アンケートに答えて下さった皆様、本当に申し訳ありません!
今後はこうならないように、気を付けて書いていこうと思います。
今回のIFは、結翔の心が完全に折れてしまったらと言うもしもです。
メルの死後のお話ですね。
IF√ももこ「泥沼な現実逃避」
──結翔──
あの日、メルが死んでから、一ヶ月の時が経ち、俺は──全てがどうでも良くなっていた。
ヒーローになる夢も、街を守る──街にいる人を守る理想も、丸めてゴミ箱に投げ捨てて、日々を惰性に過ごす。
魔眼のお陰で穢れが溜まらないのを良い事に、魔女狩りもせず、ももこに連れられて学校に行って、偶に買い物にも行って…それの繰り返し。
見える景色全てが色褪せて見える。
やちよさんやみふゆさん、鶴乃にももこ、他にも心配してくれる人は大勢いたが、誰の言葉も心に響かない。
ただただ耳を、声と言う音が抜けていくだけ。
授業も退屈で、昔の俺なら考えられないが、サボることも増えた。
先生には、これ以上出席日数が足りなくなると内部進学すら危ういと言われたが、どうでもいい。
学校に未練なんてないし、行く価値なんて、もうないとすら思ってるのだから。
…だけど、俺の事を良く知る幼馴染は──十咎ももこと言う少女は、飽きることなく笑みを浮かべ、俺を迎えにやってくる。
意味の無い事だと、理解してる筈なのに何故辞めないのか?
俺には分からなかった。
「…お節介が過ぎるんじゃねぇの?」
「お前には、これぐらいが丁度いいんだよ。ほら、行くぞっ!」
幼い頃とは逆、ももこが俺の手を引いて、引っ張って行く。
人は変わらずにはいられない、成長して根っこが変わらなかったとしても、他のどこかが絶対に変わっている。
…俺が変わったように、コイツも変わればいいのに。
こんな面倒臭い奴の相手をしていても、疲れるだけだろうに
ももこは、変わらず家に来る。
太陽のような眩しい笑顔を引っさげて、いつものようにこう言うのだ。
「おはよ。ほら、早く行くぞ!」
「…あぁ」
心のどこかで、昔に戻りたいと思っていて。
でも、申し訳なさに押されてそんな事は言えない。
最期まで…最期まで笑顔だった、アイツの顔が脳裏にチラつく。
自分の事なのに、分からない。
自分が何者なのかすら、分からない。
無い無い尽くしのこの状況に嫌気がさしたのが、全ての始まりだったのかも……
そう考えたら、惰性で続きてきた日々も、意味がないことに気づいた──いや、元々気付いていた。
隣に居てくれるももこの笑顔を、これ以上曇らせたくなくて、俺はやってきたんだ。
潮時…なのかもしれない。
惰性の関係はおさらばして、彼女を自由にしなくては。
それが、俺ができる最善の行動だ。
…決めたら、後は早かった。
放課後、俺の家に勝手に居座るももこに、俺は唐突に話し始める。
「ももこ。もう、お節介は辞めろ。俺は学校も組織も…もう辞めるから。だから、俺に関わらなくていい。…面倒押し付けて悪かった」
「…はっ? い、いきなりなんだよ! 冗談は……やめ…ろよ」
「何年も幼馴染やってりゃ分かるだろ?」
「…分かんない」
「そうか。なら、分かれとは言わない。…合鍵、返せ」
切っても切れない縁を、形として表したもの。
…俺は今、それを返せと言ったのだ。
当然の事ながらももこは動揺したが、鍵は返さまいと一歩後ろに下がる。
…無意識にバックの盾になった所を見ると、鍵は通学用のバックに入れてるらしい。
「なんで!! なんで、そんな事言うんだよ!?」
「俺と居ても時間の無駄だろ? 今は少しストックが溜まってるからいいけど、無くなったらどうする? 魔女狩りに俺は参加しないし、チームだって抜けて来たんだろ? …態々、俺の為に。俺に構ってたら、やりたい事、やらなきゃいけない事、全部全部…出来なくなっちまうぞ?」
「アタシは…アタシは、やりたくてやってるんだ! お前の為になりたくて! アタシは──」
「それが邪魔だって言ってんだよ! いい加減わかれよっ!! 迷惑なんだよ!!」
怒鳴るように言った言葉を聞いても、ももこは悲しそうに俯くだけで、鍵を渡そうとはしない。
意地でも渡さない、そんな意志の現れだろうか?
