無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 結翔「前回までの『無少魔少』。まさらがマギウスの連中にやられて、帰って来た思ったら冷たい昔のまさらに戻ってたって話」

 まさら「変わらないざっくりとしたあらすじ紹介ありがとう」

 結翔「すげぇな、ありがとうから感謝の念を感じないぞ」

 まさら「良かったじゃない」

 こころ「…どこら辺が良いのかな?」

 ももこ「…修羅場な空気を感じるが、皆さんは六十四話をどうぞ!」


六十四話「見えたのは一端」

 ──結翔──

 

 家に帰ってからも、まさらの態度は変わらず。

 俺より付き合いの長いこころちゃんは、まさらと話さなくても、彼女から放たれる独特の空気で違和感に気付いた。

 一瞬、こっちに視線を送ってきたが、かぶりを振る俺を見て視線をまさらに戻す。

 

 

 何が起こったのか、それが分かるのは現状まさらしか居ない。

 必然的に、まさらに聞くしかないのだ。

 

 

「まさら、何かあった?」

 

「別に。悪いけど、ご飯を食べたらすぐ寝るわ」

 

「…うん。分かった」

 

 

 素っ気ない態度。

 いや、機嫌が悪い時は偶にそうだけど……

 言葉じゃ表現し辛い、違和感と言うかモヤモヤした何かを感じる。

 パクパクと、今日の夕飯であるカレーを表情を変えずに口に放り込む彼女は、動く為に必要なエネルギーを補給する、無感動なロボットのようだ。

 

 

 可哀想な事に、最近増えてきた表情筋の仕事は、あっさりと無くなってしまった。

 それを見たこころちゃんは、どうして良いか分からない、そんな表情でこちらに寄ってくる。

 

 

「…まさら、どうしちゃったんでしょうか?」

 

「さぁ…。俺が会った時には既にこれだったし、原因は……まだ言えないかな」

 

「確かじゃないから…ですか?」

 

「うん。…明日になっても直ってなかったら、本格的に動き始めよう。一応、学校ではまさらの事を──」

 

「見張ってろ、ですね。分かりました」

 

「ごめんね…」

 

 

 親友と言っても良い仲の友人を監視しろなんて、普通は嫌がるだろうに、こころちゃんは笑顔で引き受けてくれた。

 優しい彼女に甘えている自覚は…少しある。

 けど、まだ確定してないのに疑う訳にはいかない。

 

 

 少しウワサの魔力を感じたから、だから何かあったと決め付ける。

 …だから、ウワサに呑まれてるかもと決め付ける。

 そんな事してたら、魔女裁判のように仲間同士で傷付け合い、最悪殺し合う可能性だって無くはない。

 

 

 考えを纏め、自分の中で結論を出す。

 もう、夜も遅い。

 一夜待ってダメだったらその時点で調査に乗り出す。

 

 

 決定した事を頭の中で反芻させながら、食事を取りもしもの段取りを考える。

 まだ見ぬ明日を待ち遠しく感じるのは、慣れた感覚だが…少しだけ恐ろしい。

 

 

「ごちそうさま」

 

 

 そう言って、食べ終えた食器を片付けたら、パッパとシャワーを浴びて自室に戻る。

 夏でもないのに、その日はやけに寝辛く感じた。

 

 

 ───────────────────────

 

 夜が明けた、鬼が出るか蛇が出るか…。

 俺は寝間着から制服に着替え、バックを持って下に降りる。

 辿り着いたリビングのドアの前で、俺は一瞬止まってしまった。

 

 

 止まった理由は…声が聞こえたから。

 …幻聴ではない、心が弾んでいるような高い声。

 こころちゃんかと思ったが、声質が違う。

 そう、どちらかと言うと、まさらの声質に近い。

 

 

 物凄く、嫌な予感がしたが…開けない訳には行かなかった。

 意を決して中に入ると、そこには──

 

 

「おっはー結翔! 今日は遅いね〜? そろそろ時間ヤバいよ!?」

 

「…だな、早く朝ご飯食べるか」

 

「賛成〜!!」

 

 

 今まで見た事のないような、満面の笑みを浮かべるまさらが居た。

 ……いや、可笑し過ぎる。

 表情筋の仕事が増えてきたと思っていたが、流石にこれは増え過ぎだ。

 ブラック臭がプンプンする。

 

 

 しかも、昨日との態度の差がありすぎて、色々と振り切れている。

 こころちゃんに目をやるが、昨日の俺と同じくかぶりを振っていた。

 …朝起きたらこれ、と言う訳か。

 

 

 コミニケーションは取れるようになったが、これはこれで違和感があり過ぎてヤバイ。

 その後、若干困惑しながらも朝食を終えた、俺とまさらたちはそれぞれの学校へ向かった。

 

