無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 結翔「前回までの『無少魔少』。みふゆさんとマギウスの間での溝が分かったり、調整屋でまさらが纏ってるウワサについて話したりしたな」

 まさら「投稿頻度が激減して、みんなも覚えてないから。このテキトーなあらすじも少しは役に立つわね」

 しぃ「ひ…酷い言われよう。学校あるんだししょうがないじゃん」

 こころ「知ってますよ?家に帰ってきてからの空いた時間、疲れた〜とか言いながらゲームやってるの?」

 しぃ「うっ!」

 ももこ「しぃが最近忙しく、て投稿頻度が落ちてるけど、ゆっくり待っててくれ。それじゃ、六十七話をどうぞ!」



六十七話「光の豪炎と闇の蒼炎」

 ──結翔──

 

 夜、月明かりと街灯だけが頼りになる闇の時間。

 つい数分前に出ていったまさらを追うように、俺も家を出る。

 正直、泣きついて止めようとしたこころちゃんを、振り払って来たのは辛い。

 

 

 だって、しょうがないじゃないか。

 今のアイツに敵うのは、この街で俺しか居ない。

 即ち、俺しかアイツを──まさらを倒せない、と言う事だ。

 加えて、こころちゃんにとって、まさらはかけがえのない親友、戦うことなんてきっと出来ない。

 

 

 決め付けだと言われても仕方ないと思うが、事実そうなる事は明白だ。

 生来、俺と同じで、彼女は人を傷付ける事に向いてない。

 時間が経てば経つほど、同種の人間だと分かる。

 だから、置いて来た。

 

 

 それに、負けるとは限らない。

 調整屋で話した事の中には二つの嘘がある。

 一つは『気まぐれアサシンのうわさ』の、能力…と言うより特性の話だ。

 自分が敵だと認識した者以外からの攻撃を通さない、そう言ったが、本来は通さないのではなく極端に通り辛いだけで、一応ダメージは入る。

 ……まぁ、前回は全くダメージが入った様子は見えなかったけどな。

 

 

 そして、もう一つの嘘は、ウワサを倒せる確率が1%あるかないか、って言う話だ。

 …やろうと思えば、俺は確率を五分まで持って行ける。

 命懸けの勝負になるが……いつもの事だ。

 

 

 偽善者の姿(フェイカーフォーム)豪炎の力(バーニングモード)

 過去のヒーローたちの炎の力を、全て借りて成れる一時的な強化フォーム……みたいなもんだ。

 持つ時間はキッカリ三分。

 元々、三分しか戦えないヒーローたちも混じってるから、ちゃんと三分力が持つだけマシだ。

 

 

 …勿論、デメリットはある。

 偽善者の姿(フェイカーフォーム)豪炎の力(バーニングモード)になったら、武器の召喚は不可能になり、三分の力の行使が終わったら強制的に変身解除させられる。

 

 

 体調が絶望的な今の状態で、変身解除させられたら、死ぬのは確定事項だろう。

 でも、方法はこれしかない。

 やらなけきゃ勝てないなら、やるしかないんだ。

 

 

 自分自身にそう言い聞かせながら、まさらの背中を追っていく。

 やがて辿り着いた場所は、いつもの建設放棄地だった。

 

 

「なんだよ、最初っから気付いてたのか?」

 

「後ろを歩かれて、気付かれない方がどうかしてる」

 

「…なるほど、一理あるな」

 

 

 カラカラと笑い、彼女の言葉を流す。

 癪に障ったのか、まさらは既にウワサを纏った状態に変身している。

 …でも、前回までのとは違うな。

 体の所々に青白い炎が点っている。

 まるで、体を守る鎧のように。

 

 

 不気味な感覚が肌に刺さるが、関係ない。

 

 

「変身!!」

 

 

 そう言って、俺も姿を変える。

 俺にとっての『変身』は、理想の自分に──憧れのヒーローになる為の言葉。

 簡単に言えば、今より強い自分になる為の言葉だ。

 

 

 着慣れた、昔の踊り子のような黄色い衣装に身を包むと、赤いラインが引かれていた部分に豪炎が点る。

 それと同時に、まさらと同じように、体の所々に蒼炎が点る。

 

