無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 こころ「前回までの『無少魔少』。皆さんとの話し合いで、結翔さんがウワサの一端を掴んだって話ですね」

 結翔「一歩前進だな」

 まさら「ここからどうなるのかしら?」

 ももこ「それ…まさらちゃんが言うセリフじゃなくないか?」

 鶴乃「だね…。なんと言うか、それじゃない感がハンパないよ!?」

 結翔「まぁまぁ。セリフは作者が考えてるんだから仕方ないでしょ?」

 こころ「…メタいなぁ。…み、皆さんは楽しんで六十五話をどうぞ!」


六十五話「零度の殺意」

 ──結翔──

 

 夜、月明かりと街灯だけが頼りになる時間。

 何も言わず外に繰り出したまさらを、俺は追い掛ける。

 尾行……と言うよりストーカー紛いの行為な気がして、少しの罪悪感を感じるが、割り切るしかないだろう。

 

 

 間違っても、そんな感情に引かれて足を止めてはいけない。

 

 

「…被害者が出た後じゃ、遅いもんな」

 

 

 一応、俺の存在には気付いてないのか、はたまた気付かないフリをしているのか、彼女はさっさと歩いて行く。

 魔法少女に変身することもなければ、ウワサの力の一端を見せることもない。

 

 

 宛が外れた可能性を脳裏に浮かべながらも尾行を続けていると、不意に視界からまさらが消えた。

 …ちくしょう! 

 固有の能力の事を──固有魔法の事を考えてなかった。

 

 

 今から魔力を探った所で、追うのは不可能に近いし…手詰まりか。

 でも、固有魔法まで使って消えたんなら、黒の可能性は高い。

 もう一つ、もう一つ、確かな証拠があれば、問い詰めて吐き出させる事も難しくない筈だ。

 

 

 様子見で……一旦戻るか。

 辺りを散策しても無意味な事は分かってる。

 …事務所に行って、監視カメラの映像を逐一監視するのが関の山。

 被害者が出る、そんな最悪が現実味を帯びてきた。

 

 

 ため息を吐きたい気持ちをグッと抑えて、事務所へと歩を進める。

 ──そんな時だった。

 首筋に強烈な寒気が走り、脊髄反射で体をひねる。

 恐ろしい程に冷たい、零度の殺意。

 

 

 すんでのところで躱す事に成功したが、目の前に現れた存在に俺は言葉を失っていた。

 人と呼ぶにはあまりにも不定形で、怪物と呼ぶには可笑しい程に繊細な形。

 乱れた映像のように、体中にモザイクが掛かっており、容姿から人物を特定できない。

 

 

 加えて、魔力の反応を伺っても、魔法少女かウワサかすら判別不可能ときた。

 もし、目の前にいるコイツがまさらで、今の姿が気まぐれアサシンのウワサを纏った状態だとしても、俺はそれを証明ができない。

 

 

 だけど、ここでコイツを倒せれば、証明できる。

 交戦する価値は…ある筈だ。

 

 

 すぐさま魔法少女に変身し、構える。

 相手も俺の交戦する意思が分かったからか、獲物を構えた。

 短剣……いや、ダガーか…? 

 何も分かってなくても…これだけでヒントになるって事だな。

 

 

 まぁ、最悪なヒントだけどな…趣味が悪い。

 人間性をどこかに放り捨ててきたんじゃないか、全く。

 悪態をついてやりたい気持ちを我慢し、篭手を魔力で編む。

 敵だと割り切れれば楽だが、相手はまさらの可能性が高い。

 それは、無理な話だ。

 

 

 お互いに、一歩づつ距離を詰めながら間合いを伺う。

 あっちの方が、少し間合いが広いが、誤差の範囲内だ。

 接近戦になったら拳もダガーもそこまで大差はない。

 詰めて、詰めて、詰めて。

 

 

 お互いの距離が二メートルを切った瞬間、尋常ではないスピードで奴に……背後を取られた。

 先程と同じく、首筋を狙った横振りの斬撃を、俺は屈んで躱す。

 髪の毛が数本散ったのが見えた。

 

 

 タイミングはギリギリだったらしい。

 嫌な冷や汗が背中を伝う。

 同じ攻撃を二度食らう事になるとは……油断してたのか? 

 …いや、違う。

 

 

 油断はしてなかった、寧ろ、今までで一番警戒していた筈だ。

 何せ、まさらだったら、いきなり消えるかもしれないんだから。

 背後に意識を回していない筈がない。

 

 

 それでも…それでも反応できない程に、奴は速かった。

 魔眼が封印された所為で、右眼の視界はあまり良くなかった…良くなかったが、捉えられないなんて……

 偽善者の姿(フェイカーフォーム)でこれなら、屑の姿(ルーザーフォーム)じゃお話にならないな。

 

 

 自嘲的な笑みを浮かべながらも、俺は背後に居るであろう奴に足払いをかける。

 だが、奴は既にバックステップで下がっていた為、足払いは空を切る。

 屈んでいた体を起こし、もう一度向き合う。

 

 

 さっきのは、多分そう何度も回避出来ない。

 連続でやられたら不利になる一方だ。

 …だからこそ、攻めるしかない!! 

