無感動な少女と魔眼使いの少年(リメイク版)   作:しぃ君

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 みたま「前回までの『無少魔少』。十七夜のバイト先に集まって話すはずが、マミちゃんに襲われちゃって、魔法少女の無差別な虐殺が始まるって話だったわね」

 結翔「相変わらず端折りすぎて何の話だったのか分かんないあらすじだな。……と言うか、なんで二週間も投稿しなかったんだ?」

 しぃ「いや……先週は投稿しようとしたんだけど、案件やってて……」

 まさら「さっさと片付ければ良かったのに、放置していたのは貴方でしょう?」

 しぃ「ご、ごもっともです」

 こころ「まぁまぁ、反省してるみたいですし、それ以上は止めてあげましょうよ」

 ももこ「弄りすぎは良くないしな。尺もあるし、皆さんは楽しんで七十話をどうぞ!」




七十話「傷だらけの英雄」

 ──みたま──

 

 今日という日は、なんでもない一日として流れるはずだった。

 変わることの無い、在り来りな日常の中に埋もれるはずだった。

 ……そう、さっきまで思っていたのに。

 突然現れた彼──結翔くんの話を聞いたら、もうそうは思えない。

 

 

 マギウスの翼が本格的に動き始め、しかも、無関係な魔法少女を殺そうとしている。

 由々しき事態、なんて言っていられる余裕はない。

 幾ら商売とはいえ、自分が関わりを持った人に死んで欲しいとは、わたしは思わない……思わないけど、結翔くんの一言が胸に引っ掛かる。

 

 

「中立を破るか、破らないか。選んで欲しい」

 

 

 もし、もしの話だ。

 わたしが中立を破ったらどうなる? 

 少なくとも、調整屋周辺の戦闘禁止は無くなってしまう。

 困る魔法少女は少なくない。

 小競り合いなんて日常茶飯事。

 

 

 今は魔女が多くいるから早々起きないが、少なくなってきたらそうともいかない。

 グリーフシードを巡ってのいざこざは絶えなくなる。

 調整屋が絶対的な中立としてあるから、この戦闘禁止区域が成り立っているんだ。

 

 

 極論、神浜に絶対安全を保証できる場所が無くなる事になってしまう。

 これだけは避けたいし、避けなければいけない。

 彼だってそれを分かっているはずなのに……なんで……

 

 

「……結翔くん、正気かしら? そんな事をすれば──」

 

「みたま先輩が言いたい事は分かります。あなたが中立を破れば、非戦闘区域が無くなってしまう。それは、安心と安全が確保された、憩いの場と言ってもいい場所が無くなるってことだ。…それでも、あなたには選んで欲しい。と言うより、こっちに来て欲しい」

 

「メリットは? わたしがそっちに着くメリットはあるのかしら?」

 

「そうですね…。少なくとも、食いっぱぐれる心配はないです。それに、前も言いましたけど、俺が命を懸けてあなたを守ります」

 

「……ふーん。その体で、良く言えるわね」

 

「ーっ!?」

 

 

 グサリと刺さる一言だったのだろう。

 彼は──結翔くんは、少しだけ顔を顰める。

 来た時から体調が悪そうだったから、不審がられない程度に観察していたら、原因はすぐに分かった。

 

 

 一つは、穢れが溜まったままのソウルジェム。

 もう一つは、魔力の波の酷い乱れ。

 

 

 普通の魔法少女なら、ソウルジェムに穢れが溜まるのは至っては当たり前だが、彼は違う。

 生と死の魔眼がある限り、半自動もしくは自動的に穢れは浄化されるはずだ。

 先ずこの時点で、結翔くんの体が正常な状態ではない事が分かる。

 

 

 そして、魔力の波の酷い乱れに至っては、普通に戦っただけじゃ、ここまで不規則な乱れは起きない。

 魔力の波は、心臓の鼓動に似ている。

 基本的には穏やかでゆっくりだが、激しい運動や緊張をすると、高鳴り速くなっていく。

 

 

 今の結翔くんの魔力の波は、てんでばらばらだ。

 速くなったりゆっくりになったり、突然切り替わる。

 明らかに異常だ。

 

 

「それで、どうなの? その体でちゃんと、わたしを守ってくれるの? ヒーローさん?」

 

「……守りますよ。俺の命が尽きるまで」

 

「……はぁ。本当におバカねぇ、結翔くんは」

 

 

 相変わらず、彼は自分の価値を分かっていないらしい。

 守ってくれるなら有難いし、守って欲しい。

 だけど、わたしは結翔くんみたいな子を犠牲にしてまで、生きていい人間じゃない。

 

 

 何故なら、わたしの願いは『神浜を滅ぼす存在になりたい』、というものだったからだ。

 勿論、嘘や冗談なんかじゃない。

 契約した当時のわたしは、色々と追い詰められていて、そう願った──いや、願うしかなかった。

 

 

 もっとも、そんな力は手に入らず、つい最近まで、使い魔とさえまともに戦えなかったのだが……

 

 

「…わたし、中立を破るわ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「言っておくけど、別に結翔くんたちの為じゃないわ。お客さんが減ったら困るもの。……ああ、あともう一つ。わたしの為に死ぬなんて許さないから。絶対に死なないでよ?」

 

「……善処します」

 

 

