…でも、悪くない展開だ。

 

 

 私は痺れが残る体を無理矢理動かし、立ち上がる。

 無理矢理起き上がった所為か、視界は揺れて焦点が上手く定まらないし、足はカクカクと震えて立っているのがやっとで、手だって武器どころか、その辺の小石一つ持つ事さえ困難なレベルで力が入らない。

 

 

 上手く喋れない舌を噛みちぎりたくなるが、しょうがない。

 私は自分の想いを叫んだ。

 

 

「…そうね、貴女の…言う通り。次は死ぬかもしれない。……私たちには、マギウスの計画を潰しても…解放に変わる代案はない。…お先真っ暗だわ」

 

「やっぱり…分かってるんだ。…なら、なんで? なんでそっちに居るの? こっちに来た方がーー」

 

「でもね、こころ。…私は、自分が信じた正義を貫きたいの。昔の私なら…こんなこと、絶対に思わなかっただろうけど。…今の私は違う」

 

 

 だって、大切な家族に出逢えたから。

 血の繋がってない、絆だけで繋がった、不安定で…それでいて温かい、最高の家族に。

 

 

 生に拘りなんてなかった。

 死に恐怖なんてなかった。

 

 

 人はいずれ死ぬのだ、なら何故その死に怯えて過ごす必要があるのか? 

 魔法少女として、日常的に命のやり取りをするようになっても、私のこの思想は変わらなかった。

 いいや、本当ならその先も変わる筈がなかったのだ…彼女と、粟根こころと会わなければ。

 

 

 不思議な子だった。

 私と居ても、メリットなんて何も無いのに、彼女は傍に居たがった。

 魔法少女としても強くはなくて、私に着いてくるのも精一杯なのに、ピンチになったら勝手に割って入って怪我をする。

 

 

 不快だった。

 訳が分からなかったが、彼女が傷付くのが不快だった。

 …そこからだ、私が変わり始めたのは。

 

 

 こころから、少しづつ…少しづつ、色々な感情を教わった。

 知識としてしか知らなかった多くの感情を、実際に体験させてもらうことは、得難いものだと自負している。

 

 

 そうして、変わりつつある私にトドメを刺したのは、紛れもなく…彼──藍川結翔だ。

 不思議…そんな言葉では表せない程に、結翔は私の常識の埒外に居る人間だった。

 

 

 ブレーキのない、アクセルだけの自己犠牲の精神。

 加えて、優し過ぎる、お人好しな性格。

 理解不能だった。

 他人の為にそこまで出来る、彼の在り方が。

 こころもそうだが、その優しさは度を超えている。

 

 

 一度、何故そこまで優しくなれたのか、どうしてヒーローに固執するのか聞いてみた。

 その時出た答えは──

 

 

『ただのエゴだよ。優しくしてるのも、ヒーローになりたいと思うのも、俺がそう在りたいと思ってるからさ。…誓と夢の末路だよ』

 

 

 今なら分かる。

 だけど、当時の私は分かる筈もなく……

 

 

 その後、洗脳を受けるように、私は彼に特撮ドラマを見せられ続けた。

 正直、私はテレビのフィクションより、実際に体験できる方が好きなのだが……何故か、驚く程自然に惹き付けられた。

 

 

 そこで、ようやく答えの一部が見える。

 彼はずっと前から惹かれていたのだ。

 どんな逆境も、どんな絶望も、希望と絆で乗り越える英雄(ヒーロー)に。

 

 

「空っぽだった私は、もう居ない。居るのは、貴女と…バカヒーローに毒された──ううん、満たされた私だけよ。笑顔を守って、困っている誰かの手を取る。簡単そうで、凄く難しいこと……それが私の信じる正義」

 

「…そんなのじゃ、誰も救えないよ。誰も、救われないよ」

 

「あら、そうかしら? …それじゃあ、手始めに、貴女を救うわ。…最初に手を取ってくれたのは、貴女だったわよね? 安心しなさい、今度は……私がその手を取るから!」

 

 

 再変身し、ウワサを纏ったこころを見据える。

 マギアは通用しない、他の技もダメ。

 なら、新しく一から作ればいい。

 見本は嫌ってほど、隣で見せて貰えた。

 今なら……出来る!! 

