無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 結翔「前回までの『無少魔少』。みんなの協力のお陰で、何とかまさらからウワサが剥がせたって話だな」

 まさら「………………………」

 こころ「あっ……デリケートな話題だからまさらが」

 みたま「いけないのよぉ、結翔くん。女の子を泣かせちゃ?」

 結翔「…いっつも思うんですけど、俺そんな責められるようなことしてます?」

 ももこ「時間も押してるので、皆さんは楽しんで六十九話をどうぞ!」



最終章「世界と明日とヒーローと」
六十九話「戦争の幕開け」


 ──結翔──

 

 鶴乃をうわさから解放してから、怒涛の勢いで過ぎた一週間だった。

 母さんと喧嘩して、仲直りして。

 まさらがウワサに憑かれて、それを剥がして。

 気苦労の絶えない一週間だった気がする。

 

 

 でも、それも昨日で終わり。

 今日からは本格的に、マギウスとマギウスの翼の対策に入る。

 とは言っても、今日は先週一週間の労いも兼ねた作戦会議。

 実行に移すのは明日からになる……そう思っていた。

 

 

 ───────────────────────

 

 いつも通り学校に来て、当たり前のように授業を受けているだけなのに、酷く体が重い。

 幻覚や幻聴は治まらないし、頭痛もする。

 先生の声は聞こえてはいるが集中出来ず、聞き流すだけになっていた。

 

 

 声が聞こえないなら板書くらいしっかりしようと思ったが……手が震えてペンが上手く持てない。

 最悪だと、愚痴りたい気持ちに蓋をして、聞いているフリをして一日を過ごした。

 

 

 放課後、十七夜さんのメイド喫茶で作戦会議をする事になっていたので、学校に居るメンバーを集めて場所に向かった。

 ももこに鶴乃、いろはいゃんにかえでとレナ。

 そこに俺を加えた六人で歩いて行く。

 

 

 並んで歩いていると分かるが、良くも悪くも、魔眼の復活は影響が大きい。

 何せ、どれだけ俺の体調が悪くても、暗示の魔眼である程度誤魔化せてしまうからだ。

 本当に助かる。

 

 

 正直、歩くのが苦痛でしょうがなかった。

 いや、少し違う。

()()()歩くのが苦痛でしょうがなかった。

 体がだるく、重いのはこの際どうでも良いが、幻覚と幻聴は辛い。

 言葉で表現するのが億劫な程に、辛い。

 

 

 現に、ももこたちが何か言ってるのか、何を言ってるのか分かりやしないからな。

 だから、誤魔化せるのは助かる。

 騙し騙しの現状に申し訳なさを感じながらも、俺は歩いた。

 

 

 ようやく辿り着いた、目的の場所であるメイド喫茶。

 十七夜さんに案内され通されたテーブルに座り、みんなは談笑しながらやちよさんが来るのを待った。

 慣れ、とは言いたくないが、少しづつ気分が落ち着いてきた俺も、ちょくちょく会話に混ざりながら待つこと数分。

 

 

 遅れてきたやちよさんは、少し険しそうな表情で俺たちを見て、遅れてきた訳を話し始めた。

 

 

「珍しいですね。やちよさんが遅れるなんて」

 

「ちょっと、調整屋に寄っててね」

 

「調整屋って、そりゃどうしてさ」

 

「ケガ人を保護してもらったの」

 

「──!? どういう事ですか…」

 

「マギウスの翼が動き出したわ」

 

 

 話を聞くに、羽根の連中が怪我を負わせたらしい。

 脳裏に蘇る「手段は選ばない」、の一言。

 先程までの明るい雰囲気は消え、真面目で暗い、締め付けるような空気が張り詰める。

 

 

 少ない情報から、今後の動きを炙り出すために、まさらが疑問点を上げた。

 

 

「事情は分かったわ。…けど、どうして無関係の魔法少女を狙ったのかしら?」

 

「流石に、そこまでは分からないわ」

 

「んー…ほっ! エネルギーを欲しがってたし、魔法少女の魔力狙いとか!」

 

「うゆ…。私たちイブのエサになっちゃうの…?」

 

「例えばの話でしょーよ」

 

「でも、被害者が出た以上は他の人が狙われる可能性も…」

 

「こころちゃんの言う通りです。みんなにも知らせないと!」

 

 

