無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

72 / 81
 まさら「前回までの『無少魔少』。結翔が私に自分の命を握らせて、街を託したり、母親と仲直りした話ね」

 結翔「今回からはお前がメインだからな。頑張ってくれよ」

 こころ「まさらがメインと言うより、私たちにライトが当たってる感じですよね」

 みたま「わたしの出番?」

 ももこ「話聞いてやれよ、アタシらの出番はないって」

 メル「ボク!ボクの出番は!?」

 結翔「いや、余計ないだろ」

 まさら「少し話は短いけど、皆さんは六十三話を楽しんでどうぞ」


六十三話「助けては言えなかった」

 ──まさら──

 

 結翔と母親の件が終わってから早二日。

 放課後の夕暮れ時、私は一人、レンタルショップからの帰り道を歩いていた。

 

 

 今日も学校はあったが、結翔の仕事は休みらしい。

 …まぁ、吐血して倒れかけたのが昨日の今日の話なのだから、当たり前だ。

 だからこそ、そんな暇を持て余しているであろう結翔の為に、レンタルショップから彼が好きそうなものを何個か借りてきた。

 

 

 ……選ぶのに一時間以上かかったが、しょうがない。

 なにせ、私は誰かの事を想って物を選んだことがないんだから。

 初めての体験だった。

 こころやあいみは、私に合う物を選ぶ時、こんな感情を持っていたのだろうか? 

 

 

 喜んでくれるか少しだけ不安になって、それでも結翔の笑顔が見れるかもしれないと思うと、楽しくて心がウキウキする。

 色々な初めての感情の応酬だった。

 歩く足が早足になるのも、仕方のない事なのかもしれない。

 

 

 だけど、多分、これが最初の油断だった。

 何時の間にか、私の周りを取り囲むように、魔法少女の反応が現れ始めたのだ。

 一瞬、勘違いかと思ったが違う。

 

 

 妙に統率と連携の取れた動きに加えて、少し離れた所に感じる強い魔力。

 マギウスの翼…か。

 逃げるのは簡単だ。

 透明化を使えば、追うのは困難だろう。

 

 

 しかし、これはチャンスでもある。

 離れた所に感じる強い魔力、少なくとも幹部クラスが一人いる証拠だ。

 捕まえれば、マギウスの翼のアジトを聞き出せる。

 

 

 そう考えた私は、誘い込むように、路地裏への道を進んで行く。

 薄暗く道幅も狭いが…襲うならもってこいの場所。

 取り囲んでいた内の三つの反応が、私に向かって飛んできた。

 急いで魔法少女に変身し、到着順に相手を潰していく。

 

 

 一番目の黒羽根は鉤爪を切り裂くように振り下ろしてきたが、左手に持ったダガーでそれを受け止め、無防備な脇腹に回し蹴りを叩き込む。

 二番目の黒羽根は鎖を利用して私を捕縛しようとしたが、動きが遅い。

 回し蹴りの勢いを使って、向かってくる鎖を地面に踏みつけ、何も持ってない右手で鎖を引っ張り壁に叩き付ける。

 

 

 三番目の黒羽根は、先の二人が瞬殺されたのを見て動揺したのか、鉤爪での攻撃を外したので、可哀想だが後頭部にエルボーを入れて眠らせた。

 

 

 取り敢えず、三人はノーダメージで倒したが…あと四人か。

 しかも、その内の二人は知っている魔力だ。

 ……天音姉妹。

 

 

「黒羽根じゃやっぱり、簡単にはやられちゃうかー」

 

「相手が相手ですから、しょうがないでございます」

 

「でも、私たちなら──」

 

「ええ、私たちなら──」

 

「……御託はいい、早く来なさい」

 

 

 クスクスと笑って現れた二人に、私は挑発するように言った。

 音の攻撃は厄介だが、ここはあの時の場所と違って、反響はしない。

 フィールド的には私が有利な筈だ。

 …なのに、何故だろう。

 

 

 脳が警鐘を鳴らしている。

 体が無意識に走って逃げようとしている。

 不味いと、なんとなく察した。

 透明化で撹乱しようとしたその時、二人が笛に口を付けた。

 

 

『笛花共鳴』

 

 

 刹那、頭の中に直接音が響くような感覚に陥った。

 とても綺麗な音のはずなのに、魔力によって色付けされた魔音とも呼ぶべきそれは、グチャグチャに私の脳を掻き回す。

 痛いとか、苦しいとか、その程度では収まらない。

 

 

 激しい目眩と手足の痺れ、手に持っていたダガーが流れるように滑り落ちた。

 私自身も膝から地面に崩れ落ちる。

 頭が上手く回らない、体が上手く動かない、辺りを見回すことさえままならない。

 

 

 このままじゃ……

 嫌な想像が脳裏を過る。

 ダメだ…ダメだ! 

