ハイスクールD×D ~太陽のカラスと龍と赤龍帝~ 作:ソースケ_研究中
ではよろしこ
ざらざらとしたノイズが走る。ノイズばかりで何も分からないが二人の子供ぐらいの影が走っている。
『ま―――――――ちゃん』
『はや――――――の』
ノイズが酷くて小さい二つの人影と声が聞こえるが何を話しているか分からない。
暫くして少しだけ、声が
『こ―――――――こっちだ。かづの!!』
『ま――――――て、待ってよ。だっちゃん!!』
少年少女の声が聞こえ、さらに時間を置くと日が暮れ始めた草原で青いシャツと黒い短パンに足首までがっちり固定したサンダルを履いた短髪の勝気な少年が走る。少年を必死に追う紺色の着物に黒い帯を締め、赤い紐の付いた黒いぽっくり下駄を履いた肩まである髪の長いひ弱そうな少女。
『ほら早くしないと!!』
『でも!!―――――――あ!?』
急かされる少年の声に焦った所為でバランスを崩してしまった少女は小さい悲鳴を上げて前のめりにコケた。
それを聞き逃さなかった少年は後ろを振り向くと、ゆっくりと体を起こし、涙目を擦る少女が目に入る。
『う、うぅ・・・。痛いぃよ・・・・。』
『何やってんだよ。かづの』
『・・・・だってぇ、だっちゃんが・・・。』
少し擦り剥いている所はあるが、そこまで酷くはない。少年は着物についた土を叩き落とす。
そして少女の前に座り込んで声を掛ける
『ほら、かづの。乗れ。』
『――――――え?』
『良いから、我の背に乗れ。』
『良いの?』
『我が乗れと言っているんだ。良いに決まっている。』
そういいと少女は彼の肩を掴んで、痛む体を少年の背に自分の身を預ける。少女をおんぶした少年は目的地へと走り出す。その息は段々と走って行くうちに乱れていくのを感じて少女は
『だっちゃん。大丈夫?』
『我はだ、大丈夫だぜ!!な、なんてたって我はと、”とうごくむそう”になるお、男だからな。こんなの全然平気だってぇ!!』
『それはだっちゃんのお父さんとお母さんが―――――――。』
そう言い始めるとその言葉の意味を振り払う様に走る速さを速めていく、吠える様に少年は
『うるせぇ!!御先祖様とか、親父とお袋がどう思って名前をつけたかなんて関係ぇねぇ!!我が強くなりてぇんだよ!!この背に誰かを背負えるように!!誰でも背負えるように!!だから我は強くなる。”とうごくむそう”になるんだ!!だからかづの!今お前を背負っているのも我がそうしたいからしてんだよぉ!!』
『――――――――――うん。分かったよ。だっちゃん。』
そう言って少女は少年の背に顔を埋める。そして少年は納得したように
『分かれば良い―――――お?、かづの!見てみろよ!!着いたぞ。』
『――――――――?あ、綺麗・・・!』
少女を背負って高い丘に立つ少年は嬉しそうに声を上げる。それを聞いて視線を上げるとまるで黄金のように輝く夕陽が少女の眼に入る。
そして少年は自分が見つけた物を見せ、少女の反応に笑顔になる。
『どうだ!!綺麗だろ!!此処は我が見つけた我だけの秘密の場所なんだ!!』
『良いの?ココ、私がここに来ちゃって・・・・。』
『かづのは良いだよ!!』
『―――――なんで?』
『なんででも!!』
そいう少年の顔は夕陽の所為なのか、少女にはとても赤く見えた。
そして少女は夕陽を見ながら暫くして口を開く
『だっちゃん。わたしね。』
『なんだよ。かづの?』
今さっきと違って何か決心がついた様に力強く声を発する少女は
『私も強くなる。だっちゃんに背負われるだけは嫌。だっちゃんを支えられる様に強くなる。』
『なんだよ。我に背負われるのが嫌なのかよ・・・。』
『違うよ。だっちゃん一人で背負うのは無理だよ。そんなのしんどいよ。だから私も一緒ならだっちゃんが少しでも楽になる。それは私のかづのって言うのが、御先祖様の鎧の名前だからとかじゃないのだっちゃんと同じで私がそうしたいの!』
そういうと少年は唸る様に少し考え込むような素振りを見せる。暫くして少年は夕陽の輝きに負けないような笑顔で
