結翔「一歩前進だな」
まさら「ここからどうなるのかしら?」
ももこ「それ…まさらちゃんが言うセリフじゃなくないか?」
鶴乃「だね…。なんと言うか、それじゃない感がハンパないよ!?」
結翔「まぁまぁ。セリフは作者が考えてるんだから仕方ないでしょ?」
こころ「…メタいなぁ。…み、皆さんは楽しんで六十五話をどうぞ!」
──結翔──
夜、月明かりと街灯だけが頼りになる時間。
何も言わず外に繰り出したまさらを、俺は追い掛ける。
尾行……と言うよりストーカー紛いの行為な気がして、少しの罪悪感を感じるが、割り切るしかないだろう。
間違っても、そんな感情に引かれて足を止めてはいけない。
「…被害者が出た後じゃ、遅いもんな」
一応、俺の存在には気付いてないのか、はたまた気付かないフリをしているのか、彼女はさっさと歩いて行く。
魔法少女に変身することもなければ、ウワサの力の一端を見せることもない。
宛が外れた可能性を脳裏に浮かべながらも尾行を続けていると、不意に視界からまさらが消えた。
…ちくしょう!
固有の能力の事を──固有魔法の事を考えてなかった。
今から魔力を探った所で、追うのは不可能に近いし…手詰まりか。
でも、固有魔法まで使って消えたんなら、黒の可能性は高い。
もう一つ、もう一つ、確かな証拠があれば、問い詰めて吐き出させる事も難しくない筈だ。
様子見で……一旦戻るか。
辺りを散策しても無意味な事は分かってる。
…事務所に行って、監視カメラの映像を逐一監視するのが関の山。
被害者が出る、そんな最悪が現実味を帯びてきた。
ため息を吐きたい気持ちをグッと抑えて、事務所へと歩を進める。
──そんな時だった。
首筋に強烈な寒気が走り、脊髄反射で体をひねる。
恐ろしい程に冷たい、零度の殺意。
すんでのところで躱す事に成功したが、目の前に現れた存在に俺は言葉を失っていた。
人と呼ぶにはあまりにも不定形で、怪物と呼ぶには可笑しい程に繊細な形。
乱れた映像のように、体中にモザイクが掛かっており、容姿から人物を特定できない。
加えて、魔力の反応を伺っても、魔法少女かウワサかすら判別不可能ときた。
もし、目の前にいるコイツがまさらで、今の姿が気まぐれアサシンのウワサを纏った状態だとしても、俺はそれを証明ができない。
だけど、ここでコイツを倒せれば、証明できる。
交戦する価値は…ある筈だ。
すぐさま魔法少女に変身し、構える。
相手も俺の交戦する意思が分かったからか、獲物を構えた。
短剣……いや、ダガーか…?
何も分かってなくても…これだけでヒントになるって事だな。
まぁ、最悪なヒントだけどな…趣味が悪い。
人間性をどこかに放り捨ててきたんじゃないか、全く。
悪態をついてやりたい気持ちを我慢し、篭手を魔力で編む。
敵だと割り切れれば楽だが、相手はまさらの可能性が高い。
それは、無理な話だ。
お互いに、一歩づつ距離を詰めながら間合いを伺う。
あっちの方が、少し間合いが広いが、誤差の範囲内だ。
接近戦になったら拳もダガーもそこまで大差はない。
詰めて、詰めて、詰めて。
お互いの距離が二メートルを切った瞬間、尋常ではないスピードで奴に……背後を取られた。
先程と同じく、首筋を狙った横振りの斬撃を、俺は屈んで躱す。
髪の毛が数本散ったのが見えた。
タイミングはギリギリだったらしい。
嫌な冷や汗が背中を伝う。
同じ攻撃を二度食らう事になるとは……油断してたのか?
…いや、違う。
油断はしてなかった、寧ろ、今までで一番警戒していた筈だ。
何せ、まさらだったら、いきなり消えるかもしれないんだから。
背後に意識を回していない筈がない。
それでも…それでも反応できない程に、奴は速かった。
魔眼が封印された所為で、右眼の視界はあまり良くなかった…良くなかったが、捉えられないなんて……
自嘲的な笑みを浮かべながらも、俺は背後に居るであろう奴に足払いをかける。
だが、奴は既にバックステップで下がっていた為、足払いは空を切る。
屈んでいた体を起こし、もう一度向き合う。
さっきのは、多分そう何度も回避出来ない。
連続でやられたら不利になる一方だ。
…だからこそ、攻めるしかない!!
