まさら「変わらないざっくりとしたあらすじ紹介ありがとう」
結翔「すげぇな、ありがとうから感謝の念を感じないぞ」
まさら「良かったじゃない」
こころ「…どこら辺が良いのかな?」
ももこ「…修羅場な空気を感じるが、皆さんは六十四話をどうぞ!」
──結翔──
家に帰ってからも、まさらの態度は変わらず。
俺より付き合いの長いこころちゃんは、まさらと話さなくても、彼女から放たれる独特の空気で違和感に気付いた。
一瞬、こっちに視線を送ってきたが、かぶりを振る俺を見て視線をまさらに戻す。
何が起こったのか、それが分かるのは現状まさらしか居ない。
必然的に、まさらに聞くしかないのだ。
「まさら、何かあった?」
「別に。悪いけど、ご飯を食べたらすぐ寝るわ」
「…うん。分かった」
素っ気ない態度。
いや、機嫌が悪い時は偶にそうだけど……
言葉じゃ表現し辛い、違和感と言うかモヤモヤした何かを感じる。
パクパクと、今日の夕飯であるカレーを表情を変えずに口に放り込む彼女は、動く為に必要なエネルギーを補給する、無感動なロボットのようだ。
可哀想な事に、最近増えてきた表情筋の仕事は、あっさりと無くなってしまった。
それを見たこころちゃんは、どうして良いか分からない、そんな表情でこちらに寄ってくる。
「…まさら、どうしちゃったんでしょうか?」
「さぁ…。俺が会った時には既にこれだったし、原因は……まだ言えないかな」
「確かじゃないから…ですか?」
「うん。…明日になっても直ってなかったら、本格的に動き始めよう。一応、学校ではまさらの事を──」
「見張ってろ、ですね。分かりました」
「ごめんね…」
親友と言っても良い仲の友人を監視しろなんて、普通は嫌がるだろうに、こころちゃんは笑顔で引き受けてくれた。
優しい彼女に甘えている自覚は…少しある。
けど、まだ確定してないのに疑う訳にはいかない。
少しウワサの魔力を感じたから、だから何かあったと決め付ける。
…だから、ウワサに呑まれてるかもと決め付ける。
そんな事してたら、魔女裁判のように仲間同士で傷付け合い、最悪殺し合う可能性だって無くはない。
考えを纏め、自分の中で結論を出す。
もう、夜も遅い。
一夜待ってダメだったらその時点で調査に乗り出す。
決定した事を頭の中で反芻させながら、食事を取りもしもの段取りを考える。
まだ見ぬ明日を待ち遠しく感じるのは、慣れた感覚だが…少しだけ恐ろしい。
「ごちそうさま」
そう言って、食べ終えた食器を片付けたら、パッパとシャワーを浴びて自室に戻る。
夏でもないのに、その日はやけに寝辛く感じた。
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夜が明けた、鬼が出るか蛇が出るか…。
俺は寝間着から制服に着替え、バックを持って下に降りる。
辿り着いたリビングのドアの前で、俺は一瞬止まってしまった。
止まった理由は…声が聞こえたから。
…幻聴ではない、心が弾んでいるような高い声。
こころちゃんかと思ったが、声質が違う。
そう、どちらかと言うと、まさらの声質に近い。
物凄く、嫌な予感がしたが…開けない訳には行かなかった。
意を決して中に入ると、そこには──
「おっはー結翔! 今日は遅いね〜? そろそろ時間ヤバいよ!?」
「…だな、早く朝ご飯食べるか」
「賛成〜!!」
今まで見た事のないような、満面の笑みを浮かべるまさらが居た。
……いや、可笑し過ぎる。
表情筋の仕事が増えてきたと思っていたが、流石にこれは増え過ぎだ。
ブラック臭がプンプンする。
しかも、昨日との態度の差がありすぎて、色々と振り切れている。
こころちゃんに目をやるが、昨日の俺と同じくかぶりを振っていた。
…朝起きたらこれ、と言う訳か。
コミニケーションは取れるようになったが、これはこれで違和感があり過ぎてヤバイ。
その後、若干困惑しながらも朝食を終えた、俺とまさらたちはそれぞれの学校へ向かった。
どうしてか、今日は運良く体の調子が良い。
右眼は……お察し通り視界不良だが、特に問題はない。
なので、取り敢えず、俺は早速動き出すことにした。
学校に着いたら、いろはちゃんたちに一斉メールを送り、お昼休みに集まってもらうよう伝える。
それが終わると、次に昨日の内に決めていた行動内容を振り返った。
最初に、お昼休みに集まったメンバーにまさらの現状を話し、ウワサの魔力を感じた件も伝える。
次に、それぞれから意見を貰い、今後のまさらへの対処を考える。
ウワサの一部になった鶴乃を助ける時は、思いを通じ合わせると言う方法で上手くいったが、まさらにそれが通じるか分からない。
そもそも、まさらがどう言う状況なのかも、未だにハッキリしてないのだ。
唯一分かるのが、ウワサの魔力を感じたと言う事だけ。
当面は尻尾を出すまで監視、監禁なんて以ての外だ。
だけど、もし、ウワサに操られて一般人への被害を出した場合、俺はアイツをどうすればいいか分からない。
力づくにでもウワサを引き剥がす?
