無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 いろは「前回までの『無少魔少』。ウワサを纏ったこころちゃんと加賀見さんが戦って、ギリギリの所で勝ってウワサを剥がしたって話ですね」

 まさら「…正直、本気で死ぬかと思ったわ。それぐらいギリギリだった」

 結翔「一応、師匠として嬉しく思うよ。頑張ったな、まさら!」

 まさら「褒めるくらいだったら、美味しいご飯でも用意してちょうだい」

 こころ「絶賛頑張ろうとしてる結翔さんにそれ言うの!?」

 みたま「あら、だったらわたしが作ってあげるわよ〜」

 結翔&まさら&こころ『いいえ、結構です』

 みたま「えぇ、なんでよぉー!ケチねー!」

 ももこ「調整屋がなんか駄々こねてるけど、五十六話も楽しんでどうぞ!」


五十六話「英雄の力」

 ──結翔──

 

 鶴乃の『助けて』、と言う言葉を聞いて、俺たちが動き出そうとしたまさにその時。

 待ったをかけるように、フェリシアとさなが現れる。

 

 

「話は全部聞かせてもらったぞ!」

 

「はい…。一緒に帰りましょう、鶴乃さん」

 

「あなたたち、アリナは…」

 

「今は、レナさんとかえでさんが…!」

 

 

 かえでの奴、ももこが魔法少女の真実を話してから、あんまり調子良くないって言ってたけど……レナがなんとかしてくれた訳か。

 …本当なら、そっちも気に掛けられれば良かったんだけどな。

 ももこの奴が、お前はお前がやるべき事をやれば良い、って言うからさ。

 

 

 取り敢えず、アリナとやり合ってるのが二人だと分かったのは良いが……

 幾ら二対一でも、負ける可能性は十分にある。

 自分の作品とか言って、キューブ結界の中から魔女をポンポコ出してくるし、天音姉妹が復活して加勢に来ないとも言いきれない。

 ウワサを鶴乃から剥がしたら、パッパと大元のウワサを倒す必要がある。

 

 

 その為にも、全員の協力が必要だ。

 

 

「おい、鶴乃! 今度はオレがお前を助けるからな! 結翔の兄ちゃんばっかに任せられっか!! …オレだってな…オレだって! 鶴乃のこと理解するから! 迷惑かけねーから! だから、戻って来いよ!」

 

「フェリシア……。うん、お願い。みんなで、わたしを助けて…!」

 

 

 頬を流れる一筋の涙。

 それが、俺たちの結束を強くする。

 頼ったのだ。

 願ったのだ。

 

 

『助けて』と、『みんなで助けて』と、彼女は願ったのだ。

 だったら、助けるのが、ヒーローってものだろう? 

 周りに居るみんなを見回す。

 誰もが頷いていた。

 

 

「私たち四人の魔力を、あなたに託すわ…結翔」

 

「お願いします、結翔さん!」

 

「頼んだぞ、兄ちゃん!」

 

「受け取ってください!」

 

「……あぁ、雑魚は頼んだ」

 

 

 四人から受け取った魔力を、少しづつ移動させ右足に集中させる。

 悲しみのある青の属性魔力が、優しさのある黄の属性魔力が、不安のある緑の属性魔力が、後悔のある紫の属性魔力が、怒りのある赤の属性魔力が、混ざり合っていく。

 

 

 悲しみも、優しさも、不安も、後悔も、怒りも、全部纏めてぶつける。

 

 

 鶴乃、お前が居ないと悲しいんだ。

 鶴乃、お前の優しさに助けられたんだ

 鶴乃、お前と離れ離れになるのが、不安で不安でしょうがないんだ。

 鶴乃、お前の弱さにもっと早く気付けたらって、後悔してるんだ。

 鶴乃、お前が奪われた事に、俺は怒っているんだ。

 

 

「俺には──俺たちには、お前が必要なんだよ!!」

 

 

 頼りたいんじゃない、ただ傍に居て欲しいんだ。

 三度目は、耐えられない。

 父さんの時とは訳が違う。

 力がある、ヒーローの名に恥じない力を俺は持っているんだっ! 

