まさら「…正直、本気で死ぬかと思ったわ。それぐらいギリギリだった」
結翔「一応、師匠として嬉しく思うよ。頑張ったな、まさら!」
まさら「褒めるくらいだったら、美味しいご飯でも用意してちょうだい」
こころ「絶賛頑張ろうとしてる結翔さんにそれ言うの!?」
みたま「あら、だったらわたしが作ってあげるわよ〜」
結翔&まさら&こころ『いいえ、結構です』
みたま「えぇ、なんでよぉー!ケチねー!」
ももこ「調整屋がなんか駄々こねてるけど、五十六話も楽しんでどうぞ!」
──結翔──
鶴乃の『助けて』、と言う言葉を聞いて、俺たちが動き出そうとしたまさにその時。
待ったをかけるように、フェリシアとさなが現れる。
「話は全部聞かせてもらったぞ!」
「はい…。一緒に帰りましょう、鶴乃さん」
「あなたたち、アリナは…」
「今は、レナさんとかえでさんが…!」
かえでの奴、ももこが魔法少女の真実を話してから、あんまり調子良くないって言ってたけど……レナがなんとかしてくれた訳か。
…本当なら、そっちも気に掛けられれば良かったんだけどな。
ももこの奴が、お前はお前がやるべき事をやれば良い、って言うからさ。
取り敢えず、アリナとやり合ってるのが二人だと分かったのは良いが……
幾ら二対一でも、負ける可能性は十分にある。
自分の作品とか言って、キューブ結界の中から魔女をポンポコ出してくるし、天音姉妹が復活して加勢に来ないとも言いきれない。
ウワサを鶴乃から剥がしたら、パッパと大元のウワサを倒す必要がある。
その為にも、全員の協力が必要だ。
「おい、鶴乃! 今度はオレがお前を助けるからな! 結翔の兄ちゃんばっかに任せられっか!! …オレだってな…オレだって! 鶴乃のこと理解するから! 迷惑かけねーから! だから、戻って来いよ!」
「フェリシア……。うん、お願い。みんなで、わたしを助けて…!」
頬を流れる一筋の涙。
それが、俺たちの結束を強くする。
頼ったのだ。
願ったのだ。
『助けて』と、『みんなで助けて』と、彼女は願ったのだ。
だったら、助けるのが、ヒーローってものだろう?
周りに居るみんなを見回す。
誰もが頷いていた。
「私たち四人の魔力を、あなたに託すわ…結翔」
「お願いします、結翔さん!」
「頼んだぞ、兄ちゃん!」
「受け取ってください!」
「……あぁ、雑魚は頼んだ」
四人から受け取った魔力を、少しづつ移動させ右足に集中させる。
悲しみのある青の属性魔力が、優しさのある黄の属性魔力が、不安のある緑の属性魔力が、後悔のある紫の属性魔力が、怒りのある赤の属性魔力が、混ざり合っていく。
悲しみも、優しさも、不安も、後悔も、怒りも、全部纏めてぶつける。
鶴乃、お前が居ないと悲しいんだ。
鶴乃、お前の優しさに助けられたんだ
鶴乃、お前と離れ離れになるのが、不安で不安でしょうがないんだ。
鶴乃、お前の弱さにもっと早く気付けたらって、後悔してるんだ。
鶴乃、お前が奪われた事に、俺は怒っているんだ。
「俺には──俺たちには、お前が必要なんだよ!!」
頼りたいんじゃない、ただ傍に居て欲しいんだ。
三度目は、耐えられない。
父さんの時とは訳が違う。
力がある、ヒーローの名に恥じない力を俺は持っているんだっ!
