無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

78 / 81
 スマホ版のみ、ここ好きボタンなるものが追加されるらしい。
 私から言えることは一つ、みんなー!
 オラにここ好きって所を教えてくれーー!!!

 ※強制ではないです、ただやってくれると私が嬉しいだけ。


幕間「死へのカウンドダウン」

 ──みふゆ──

 

 どうしようもない、やるせない程の後悔で枕を濡らした翌日。

 ワタシは今、一番会いたくない人に、偶然……会ってしまった。

 彼に──結翔くんに。

 

 

「昨日ぶり…ですね」

 

「どうも。……まさらから色々聞きましたけど、その後はどうでしたか?」

 

「お陰様で、灯花も少しは頭が冷えたみたいです」

 

 

 苦笑気味に返すワタシに、彼は「そうですか」と一言言ったきり、言葉を詰まらせてしまう。

 それもそうだ。

 敵だ、ワタシは彼にとって敵なのだ。

 本来は、こんな世間話するような事、ある筈がない。

 

 

 だけど、ただただ優しい彼は、ワタシを心配してこうやって話してくれる。

 ワタシの方が、心配しているのに、彼は偶に見て見ぬフリをする。

 

 

 健康的には見えない青白い肌、瞳の下には、ろくに寝れていない証拠である酷い隈も出来ていた。

 声のトーンも少し控え目で、いつもの快活な様子は隠れている。

 ……良く見ないと分からないかもしれないが、体の重心も傾いていた。

 

 

 もし、昔と変わらず、ワタシが彼の傍に居たなら迷わず言っていただろう。

「早く休んでください」と。

 でも、違う。

 今のワタシと彼の距離は遠いし、そんなこと言えるような立場でもない。

 

 

 次々に浮かぶマイナスな考えを振り切るようにかぶりを振って、ワタシの方からもう一度話しかける。

 

 

「…結翔くんは、お買い物ですか?」

 

「あぁー、違いますね。病院帰りです、ちょっとした検査に行ってきました。……悪いんですけど。みふゆさん、この後って時間あります」

 

「──は、はい、問題ないです」

 

 

 病院に検査、その二つの単語から導き出される答えは酷く単純で、自分自身を殴りたくなるような、そんな後悔が襲う。

 結局、連れてこられるままにファミレスに移動し、中に入ったら入ったで店員に案内され、空いているテーブルに腰を下ろした。

 ざっとメニューを流しみした後、テキトーな軽食とドリンクバーを頼み、注文を済ませる。

 

 

 話は、ここからだった。

 

 

「色々と話したい事はあるんですけど、これ見てもらっても良いですか? ……戒めだって言って貰ったレントゲン写真です」

 

 

 そう言って、結翔くんは二桁には届かない程度のレントゲン写真を、ワタシに渡してくれた。

 薬学部ではあれど、医大志望をしている身。

 参考書や学術書等で、少しだけ見慣れたそれには……絶望が詰まっていた。

 

 

 この写真が冗談や嘘の類でないなら、自分の錯覚を疑いたくなる。

 見た所、内臓器官はボロボロだし、骨だって非健常者のそれ。

 脳に至っては、健常者にも非健常者にも見られない異常がある。

 中途半端にしかない医学の知識が、曖昧な所までしか教えてくれないが、確信した事がある。

 

 

 魔法少女じゃなかったら、魔眼がなかったら、彼はもうこの世に居ないと言う事。

 

「……結翔くん。これを見たお医者様はなんて?」

 

「なんで生きてるの? って聞かれましたよ。…超人とか魔法少女とか、裏の方にも顔が利いて知識もある。付き合いの長い人だったんですけどね」

 

「そうです…か」

 

 

 言葉が出てこなかった。

 さっきとは逆に、ワタシが押し黙ってしまう。

 だって…だって、しょうがないじゃないか!! 

 明らかに、原因はワタシたちにあるんだから! 

 

 

 謝りたい……謝りたいけど、出来ない。

 結翔くんは許してしまうから──ワタシが許されてしまうから。

 だけど、謝りたい。

 押し潰されるような後悔を吐き出したい。

 

 

「……結翔く──」

 

「謝らなくて、良いですよ。…怒ってない訳じゃないけど、あなたが謝る必要はないから。まぁ、代わりって言っちゃなんですけど、俺の重荷を少し背負って下さい」

 

「……へっ?」

 

 

 重荷を背負って欲しい。

 彼の口から、終ぞ聞くことはないと思っていた言葉が放たれた。

 そして、それと同時に、彼はソウルジェムをワタシの前に置く。

 希望が詰まったかのような黄色の光を放つそれには──あって良い訳のない陰りが見えた。

 

 

 ……穢れが、少しだけ溜まっていた。

 普通の魔法少女だったら驚きはしない。

 少しの穢れが溜まるなんて、日常茶飯事だ。

 しかし、結翔くんは違う。

 特別だ、彼は特別なのだ。

 

 

 ソウルジェム()に穢れが溜まるなんて有り得ない。

 生かすための魔眼が、死なせないための魔眼が、穢れを浄化している──いいや、消している筈。

 じゃあ、これはなんだ? 