 

 

 一撃を受け止めるように、彼女は腕を広げて俺を待っている。

 笑っていた、ポロポロと涙を流しながらも、俺を──俺たちを信じて笑っていた。

 翼のある鳥のように空高くまで飛び、全てを込めた右足を向ける。

 

 

 マギアであってマギアじゃない。

 最強の一撃を、俺は放つ。

 

 

 キックが直撃した瞬間、想いを乗せた魔力の全てが、鶴乃の中に流れ込んでいく。

 

 

「…いっけえぇぇぇえ!!」

 

 

 流れ込んだ魔力は、内側からウワサの殻を破り、盛大に爆発した。

 …だけど、分かる。

 傷なんて、鶴乃に一つも付いてないことを。

 未来で結果を視た訳じゃない…けど、分かるんだ。

 今までの苦労を完璧に精算できる、そんな未来が。

 

 

 背中を仲間に任せ、待った。

 そして、少しの時間を置いてから、煙が晴れた場所に彼女は、二本の足でちゃんと立っていた。

 爆発の所為で、少々すす汚れているが…その方が自然体に感じる。

 

 

 いつものように、にへらっとした場を和ませる笑みではなく、くしゃっとした心からの笑みが見て取れた。

 申し訳ないと心で思ったが、俺は一目散に駆け出して、彼女を抱き締める。

 

 

「鶴乃!! …鶴乃鶴乃鶴乃! 良かったぁ……。無事、なんだよな?」

 

「うん! 万々歳の看板娘兼、チームみかづき荘の潤滑油兼、結翔のお姉ちゃんな由比鶴乃だよ!! ふんふん!」

 

「ははっ…。最後のは要らないが…無事ならそれで良いや」

 

 

 どれ程抱き合っていたんだろう。

 いつの間にか、雑魚の処理が終わっていたみんなが帰ってきて、やちよさんの咳払いで俺たちは一度離れた。

 その後は、みかづき荘の面々が代わる代わる抱き締めあっていた。

 

 

 ……喜びあってる時間も、そろそろ限界みたいだな。

 

 

「みんな、ありがとう。…あれだね、みんなに色々バレちゃったって思うと、顔から火が出そうだよ! …あ、それより急がないと…朝にはオープンしちゃう…!」

 

「あとは、大元のウワサを消すことができれば」

 

「おう! 全部解決だな!」

 

「でも…どうやって…大元のウワサを出せば」

 

「内容に反する…?」

 

 

 いろはちゃんたちは、大元のウワサをどう出そうか迷ってるみたいだが……意味の無い事だ。

 …やっぱり、やちよさんは気付いてるな。

 良く考えれば、分かる。

 

 

 キレーションランドの目的は、入場者の気力を奪い尽くして、人数が溢れる前に、生きる気力さえ失った者を殺し、エネルギーを得る。

 客を遊園地に入れる→気力をどんどん奪っていく→入場者が溢れそうになると生きる気力さえ失った者を殺す→エネルギーを得る。

 このサイクルを続けるのが、キレーションランドの目的であり、ウワサの内容なのだろう。

 

 

 既に、俺たちは気力を奪われて、ぐーたらで安楽な生活を送る筈だが、それに反抗している。

 加えて、ウワサの一部である鶴乃まで取ろうとしているのだ…これで、大元のウワサが黙っている訳ない。

 

 

 噂をすれば影ってやつか? 