一撃を受け止めるように、彼女は腕を広げて俺を待っている。
笑っていた、ポロポロと涙を流しながらも、俺を──俺たちを信じて笑っていた。
翼のある鳥のように空高くまで飛び、全てを込めた右足を向ける。
マギアであってマギアじゃない。
最強の一撃を、俺は放つ。
キックが直撃した瞬間、想いを乗せた魔力の全てが、鶴乃の中に流れ込んでいく。
「…いっけえぇぇぇえ!!」
流れ込んだ魔力は、内側からウワサの殻を破り、盛大に爆発した。
…だけど、分かる。
傷なんて、鶴乃に一つも付いてないことを。
未来で結果を視た訳じゃない…けど、分かるんだ。
今までの苦労を完璧に精算できる、そんな未来が。
背中を仲間に任せ、待った。
そして、少しの時間を置いてから、煙が晴れた場所に彼女は、二本の足でちゃんと立っていた。
爆発の所為で、少々すす汚れているが…その方が自然体に感じる。
いつものように、にへらっとした場を和ませる笑みではなく、くしゃっとした心からの笑みが見て取れた。
申し訳ないと心で思ったが、俺は一目散に駆け出して、彼女を抱き締める。
「鶴乃!! …鶴乃鶴乃鶴乃! 良かったぁ……。無事、なんだよな?」
「うん! 万々歳の看板娘兼、チームみかづき荘の潤滑油兼、結翔のお姉ちゃんな由比鶴乃だよ!! ふんふん!」
「ははっ…。最後のは要らないが…無事ならそれで良いや」
どれ程抱き合っていたんだろう。
いつの間にか、雑魚の処理が終わっていたみんなが帰ってきて、やちよさんの咳払いで俺たちは一度離れた。
その後は、みかづき荘の面々が代わる代わる抱き締めあっていた。
……喜びあってる時間も、そろそろ限界みたいだな。
「みんな、ありがとう。…あれだね、みんなに色々バレちゃったって思うと、顔から火が出そうだよ! …あ、それより急がないと…朝にはオープンしちゃう…!」
「あとは、大元のウワサを消すことができれば」
「おう! 全部解決だな!」
「でも…どうやって…大元のウワサを出せば」
「内容に反する…?」
いろはちゃんたちは、大元のウワサをどう出そうか迷ってるみたいだが……意味の無い事だ。
…やっぱり、やちよさんは気付いてるな。
良く考えれば、分かる。
キレーションランドの目的は、入場者の気力を奪い尽くして、人数が溢れる前に、生きる気力さえ失った者を殺し、エネルギーを得る。
客を遊園地に入れる→気力をどんどん奪っていく→入場者が溢れそうになると生きる気力さえ失った者を殺す→エネルギーを得る。
このサイクルを続けるのが、キレーションランドの目的であり、ウワサの内容なのだろう。
既に、俺たちは気力を奪われて、ぐーたらで安楽な生活を送る筈だが、それに反抗している。
加えて、ウワサの一部である鶴乃まで取ろうとしているのだ…これで、大元のウワサが黙っている訳ない。
噂をすれば影ってやつか?
強大な魔力反応が、こちらに近付いてきた。
「まぁ、その必要はないでしょうね」
「│………………ォォン…ォォン│」
「鶴乃って言う、ウワサの一部を持ってこうとしたんだ。黙ってるほど優しくはないだろ」
「よくも、最強の魔法少女。由比鶴乃を弄んでくれたね! ここは、わたしが、やられた分をやり返すぅぅぅ…。うぅ、なんで力が…」
「│………………ォォン…ォォン│」
「うわっおっ!」
現れた大元のウワサは…恐らくだが、観覧車草原にある観覧車を模したものだ。
…折角助けたってのに、あんのバカは一人で突っ込んで、ゴンドラの中に余裕で閉じ込められている。
外から見た感じでも分かるが、ゴンドラの中身は…あまりいいものじゃないし、外面も気色悪さMAXだ。
頼れって言ったのに、さっきはちゃんと助けてって言えたのに……
どうして、こうもあっさりと突っ込んで行けるのか──いや、それが鶴乃らしさ…か。
良い意味でも、悪い意味でも、真っ直ぐで優しい奴だからな。
安堵からか、はたまた呆れからか、口からため息が漏れた。
「はぁ…。らしいっちゃ、らしいが、そこまであっさり捕まらなくても良いんだぜ?」
「ゆ、結翔さん、言ってる場合じゃないですよ! 鶴乃ちゃんが…!」
「おい、捕まっちまったぞ! つーか、なんでアイツ、あんなヘトヘトなんだよ!」
「……やっべ。俺の所為かも。さっき、怪我は無いように感じてたけど、体力の事とかは考えてなかった…」
「大丈夫だよみんな! こんなウワサわたしひとりで!」
「え…さっそく言ってることが…」
…本当に、不器用な奴だ。
見ろ、さなが滅茶苦茶困惑してるじゃねぇか。
オロオロしてるのを眺めるのも良いが、時間は有限。
まさらとこころちゃんも心配だし、ササッとケリをつけねぇとな。
もう一度、気を引き締めて。
腹の底から、アイツに──鶴乃に届くように声を出した。
「頼れって言ってんだよ! 助けてって、もう一回言え!!」
「…………そだね。じゃあ、もう一回、みんな助けて!」
「うん、みんなで助けるから!」
「えぇ、このままウワサも消して、さっさと撤退するわよ!」