 

 

 ダガーを編んだ右手に、魔力を集中させていく。

 彼のような豪炎ではなく、優しく燃える蒼炎を纏わせ、構える。

 

 

「無駄だよ…そんなの効かない!!」

 

 

 そう言った、彼女は出力を最大まで上げた電流を、可変型トンファーに流す。

 振り絞った一発だ。

 失敗は許されないし、失敗したらそこで終わり。

 

 

 絶望的な状況なのに、私は笑みを零した。

 こうやって、彼女と正面切って争うことは無かったから…少しだけ嬉しい。

 喧嘩するほと仲がいい…だったか? 

 

 

 フィクションによくある河川敷での喧嘩。

 どことなくそれに似ている。

 場所も違えば、取り囲む事情も違う…けど、喧嘩してから仲直り、その過程に間違いはない。

 

 

「これで…終わり!!」

 

「私は! 負けない!!」

 

 

 お互いの武器が触れ合った瞬間、辺りを閃光が包み、衝撃波が私たちを吹き飛ばした。

 先程飛ばされた時よりはマシだが、痛覚が戻り始めた所為か、地面を転がる感触は最悪の一言に尽きる。

 

 

 時々刺さる小石の感覚は、明日まで残るだろう。

 …しかし、そんなのはどうでもいい。

 今、重要なのは、こころからウワサを剥がせたかどうかだ。

 本音を言えば、あの攻撃で纏っていたウワサを倒せてれば良いが…そうも上手くはいかない筈。

 

 

 なら、少なくとも、こころからウワサが剥がれていれば良い。

 期待を胸に、体を起こす。

 再変身した筈なのに、魔法少女の衣装は消え去っている…強制解除されたようだ。

 

 

「ここ…ろ」

 

 

 視界の先に、彼女を捉えた。

 纏っていたウワサは……私の蒼炎に燃やされている。

 天使の翼も…輪も、蒼炎が焼き尽くしていた。

 侵食されて、明るい黄色から純白になっていた魔法少女の衣装も、元に戻りつつある。

 

 

 どうやら、やり遂げたようだ。

 フラつく足取りで、横たわる彼女の下まで歩く。

 たった数メートルの筈なのに、それが果てしなく遠く感じる。

 途絶えそうになる意識を限界まで引き伸ばし、体より先を行こうとする魂を押さえ付ける。

 

 

 

 

 

「…ま…さら?」

 

「起きたのね、こころ?」

 

「わ…たし、今まで、何を──」

 

 

 起き上がりながら開いた口から出てくる声は──言葉は、不自然に途切れた。

 …あぁ、私の姿を見て思い出したのか。

 制服には所々穴ができており、そこから生々しい傷跡が見え隠れしている。

 見えないが、顔にも少し傷ができているだろう。

 

 

 青白く顔色を変えていくこころを見て、私は呆れたように笑った。

 貴女は悪くないのに、なんでそんな顔するんだ…と。

 立つことはなく、座ったままの状態の彼女を、私は抱き締める。

 とうに蒼炎は消え、今ここに居るのは、正真正銘粟根こころただ一人。

 

 

 だから、私は抱き締める。

 

 

「貴女は悪くないわ」

 

「…だけど! 私…結翔さんやまさらに、酷いこと…いっぱい!!」

 

「分からず屋ね、全く。…もう一度、言ってあげる。これが最後よ?」

 

 

 私は彼女の両頬に手を添え、面と向き合う。

 しっかりと瞳を見据えて、その奥にある不安や後悔を取り除くように、私は言うのだ。

 

 

「貴女は悪くないわ」

 

「まさら……まさらぁ……!!」

 

 

 涙を流す彼女の頭を撫でながら、ウワサの結界に居るであろう、ヒーローを思う。

 

 

「頼んだわよ、結翔」

 

 

 鶴乃を助け出せれば、それでゲームセットだ。




 次回もお楽しみに!

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