無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 やちよ「前回までの『無少魔少』。結翔が単身、ウワサに憑かれた加賀見さんと戦ってやられて。ピンチになった所に私たちが間に合ったって話ね」

 結翔「この話し方だと、俺がボッコボコにされた感じに聞こえるんですけど?」

 まさら「ボッコボコにされてたじゃない、貴方」

 結翔「されてねぇよ!?俺、結構頑張ってたよ!」

 ももこ「はいはい、頑張ってた頑張ってた〜。それじゃ、六十八話も楽しんでどうぞー!」

 結翔「主人公の扱いが雑なんだけど!!」

 


六十八話「二代目は仮面を被る」

 ──やちよ──

 

 ようやく辿り着いた建設放棄地にて、私たちが目にしたのはコンテナの上でふんぞり返っているマギウスたちと、鉄骨置き場で体を震わせながら立っている結翔だった。

 息も絶え絶えな所から察するに、もう魔法少女に変身する余裕はないと見る。

 

 

 …本当に、手のかかる(馬鹿)弟子だわ。

 吐きそうになるため息をぐっと堪えて、みんなに指示を出す。

 

 

「十七夜、フェリシア。二人は羽根の足止めをお願い。こっちに来させないで」

 

「うむ、任された」

 

「…分かったよ、やりゃあ良いんだろ? ボッコボコにしてやるよ!」

 

「いろはは結翔の治療を最優先。粟根さんと二葉さんでその護衛よ」

 

「分かりました!」

 

「が、がんばります!」

 

「……………………」

 

 

 流石に、納得は…してくれないわよね。

 でもね、粟根さん? 

 分かって欲しいの。

 きっと、あなたは戦えないでしょう? 

 自分の親友と。

 だから、私が──私たちがやるの。

 

 

 鶴乃とももこに目配せをし、正面に居る加賀見さんを見据える。

 もしかしたら、今はマギウス以上に厄介な相手かもしれない彼女に、私たちは武器を向けた。

 

 

「鶴乃、ももこ、合わせなさい。…全力で加賀見さんを叩いて、ウワサを剥がす!」

 

「師弟コンビ!? 師弟コンビだね!? 腕が鳴るよ!! ふんふん!」

 

「…おい、鶴乃。喜んでる余裕は…ないぞ。もう、来る!」

 

「気まぐれに、相手をしてあげる」

 

 

 さっきまでの雰囲気をぶち壊すように突貫してきた彼女は、逆手持ちにしたダガーに不気味な蒼炎を纏わせて、突き刺すように振り下ろした。

 完全に消す気だった…そうとしか思えない程の攻撃。

 避けることは出来たが、空を切って地面に突き刺さった衝撃から、軽く飛ばされる。

 

 

 燃え広がるように迫ってきた蒼炎は、水の盾で防いだが……風に乗ってきた熱だけでも喉を焼くような熱さだ。

 直撃したら──その後の想像は難しくない。

 十中八九、元の形ではいられない。

 体が残っていれば御の字、そう思わせてくる。

 

 

 だけど、戦うしかない。

 今は、戦うことでしか分かり合えないんだから。

 

 

(二人で両サイドから、私は上から叩く!)

 

(アタシが右!)

 

(じゃあ、わたしが左だね! 最っ強のわたしに任せてよ!)

 

 

 テレパシーでの作戦会議を終えたら、私は全速力でその場から消える。

 作戦通り、鶴乃とももこが二人で挟み込むように攻撃を仕掛けて、注意を引いている間に完全に意識の外に外れ上空まで飛ぶ。

 

 

 …案外、二人は悪くない連携が出来ている。

 (馬鹿)弟子一号と違って、言う事を素直に聞いてくれて嬉しい限りだ。

 けど、それでも攻撃は通らない。

 二人が行う、息つく間もない連携攻撃を、ウワサを纏った加賀見さんは涼しい顔をして流している。

 

 

 しかし、

 

 

「上がお留守よ!」

 

 

 私の声を合図に、鶴乃とももこを退かせて、マギアを発動。

『アブソリュートレイン』、私がいつも使っている槍が無数に召喚され、敵に向かって降り注ぐ。

 限界まで鶴乃たちに拘束されていた筈の加賀見さんは、現在の敗北濃厚な状況を見ても顔色一つ変えない──それどころか薄く笑っていた。

 