 いろはちゃんが立ち上がり行動を起こそうと言葉を放った瞬間。

 狙ったかのように、魔女の反応が現れる。

 ……しかも、一体じゃない。

 複数体、どこからともなく湧いてきやがった。

 

 

 ここら辺にこんな数の魔女の魔力反応はなかった筈。

 マギウスの翼が動き出したのは、間違いないと見るべきだろう。

 

 

「え、この反応って…」

 

「魔女だね。…しかも、複数だ」

 

「妙だな…。徐々に近付くわけでもなく、突然複数体で現れるとは…」

 

「アリナ…」

 

「魔女を捕獲して使う彼女なら十分有り得るわね」

 

「早く、行きましょう! 被害に遭った子と関係あるか分かりませんけど、このまま放っておく訳にも…!」

 

「……だね、急ごう」

 

 

 テーブルに万札を一枚置いて席を立つ。

 焦りからか、落ち着いてきた幻覚や幻聴はぶり返したが、構っている余裕はない。

 店を出て通りに出ると、魔女の反応が遠ざかっていくのが分かった。

 誘き出してるのか……分断するつもりか。

 

 

 理由は分からないが固まって動いても仕方がない。

 ここは一旦別れるしかない──そう言葉にしようとした途端、見覚えのあるマスケット銃が俺たちを囲むように現れる。

 

 

「……最悪だな」

 

「って、えええっ!? な、なんか銃に囲まれてる!」

 

「この銃って…」

 

「フフッ、やっぱり出てきたわね。魔法少女が傷付けば動き始める。マギウスが踏んだ通りだわ。乱暴に引き止めて悪いけど、ちょっとだけお話に付き合ってくれないかしら?」

 

「…巴さん」

 

「洗脳は解けてないようね…。それに、今の口ぶりからすると魔女と魔法少女の件はあなたの仕業のようだけど」

 

「えぇ、そうよ。こうして現れたのも、その事を伝えようと思ったからよ」

 

 

 暗く淀んだ気味の悪い瞳を、マミはちゃんはじっと俺たちに向けている。

 行動でも纏う空気ですらも、ここから動くなと伝えてきている。

 だけど、敵の話を態々全員で聞いてる余裕はない。

 相手は──俺がすればいいか。

 他は逃がして、内容は電話で伝えればいい。

 

 

 そしたら、余計な情報はカット出来るし……揺さぶりを掛けられる心配もなくなる。

 まぁ、一番の理由はそれじゃない…が。

 

 

(返事はしなくていい。……破壊の魔眼で銃を壊すから、隙を見て脱出。連絡は俺の方から入れる。出来るだけ早く他の魔法少女に危険を伝えてくれ)

 

 

 テレパシーでそう送って数秒も経たない内に、俺は叫ぶ。

 

 

「破壊!」

 

 

 耳に響くような破裂音と共に、銃が砕け光の粒子となって消えていく。

 刹那、俺以外の全員が魔法少女に変身し散開した。

 マミちゃんも、それを食い止めようとマスケット銃を展開するけど、遅い。

 引き金が引かれる前に、全て破壊できる。

 立て続けに破裂音が鳴り、砕けた銃が光の粒子となって散っていった。

 

 

 流石に無駄だと気付いたのか、彼女はこちらに苛立ちの視線を寄越す。

 

 

「俺一人になったけど、話を聞いてもいいか? ……どうして、無関係の魔法少女を襲った」

 

「……マギウスから聞いてなかったかしら? もう、手段は選ばないって」

 

「ああ、聞いたよ。…でも、ここまで大っぴらにやるとは思わなかったからな」

 

「しょうがないじゃない。これ以上、解放という奇跡から遠ざかる訳にはいかない。だから、彼女たちと決めたのよ。この街の魔法少女が異端に染まってしまう前に消そうって」

 

 

 消す…か。

 綺麗な言葉で言っているが、やろうとしてる事は虐殺や殺戮の類。

 幾ら救いの為だからって──奇跡の為だからって、やっていい事と悪い事があるだろ。

 

 

 確かに、解放の代案を出せって言われても出来ねぇよ。

 けど、だからって誰かを犠牲にして良い理由にはならない。

 殺していい理由には……ならないんだよ。

 

 

「ペテン師が。やろうとしてる事は虐殺と殺戮だろ」

 

「そうよ。魔法少女の解放を邪魔する穢れた人たちを殲滅して、マギウスと私を信じる敬虔な人たちだけを救うの」

 

「そんなの、みんなが苦しむだけだ」

 