『だったらしょうがねぇな・・・。我は我の勝手を通すなら、そいつもお前の勝手だ。よろしく頼むぜ。』
『・・・・・うん!!』
その答えに少年に負けない笑顔で少女は力強く返事をする。それからだんだんとノイズが酷くなってきて何も見えなくなった。
視界が真っ暗。闇に呑まれたんだから当たり前っちゃあ当たり前なんだが、明らかに姿勢がおかしい。今さっきまで忠勝の喉元にステークの切っ先を向け、構えていた俺が何でうつ伏せに倒れているかだ。俺はとりあえずこのまま寝ていてもしょうがないので体を起こして目を開け、視界に移したのは以前までいた場所ではなく、橋の上でもなければ夜でも無く明るい。空を見上げると日が眩しく、片手で日から守る様に目を覆う。
そして周りを見ると俺は目を疑う。と言うより俺の眼がおかしくなったのだろうか、割とマジで最近ボコすかボコすかと白いのに殴られた記憶があるからついにとか思っちゃうわけなんだが・・・。そう思いつつも俺は眼を擦ってちゃんと目を開くと
「おいおい、マジかよ・・・。絵の中に入っちゃいましたってノリか、コレ?」
そう言って唖然とした感じで呟く俺の眼に映る景色は、一様現代にある住宅地なのに、雲から空まで何というか全部が浮世絵風に描かれた世界だ。浮世絵の中に入った様な世界ではあるが、なんで現代の街並みなのかさっぱりわからん。俺は現状確認の為に辺りを見回しながら立ち上がると近くに倒れている女性を発見、彼女が上半身をゆっくりと起こしているのが目に入った。
俺と忠勝、突然忠勝の名前を読んだ女性の声、聞こえた声が割と近かったから一緒に巻き込まれる位置に居たんだろうな。それにあの槍やっぱし、黒い獣関連の物だろうな。便乗か、トラップかしれねぇけどマジで俺を殺りに来ているのは分かる。そんなの事を考えていると辺りを見回して俺の方に視線を向け、立ち上がった忠勝のより頭半分程低く、ラグナ達より少し低い灰色の長髪を鹿角の髪留めで纏めた長身の女性。髪は目元で切りそろえており、方のもみあげ辺りから耳を隠すように肩まで垂らしており、切れ長の目に髪と同じ灰色の瞳、綺麗な鼻立ちや堅く結ばれた口元など整った顔立ちにクールな印象を持つ。大正給仕服を着込んで、あまり装飾の無い靴を履いており、スタイルは刀舞並みには出るとこは出て引っ込んでいるとこは引っ込んでいる。
そして後ろに飛んで距離を取り、持った刀の柄に手を掛けた給仕の女性。
「貴方は・・・・!」
「ちょっ!?待った!!――――――状況考えろ!!状況!!」
何時でも抜刀出来る様に構えて此方に殺気を放つ彼女に止まれと言わんばかりに前で手を振って待ったを掛ける俺。暫く硬直状態が続いたが、気持ちの整理がついたのか、彼女は刀の柄から手を離す。
それを見た俺は
「はぁ・・・・・。この分だとお前さん。あの本多忠勝の身内みたいなようだが、狙ってきたのは向こうだし、これなら正当防衛が成立するはずだ。こっちだってなんでお前さんの身内に狙われるような事になっているのか分かっていないんだ。」
「―――――――それは私が説明します。」
そう言って語りだした”阿佐美 鹿角”という代々隊が出来てから本多家に仕える侍女らしいが、今ではそのような制度は無いが、今は個人の意思で彼、本多 忠勝に仕えている様だ。代々武家である為今の時代になっても権力はあって、当時使っていた槍術は受け継いでるわ。さらに今は軍関係者の家柄で家もデカい。そんな彼は弟に家を任せて武者修行で世界を転々としていた。
彼女もそれに同行していたのだが、旅の途中ではぐれてしまい。辺境の土地で行き倒れていた所を”曹操”という男に助けられた。
そんな彼に仲間にならないかと言われたが、忠勝は自分の成すべき事があるので断ったらしい。でも彼は命を助けて貰った恩があるので一つだけ彼の手伝いをするという事で言い渡されたのが、悪魔や墜天使、協会側でうろうろして裏で糸を引いている悪人の俺の観察、出来れば抹殺を依頼したらしい。
