無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 和恵「前回までの『無少魔少』。私が四年ぶりに家帰ってきて、結翔から質問攻めにあった…そんな話ね」

 結翔「突然帰ってくるってメールが来て、驚いたなんてもんじゃなかったよ」

 まさら「最初に母親だって聞いてなかったら、姉かと疑う程だったわ」

 こころ「だよね。すっごく綺麗で若そうな印象が……あの肌の秘密を聞きたい」

 ももこ「止めといた方がいいぞ、あの人、薄化粧程度であれだから」

 みたま「突然現れた結翔くんのお母さん、これからどうなるのぉ〜?みんなは楽しんで五十九話をどうぞぉ!」


五十九話「真実との邂逅、自称姉と母」

 ──結翔──

 

 リビングを出たあと、俺はそのまま、家からも出た。

 先程の会話の所為で、余計、家に居辛くなったからだ。

 それに……

 

 

「幻覚や幻聴のこと、もしかしたら、咲良さんならなんか知ってるかもな…」

 

 

 こう思ったからだ。

 魔術と異能力、畑は違えど一応は公安Q科の部署内に属している。

 期待はあまり出来ないが、正直な話、今は藁にもすがる思いだ。

 

 

 右側に映る地獄の後継の所為で、少しづつ俺自身が変わりつつある。

 ……吐き出すつもりだったけど、あそこまで言うつもりはなかった。

 ちゃんと吐き出して、しっかり話し合うつもりだったのに……あのザマだ。

 とぼとぼと歩きながら、事務所を目指す。

 

 

 時折すれ違う、赤の他人でさえ、地獄では俺に殺されている。

 原因はフェーズを無理矢理上げたからだと予測しているが、何故フェーズを無理矢理上げたから幻覚や幻聴が起きるようになったのか? 

 その理屈や理由は何一つ分からない。

 

 

 それを知るためにも…だ。

 ようやく辿り着いた事務所の、玄関ドアを開けて中に入る。

 靴を適当に脱ぎ揃えて、スリッパを借りて廊下を進む。

 左手にあるドアを開き中に入ると、いつものように目の下に隈を作って、パソコンと格闘している咲良さんが居た。

 

 

「こんにちわ、咲良さん。……今、少し話し良いですか?」

 

「ん? あぁ、結翔君か。良いよ、どうしたの?」

 

「実は──」

 

 

 俺は、取り敢えず、洗いざらい話した。

 報告できてなかった諸々を含めて話終えると、最後にやっと本題に入る。

 

 

「幻覚に幻聴ねぇ…。しかも、魔眼を使う右眼の方で。なるほど、なるほど……」

 

「治す方法を知ってたらそれが一番良いんですけど…。なんでも良いから知りませんか? 情報が一つでも欲しいんです!」

 

「……結翔君もいい歳だしね、もう話してもいいか。ちょっと、キツイ話になるけど、良い?」

 

「大丈夫です。…お願いします」

 

 

 いつもの喋り方じゃない、真剣味を感じる芯の通った声。

 おちゃらけた空気は一切なく、少しだけ咲良さんの表情が曇った。

 申し訳なさそうで、悲しそうな、そんな表情だったと思う。

 

 

 俺が何故、思うとしか表現出来ないかと言われると、咲良さんが数秒後に発した言葉が、あまりにも信じられないものだったからだ。

 暗闇に隠されていた真実を、嘘と偽りで塗り固められた真実を、解き明かす話。

 

 

「あなたのお父さんは……事故死じゃない。()()()()()()

 

「……ぇ?」

 

「…ごめんなさい、言葉足らずだったわね。私が殺すしかなかったの。あなたのお父さん──藍川英斗(えいと)は悪魔との契約によって、可笑しくなってしまったのよ」

 

「可笑しく?」

 

「そう。本来なら十歳の時に契約悪魔が来るそうなんだけど、英斗さんの前に契約悪魔が現れたのは三十歳の時よ。……その時、英斗さんは国家を揺るがすような凶悪な事件を追ってて、国民を守る為にどうしても力が必要だったの」

 

「だから、契約を?」

 

 

 三十歳な時に契約したなら、丁度他界する一年前になる。

 なんで、なんで、この件を今話してるんだ? 

 一体、俺の幻覚や幻聴の件となんの関係がある? 

 

 

 ……いや、ある。

 関係なら、一つだけある。

 契約したってことは、フェーズが上がってる筈だ。

 俺も、やり方こそ違えどフェーズは上がった。

 

 

 なら、根本の原因はフェーズを上げること…なのか? 

 

 

「…でもね、契約をしてから英斗さんは可笑しくなっていった。日々、あなたと同じように幻覚や幻聴に悩まされ、まともに家に帰れてなかったわ」

 

「………………」

 

 

 そう言われれば、そうだった。

 他界する──死ぬまでの一年間、父さんはあまり家に顔を見せなかった。

 死ぬ前の父さんに最後に会った日は、事故の二ヶ月も前。

 …よくよく考えれば、最初から可笑しかった、そういう訳か。

 

 

「そして、事故があった伝えられた日。発狂寸前だった英斗さんは……弟子である私に二つお願いをした。一つは自分を殺す事。もう一つは──」

 

「俺と母さんの事…ですか?」

 

「………………」

 

 

 咲良さんはそれ以上、何も言わず、ただコクリと頷いた。

 恨んでないと言えば……嘘になる。

 けど、俺は恨むのと同じくらい同情した。

 大切な人が罪を犯す前に止める、それがどれだけ辛いか、俺はよく知っている。

 

 

 父さんも、信頼する弟子に介錯してもらえたんだ、本望だろう。

 …もし、何か望んでいたなら、それは俺や母さんの事。

 最後に一目会いたい、それぐらいは思っていた筈だ。

 優しい人だった、強い人だった──俺の憧れた、最初のヒーローだった。

 