「苦しむべき人が苦しむだけよ。私たちの悲願が果たされたら、多くの魔法少女は幸福になるわ。フフフッ。鹿目さんたちも、理解は出来なかったみたいだけど。もうすぐ分かるわ、私がしていることが、マギウスの翼が正しかったって」

 

「消したのか?」

 

「安心してちょうだい、彼女たちは消してないわ。ただ、見滝原から出られないようにしてるだけ。彼女たちも魔法少女の解放の恩恵をウケる資格はあるから」

 

「…ちょっとは安心したよ。完璧に自我を失った訳じゃないな」

 

 

 過去の仲間を巻き込まないあたり、まだ少しは残ってる。

 俺じゃ、彼女に憑いたウワサを剥せるかは分からないが……今は押し返して、逃げるが勝ちだ。

 魔法少女に変身し、バックステップで距離をとる。

 

 

 豪炎の力は使わない。

 あれは奥の手中の奥の手、変身出来なくなるなんて今の状況じゃ死も同然。

 体の調子的に、今日は再変身が出来ない。

 しくじったら終わり。

 

 

 集中して、気を引き締めろ! 

 

 

「来いよ。消すんだろ? 俺たちのこと」

 

「…良いわ。ここで戦うつもりはなかったけど。相手になってあげる」

 

 

 そう言うと、以前も見た、黄金の装飾を身に付けた純白の魔法少女衣装を纏う。

 おぞましい程の魔力量は、ウワサの力が上乗せされてるからか溢れ出て、肌を刺すようにまとわり付いてきた。

 

 

 本気で戦えば勝てるだろうが、その場合、残るのは彼女の亡骸だけだ。

 ……殺す気で戦わないと勝てない。

 だけど、操られている彼女にそんな事は出来ない。

 加害者でもあり被害者、一番損をして苦しむ場所に彼女は──マミちゃんはいる。

 

 

 同情と憐れみからか、俺は少しの間止まってしまい、その間に面倒臭いものを引っ張りだされた。

 

 

「さぁ、フローレンスいらっしゃい!」

 

「っ……!」

 

 

 魔女と魔法少女の中間を行くような存在──ドッペル。

 主を守護するように現れたドッペルは、背後に構えこちらを見すえている。

 黄色と白を基調としラメが装飾されたような蕾の頭、手足のように伸びる黄色のリボン、羽の代わりに柊の葉にも似た葉っぱが付いており、背中には主であるマミちゃんと同じく巨大な光環が浮かんでいる。

 神々しい見た目とは裏腹に、押し潰すかのような威圧感を放っていた。

 

 

 対抗するには、こっちもドッペルを出すしかないと、直感的に理解した。

 

 

「今も昔も変わらず、私の誇りは皆を救うこと。その至上とも言える魔法少女の解放に近付いて、私がどれだけ高揚しているのか、あなたもきっと分かってくれる筈よ!」

 

「…クソッタレ。来い! 俺のドッペル!!」

 

 

 俺の言葉に応えるように、ソウルジェムが穢れで染っていく。

 ……くっ。

 ヤバイ……呑まれる。

 無理矢理にソウルジェムを穢れで染めるなんて不味かったか? 

 でも、やらなきゃここで死ぬ。

 全部黒く塗り潰される前に、押し返して逃げる! 

 

 

 そして、ソウルジェムが穢れ切り、体の右半身を覆うように黒い靄が掛かる。

 魔法少女に変身した時同様、靄が晴れた途端に右半身ごと変質しドッペルが生まれた。

 魔眼のある右半身は黒い影で塗り潰され感覚が全くないが、頭上の右側に久しぶりに見る悪魔がいる事が分かる。

 

 

 あの時より、黒い影で塗り潰されてる範囲が少しだけど増えてるな…。

 そうやって、前回との差異を気にしている内に、四肢の武器を構え動き始めた。

 右手が剣、左手が銃、右足が槍で左足が大鎌。

 黒い片翼を羽ばたかせ、本来白目である筈の部分まで漆黒に染まる瞳で凝視する様は恐ろしく、悪魔と呼んで差し支えない。

 

 

 アリナとやった時は引き摺られて行くのがやっとだったが、呑まれかけてるお陰か、コイツのやりたい事が何となくで感じられる。

 俺とマミちゃんはお互いのドッペル同士がぶつかり合う中、その下で拳と銃をぶつけ合う。

 先程と同じく、引き金が引かれるより早く破壊の魔眼を使い、魔力で編まれた銃を壊していく。

 