俺についての偽情報法を真実として聞かせて疑いもせず、親身に聞いた彼はそれを承諾したようだ。でそれを忠勝を見つけてからずっと隠れて聞いていた彼女は依頼した曹操と言う男の素性を洗い出して彼が禍の団《カオス・ブリゲード》というテロリストである事を掴み、忠勝を止めようと来た所であの闇に巻き込まれた。
そう言ってから彼女は
「疑いもせず突っ込んで行くどうしようもない主に変わって謝罪申し上げます。」
「いや、こっちは大丈夫だったから良いって・・・。というかあんなに警戒していたのになんで謝ってんの?アンタから見たら俺がアンタの主を殺そうとしていた様にしか見えなかっただろうに」
「いえ、話してあの男が言っているような人には見えませんでした。」
「――――――――え、マジで言ってんの?」
「これでも人を見る目はある方だと自負しています。」
なんか、自信ありげに言ってくる彼女はある意味凄いと思うが俺は思っていた事を口にする
「ああ、まぁ、それなら良いけど・・・。うん?それなら俺の事観察していたみたいだが、それじゃわかんなかったって事か?それで俺に気づかれてとりあえず戦ってみればわかる的な?」
「多分そうだと思います。」
「アンタんとこもとんでもない大将を持って苦労しているな。そんな斬れば分かる的な感じで殺されかけたのかよ。途中からそんな感じ微塵も残っていなかったぞ?アンタんとこの馬鹿大将は―――――!?」
そう言う突然。目にも止まらぬ早業で抜刀した刀の切っ先を眼前に突きつけれ驚く俺に
「―――――忠勝様の愚弄はお止め下さい。」
えっ!?アンタだってどうしようもない主だって言ったよね!?それなのに俺がバカにしたら怒るって、どういう神経してんのこの人!!?!慌てる俺に突き付けたまま冷たい視線向ける阿佐美嬢に
「おい!?自分は良い、他人はダメの鬼ルールかよ!!?俺が悪かった!!悪かったからそいつを下せ!!話が次に進まねぇから!!」
そう言うと彼女は刀を下すと同時に、
『―――――おいおい。我が居ない事を言い事に我の悪口か?』
今まで話しの話題になっていた本多忠勝、本人の声が辺りに響き渡る。それは拡声器の様な電子的な音声で、たまたま近くにあった電気屋のショーウインドーに置かれている複数の型の違う薄型テレビに忠勝が槍を担いでマイク片手に好戦的な笑みを浮かべている彼が映っている。
俺達はその映っているテレビに駆け寄ると彼は
『まぁ、いいか。これよりタッグ勝ち残り東国最強決定戦を行う!!お前さん達は強制参加だ!!』
「―――――はぁ?」
「・・・。」
何これ?雰囲気的には今までとたいして変わって無い様な気がするが、言っている事は意味がわからん。東国最強決定戦って何?そんな事を考えていると俺達は背後に気配を感じ、直に振り返ると三メートル位ある顔に仮面を着けた鎧武者が立っており、居合いの構えで左から身の丈に合った刀でショーウインドーごと薙ぎ払う
「ちぃ!?!」
「―――――!!?」
俺達は凶刃から逃れる様に左右に飛んで刀の間合いの外へ飛ぶ。飛んで一度、退いた阿佐美嬢は電気屋のショーウインドーを破壊した鎧武者の間合いに飛び込んで横一線、持っていた刀による居合いで大男の様な鎧武者の胴を切ったが、武者から漏れ出す様に纏っている見覚えのある嫌な感じのする黒い霞に触れた途端、刀身が触れた所だけ削り取られた。
「刀身が―――――!?」
「阿佐美嬢!?このぉ!!」
俺は阿佐美嬢に奴の凶刃が向く前に奴の懐に太陽龍王の剛爪《ソーラー・ステーク》を展開して飛び込み、ステークを胴に食い込ませながら、彼女から突き放す様に押し込み、勢いが止まった場所で
「―――――――――ステーク!いけいっ!!」
俺はさらに突き出す様に炸裂音を轟かせてステークを撃発させる。鎧武者はその威力に原形を留めていられなくなったのか、血飛沫を上げる様にどす黒い液体をまき散らして消し飛んだ。
そしてその後、周りを見渡すと飛び散ったのとは別の黒い液体の様な物が形を成し、似たような色違いの鎧武者が複数出現する。構えている俺達に電柱や街頭に括り付けられた拡声器によるアナウンスが鳴り響く