 

 対をなすように向かい合う俺たちは、開始の合図もなしに拳を混じえた。

 恐らく、一発一発がお互いにとって必殺の一撃。

 避けて、受け流して、時には相殺して、防戦をやり過ごし機を見て攻撃に移る。

 

 

 一歩も引けない戦いだった。

 一歩引いた時点で負けが決まるような戦いだった。

 蒼炎と豪炎がぶつかり合い、辺りを熱気が包んでいく。

 

 

 彼女が放つ回し蹴りを屈んで回避し、そこから飛び跳ねるような勢いをつけてアッパーカットを仕掛ける。

 だが、まさらも負けじと、上半身を仰け反らせるような形で俺の攻撃を避ける。

 

 

 チャンスだと思った。

 上半身が仰け反った体制が悪いまさらに、俺は上を取っている。

 飛び跳ねるような勢いをつけたお陰で、地面から軽く二メートルは浮いていたのだ。

 体を捻り、空中で一回転しもう一度勢いをつけ直してから、踵落としを放つ。

 

 

 避けられない事を悟ったのか、まさらは腕をクロスし防御体制を取ったが……甘い。

 それぐらい貫通出来る!! 

 

 

 踵落とし食らったまさらは、体制の悪さから地面に叩き付けられ、全力で背中を打った。

 受け身なんて取れやしない、気絶させる勢いでやったつもりだ。

 なのに、

 

 

「……嘘だろ…マジかよ!?」

 

 

 彼女は起き上がった。

 地面に軽く、クレーターのような陥没地帯が出来ていると言うのに。

 ……ダメージは確実に入っている、それを証明するように、唇の端からチロチロと血を流してるし、動きもどこかぎこちない。

 

 

「そこまでして…何がしたいんだよ、お前は」

 

「……………………」

 

「黙り…か」

 

 

 ウワサを纏っている状態だと、喋れないって事か? 

 ……だったら、一度力づくでウワサを剥がして、話させるしかない。

 丁度、残り時間が一分を切った所だしな…。

 

 

 右手に力を──魔力を集中させる。

 徐々に豪炎が集まっていき、やがて俺の右腕全体を覆っていく。

 

 

「今、終わらせてやる」

 

「……………………」

 

 

 そう言い放つと同時に、俺の拳も放たれる。

 豪炎を纏った拳が、あと少しで当たる、そんな時。

 

 

「………………助けて」

 

「──っ!?」

 

 

 数センチ、あとほんの数センチの所で、俺の拳は止まってしまった。

 どうして……どうして!? 

 今になってその言葉を!! 

 怒りと困惑が混ざり合う中、不意に聞いた事のある声が響く。

 

 

「僕の──いや、僕たちの予想通り。ヒーローさんは手を止めたね」

 

「だねぇー。察すがわたくしたち! アサシンさーん? そのまま追い込んじゃって〜?」

 

「キルしたら許さないカラ?」

 

「……………………」

 

「…どうして、マギウスがここに? っ!? まさか!」

 

 

 急いで、辺りの魔力を探る。

 すると、出るわ出るわ。

 黒羽根や白羽根の判別は少し難しいが、少なくとも十や二十じゃない。

 積み上がったコンテナの上でふんぞり返ってるマギウスと…みふゆさん。

 その後ろには、白羽根が二人控えている。

 十中八九天音姉妹で決まりだろう。

 

 

 やられた……

 囲まれて、逃げ場がない。

 もう、残り時間も僅か。

 強制変身解除なんてさせられたら、確実に死ぬ。

 

 

 まさらが俺を殺さなくても、他の誰かが殺す。

 酷い詰みの仕方だと、我ながら思う。

 用意周到にも程があるよ、全く。

 

 

 だが、そんな状況をどうでもいいと思わせる程の激痛が、体に走った。

 ……クソッタレ、腹に入れられた。

 込み上げる嘔吐感を我慢して蹲っている内に、二回目の攻撃が俺を襲う。

 まさら渾身の前蹴りが、追撃よろしくまた腹に刺さり、後方に吹き飛ばされる。

 

 