 

 身を守る武器が無くなった所を、殴って追い打ちに入るが、ギリギリの所で再度編まれた銃で阻まれてしまう。

 そんな攻防を何度も何度も重ねる。

 

 

「フフッ、どこまで持つのかしら?」

 

「さぁな、自分の目で確かめてみろよ!!」

 

 

 売り言葉買い言葉で返しているが、限界が近い。

 意識が薄くなってきたし、体も上手く動かなくなってきた。

 拳を握る手は震え、地面を踏む足はフラフラと揺れしっかりと立っていられない。

 

 

 戦い始めて数分程度なのに、既にガタがき始めている。

 一か八か、ここで一気に! 

 

 

 いつもと違い右半身の自由がないので、左足に紫の属性魔力──闇を溜めていく。

 一定の域に達した所で、銃のガードを押し破るように蹴りを放つ。

 

 

「これで、終われ!!」

 

「っ!? きゃあああああ!」

 

 

 吹き飛ばされたマミちゃんは、道脇の茂みに突っ込んで行った。

 ……よし、これで暫くは追って来ない筈。

 ここを、離れて一回連絡しないと。

 

 

 無理矢理出したドッペルを引っ込め、魔法少女への変身も解き動き出す。

 上手く動かない不自由な体に苛つきを覚えるが、悪態をついても仕方ない。

 不格好な感じになりながらも、俺は走ってその場を去る。

 周りの建物を確認しながら走ること数分。

 

 

 ある程度離れた事が分かったので、走るのをやめてスマホを取り出す。

 息が絶え絶えだが、どうだって良い。

 一刻も早く伝えなければ。

 慣れた操作でスマホを弄り、やちよさんに電話をかける。

 

 

 一コール、ニコール、三コール、四コール、ようやくガチャリと音がした。

 電話越しから聞こえる声の賑やかさからして、散開して近くの魔女を倒した後、方針を話す為に一度集まったのだろうか? 

 

 

 ……いいや、考えるのは後でも出来る。

 今はやるべき事をやらなくちゃな。

 

 

『やちよさん、よく聞いてください。アイツらの狙いは羽根を使って魔法少女の虐殺する事です。俺たちみたいな異端者──解放を拒む者が現れる前に殲滅するって』

 

『……有り得ないって言えたら良かったんだけど、そうもいかないわよね。現に羽根に襲われた魔法少女が居たわけだし』

 

『今後の方針ですけど、今のところは保護を優先した方が良さそうです。魔女退治は、魔女が近くに居たら各々判断ってことで。事情をある程度話して、調整屋に。詳しい話はそこで話すってことでお願いします。俺の名前を言えば、大抵の人は何とかなりますから』

 

『分かったわ。知りたくない事を知る事になろうけど、しょうがないわよね……。あなたも、調整屋に向かいながら魔法少女と魔女を探してちょうだい』

 

『了解です』

 

 

 最後の一言を言って間もなく、全身から力が抜けていった。

 …ドッペルの消耗は思ったより激しかったらしい。

 証拠に、浄化された筈のソウルジェムが、既に半分以上穢れで染っている。

 

 

 ため息を零した後に苦笑し、使い物にならない体に鞭を打ち、調整屋へと向かわせる。

 道中、全くと言っていい程、魔女や魔法少女の気配や反応はなかった。

 運が良かったのかなんなのか、俺は調整屋に一番乗りで着き、みたま先輩の間延びした声を耳にした。

 

 

「いらっしゃ〜い──って! 結翔くん!? どうしたの?」

 

「色々あって……。悪いんですけど、この場所少し借りても良いですか?」

 

「別に良いけど、何かあったか──」

 

「マギウスの翼が動き始めました。無差別に魔法少女を殺そうとしています。…ごめんなさい、勝手にここを避難所に指定しちゃいました」

 

「ま、待って! 一気にそんな事言われても…飲め込めないわ!」

 

「…休ませて貰ってる俺が言うのって凄く申し訳ないんですけど、みたま先輩には選んで欲しいんです」

 

 

 中立を破るか、破らないか。

 衝撃の連続に固まるみたま先輩、無理もない。

 事情には詳しくても、こんな凶行に出るなんて分からないからな。

 

 

 でも、絶対に今日、決めなければいけない。

 何故なら、最悪の抗争が──戦争が始まったんだから。




 次回もお楽しみに!

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