 

 

 全力で踏み込み、間合いを詰める。

 一瞬にして0になった距離に驚く奴の腹に、俺は掌底を叩き込んだ。

 入った感覚は確かにあった…それなのに、奴は微動打にしていない。

 それどころか、お腹をさすって「今、何かしたのか?」と、言わんばかりの視線を返してきた。

 

 

 冗談キツイぜ。

 魔力で属性を付与した攻撃じゃなかったにしても、普通なら吹っ飛んで即気絶の威力があった筈だ。

 なのに、ピンピンしてる。

 ダメージが入った様子も全く以てない。

 

 

 やっぱり……奴が纏ってるのは気まぐれアサシンのウワサか。

 それだったら、俺の攻撃が入らないのも頷ける。

 間違いなく、奴の方が俺より格上だ。

 もし、奴がまさらだとしたら、狙われたから相手をしているが、脅威と見なされてない……眼中に入ってない事になるし、諸々の辻褄も合ってくる。

 

 

「厄介だな…お前」

 

「……………………」

 

「気まぐれに、一言くらい喋ってくれても良いんじゃないか?」

 

「……………………」

 

 

 俺の軽口にも反応せず、意義を感じないと言わんばかりの視線を送り返してきた。

 アイコンタクトでやり取りとは、また面倒な。

 バックステップで距離を開けなながらも、俺は奴を見据える。

 

 

 無くならない零度の殺意をそのままに、ダガーを逆手持ちに変えた奴は、刃を覆うように青白い炎を纏わせる。

 蒼炎と言うには、やけに禍々しく感じた。

 

 

 一歩も動いていないのに、ジリジリと距離を詰められているような錯覚を覚える。

 倒すと言う考えは、既に俺の頭から無くなっていた。

 今は、どう立ち回り逃げ切るかを、必死で考えている。

 

 

 負けたら、その時点でゲームオーバー。

 うわさの内容通り消される事だろう。

 全神経を集中させて、目の前に居る奴を見つめる。

 

 

 一分、二分、三分……何も起こらず時間だけが過ぎていく。

 幻覚でも見せられているのか、俺がそう疑った時、無事だった筈の左眼の視界ともどもぐにゃりと歪む。

 訳は……すぐに分かった、皺寄せだ。

 今日は朝から調子が良かった、右眼の視界もそこまで酷くはなかった、その分の皺寄せが今来たのだ。

 

 

 体から力が抜けていき、頭を酷い痛みが襲う。

 トンカチやバットで殴られたような、ガンガンと脳まで響く痛みだ。

 平衡感覚もどこかへ流れて行き、立ってさえいられなくなる。

 不味い、不味い不味い不味いっ!? 

 

 

 気を失ったらその時点でアウトだ! 

 耐えろ、耐えろ、耐えろ!! 

 ここじゃ…終われ……ないだろ! 

 

 

 震える体に鞭を打ち、無理矢理に立ち上がらせる。

 

 

「…はぁ……はぁ…」

 

「……Finale(終わり)よ」

 

 

 だけど、モザイク処理された声を聞いたのが、俺の最後の記憶になってしまった。

 

 

 ──まさら──

 

 目の前で眠る彼を、私は抱き上げて運ぶ。

 マギウスの連中には、彼を──結翔を見つけて倒し次第消せと言われたが、私は気まぐれアサシンのウワサ、消す対象は私が決める。

 誰の指図も受けないし、受ける気もない。

 

 

 うわさの内容をただ遂行する。

 受け取った依頼書を読み、気まぐれに、依頼者か依頼書に書かれた人間を消す。

 ただそれだけだ。

 

 

 強者である私が、弱者を甚振る事に意義を感じえないが、しょうがない。

 それがうわさを守るウワサの役目なのだから。

 …自分にそう言い聞かせるように、私は彼を家に運んだ。

 適当にソファに眠らせて、寝顔を見つめる。

 

 

 とても苦しそうな顔を……していた。

 …ここで消してあげれば楽になるのでは? 

 一番嫌な行動が脳裏に浮かび、即座にそれをかき消した。

 

 

「貴方が消えるのは今じゃない」

 

 

 約束は果たす。

 ウワサに自我を完全に喰われても、ウワサにどこまでも私を侵食されようとも、それだけは違えない。

 

 

 貴方と交した、信頼の約束()だけは……必ず守ってみせる。

 

 

 だから、どうかお願い。

 私を──助けて(殺して)

 




 来週から学校が始まる為、週一投稿になる事が予想されます。
 気長に待って頂ければ幸いです。

 次回もお楽しみに!

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