 私は結翔に託された、託されたんだ。

 

 

 一度逃げて、体制を……立て直さないと。

 透明化を使い、地面を這うように、私はその場からに逃げ出す。

 流石の天音姉妹も透明化した私に魔音を当てるのは難しいのか、段々と体の自由が戻ってきて、何とか立ち上がり壁を伝うように離れて行く。

 

 

 ……良かった、借りてきたDVDやBlu-rayたちは無事だ。

 折角借りてきたんだ、置いていく訳にはいかない。

 自分が持った物まで透明化出来るなんて、そんな都合の良い固有魔法で助かった。

 

 

 少しでも気分を楽にする為、態と脳天気なことを考えて、路地裏を進む。

 あと少し、あと少しで、表道に出られる。

 ある程度距離を離せた事を確認し、私は透明化を解除した。

 便利な透明化だが、表道をそのまま歩く訳にはいかない。

 

 

 もし、今の状態で一般人にぶつかれば、簡単に透明化が解けてしまうからだ。

 一応、もう一度反応を確認してから、魔法少女の変身も解いて、私は動き出す。

 やけに人通りが少ないが、気にしている余裕はない。

 

 

 何故なら、逃げ切れた実感はあったが、それ以上に嫌な予感がしたからだ。

 態々、幹部クラスまで引っ張てきて、こんなに簡単に私を逃がすだろうか? 

 仮に、私が敵だったらそんな事しない。

 

 

 少なくとも、逃げる所までは想定内として、もう一つの罠を──まさか!? 

 私は再度変身し、そこら辺に落ちていた小石を、適当な方向に全力で投げる。

 少し間を置いてから、『ガキン!』と、石を投げた方向から音が聞こえた。

 …どうやら、嫌な予感は的中したようだ。

 

 

「……冗談、だったら笑えたのにね」

 

「残念ですが、そうではありません。…ここはもう、アリナの作った結界の中。先程まで居た少ない人影は、ワタシが作った幻です」

 

「ゲームオーバー…かしら」

 

「はい」

 

 

 きっと、ここで一言、助けてと言えば結翔は飛んで来たのかもしれない。

 だけど、私はそれを出来なかった。

 託して貰えた私が、約束を交わした私が、助けてもらうなんてお門違いじゃないかと、そう思ったから。

 

 

 そして、それ以上に、私は驕っていたんだ。

 自分一人でもなんとかなると。

 ……結果は惨敗だった。

 

 

 ──結翔──

 

 未だに帰ってこないまさら、もう夜も九時を回っている。

 行くと言っていたレンタルショップに話を聞きに行ったが、店員さん曰く五時前には店を出ていたと言う。

 

 

 探せる所は全て見て回ったが手掛かりは0。

 お手上げだ、千里眼が使えれば別だが、生憎な事に魔眼は封印中。

 全く以てタイミングが悪い。

 

 

「ったく。どこに行ったんだ、まさらの奴」

 

「──ここよ」

 

「っ!? おまっ!? いや、どっから湧いてきた!!」

 

「用があったのよ。帰るのが遅れた」

 

「用があったって……。あのなぁ、一本電話入れるくらいできただろ?」

 

 

 俺の抗議を無視し、まさらはずんずんと先に進んで行く。

 カチンと来た俺は、彼女の肩を掴んで動きを止めようとしたが、何時の間にか俺の視界は反転していた。

 そして、一拍遅れて背中に激痛が走る。

 

 

 痛い…痛いけど、そうじゃない。

 今、コイツはどうやって俺を投げた? 

 …殆ど体を動かしてるようには見えなかった。

 

 

「お、おい、まさら。これはやり過ぎだろ、滅茶苦茶背中に痛てぇんだけど」

 

「自業自得よ。勝手に触らないで」

 

 

 氷のように冷たい視線が俺に向けられる。

 心底、俺の事をどうでもいいと思っている目だ。

 …何か可笑しい、いつものまさらじゃない。

 

 

 少しだけ気になった俺は、躊躇いを感じながらも、魔力を探った。

 そしたら、本来ならまさらから感じる事のない魔力反応が出てくる。

 

 

 それは──ウワサの魔力だった。

 




 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 感想や評価、お気に入り登録もお待ちしております!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。