 

「気付かないとでも?」

 

 

 嘲るかのようにそう言った彼女は、自分に当たり致命傷になるような槍だけを完璧に選択し、弾いていく。

 まさに、神業と言っても過言ではない偉業。

 槍が降り注いだ後の荒れた地に、傷一つない加賀見さんだけが立っている。

 

 

「ち、チートだよぉ…」

 

「幻覚を見てるみたいだ…」

 

「ここまでなんて、想定外よ…」

 

 

 強さの格が違う。

 私たちだけじゃ勝てない。

 子供と大人が戦ってるようなものだ。

 このままやってても、勝てる未来が一向に見えない。

 今の一連のやり取りでそれが簡単に分かった。

 

 

 分厚い雲のような不安が私たちを取り囲む中、無言で現れた粟根さんが、加賀見さんと向かい合うように前に立つ。

 無理、無茶、無謀、三拍子が揃ってるほど勝ち目のない状況なのに、彼女は前に出た。

 きっと、私たちが何を言っても届かないと、そう思える強い意志を持って。

 

 

 ──こころ──

 

 いざ、向かい合うと、押し潰されるレベルの威圧感に圧倒される。

 だけど、私を見るまさらの表情は、どこか物悲しそうで…寂しそうな雰囲気があった。

 あくまで…あくまで雰囲気だ。

 

 

 顔色や表情は微塵も変化していない。

 鉄仮面のような無表情で、私を脅威とも感じ取っていない涼し気な顔をしている。

 いつも通りだった、いつも通りに見えた──少し前までなら。

 

 

 今は違う。

 最近は違う。

 色々な表情を見せてくれるようになったし、色々な想いを感じてくれるようになった。

 ……だから、許せない。

 許せるわけが無い。

 

 

 彼女が望みに望んで、ようやく手に入れたものを、奪おうとしているマギウスが。

 助けるんだ…助けなきゃいけないんだ! 

 まさらはそうしてくれたんだから、私だってやらなきゃいけないんだ! 

 

 

「全力で行くよ。……絶対、助けるからっ!!」

 

「……………………」

 

 

 近接モードに変形させた可変型トンファーを両手に構えて、全力で突っ込む。

 走って向かう途中に電気を溜めて、右の拳を放つと同時に放出。

 鏡合わせをするように、まさらは不気味な蒼炎を纏わせたダガーで突いてくる。

 

 

 雷と炎がぶつかり合い、空気を焼くような爆発を起こすが、爆風の衝撃を気合いで耐えて、残った左の拳をぶつける。

 放った拳から電気が放出されるが、まさらは自分の体を覆っていた蒼炎を集めて、バリアにして防ぐ。

 またしても、爆発が置きた。

 

 

 今度は一旦距離を取るために、爆風の衝撃を利用して後ろに飛ぶ。

 ……なんとなくだけど、まさらがどう動くかが分かる。

 爆煙が晴れるまでの間、私はそんな事を考えていた。

 

 

 どうしてかなんて分からなくても、分かるならそれで良い。

 助けられるならそれで良い。

 

 

 可変型トンファーを射撃モードに移行させて、どっしりと構える。

 結翔さんとの戦いは見てないけど、さっきまでのやちよさんたちとの戦いの中では、一度も透明化を使ってなかった。

 違和感があった。

 まるで、使いたくないと思ってるかのような……そんな違和感。

 

 

 全神経を集中させて、感じ取る。

 きっと、爆煙が晴れた中にまさらは居ない。

 

 

 気を抜くな、耳を澄ませ、目を凝らせ、肌で感じろ。

 二人に──結翔さんとまさらに強くしてもらった成果を、今こそ見せる時だ!! 

 

 

「……………………そこっ!」

 

「──っ!?」

 

 

 放たれた雷の弾丸は、綺麗にまさらの肩に当たった。

 ダメージはそれほど通ってないだろうが、当たった衝撃と驚きから透明化が解除される。

 正直、勘に近かったけど、なんとなくいける気がするって思った。

 

 

 もう一回、接近戦に持ち込んで押し切る!! 