 

 どうしてか、今日は運良く体の調子が良い。

 右眼は……お察し通り視界不良だが、特に問題はない。

 なので、取り敢えず、俺は早速動き出すことにした。

 

 

 学校に着いたら、いろはちゃんたちに一斉メールを送り、お昼休みに集まってもらうよう伝える。

 それが終わると、次に昨日の内に決めていた行動内容を振り返った。

 

 

 最初に、お昼休みに集まったメンバーにまさらの現状を話し、ウワサの魔力を感じた件も伝える。

 次に、それぞれから意見を貰い、今後のまさらへの対処を考える。

 ウワサの一部になった鶴乃を助ける時は、思いを通じ合わせると言う方法で上手くいったが、まさらにそれが通じるか分からない。

 

 

 そもそも、まさらがどう言う状況なのかも、未だにハッキリしてないのだ。

 唯一分かるのが、ウワサの魔力を感じたと言う事だけ。

 

 

 当面は尻尾を出すまで監視、監禁なんて以ての外だ。

 だけど、もし、ウワサに操られて一般人への被害を出した場合、俺はアイツをどうすればいいか分からない。

 力づくにでもウワサを引き剥がす? 

 …ダメだ、それでまさらが死んだら元も子もない。

 

 

 ぐるぐると頭を回る問題に、俺は答えを出すことが出来ない。

 そして、時間はあっという間に過ぎて、お昼休みにになっていた。

 隣の席に居るももこに声を掛けられて、ようやく意識が現在に戻ってくる。

 

 

 弁当を持って中庭に行くと、いつもの面々が既に集まっていた。

 いろはちゃん、かえで、レナ、鶴乃の四人だ。

 俺はその場に着くなり、早口になりながらも現状を話す。

 

 

「まさらちゃんが可笑しい…ねぇ。アタシらには分かんない問題なんじゃないか?」

 

「いや、お前らでも分かる。昨日から──」

 

 

 話の最初は疑っていたももこも進むにつれて、苦い表情に顔色を変え、他の面々も重苦しい表情に変わる。

 

 

「それは…可笑しいね」

 

「はい。ウワサの魔力も感じたって事は…ウワサが絡んでる可能性が高いですよね?」

 

「いろはがそう言うなら、そうなんじゃないの? レナやかえではそこら辺、詳しくないわよ?」

 

「うん、ユウトくんの力にはあんまりなれないかも…」

 

「…それ言われると、アタシもあんまりだな」

 

「そうか……」

 

 

 前途多難だな、意見があんまり出てきそうにない。

 ため息をはつきたい気持ちを我慢し、監視以外の案を考える。

 この少ないヒントから、ウワサの一端が見えれば、対応出来る可能性もあるんだけどな……

 

 

 揃って頭を悩ませる中、鶴乃とももこがポツリと呟いた。

 

 

「にしても、なんか猫っぽいよな。…まぁ、前々からそんな所はあったけど」

 

「あぁー。ももこの言いたい事、なんとなく分かるよ。気分屋って言うか気まぐれって言うか…まさらちゃんは猫っぽいよね」

 

「猫っぽい? …言われてみれば、確かに猫っぽいな。気分屋…と言うかどこか気まぐれな感じはする」

 

 

 興味を示した事には一直線で、それに飛び付くし。

 それ以外の事にとことん無関心。

 気まぐれ、そんな言葉が似合わなくも──

 

 

「あ」

 

 

 まさか、気まぐれ、気まぐれが答えか? 

 …昨日の夜の態度から、朝になって振り切るように変わったのも、気まぐれな性質が如実に現れたから? 

 

 

 じゃあ、アイツに関わっているウワサの正体は──俺が倒した筈の『気まぐれアサシンのウワサ』…なのか。

 …辻褄は合わないことはないし、こころちゃんの件で、倒した筈のウワサを復活させることが出来るのも分かっている。

 

 

 対処法が見えてきたぞ!! 

 あのウワサが相手なら狙うのは夜だ。

 依頼書をどこから貰って誰を消すかは分からないが…尾行すれば無問題。

 

 

「ナイス! ナイスだ! 鶴乃にももこ!! よっし、これでなんとかなる!」

 

「い、いきなりなんだよ? と言うより、何が分かったのか説明しろよ!?」

 

「そ、そうだよ! 褒められのは嬉しいけど、わたしたちは全然わかんないよ!!」

 

 

 二人の声を聞き流しながら、俺は考える。

 確証はないが、ほぼ決まりに近いウワサの正体と……その対応。

 ウワサからの解放方法は分からないが、やるしかない。

 

 

 出たとこ勝負はいつもの事だ。

 




 次回もお楽しみに!

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