『お!なかなかやるじゃねぇか、精々頑張んな。ちなみに我がここのボスだから、そいつらを全部倒したら東国無双である我が相手をしてやる。じゃあな』
「おま!?おい!!ホントアンタんとこの大将はどうなってんだ!!」
「わかりません。――――――――ですが、今さっきの忠勝様が正常では無い事は解ります。」
「―――――――ったく!問題ばかり増えやがる。とりあえずあいつの所に行くしかないか。阿佐美嬢!」
「なんでしょうか?」
彼女を呼んだ俺は翡翠の輝きと共に取り出したハードポイントを首につけてホロウィンドウを展開する。俺はそれを操作してメカパーツの目立つ刀を取り出して彼女に投げ渡す。それを受け取った彼女は
「これは・・・。」
「アンタも俺もアンタんとこの大将に用がある。いろいろあるだろうが、利害は一致しているから此処は共同戦線と行こうか。異論があるだろうが此処は勘弁してくれ。」
「・・・わかりました。その申し出を受けましょう。」
彼女は俺の申し出に承諾しながら受け取った刀を抜き放つ。そうすると彼女の手の甲に赤色の二重円型のホロウィンドウが展開し、その中心に『仮契約:完了』の文字が現れる。直に消えた後、彼女の戦う意思に呼応して刀身が僅かだが唸り、駆動音を発し始める。
上手く起動したようだな。本来は少し刀身に血を与えるかして神器に情報を与えるシステムにしていたが、仮契約くらいなら皮膚との接触で行えるように改良した。本契約の方はゼノヴィア嬢に言った様に一度取り込んで内にある魂と対話する。血を与える行為は使用者の情報を登録させる行為だったのだが、総督さんと一緒に考えた結果。今の技術力なら血が無くても仮契約を行えるだろうし、本契約時に行う対話で十分という話になり、必要無くなった。
「そいつはドラゴン系神器”破刀龍の砕刀《セヴァー・ポットブレイク》”刀身に目に見えないほど微細な刃があってチェーンソーみたいに回転するんだ。駆動時の振動は感じないように作っているんだが、大丈夫か?」
「・・・いえ、殆ど普通の刀と変わりませんし、振動などは全然感じません。――――これなら行けます。」
彼女は砕刀を右に、左に鞘を持って一瞬の内に先頭の鎧武者を自分の間合いに捉え、刀身の刃が敵をどうゆうモノかを認識し、術式が起動して刃が青白く発光する。
「ポットブレイク。”瓶割”ですか・・・。私とは縁もゆかりもありませんが使わせて貰います。」
振るわれた刀身は眼前の敵を撫でる様に一閃。武者の体を通った刀身は火花一つも散らせぬまま、その体を上半身と下半身とに両断した。だが、元の黒いヘドロへと還った仲間の屍を踏み越え、新たに出てきた武者が刀を抜き放ち、砕刀を振り切ったままの彼女に迫る。
そして阿佐美嬢に俺は
「阿佐美嬢!!そいつは仮契約でも対人レベルで使える能力がある!!」
「はい。使い方は心得てます。」
「――――――え?」
まるで既に聞いていたかのように斬る為に寝かしていた振り切った刀身を迫る武者を写す為に起こす。
そして彼女はある言葉を口にする。
「―――――――――――かかれ、瓶割。」
《sever!!》
凛とした女性の掛け声と共に刀身が眩い光を放ち、鍔の部分に一周する様に二重に赤色の帯状のモノが出現。
そして刀身の中心に、四か所を囲む様に鳥居型の紋章が現れて高速回転を始め、さらに刀身は強い光を放ち始めると、鎧武者はまるで瓶を割ったかの様に粉々になって辺りに飛び散った。彼女はまだ出てくる武者から距離を取る様に此方に飛び退く、俺はマシンキャノンを唸らせ、弾丸を吐き出して敵を牽制しながら
「阿佐美嬢。なんで能力の事を・・・?」
「いえ、分かりません。一瞬頭に過ったとしか・・・・。」
頭に過った?仮契約には対話無しでもある程度使える様にしているが、脳内に直接使い方を教える機能は無い。阿佐美嬢に”彼女”が教えたと考えるのが妥当か?と言う事はまさか彼女を使い手の候補として見ているという事か?まったく勘弁してくれよ。内心頭を抱えながらそう考えていると数体がマシンキャノンの銃弾に食い破られ、残った二体が掻い潜って突っ込んでくる。それに俺と彼女は自分の間合いまで突っ込んで