多分、この時、俺は最善の行動を取ろうと思って、最低な思考をたたき出した。
酷い事をすれば、コイツはもうここには来ないと、勝手に思い込んだ。
ゆっくり、ゆっくりと近付いて、ももこを床に押し倒した。
「ゆう…と?」
「お前が…悪いんだぞ」
その言葉を最後に、俺は口を閉ざし。
無言で彼女を襲った…無理矢理彼女の初めてを奪った。
高校一年生とは思えない艶やかな肢体を貪るように、幼馴染であるももこを──犯す。
痛かっただろうに、涙を流しながらも、彼女は最後まで微笑んで、行為を受け入れた。
後悔しても遅くて、自分から関係を壊してしまったのが申し訳なくて、俺は逃げるようにももこを放置して自室に駆け込んだ。
……もう、終わり。
今までの関係は破却され、もう元には戻れない。
そう、思っていたのに、翌日の朝。
彼女は──ももこは、いつも通りの笑みを浮かべて、ドアの前に立っていた。
──ももこ──
アタシはきっと…最低な女だ。
何故なら、メルが居なくなって、結翔に空いてしまった心の穴に、許可なく入り込もうとしている。
これを最低と呼ばないでなんて言うんだ?
…最初は、本当に最初の内は、ただただ、結翔を支えたくて、結翔の為になりたくて、アイツの手を引っ張って来た。
だけど、今は違う。
違うんだ!
どんどん肥大化していく欲望が、アタシを飲み込んでいって……
結翔に必要とされたくて、アタシはアイツの隣に居る。
メルのことが好きだった事なんて、分かっている…分かっているけど……
隣に居るのに、見て貰えないのが嫌なんだ!
彼がアタシを見ていないのなんて、すぐに分かって、そこからは必要とされる為に必死で頑張ってきた。
校則に引っかからない程度だが、慣れない化粧をして少しでも気を引こうとした。
弁当だって、彼に美味しいと思って貰えるように、試行錯誤を繰り返した。
他の部分でも、彼に必要とされる為に、なんでもやってきた……なのに。
なのに、彼はこう言ったのだ。
『それが邪魔だって言ってんだよ! いい加減わかれよっ!! 迷惑なんだよ!!』
目の前が真っ暗になる感覚がして、結翔に押し倒された状況にも、全く着いていけず……そのまま、アタシは初めてを奪われた。
痛かった…痛かったし悲しかった。
だって、シてる途中の結翔はずっと苦しそうで、何かに怯えるようだったから。
……だけど、アタシは心の奥底では嬉しいって、そう思ったんだ。
突き放す為の行為だったとしても、求められていることが、結翔に初めてをあげられたのが…嬉しかった。
彼の苦しさを少しでも和らげるために笑った。
昔から、結翔はアタシの笑顔が好きだったから。
笑えば、少しは苦しさも和らぐんじゃないかと思って、笑った。
行為が終わった後、結翔は逃げるように自室に戻って、アタシも…痛みを感じる身体を引きずりながらも、家に帰って風呂場で処理を済ませた。
母さんには…バレてしまったかもしれないが、どうと言うことは無い。
翌日、アタシはいつも通り、結翔の家に行き、玄関前で彼を待った。
…結翔はアタシが来た事に、相当驚いていた。
そりゃそうだ。
普通、自分の初めてを強姦まがいの行為で奪われたら、そんな奴のいる家に行こうとは思わない。
でも、アタシは違う。
好きじゃない奴に、慰めで初めてを捧げたりしない。
アタシは、十咎ももこは、そう言う
快晴の空の下、昨日と同じように、アタシは言った。
「おはよ。ほら、早く行くぞ!」
「えっ……あ……?」
固まってしまった結翔だが、数分で我を取り戻し、アタシを家に引きずり込んだ。
「なんの…つもりだ?」
「迎えに来たんだよ。お前、先生にこれ以上の欠席は不味いって言われてんだろ?」
「違う! そうじゃねぇだろ! なんで…なんで! あんな事されたのに、また来てんだって聞いたんだ!!」
「…結翔はさ、アタシが慰めで自分の初めてを上げると思う?」
「…そ…れは……」
視線を外そうと、顔を逸らす結翔の頬に手を添えて、動かせないように固定する。
そしたら、その後は──言えなかった想いを伝えるだけ。
何かを言わせる前に、邪魔な口を無理矢理塞ぎ、結翔に抱き着いた。
「アタシは…結翔の事が好き──大好き。…ずっと隣に居たいって、思ってる」
「俺は…! それを受け取る資格なんて……」
「資格なんて、どうでも良いよ。…アタシ、なんでもするよ? 結翔の隣に居られる為ならなんでも。…シたいなら、いつシても良いよ? それでも、ダメ?」
淫魔の囁きのように、アタシは結翔の耳に口を近付けそう言った。
思えば、あの日からアタシたちの関係は破綻していたんだ……
壊れてしまった関係を、アタシはグチャグチャに掻き回すことで捻じ曲げて、狂った関係にまで押し上げる。
泥沼の現実逃避だって分かっている。
いずれ、前を向いて歩かなきゃ行けない日が来るのも知っている。
だけど…だけど、今は、この爛れた日々で生きながらえなきゃ、アタシたちは本当に──壊れてしまう。
次回もお楽しみに!
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