全力で踏み込み、間合いを詰める。
一瞬にして0になった距離に驚く奴の腹に、俺は掌底を叩き込んだ。
入った感覚は確かにあった…それなのに、奴は微動打にしていない。
それどころか、お腹をさすって「今、何かしたのか?」と、言わんばかりの視線を返してきた。
冗談キツイぜ。
魔力で属性を付与した攻撃じゃなかったにしても、普通なら吹っ飛んで即気絶の威力があった筈だ。
なのに、ピンピンしてる。
ダメージが入った様子も全く以てない。
やっぱり……奴が纏ってるのは気まぐれアサシンのウワサか。
それだったら、俺の攻撃が入らないのも頷ける。
間違いなく、奴の方が俺より格上だ。
もし、奴がまさらだとしたら、狙われたから相手をしているが、脅威と見なされてない……眼中に入ってない事になるし、諸々の辻褄も合ってくる。
「厄介だな…お前」
「……………………」
「気まぐれに、一言くらい喋ってくれても良いんじゃないか?」
「……………………」
俺の軽口にも反応せず、意義を感じないと言わんばかりの視線を送り返してきた。
アイコンタクトでやり取りとは、また面倒な。
バックステップで距離を開けなながらも、俺は奴を見据える。
無くならない零度の殺意をそのままに、ダガーを逆手持ちに変えた奴は、刃を覆うように青白い炎を纏わせる。
蒼炎と言うには、やけに禍々しく感じた。
一歩も動いていないのに、ジリジリと距離を詰められているような錯覚を覚える。
倒すと言う考えは、既に俺の頭から無くなっていた。
今は、どう立ち回り逃げ切るかを、必死で考えている。
負けたら、その時点でゲームオーバー。
うわさの内容通り消される事だろう。
全神経を集中させて、目の前に居る奴を見つめる。
一分、二分、三分……何も起こらず時間だけが過ぎていく。
幻覚でも見せられているのか、俺がそう疑った時、無事だった筈の左眼の視界ともどもぐにゃりと歪む。
訳は……すぐに分かった、皺寄せだ。
今日は朝から調子が良かった、右眼の視界もそこまで酷くはなかった、その分の皺寄せが今来たのだ。
体から力が抜けていき、頭を酷い痛みが襲う。
トンカチやバットで殴られたような、ガンガンと脳まで響く痛みだ。
平衡感覚もどこかへ流れて行き、立ってさえいられなくなる。
不味い、不味い不味い不味いっ!?
気を失ったらその時点でアウトだ!
耐えろ、耐えろ、耐えろ!!
ここじゃ…終われ……ないだろ!
震える体に鞭を打ち、無理矢理に立ち上がらせる。
「…はぁ……はぁ…」
「……
だけど、モザイク処理された声を聞いたのが、俺の最後の記憶になってしまった。
──まさら──
目の前で眠る彼を、私は抱き上げて運ぶ。
マギウスの連中には、彼を──結翔を見つけて倒し次第消せと言われたが、私は気まぐれアサシンのウワサ、消す対象は私が決める。
誰の指図も受けないし、受ける気もない。
うわさの内容をただ遂行する。
受け取った依頼書を読み、気まぐれに、依頼者か依頼書に書かれた人間を消す。
ただそれだけだ。
強者である私が、弱者を甚振る事に意義を感じえないが、しょうがない。
それがうわさを守るウワサの役目なのだから。
…自分にそう言い聞かせるように、私は彼を家に運んだ。
適当にソファに眠らせて、寝顔を見つめる。
とても苦しそうな顔を……していた。
…ここで消してあげれば楽になるのでは?
一番嫌な行動が脳裏に浮かび、即座にそれをかき消した。
「貴方が消えるのは今じゃない」
約束は果たす。
ウワサに自我を完全に喰われても、ウワサにどこまでも私を侵食されようとも、それだけは違えない。
貴方と交した、信頼の
だから、どうかお願い。
私を──
来週から学校が始まる為、週一投稿になる事が予想されます。
気長に待って頂ければ幸いです。
次回もお楽しみに!
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