「――――――――疑問点を抜きにしてもなかなか良い刀だと思います。」
「――――――――そいつはどうも!!」
二体の内の一体を阿佐美嬢は下から振り上げて両断。もう一体を俺は今さっきと同じようにステークを胴に叩き込んだ瞬間、撃発させて撃ち抜いた。それから撃ち抜き、真っ二つに両断された二体も黒いヘドロに還る。
そして俺達は構えを解いて走り出す。
「―――――――――急ぐぞ!」
「了解です。ですが道がお解りで?」
「馬鹿正直に道標があるんだ。そいつを辿って行けばどうにかなんだろ。」
そう言いながら辺りを見渡すとあからさまにこっちですよと矢印型の電光板ある。今さっきは無かったが、敵を倒すと出現する様だ。つまり向こうが戦いを望んでいるなら道先に出現する敵を倒せば、同じように矢印が出ると踏んで俺は走る速度を上げ、阿佐美嬢も納得したかのように俺を追従する。
鹿角や悠が敵を倒しながら忠勝の元に向かっている最中、ある場所では、忠勝は気だるい感じのする重い体をゆっくり起こし、くらくらする頭を抱えながら辺りを見回すと彼にとって見覚えのある光景だった。そこは木の床、奥に掛け字句と槍を飾っているなど道場である事が分かる。
「此処は我の―――――。」
「そうだよ。此処はお前ん家の道場だよ。」
聞き覚えのある声所か、コレはと思った彼は声のする方に視線を向けるとそこに立っていたのは
「――――――――わ、我!?」
「お、ようやく起きたか、我よ。」
「我よ?我がなんで・・・・・。」
「二人ってか?それはお前も我で我もお前だからだよ。」
彼が言う様に彼らの姿は瓜二つ。服装から身に着けている物まで全部同じで、ただ違いがあるとしたらお前は俺だと言った忠勝はさっき持っていた和槍を持っており、彼の瞳の色は黒よりのブラウンなのだが、彼はぎらついた金色の瞳をしている。重い体に渇を入れて立ち上がった彼は
「どういう事かわかんねぇが、お前が我だと?東国無双が二人居てたまるかよ。」
「そうだな。東国無双は一人だけしかなれねぇ、でもお前がなる資格があるのか?」
そういって嘲笑うような金の瞳をした忠勝は言葉を続ける
「――――――”大事な女”も守れない男が良く自分の事を”東国無双”なんて言えたもんだよなぁ。」
「――――――!?!んだとてめぇ!!」
「我の何がわかるってか?分かるさ!!その悔しさも悲しみも自分の弱さへの憎しみも全部!!さっきも言っただろう?お前は我で、我はお前なんだからな!!」
「――――――――ふざけたこと言ってんじゃねぇ!!」
襟首をつかみ上げるが、それを気にした様子も無く気味の悪い笑みを浮かべたまま彼を見る。
「黙らなきゃぶっ飛ばすか?―――だけどよ。ただでさえ弱ぇのに得物が無いお前に我を倒せんのか?」
「やってみねぇとわかんねぇだろうがぁ!!その我の事をなんでも解ってますって言うムカつく面をボコボコにへこましてやる!!!」
そう言ってお前の全てを知っていると言う金の瞳の忠勝に怒りを抑えきれなかった忠勝は、もう戯言は聞きたくないと言わんばかりに殴りかかろうと腕を上げる。
そんなやり取りがあった中、忠勝が居ると思われる矢印を追って敵を倒しながら走っている。その最中にチェックポイントと思しき場所で忠勝と阿佐美嬢がの会話が何回かアナウンスから流れた。最後辺りではぐれ悪魔に襲撃される直前の会話が流れ、彼と関わりのある彼女のあまり変化の無い顔色が少し強張って見えた時に、この会話は本当にあった事である事が分かる。だとするなら、多分ここは前の朱乃嬢の精神世界と同じく忠勝に関係する場所だと言う事になる。
そして鹿角は敵の位置を知る為に辺りを見ながら戦っていると此処の風景に心当たりがあるのか、戦闘中にあまり喋らなかった口を開く
「なんだか此処は忠勝様と住んで居た町によく似ています。」
「マジでか!!―――――――なら今向かって居る場所が分かるか?」