 射撃モードから近接モードにした可変型トンファーを構えて、私はもう一度まさらに突っ込んだ。

 

 

 ──結翔──

 

 いろはちゃんに体を治して貰いながら、俺は腰を下ろして、戦場の行く末を見ていた。

 ……自分が勝てなかった理由が、少しだけ分かった気がする。

 俺はまさらを──ウワサに憑かれたまさらを倒して、助けようとしていた。

 でも、こころちゃんは違った。

 

 

 こころちゃんは、ウワサに憑かれたまさらを倒そうなんて、思っていない。

 あの子は純粋に、まさらを助ける為に必死になって戦っていたんだ。

 中途半端だった、だから、まさらの「助けて」に揺らいでしまった。

 

 

 ヒーローとして間違えずに済んだのが、唯一の救いかもしれないな……

 最も、みんなに守って貰ってる時点でヒーロー失格な気がするけど……

 

 

「やるしか……ないだろ」

 

「結翔さん、どうしたんですか?」

 

「いろはちゃん、俺の体を魔力の限界まで治してくれる? 勿論、穢れはどうにかするから」

 

「……嫌って言ってもやらせますよね?」

 

「まぁね」

 

 

 意地が悪いなぁ…俺も。

 断らない事を良い事に、いろはちゃんの優しさに付け込んでて。

 だけど、やるって決めたんだ。

 アイツを止められるのは、俺だけなんだから。

 

 

「策がある。当たれば勝てる光線がある」

 

「光線…? もしかして、結翔さんの──」

 

「固有の能力の一つさ。その名も──コズミューム光線!」

 

 

 ウルトラマンコスモスが強化フォームである、エクリプスモードの時に使う必殺技。

 デメリットが怖いが、無理矢理引き出せないこともないギリギリのラインにこの技はある。

 …何故なら、ウルトラマンコスモスのエクリプスモードは、コロナモードと呼ばれる太陽の力も入っているからだ。

 

 

 コズミューム光線の効果は色々とあるが、一番のポイントは邪悪な者にしか効かないこと。

 まさら自体は邪悪とは程遠いが、憑いてるウワサは邪悪そのものだ。

 やろうと思えば、邪悪なウワサだけを消し去ることが出来る。

 

 

 邪悪を滅する光であり、善良を照らす光。

 

 

 本来なら使えない……けど、今ならいける気がする。

 限界を超えて、絶対に助けてみせる! 

 

 

「…………終わりました」

 

「ありがと、いろはちゃん。これ、グリーフシードね」

 

 

 覚悟を決め直した俺は、いろはちゃんにグリーフシードを手渡し、立ち上がる。

 そして、もう一度──

 

 

「変身っ!!」

 

 

 体中を炎が覆い尽くし、俺の体を魔法少女のそれへと変えていく。

 俺は変身が終わると同時に体を覆う炎を払う。

 変身できたのは──偽善者の姿(フェイカーフォーム)…か。

 なれるなら、豪炎の力(バーニングモード)になりたかったがしょうがない。

 

 

 やれるだけの事を、するまでだ! 

 

 

(こころちゃん、まさらを力づくで抑えて! 時間は十秒持てばいいから!)

 

(…今回のはちゃんとした策ですよね? 信じますよ!)

 

 

 そうテレパシーを返したこころちゃんは、近接で殴り合っていたのを上手く利用し、背後を取ってまさらを羽交い締めにした。

 抵抗するまさらだが、こころちゃんの固有の能力は『耐える』だ。

 幾ら強化されてても十秒程度なら無問題。

 

 

 呼吸を整え、光線を打つ為の構えを取った。

 まず、両腕を胸の前で交差させてエネルギーを溜める。

 そしたら、それを右腕に移し突き出すようにして放つ。

 

 

「コズミューム光線!!」

 

 

 叫ぶように言った技名と同時に、右腕の拳から、オレンジ色の光線が放たれる。

 オレンジ色の光線には──光には、『優しさ』と『強さ』、そして『勇気』が詰まっている。

 俺が今、限界を超えて使えるのは、きっとみんなから俺にないものを貰えたからだ。

 