「了解!」
やちよさんの言葉を皮切りに、大元のウワサとの戦いが始まった。
小物のウワサである馬を、周囲に盾のように配置し、自分は遠距離から攻める作戦らしい。
大元のウワサの攻撃は、一つ一つ種類の違うゴンドラから、一見シャボン玉にも見える大きい透明な球体を吐き出し、その球体の核とも言うべき部分の色で、攻撃方法が変わる。
水色なら、当たった瞬間、水風船のように中身の液体が飛び出し、それに当たると眠気が酷くなる。
黒色なら、当たる直前に自ら割れて、ガス状になって纏わり付くことで気力を奪っていく。
小物のウワサの猛攻を躱しながら、大元のウワサに辿り着き、一発入れるのは至難の業だろう…。
しかし、そんなの関係ない。
人の仲間に…人の姉に、手ぇ出しておいて、タダで済むと思ったら大間違いだ。
球体による、水攻撃もガス攻撃も、こちらに近付く前に俺が破壊の魔眼で消す。
いろはちゃんが後衛で支援、さなが盾から出る鎖で中央から小物のウワサを纏め、やちよさんとフェリシアが前衛でそれを叩き、道を開く。
ある程度道が開けて来たのを確認すると、俺は右腰をバンッと力強く叩く。
すると、腰に靄の掛かったベルトが巻かれ、唯一見える、中央の赤く光る宝玉のような部分から、一本の剣──フレイムセイバーが出てきた。
刀のような刃の形状をしており、刀身の温度を摂氏7000度まで上げる事が可能な代物だ。
刀に見られる鍔部分には、セイバーホーンと呼ばれる金色の角が二本、切っ先と峰に沿うような形で着いている。
必殺技を使うタイミングになると、追加で二本──合計四本のホーンが展開され、フォースアイと言う、埋め込まれた秘石にある炎の力を全開放する。
…少し、早口になって解説したが、分かりやすく言うなら、赤──炎系統の滅茶苦茶に切れ味のいい武器だ。
グリップ部分を両手で握り、穴が出来た敵の包囲に突っ込む。
左右から阻むように邪魔されるが、フレイムセイバーをひと薙すればあら不思議、小物のウワサは呆気なく消滅していく。
一体は、単純に両断され、また一体は、フレイムセイバーの熱によって溶けるか燃えていく。
固有の能力──固有魔法で、今召喚できる使い勝手のいい武器が、丁度これなのだ。
他にもあるが、この状況に合う武器はあまり多くない。
あったとしても、無駄に召喚することは出来ない。
なにせ、武器召喚や超能力などの行使は疲労は大きいので、そう易々と使えないんだよ。
敵をバッタバッタと切り裂きながら進むと、ようやく観覧車の足元まで辿り着いた。
「…ふぅ」
肺に残っている空気を全て吐き出し、そして、また吸い込む。
必殺技を放つ為、セイバーホーンの残り二本を展開し、炎の力を全開放する。
ただ刀身の温度を上げるのではなく、炎を纏わせる事で更に威力を底上げし、観覧車の頂点まで飛び上がる。
本家では破壊力30t、両断した敵を発火させる効果がつく必殺技、その名も──
「セイバースラッシュ!!!」
振り下ろしたフレイムセイバーは、大元のウワサである観覧車の頂点から地面までを、勢いを落とす所か上昇させて両断し、トドメを刺すように燃やしていった。
大元のウワサは消滅し、その所為で中に囚われていた鶴乃は重力に従い、真っ逆さまに地面に落ちる。
「│……ォォン…………│」
「わっわっ、お、落ちる!」
「…はい。キャッチ、っと。むっ! …お…重い」
「ヒドイよ!」
鶴乃の文句が聞こえるがしょうがないだろ?
結構な高さから落ちてきたのを、出来るだけお前に衝撃がないようにキャッチしたんだぞ。
俺の膝や腰に負担が掛かるのは当然だ。
…いや、流石に、重いって言ったのは反省するけどさ。
三徹して一日は休んだけど、まだ体に疲労が残ってるんだよ。
それに、今日は
「助けたぞ。調子はどうだ?」
「悪くないよ! むしろ、絶好調!」
「これで…終わり…ですよね…?」
「うん、後は結界が消えるだけだね…」
「……………………」
いろはちゃんの言葉を最後に、少しの間、静かな時が流れる。
…憂うような顔付きの鶴乃。
どうせ、迷惑かけちゃって悪いな…とか、思ってるんだろうな…コイツ。
「あの、みんなごめんねすごく迷惑かけちゃって…」
「なんで、あなたが謝るの? 悪いのは私でしょ」
謝り合戦を二から三分ほど続けた後、結局は鶴乃の事をちゃんと知れて良かった…と、そこに落ち着いた。
最後は手を重ねて円陣を組む流れになり、俺も誘われたが、丁重に断った。
…その輪に、俺が入るべきじゃないと…そう思ったからだ。
確かに彼女たちのことは仲間だと思ってるし大切だ…だけど、俺がそれをやるべき相手は──いや、やる相手は二人だけだ。
結界が崩れて消えていく中、期待と不安を胸に、俺たちは外に出る。
……戦いは、完全に終わった訳じゃないから。
次回もお楽しみに!
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