 重荷とはなんだ? 

 

 

 一体、これは──

 

 

「限界が来てるんです。体にも、魂にも。……生と死の魔眼も、これ以上生かすことは出来ないって感じですかね」

 

「そんな……。結翔くん!! 今すぐ契約をして下さい!! 確か、契約をすれば不死に──」

 

「嫌ですよ。死にたくはないですけど、生き足掻きたくもないですし」

 

「…どうしてですか?」

 

 

 死ぬかもしれない、その報告が重荷だとでも言うのか? 

 確かに、彼はこの事を仲間内に伝えるのを渋るだろう。

 性格が性格なのだから仕方ないが……なんでワタシなんだ? 

 他にも良い人はいた筈だ。

 

 

 ワタシと結翔くんは敵同士なのに、自分が不利になる情報を流すのは……何故なんだ? 

 分からない、分からない、分からない。

 ……けど、怖いのは分かった。

 自分が、彼の死を恐れている事は分かる。

 とても、嫌な自覚だつた。

 

 

「どうしてって言われてもなぁ…。強いて言うなら疲れたからですかね? …だって、死んだら誰も守れないって思ったから頑張ってた生きてきたのに、生きてても大切な人を守れなかったんですよ? 死にたくなるじゃないですか? …まさらに後の事は託したし、俺が居なくなっても大丈夫」

 

 

 カラカラと誤魔化すように彼は笑った。

 それは、とても自嘲的な笑いで、悲しそうに感じる。

 知っているからだ、自分が死んで悲しむ人が居ることを。

 

 

 少しだけ間を空けて、ワタシは確認するように言った。

 まだ、ワタシが彼の大切から外れていない事を、利用するように。

 

 

「…本気で、言ってるんですか?」

 

「…………な訳ないでしょ。自分が死んだら、傷付いて悲しむ人が居ることくらい分かってますよ。でも、どうにも出来ないんです。だから──これでいい。この事は、誰にも伝えない。みふゆさんに言ったのは、嫌がらせってことで」

 

 

 昔みたいにあどけない笑顔でそう言った後、結翔くんは去っていった。

 止めるのは簡単だけど、ワタシにはそれをする資格なんてない。

 ……あぁ、みんなが笑っていたあの頃に戻りたいなぁ。

 

 

 叶えられる筈のない夢が、ワタシの中で少しづつ増えていく。

 底のない欲望なんて、持たなければ良かった。

 

 

 ──結翔──

 

 ファミレスから出た後、人混みを避けるように俺は路地裏に入り込んだ。

 鉛のように重い体は、上手く動いてくれなくてイライラする。

 でも、自業自得……か。

 

 

 呆れて笑いも出てこないが、何を言っても今更遅い。

 俺はスマホのカメラで自分の顔を確認する。

 

 

「……こりゃ、酷いな」

 

 

 暗示の魔眼を使っておいて正解だった。

 下手したら死体にしか見えない土気色の肌を見て、俺は確信する。

 さっきまで会っていたみふゆさんには、外見だけだと体調が悪い程度にしか見えなかっただろう。

 

 

 見破られる可能性もあったが、上手く事が運んで良かった。

 みふゆさんに会ったのも、体のことを正直に話したのも、もしかしたら寝返ってくれるかも……って言う打算の元だ。

 

 

「性格悪いわね〜マスター?」

 

「黙れ。あと、俺はお前のマスターじゃない。契約してないからな」

 

「良いじゃない、そう遠くない内に契約するんだから。……にしても、それ、燃やしていいの?」

 

「あっ? ……あぁ、これの事か、別に良いんだよ。まさらにこれ以上背負わせるのは酷だし、なにより俺がやりたくない。どうせ、言わなくてもすぐにバレるしな。魔眼は無限に使える訳じゃないんだ」

 

 

 突然に現れたラプラスの悪魔に俺はそう返した。

 右手でレントゲン写真を燃やし、左手で──半分が穢れに染ったソウルジェムを眺めながら。

 

 

「持って……一週間ってところか?」

 

「さぁ、どうだろうね? 私には分からないよ。…まぁ、マスターが契約してくれないと困るからね。パッパと契約して欲しいものだ。イレギュラーを見てるのは楽しいしね」

 

「そうかよ」

 

 

 時間がない、余裕もない。

 右眼に映る地獄の光景も、到底無視できる域を逸脱している。

 幻覚、幻聴、吐血、味覚障害。

 封印中もあった吐血は続投、他にも三つの症状が戻ってきたり、復活したりした。

 

 

 最悪な事に、タイマーが音を立てて鳴っていた。

 残り少ない、俺の寿命と言うタイマーが。




 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 感想や評価、お気に入り登録もお待ちしております!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。