 

 だから、

 

 

「これで終わりだ!!」

 

「│っぅ!? うぅぅぅうああぁぁぁぁぁあああ!!! │」

 

 

 痛みからか、断末魔にも聞こえる声が上がっているが、この声はまさらのものではない、ウワサのものだ。

 全くもって紛らわしい。

 それに、もし光線の不安定さ故に、ダメージがまさらに通っているなら、こころちゃんにも通ってる可能性が高い。

 

 

 エネルギーが切れ、光線を打ち終わったあとには、不気味な蒼炎が殆ど消えたまさらと、それを羽交い締めにしていたこころちゃんだけが残っていた。

 ウワサの魔力は……

 

 

「くっ!」

 

 

 一瞬、視界がグラつく。

 やばいな…全部使い切ったか。

 掠れるような苦笑が声から漏れ、魔法少女への変身が解ける。

 

 

「ちょっ! アサシンさんやられちゃったよ? どうするの〜!」

 

「物語としては劇的で心が刺激されるけど、今は困るね……」

 

「まぁ、アリナ的にはグッドな展開でもあるケド。全体的にはバットだヨネ」

 

「………………はぁ」

 

 

 言いたい放題言ってくれるな、本当に。

 今すぐにでも腰を下ろして休みたいが、アイツを迎えに行かなきゃいけないからな。

 目配せでこころちゃんに拘束を解かせると、まさらもふらつくような形でこちらに歩み寄って来る。

 

 

 嬉しくて、苦笑なんかではない、本物の笑みが零れた。

 二人して少しづつ近付いて、ようやく抱き締めてやれる……そんな距離になった時。

 胸に何かが刺さったような痛みが走る。

 鈍くなりつつある痛覚が痛みを教えた頃には、口と左胸から血が溢れ出していた。

 

 

「ゆ…うと? …!? 結翔! ち、違うの! これは、私じゃ──」

 

「わかってるよ…わかってるから」

 

「ごめ、ごめんなさい、私……こんなことするつもりじゃなくて……」

 

「お前は、悪くないよ」

 

「でも…でもっ!」

 

 

 気付けなかった、俺が悪いんだ。

 ……そうか、まだ残ってたんだな──右手に。

 イタチの最後ッ屁ってやつか? 

 最悪だな…って、言ってやりたいけど…良いか。

 

 

 なにせ、初めて見れたからな。

 お前の、()()()

 写真に撮って、壁紙にでもしてやりたい。

 少なくとも、一週間はそのネタで弄れるし……

 

 

 そんな、バカみたいな事を少しだけ考えて、また笑った。

 

 

「だって、お前今、誰かのために泣けてるじゃんか」

 

「こ…れは……。…私…泣いて……」

 

「何度も間違ってきたけどさ……今なら胸張って言えるよ。お前に託したのは間違いじゃなかったって。自分を…信じろ……!」

 

 

 そう言い終えると、俺は微かに残っていた意識を手放して、深く…深く…落ちて行く。

 彼女の腕の中はポカポカと温かくて、良い夢が見れる気がした。

 

 

 ──まさら──

 

 胸が引き裂かれるような思いだった。

 知らなかった、私は知らなかった。

 こんな痛みも、苦しみも……

 

 

 託された、だからこうなる事は仕方の無い事。

 現状をそんな言葉で片付けられるほど、私は無感動じゃなくなっていた。

 知りたくなかった……こんな未来が待っているなら。

『悲しみ』も『苦しみ』も、『優しさ』も『嬉しさ』も、全部知りたくなかった。

 

 

 死んだように眠っている結翔を環いろはに預け、コンテナの上に居るマギウスを見る。

 耳に入ってくる話は、とても気分の良い話じゃなかった。

 

 

「はぁー。とんだ茶番だったにゃ〜。見に来たのは無駄だったかもね〜」

 

「それはどうかな? 現状は未だにこちらが有利だ。ここで全員が排除すれば、有益な時間だったと言い張れるよ」

 

「エキサイティングな発想だヨネ。アリナは賛成しても良い──」

 

 