 強大な魔力反応が、こちらに近付いてきた。

 

 

「まぁ、その必要はないでしょうね」

 

「│………………ォォン…ォォン│」

 

「鶴乃って言う、ウワサの一部を持ってこうとしたんだ。黙ってるほど優しくはないだろ」

 

「よくも、最強の魔法少女。由比鶴乃を弄んでくれたね! ここは、わたしが、やられた分をやり返すぅぅぅ…。うぅ、なんで力が…」

 

「│………………ォォン…ォォン│」

 

「うわっおっ!」

 

 

 現れた大元のウワサは…恐らくだが、観覧車草原にある観覧車を模したものだ。

 …折角助けたってのに、あんのバカは一人で突っ込んで、ゴンドラの中に余裕で閉じ込められている。

 外から見た感じでも分かるが、ゴンドラの中身は…あまりいいものじゃないし、外面も気色悪さMAXだ。

 

 

 頼れって言ったのに、さっきはちゃんと助けてって言えたのに……

 どうして、こうもあっさりと突っ込んで行けるのか──いや、それが鶴乃らしさ…か。

 良い意味でも、悪い意味でも、真っ直ぐで優しい奴だからな。

 

 

 安堵からか、はたまた呆れからか、口からため息が漏れた。

 

 

「はぁ…。らしいっちゃ、らしいが、そこまであっさり捕まらなくても良いんだぜ?」

 

「ゆ、結翔さん、言ってる場合じゃないですよ! 鶴乃ちゃんが…!」

 

「おい、捕まっちまったぞ! つーか、なんでアイツ、あんなヘトヘトなんだよ!」

 

「……やっべ。俺の所為かも。さっき、怪我は無いように感じてたけど、体力の事とかは考えてなかった…」

 

「大丈夫だよみんな! こんなウワサわたしひとりで!」

 

「え…さっそく言ってることが…」

 

 

 …本当に、不器用な奴だ。

 見ろ、さなが滅茶苦茶困惑してるじゃねぇか。

 オロオロしてるのを眺めるのも良いが、時間は有限。

 まさらとこころちゃんも心配だし、ササッとケリをつけねぇとな。

 

 

 もう一度、気を引き締めて。

 腹の底から、アイツに──鶴乃に届くように声を出した。

 

 

「頼れって言ってんだよ! 助けてって、もう一回言え!!」

 

「…………そだね。じゃあ、もう一回、みんな助けて!」

 

「うん、みんなで助けるから!」

 

「えぇ、このままウワサも消して、さっさと撤退するわよ!」

 

「了解!」

 

 

 やちよさんの言葉を皮切りに、大元のウワサとの戦いが始まった。

 小物のウワサである馬を、周囲に盾のように配置し、自分は遠距離から攻める作戦らしい。

 大元のウワサの攻撃は、一つ一つ種類の違うゴンドラから、一見シャボン玉にも見える大きい透明な球体を吐き出し、その球体の核とも言うべき部分の色で、攻撃方法が変わる。

 

 

 水色なら、当たった瞬間、水風船のように中身の液体が飛び出し、それに当たると眠気が酷くなる。

 黒色なら、当たる直前に自ら割れて、ガス状になって纏わり付くことで気力を奪っていく。

 

 

 小物のウワサの猛攻を躱しながら、大元のウワサに辿り着き、一発入れるのは至難の業だろう…。

 しかし、そんなの関係ない。

 人の仲間に…人の姉に、手ぇ出しておいて、タダで済むと思ったら大間違いだ。

 

 

 球体による、水攻撃もガス攻撃も、こちらに近付く前に俺が破壊の魔眼で消す。

 いろはちゃんが後衛で支援、さなが盾から出る鎖で中央から小物のウワサを纏め、やちよさんとフェリシアが前衛でそれを叩き、道を開く。

 

 

 ある程度道が開けて来たのを確認すると、俺は右腰をバンッと力強く叩く。

 すると、腰に靄の掛かったベルトが巻かれ、唯一見える、中央の赤く光る宝玉のような部分から、一本の剣──フレイムセイバーが出てきた。

 刀のような刃の形状をしており、刀身の温度を摂氏7000度まで上げる事が可能な代物だ。

 

 