 そう言うと、結翔くんはフラフラと外へと向かって行った。

 調整屋の外には、両手両足の指を使っても数え切れないほどの、大勢の魔法少女の魔力を感じる。

 狙いはきっとわたしじゃない、彼だ。

 

 

 最優先で始末しろと命令が下っているのだろう。

 出口までフラフラと歩き、外に出る直前、彼は前触れもなく振り返ってわたしに言った。

 温かい笑顔にサムズアップを添えて。

 

 

「大丈夫です! 俺が守りますから」

 

 

 世界の一瞬を切り取って絵にできるなら、この一瞬は綺麗な自己犠牲が垣間見得る、最高で最悪な作品になる。

 タイトルを付けるなら……そうね。

『傷だらけの英雄』かしら。

 

 

 ──結翔──

 

 説得は上手く済んだけど、俺の体の事は流石にバレただろう。

 ……プラスマイナスで考えるとマイナス寄りのプラスって所だ。

 微妙なラインではあるが、みたま先輩がこちらに着いてくれただけマシだと考えよう。

 

 

「さて…と。どうするかなぁ〜、これ?」

 

 

 目の前に広がる黒羽根と白羽根の大軍。

 軽く千里眼で見た所、少なくとも三十は居る。

 それ以上は数えるのが億劫になってやってない。

 

 

 近付けば近付くほど分かるが、コイツらは本気の殺意を俺に向けている。

 幻惑の魔法じゃ作れない、本物だ…本物の殺意だ。

 ピリピリとした空気が肌に刺さる。

 夕暮れをバックに戦うなんて熱い展開ではあるが、集団リンチなんてごめんだ。

 

 

 ……一か八か、自分に暗示の魔眼を掛けるしかない。

 羽根たちが未だにこちらに来ないのを良い事に、俺は自分に暗示を掛ける。

 幻覚なんて見えないし、幻聴も聞こえない、頭痛だってしないし、体もだるくない。

 自分はすこぶる健康だと、異常なんてないと、自身を騙す。

 

 

 今日一日の気休め程度にしかならないが、持てば良い。

 明日の世界()を守る為なら、なんだってやってやる!! 

 

 

「行くぞ!!」

 

 

 魔法少女に変身し、全力で一番近くにいる黒羽根に突貫する。

 俺がある程度近付くと、羽根たちも動き出し、取り囲むように迫ってきた。

 飛び蹴りを一番近くにいた黒羽根に喰らわせ、そこからは死に物狂いの殴り合いだ。

 

 

 鉤爪で引っ掻かれそうになったり、鎖が飛んできたり、鎌が振るわれたり、矢が降ってきたり、剣で斬り裂かれそうになったり。

 それを、避けて避けて避けて避けて避けて。

 未来視の魔眼で視た情報を、限界まで処理速度を上げた脳で解析し、次に繋げる。

 

 

 でも、全部が全部上手く行く訳じゃない。

 俺だって、何度も攻撃を喰らった。

 以前までの黒羽根や白羽根とは、覚悟が違ったんだ。

 人を殺してはいけないという倫理観が欠如したのか、リミッターがハズレ、有り得ない強さを見せている。

 

 

 剣で右腕を斬り裂かれた、治した。

 矢で左足を射貫かれた、治した。

 鎌で首を刎ねられた、治した。

 鎖で右足を絡め取られ千切られた、治した。

 鉤爪で左腕を引き裂かれた、治した。

 

 

 避けられなかったら治して、避けられたら反撃してを繰り返し。

 少しづつ頭数を減らしていく。

 血を流し過ぎて意識が朦朧としてくるが、何とか生と死の魔眼の回復が間に合って、戦闘を続けられている。

 

 

 魔眼に苦しめられているはずなのに、魔眼がなかったら死んでいる現実はとても皮肉的だ。

 殺してしまわないように加減して、ようやく羽根が半数になったところで、彼女たちは倒れた半数を担ぎ、退いて行った。

 

 

「……やっとか」

 

 

 危機が去ったからか、体から力が抜け、その場にへたり込む。

 最悪だ、暗示は解けていないはずなのに、さっきと変わらないくらい体が重くなってる。

 ソウルジェムもまた少し濁ってるし……

 五体満足に生きてるだけマシだと思うしかない…か。

 

 

「まだ契約しないの? 本当に死んじゃうわよ? マスター」

 

「黙ってろ。俺は、絶対に契約はしない」

 

「死んでしまったとしても?」

 

「ああ」

 

「やっぱり、人間は愚かで面白いわね…!」

 

 

 そう、嘲笑うように言うラプラスは、対極的な真っ黒いゴスロリドレスと純白の髪を揺らし、ルビーの瞳でこちらを見つめている。

 癪に障る奴だ…全く。

 言い返してやりたいが、そんな無駄な事に使う体力は残ってない。

 

 

 結局、俺はため息だけを吐いて、調整屋へと戻った。

 

 

 ──ラプラス──

 

 もう少し、もう少しでマスターは堕ちる。

 ああ、早く彼の大切なものがなくなってくれないだろうか? 

 力を求めてくれないだろうか? 

 

 

 全てを守る力を与えて上げる、全てを壊す力も与えて上げる。

 だから、私の所まで堕ちてきてちょうだい。

 

 

 私のマスター……この世界に産まれてしまった、悲しい異常者(イレギュラー)

 




 次回もお楽しみに!

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