 

 そんな人でも、魔眼は狂わせる。

 なるほど、時間は掛かったが理解したぞ。

 右眼に映し出される地獄は、俺の未来だ。

 発狂し悪魔に魂を売った後の、俺の最悪の結末の一つ。

 

 

 一年あっても、父さんは治療法を見つけられなかった。

 今すぐどうこうするのは、不可能と考えて良いだろう。

 

 

 俺は、咲良さんに一言、ありがとうと伝え事務所を出る。

 廊下を出た直後、すすり泣くような声が聞こえたが、俺は振り返らなった。

 慰めるのが俺じゃ、きっと辛いだけ。

 

 

 何せ、咲良さんから見れば俺は師匠から託された子供で、その子供が師匠と同じ未来を歩もうとしてるのだから。

 無力感は相当なものだし、それを証明する存在である俺が慰めるなんて、辛いだけじゃ済まないかもしれない。

 

 

 事務所を出たあと、色々な事を整理するように、俺はフラフラと街を歩いた。

 父の死の真相、母の突然の帰宅、幻覚や幻聴の正体の一端、そして地獄のような未来。

 

 

 歩いて、歩いて、歩いて。

 気が付いたら……

 

 

「むっ、こんな所で何をやってるんだ藍川?」

 

「……ん? あれ、十七夜さん?」

 

「何故、そちらが驚いたような顔する。驚いているのは自分だ。ここは大東だぞ?」

 

「へっ?」

 

 

 俺は知らぬ間に大東区にまで足を運んでいた。

 そして、何故かそのまま、俺は十七夜さんがバイトしてるというメイド喫茶に、強制的に連行される。

 理由を聞くと、彼女は……

 

 

「自分はこれでも、上に立つ人間だからな。顔見知りの精神状態くらい、表情を見ればなんとなく察せる。…なにかあったんだろう? 話ぐらい聞く」

 

「…ありがとう、ございます」

 

 

 優しさが痛くて、でも、とても温かい。

 流れないと思っていた筈の涙は、勝手に流れていた。

 

 

 ──和恵──

 

 家を出てから数分。

 行く宛てもなく飛び出した所為で、私はブラブラと、見知った景色を眺めながら歩くしかなかった。

 そして、丁度その時、懐かしい場所を見つける。

 

 

 公園だ。

 あの子が、よくあの人──英斗さんやももこちゃんと遊んでいた公園。

 まだ残っていたなんて…少しばかり感激した。

 自然と足はそこへ向かい、キャリケースを引いて行く。

 

 

 ベンチに腰かけ、昔の思い出を、この公園の光景に重ねる。

 家族には戻れないと、分かってしまったからか、余計に感傷に浸ってしまう。

 

 

 時計の針を戻すだけでは過去に戻れないし、進めても良い未来は訪れない。

 過去と言うのは不変の事象、変わる事など有り得ないのだ。

 でも、願ってしまう。

 

 

 幸せだったあの日に戻れたら…と。

 家族みんなが笑っていたあの日に……

 

 

「たった一人欠けただけなのにこうも変わるなんて。…やっぱり、あなたは大き過ぎるわよ。英斗さん…」

 

 

 たった一人、されどその一人あまりにも大き過ぎた。

 私の心にも、結翔の心にも、大きく存在していたんだ。

 四年間、無くなった部分を埋めるように、旅に出て。

 各地で嫌という程、ピアノを弾いて回った。

 ……得られるものなんてたかが知れていたというのに。

 

 

 ポロポロと流れる涙は止まってはくれない。

 思えば思うほど苦しくなって、それでも諦めるなんて出来なくて。

 私は未練がましく、家族に縋りつこうとしている。

 

 

 最低な事をしたのに、許されない事をしたのに、私はまだ──

 

 

「わわっ!? 大丈夫、お姉さん! そんなに泣いて、何かあったの!?」

 

「……ごめんなさいね。こんな所で泣いて、迷惑よね」

 

「全然迷惑じゃないよ? だって、公園にはわたし以外誰も居ないし」

 

「それでもよ。…私なんか気に掛けなくていいわ」

 

 

 目の前に居たのは、サイドテールに纏めた明るい茶色の髪と、情熱の炎を幻視させる赤橙色の瞳を持つ少女。

 可愛らしい幼さの残る顔立ちをしている少女は、私に心配するような表情を向けていた。

 

 

 バイトの途中だったのだろう、出前缶を自転車のカゴに入れて、愛らしい私服の上にエプロンを羽織っている。

 急いでるだろうに、私なんか気に掛けなくて良いと言ったのに、少女はただただ私を見つめ続ける。

 

 

 結局、私の方が折れて、少女の名前を聞いた。

 

 

「お名前、聞いても良いかしら?」

 

「わたし? わたしの名前は由比鶴乃だよ! 参京区にある中華飯店『万々歳』の看板娘!」

 

「由比…鶴乃ちゃんね? それに…中華飯店『万々歳』…。あぁ、ももこちゃんから聞いてるわ。そう、あなたが最強の魔法少女ね?」

 

「そうそう! わたしが──ちょ、ちょっと待って!? なな、なんでお姉さんが、ももこを知ってて、私が魔法少女って事を?!」

 

「あぁ、名乗ってなかったわよね。私の名前は藍川和恵。…一応、藍川結翔の母親よ」

 

 

 そう言うと、鶴乃ちゃんは、口をあんぐりと開けて固まってしまう。

 彼女が驚きから開放されたのは、数分が経ってからだった。




 和恵さんが魔法少女の事を何故知ってるのかは次回!

 という訳で、次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 感想もお待ちしております!

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