 その時、アリナの発言を遮るように「バチィン!」、という音が響いた。

 聞き覚えのある音。

 雷の弾丸が、発射された時の音だ。

 ふと、横を見ると。

 涙を堪えて、射撃モードに移行した可変型トンファーを、マギウスに向けるこころが居た。

 

 

 銃口からは微かに煙が上がっているのを見ると、撃ったのは確実。

 ……泣きながら怒る彼女は、私から見ても、とても痛々しいものだった。

 

 

「早く退いて下さい。……次は当てます」

 

 

 震えた声なのに、何故か良く通る……そんな声。

 次弾の装填準備に入る彼女を止めたのは、私たちの中で二番目に結翔と付き合いが長い七海やちよ。

 そっと、可変型トンファーに手を当てて、銃口を下ろす。

 

 

「なんで…なんで止めるんです!! あの人たちは──」

 

「結翔は、それを望まないでしょ?」

 

「それは……」

 

「おぉ〜、流石ベテランさん。次いでに、最強さんたちも宥めて欲しいなぁー?」

 

 

 里見灯花が指摘した鶴乃とももこは……こころよりも酷い状態だ。

 憎悪──とまではいかないが、憤怒しているのか、今すぐにでも飛び出しそうに見える。

 嫌な所で要領が良い鶴乃は、憤怒を理性の鎖で繋ぎ止めているが、それも長くはない。

 

 

 一番付き合いが長いももこに至っては、未だに突っ込んでないのが奇跡だ。

 

 

 私が、やるしかない。

 結翔の代わりに、ヒーローを。

 だから、要らない感情は仮面で押え付ける。

 無感動の、私だけの仮面で。

 

 

 だって彼は言っていたから、

 

 

『仮面ライダーってのは、仮面の下に色々なもんを隠してるんだ。笑顔も、後悔も、悲しみも、怒りも、苦しみも、全部な。いつの時代も、ヒーローは思いを隠してる。助けたいって思いと、守りたいって思い以外はな』

 

 

 二つ以外は要らない。

 二つ以外は邪魔だ。

 今は、私が託されたヒーローなんだから。

 

 

 ダガーを右手に編み、不意を着くように透明化して投げた。

 一度、私に触れて透明化の対象になった物体は、離れても一定時間透明化していられる。

 絶対に当たる、その自信があった。

 

 

 何故なら、彼女たちは慢心していたから。

 圧倒的な戦力差に自信を持っていたから。

 

 

 増援に来ようとしている羽根が、たった二人の魔法少女に止められていると言うのに。

 

 

「終わりよ…」

 

 

 そう言った直後、里見灯花の右足にダガーが突き刺さる。

 声にならない悲鳴が、建設放棄地に響く。

 周りに居たマギウスや、梓みふゆ、白羽根の天音姉妹が慌てふためく中。

 昔の自分のように、平坦で無機質な声で警告する。

 

 

「次は心臓に当てる。大丈夫よ、魔法少女はソウルジェムが砕かれない限り、死なないんだから。…まぁ、死ぬほど痛いでしょうけどね」

 

「退きますよ! アリナ、ねむ! 灯花は私が背負います! 今ここで、マギウスに欠けられたら困ります!!」

 

「……理解できないね、アサシンさん」

 

「ホント、冷めるヨネ。グッバイ〜」

 

「……………………」

 

 

 魔力反応を確認するまでもなく、次々とマギウスの翼が散って行くのが分かる。

 ……帰ろう。

 家に、帰ろう。

 今日は疲れた。

 ゆっくり休みたい。

 

 

「もう、良いでしょう。帰るわよ…こころ」

 

「ちょっ! ま、待ってよ、まさら!!」

 

 

 動揺し固まる皆を置き去りにするように、私は結翔を背負って歩き出す。

 後ろから私を追うこころは、助けてくれた皆に一礼をしていたが、そんな事をする余裕は私にはない。

 今にも溢れ出しそうな感情を、無感動の仮面で無理矢理抑えているからだ。

 

 

 あぁ、明日になったら、いつも通りに戻れるだろうか? 

 結翔の顔を、ちゃんと見れるだろうか? 

 お礼を、しっかり言えるだろうか? 

 

 

 初めて、明日(未来)を怖く感じた……そんな夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回もお楽しみに!

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