「多分ですが、私がお仕えしていた忠勝様の御実家かと・・・。」
「ならこんな戦闘する必要はねぇ、案内頼む。」
「それは良いのですが、ここが私の知っている道とは限りませんよ?」
「だけど、のんびり全部相手している暇はねぇ!!アンタの言葉と状況証拠による推測が正しければ、多分アンタの覚えている道の方が近道になるかもしれない!!」
少し考えるそぶりを見せた彼女は暫くして、視線を上げて俺に
「分かりました。ですがどうなっても知りませんよ?」
「良いから頼む!!」
そう言うと砕刀を鞘にしまって走り出した。俺はそれを追う様に走り出す。彼女は路地裏に入り、狭い通路を全力で走って行く俺達に対して、『指示されたルートから外れています。直ちに元のルートへ戻ってください。』と言うアナウンスと警報音が鳴り響く、多分ショートカットしているのとに対しての警告だろうが、俺達の知ったことか。
彼女が路地裏から出ようとすると進路上に今まで戦った中で別格の風格を持ち、背中に通行止めの標識マークを描いたのぼりを背中に着けた赤い鎧武者が出現する。俺は強化された瞬発力で阿佐美嬢を飛び越え、着地と同時に鎧武者に突っ込む。俺の突撃に対して抑撃しようと刀を抜き、迫る俺に合わせて振り下ろす。
「―――――――――――邪魔だ!!退けぇ!!!」
振り下ろされる前に俺は地を蹴ってさらに加速し、ステークを武者の胴に叩き込だ。その勢いのまま向かい側にある塀に叩きつけてステークを撃発させる。炸裂と弾丸の様な体当たりの衝撃で塀を破壊しながら黒いヘドロを撒き散らせる。俺は使い切った形成炸薬弾をシリンダーを展開し、排莢して足元に転がる空薬莢を蹴飛ばしながら駆け出した。スピードローダーで再装填を行っていると阿佐美嬢が
「――――――こちらです!!」
「――――――ああ!!」
今度は飛び上がって屋根の上を走り始める。俺もそれを追う様に背中から翼を出して飛ぶ。屋根に登るなら上空も大丈夫と思ったのが悪かった。俺が一件超えたあたりで、路地に横一列に並ぶ様に弓を持った今さっき立ち塞がった同じ格好の鎧武者がおり、それも弓矢の先に導火線の様な物が突いた底部が丸く先が尖っている矢尻。奴らは見た事無い様な弓矢の導火線に火を着けて放って来た。それを避けると近くで爆発し、爆炎と焼けた破片が俺に降り注いだ。
俺は熱や火に耐性があるし、防御力も強化されているからダメージはそこまでではないが、痛いことは変わりないし、直撃すれば堪ったものではないと思った俺は翼を戻して屋根に着地する。その頃には阿佐美嬢は屋根から飛び、下に居る弓隊に突撃していた。俺が屋根から飛び降りる頃には隊の半分ほどの武者を斬り倒しており、俺もマシンキャノンで辺りを制圧。
そして道が開けたと同時にまた走り出す。敵を倒しながら暫く走っていると今まで見てきた中で古そうな塀が見え始め、広い武家屋敷の屋根が見え始める。
「――――本当に着きました。」
「読みは当たっていたって事だな。それにしても此処がアンタんとこの大将の実家ってことか?――――俺んとこの相方も大企業の社長お嬢様だったり、雇い主が赤いお姫様だったりホント見てて腹立つわ。うん。」
高い塀に沿って走っている俺達の前方から今度は槍隊が突っ込んで来る。阿佐美嬢と俺は槍を持って突撃してくる武者を踏み台にして塀を超える。超えたと同時に円筒形型のクレイモアを残して塀の向かい側、砂利のあるバカデカイ庭に着地し、後から塀の向こうで爆音が轟いた。
そして俺は見て、家の含めた約1000坪は在りそうな敷地の広さに唖然とする。庭を見渡すと松の木に大きい池、ししおどしとか見るからに金持ちの庭日本風といった所か、さらに家程ではないが大きな道場まである。
そこで俺は阿佐美嬢に
「あのテレビの映像。アンタならこの家のどの辺りで撮っている物か分かるか?」
「・・・・多分ですが、一瞬だけ後ろの方に見覚えのある掛け字句が見えましたので道場かと。」
「そうか、って言っているそばから道場から嫌な感じがしやがる。」