…ダメだ、それでまさらが死んだら元も子もない。
ぐるぐると頭を回る問題に、俺は答えを出すことが出来ない。
そして、時間はあっという間に過ぎて、お昼休みにになっていた。
隣の席に居るももこに声を掛けられて、ようやく意識が現在に戻ってくる。
弁当を持って中庭に行くと、いつもの面々が既に集まっていた。
いろはちゃん、かえで、レナ、鶴乃の四人だ。
俺はその場に着くなり、早口になりながらも現状を話す。
「まさらちゃんが可笑しい…ねぇ。アタシらには分かんない問題なんじゃないか?」
「いや、お前らでも分かる。昨日から──」
話の最初は疑っていたももこも進むにつれて、苦い表情に顔色を変え、他の面々も重苦しい表情に変わる。
「それは…可笑しいね」
「はい。ウワサの魔力も感じたって事は…ウワサが絡んでる可能性が高いですよね?」
「いろはがそう言うなら、そうなんじゃないの? レナやかえではそこら辺、詳しくないわよ?」
「うん、ユウトくんの力にはあんまりなれないかも…」
「…それ言われると、アタシもあんまりだな」
「そうか……」
前途多難だな、意見があんまり出てきそうにない。
ため息をはつきたい気持ちを我慢し、監視以外の案を考える。
この少ないヒントから、ウワサの一端が見えれば、対応出来る可能性もあるんだけどな……
揃って頭を悩ませる中、鶴乃とももこがポツリと呟いた。
「にしても、なんか猫っぽいよな。…まぁ、前々からそんな所はあったけど」
「あぁー。ももこの言いたい事、なんとなく分かるよ。気分屋って言うか気まぐれって言うか…まさらちゃんは猫っぽいよね」
「猫っぽい? …言われてみれば、確かに猫っぽいな。気分屋…と言うかどこか気まぐれな感じはする」
興味を示した事には一直線で、それに飛び付くし。
それ以外の事にとことん無関心。
気まぐれ、そんな言葉が似合わなくも──
「あ」
まさか、気まぐれ、気まぐれが答えか?
…昨日の夜の態度から、朝になって振り切るように変わったのも、気まぐれな性質が如実に現れたから?
じゃあ、アイツに関わっているウワサの正体は──俺が倒した筈の『気まぐれアサシンのウワサ』…なのか。
…辻褄は合わないことはないし、こころちゃんの件で、倒した筈のウワサを復活させることが出来るのも分かっている。
対処法が見えてきたぞ!!
あのウワサが相手なら狙うのは夜だ。
依頼書をどこから貰って誰を消すかは分からないが…尾行すれば無問題。
「ナイス! ナイスだ! 鶴乃にももこ!! よっし、これでなんとかなる!」
「い、いきなりなんだよ? と言うより、何が分かったのか説明しろよ!?」
「そ、そうだよ! 褒められのは嬉しいけど、わたしたちは全然わかんないよ!!」
二人の声を聞き流しながら、俺は考える。
確証はないが、ほぼ決まりに近いウワサの正体と……その対応。
ウワサからの解放方法は分からないが、やるしかない。
出たとこ勝負はいつもの事だ。
次回もお楽しみに!
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