 運が良かったのは、マギウスが居る場所とは反対側、建設放棄地の入口側に吹き飛んだ事。

 運が悪かったのは、吹き飛ばされて激突した場所が鉄骨置き場だった事だ。

 

 

 強打した背中と、前蹴りを入れられた腹を襲った耐え難い痛みが、限界の来ていた魔法少女への変身を解除してしまう。

 ……ヤバイな、マジで詰んだかもしれない。

 項垂れながら、震える身体を無理矢理起こす。

 昨日、気絶した時よりか、体調自体はマシな方だが、揺れる欠けた視界とフラつく体はどうにもならない。

 

 

「…ははっ、年貢の納め時って感じか?」

 

「うんうん、そんな感じだよ〜? 邪魔なヒーローさんには──イレギュラーなヒーローさんには、早く退場して欲しいんだよね? ……この世から」

 

「悪いね。僕たちの計画に、ヒーローさんが居るのは不都合であり、不安要素なんだ。しょうがない事だと割り切って、潔く負けて貰えると助かるよ」

 

「バットな展開だヨネ、ユウトには? でも、ユウトが最初からこっちにカムしてれば済んだ話だカラ」

 

「……………………」

 

 

 まさらとみふゆさんだけは何も言わず、ただこちらを見つめている。

「まだ、何かあるんだろ?」と、問いかけてきているようだ。

 ……まっ、その通りなんだけどな。

 詰む可能性は最初から織り込み済みだよ。

 

 

 だから、みたま先輩にお願いしたんだ。

 メールしてくれってな。

 だって、あの話をされたら、絶対みんな来るからな。

 

 

「悪いけど、そこどいて!!」

 

「アタシらは急いでんだよ!!」

 

「邪魔、しないで下さい!!」

 

「ちょっと、鶴乃! ももこ! 粟根さんも! 突っ走らないで!」

 

「…うむ、随分と賑やかだな。自分も混ぜてもらおう」

 

「か、十七夜さんまで加わらないでくださいよー!」

 

「結翔のにーちゃん! 助けに来たぞー!」

 

「わ…私も、居ます!」

 

 

 ……どうしよう、予想してたより多いんだけど。

 いや、やちよさんにお願いした時点で、みかづき荘のメンバーの何人かは来ると思ってたけど、まさか全員来るとは…。

 まぁ、良いか。

 チームみかづき荘に、十七夜さん、ももこ、こころちゃん。

 戦力的には十分だ。

 

 

「朝には、まだ早いからな。ここからが勝負だぜ」

 

 

 ……戦えないけどな、俺。

 

 

 ──こころ──

 

 結翔さんが出ていった後、数分もしない内に、インターホンが鳴った。

 玄関前で立ち尽くしていた私は、一瞬、「結翔さんが帰ってきたのか!?」と、思ったが…結翔さんならインターホンなんて鳴らさない。

 何せ、自分の家なんだから、何も言わずに入って来る筈だ。

 

 

 じゃあ、誰だ? 

 …私は、恐る恐る玄関ドアを開ける。

 するとそこには、ももこさんたちが居た──結翔さんが絆を紡いだ魔法少女仲間が居た。

 

 

「…どうしたんですか? 結翔さんなら、今は──」

 

「そのバカヒーローの事で用があるんだ。…悪いけど、一緒に来てくれるか?」

 

「こころちゃんも一緒に、結翔にお説教しよう!」

 

「今なら、まだ間に合う筈よ」

 

「家族なら、絶対に諦めちゃダメだよ。こころちゃん!」

 

「そうだぞ! 結翔のにーちゃんを一発ガーンとぶん殴ってやろうぜっ!」

 

「…助けましょう。私たちは結翔さんに、助けて…貰ったんですから」

 

「自分も賛成だ。借りは返せる内に返さないとな」

 

 

 なんだか嬉しくて、笑みと同時に涙が零れた。

 私の大切な人は、みんなにこんなにも想われてるんだと思うと、嬉しくて堪らなかった。

 ……行こう。

 

 

「結翔さんを助けに、行きましょう!」

 

『おー!!』

 

 

 近所迷惑なんて気にしないくらいの声が、夜の街に響く。

 まさらも結翔さんも、どっちも助けて…帰るんだ。

 私たちの家に!




 次回もお楽しみに!

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