俺は眉間に皺を寄せながら警戒して道場の方に歩いて行くと叩きつけられるような物音が響き、それが何度も叩きつけられているのか、物音が凄くうるさい。最後には道場の壁を突き破って木片と一緒に飛んできた何か、俺達の眼の前に姿を現したのは俺達が探していたところどころ服が破け、怪我を負っている忠勝だった。
「――――――忠勝様!!」
「―――――――――がぁ・・・・ぐぉ・・・・!」
そう言って忠勝のそばに駆け寄る阿佐美嬢。酷い見た目程の致命傷は無いみたいだが、それでも冷静だった彼女から少し焦りを感じる。今は忠勝は阿佐美嬢が見ている。なら俺がするのは周りの警戒。
そして俺は忠勝が飛んできた方に視線を向ける。大量の土煙りの中から感じる敵意を発している人影を捉えた俺はステークを上げて構える。そうすると聞き覚えのある声が
「致命傷は避けるか、伊達に東国無双を名乗るだけはあるか・・・。でも弱え、全然弱え、我としたらこんな奴が東国無双だなんて思いたくねぇよなぁ。」
「こ、この声は――――――――!?」
そうして土煙りから出てくる姿に俺は驚く、そこでぶっ倒れている本多忠勝のそっくりさんが俺と戦っていた和槍を肩に担いで此方に歩いてきている。だが、そっくりさんと言っても違いはあるみたいだ。本人と違って彼の眼はぎらついた金色の瞳をしており、瞳から感じるこの人を品定めしているような、舐められた視線は前に感じた事がある。
そして金の瞳を持つ忠勝を睨め返す様に、阿佐美嬢の制止も聞かずに蓄積されたダメージで重くなった体を起こす忠勝は
「まだ終わってねぇぞ!!」
「――――――忠勝様!動いては駄目です!これ以上は・・・!!」
「黙ってろ鹿角!!こいつは―――――――!!」
『ほら、またそうやって逃げる。ホントなさけねぇよなぁ!!お前は!!』
「――――――!?」
向こうの忠勝の声の質が変わった!?なんだ?この拡声器でも使った様な声は?それと神経を逆撫でするような感覚は一体?そんな思考をしている中、向こうの忠勝は
『一回はお前は初めて会った化け物に、説明によりゃはぐれ悪魔って言うんだったな。そいつが襲ってきた時、鹿角についた傷から目を背けたよなぁ!!―――――――――― 知りもしねぇ初めての人外!!お前、超パ二クッてたよなぁ?でもお前は勇敢に戦った!大切な女を守る為に!でも結果はどうだ?物語みたいな超展開で覚醒!!って感じで必死こいて倒しわしたものの、テメェの油断で鹿角の背中に一生消えない傷を負わせた。』
「――――――!?」
「な!ぐぅ――――――――やめろ」
『二回目は数年して武者修行とか言って自分の弟に全部家の事を任せて、家出たよな。何もかも自分の責任を放り投げてその場を後にしたかった!!此処は、この街はあの時の記憶を呼び起こすもんなぁ!!』
「―――――――やめろ!!」
『最後は、想定外について来た鹿角だ。はぐれた振りしてお前は逃げた!!自分が守り切れずにあの時の光景をもう一度見るのが怖くてお前は、逃げたんだよぁ!!背負う事の辛さにお前は逃げた!!もう味わいたくないよな!!あともう少しで自分の手の届か無い所へ行ってしれないという喪失感!!自分の油断で受けた傷それを直す事すらできず見守る事しかできなかった無力感!!我は嫌だね!!もう嫌だ!!あんな感覚を味わうくらいなら、もう最後の荷も捨てちまった方がまだマシだ。』
「―――――――――やめてくれ!!!」
そこまで言うと鬱陶しそうな表情で向こうの忠勝は
『お前なぁ、それなら今の行動は一体何なんだよ!!何もかにも背負う事にうんざりしたから武者修行とか口実作って飛び出したんだろぉが!!今更否定してんじゃねぇよ!!』
「―――――今さっきから分かった様な事と言うじゃぇ!!お前に我の何が分かる!!」
『だからさっきから言ってんだろうが、”お前も我で我もお前だ”ってな。』
”お前も我で我もお前だ”コイツの言葉はどういう意味を持っている。姿形を見る限りで考えるのなら言葉の通りなのだろうが、アイツが言っていた事は全部、忠勝の事だ。精神的に彼の痛い所ばかり突いて何かに誘導している節がある。それに段々と向こうの忠勝に力が集まってきている様な感覚も感じる。