 刀に見られる鍔部分には、セイバーホーンと呼ばれる金色の角が二本、切っ先と峰に沿うような形で着いている。

 必殺技を使うタイミングになると、追加で二本──合計四本のホーンが展開され、フォースアイと言う、埋め込まれた秘石にある炎の力を全開放する。

 

 

 …少し、早口になって解説したが、分かりやすく言うなら、赤──炎系統の滅茶苦茶に切れ味のいい武器だ。

 グリップ部分を両手で握り、穴が出来た敵の包囲に突っ込む。

 左右から阻むように邪魔されるが、フレイムセイバーをひと薙すればあら不思議、小物のウワサは呆気なく消滅していく。

 

 

 一体は、単純に両断され、また一体は、フレイムセイバーの熱によって溶けるか燃えていく。

 固有の能力──固有魔法で、今召喚できる使い勝手のいい武器が、丁度これなのだ。

 他にもあるが、この状況に合う武器はあまり多くない。

 

 

 あったとしても、無駄に召喚することは出来ない。

 なにせ、武器召喚や超能力などの行使は疲労は大きいので、そう易々と使えないんだよ。

 

 

 敵をバッタバッタと切り裂きながら進むと、ようやく観覧車の足元まで辿り着いた。

 

 

「…ふぅ」

 

 

 肺に残っている空気を全て吐き出し、そして、また吸い込む。

 必殺技を放つ為、セイバーホーンの残り二本を展開し、炎の力を全開放する。

 ただ刀身の温度を上げるのではなく、炎を纏わせる事で更に威力を底上げし、観覧車の頂点まで飛び上がる。

 

 

 本家では破壊力30t、両断した敵を発火させる効果がつく必殺技、その名も──

 

 

「セイバースラッシュ!!!」

 

 

 振り下ろしたフレイムセイバーは、大元のウワサである観覧車の頂点から地面までを、勢いを落とす所か上昇させて両断し、トドメを刺すように燃やしていった。

 大元のウワサは消滅し、その所為で中に囚われていた鶴乃は重力に従い、真っ逆さまに地面に落ちる。

 

 

「│……ォォン…………│」

 

「わっわっ、お、落ちる!」

 

「…はい。キャッチ、っと。むっ! …お…重い」

 

「ヒドイよ!」

 

 

 鶴乃の文句が聞こえるがしょうがないだろ? 

 結構な高さから落ちてきたのを、出来るだけお前に衝撃がないようにキャッチしたんだぞ。

 俺の膝や腰に負担が掛かるのは当然だ。

 

 

 …いや、流石に、重いって言ったのは反省するけどさ。

 三徹して一日は休んだけど、まだ体に疲労が残ってるんだよ。

 それに、今日は超自然発火能力(パイロキネシス)使ったし、武器召喚もしたからな…。

 

 

「助けたぞ。調子はどうだ?」

 

「悪くないよ! むしろ、絶好調!」

 

「これで…終わり…ですよね…?」

 

「うん、後は結界が消えるだけだね…」

 

「……………………」

 

 

 いろはちゃんの言葉を最後に、少しの間、静かな時が流れる。

 …憂うような顔付きの鶴乃。

 どうせ、迷惑かけちゃって悪いな…とか、思ってるんだろうな…コイツ。

 

 

「あの、みんなごめんねすごく迷惑かけちゃって…」

 

「なんで、あなたが謝るの? 悪いのは私でしょ」

 

 

 謝り合戦を二から三分ほど続けた後、結局は鶴乃の事をちゃんと知れて良かった…と、そこに落ち着いた。

 最後は手を重ねて円陣を組む流れになり、俺も誘われたが、丁重に断った。

 …その輪に、俺が入るべきじゃないと…そう思ったからだ。

 

 

 確かに彼女たちのことは仲間だと思ってるし大切だ…だけど、俺がそれをやるべき相手は──いや、やる相手は二人だけだ。

 

 

 結界が崩れて消えていく中、期待と不安を胸に、俺たちは外に出る。

 ……戦いは、完全に終わった訳じゃないから。




 次回もお楽しみに!

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