そんな事を考えていると我慢できなくなった忠勝は
「うるせぇ!!―――――――――――お前なんて我なんかじゃねぇ!!」
そう言うと今まで鬱陶しそうな表情が変わり、なんだか笑いを堪える様な仕草を始め、さらに周りがざわつき始める。向こうの忠勝の力もさらに上がってきている。奴の周囲に今まで倒して来た武者を構成していた黒いヘドロが彼の足元に集まる。
そして彼は
『はっはっはっはっはっはっは!!!来た来たぁ!!あぁそうだ我は我だ!!お前なんかじゃない!!』
向こうの忠勝を黒いヘドロが覆っていき、約3mもある巨大な人型へと姿を変える。今まで見た武者の中でかなり重装甲で強固な甲冑で固められ、背中には巨大な推進機をついたゴツイバックパック、強固な籠手に覆われた手には彼の身丈以上あり、螺旋状の堀の入っているドリル状の巨大なランス。
そして兜の両サイドにそびえ立つ鹿の角を模した脇立があり、左目の部分が覆われて赤いカメラアイが輝く、まるで豪傑の武者と鋼鉄の体を持つロボットを思わせる姿だ。
『我は影、真なる我―――。もう何もかもが嫌なんだろ?だったら背負ってたもんと一緒に死んじまえ!!』
巨体と装備の重量で砂利を吹き飛ばし、重い足音を響かせながら、身体的ダメージと精神的追い打ちまで食らってまともに動けない忠勝と庇おうと彼に覆い被さる様に抱きかかえる鹿角に向かって、駆動音を響かせて回転するドリルランスを彼らに向かって突き出す。
「――――――――――やらせん!!」
二人に迫る何もかも巻き込み、破壊し尽く螺旋槍の一撃を前に立ち塞がり、受け止める者が居た。それは強大な力を得た影の忠勝からしたら小さき者であったかも知れないが、それで鈍く光る杭で鳴り響く接触音と火花を散らせながらしっかりと受け止めているのは悠だ。
そして彼の行動に疑問を持ち始める三人。その中でその疑問を口にするのは螺旋槍をさらに押し込む影の忠勝。
『――――――――何故この二人を庇う!!お前に関係無ぇ事だろうが!!』
「ある程度の事を聞き、それに関わってしまった。―――――そうして俺は彼等を助ける事に決めた。」
「・・・・・・・・。」
「――――――――。」
踏ん張る足で地面を抉りながら少しづつ押されてきている悠。でも最後の最後で押しきれない。
そして悠の表情に少しだけ影が出来るが、直に意志の籠った瞳で顔を上げる。
「それに少なからず今さっきの言い分に共感が持てないわけではない。そちらに向かなかっただけで俺もそういう可能性もあったかもしれない。だが、俺は零れ落ちるのを良しとしない我儘な男だ。背負っている荷を抱え込んで捨てられない。そんな男だ。――――俺と違ってまだ失ってはいないぞ。お前はどうする?忠勝。」
『ごちゃごちゃうるさいんだよ!!磨り潰れろ!!』
「―――――――言われて潰されてやる道理は無い!!」
しっかりと踏ん張る悠は一瞬だけステーク引き、緩んだ隙を突いて再度、撃発させながら突き込む。
彼は一連の動作に集められるだけの火力を注ぎこんで、螺旋槍を弾いて上に逸らせる。そこを見逃すわけも無く、悠は一気に間合いを詰めに出る。
「――――――――撃ち抜く!!」
『―――――――なめるなぁ!!』
背中の推進機を轟音を唸らせて吹かし、後方へと下がりながら螺旋槍を振るえる距離まで離れる。巨大である為射程はステークよりずっと長いが、はやり長い分だけ超近接戦になると無用の長物でしかない。
そして回転をしている螺旋槍を盾にする様に突き出されるステークを受け止める。
『―――――――ちぃ!?何が助ける事に決めただ!!部外者がしゃしゃり出て来てんじゃぁねぇ!!』
「関わった以上、知らぬ存ぜぬで通す事は出来ない性分なんだ。――――付き合って貰うぞ!!」
穂先で弾かれ、後方に下がりながらマシンキャノンの発砲音を唸らせて無数の弾を吐きだす。人からしたら十分大口径であるが、巨大で重厚な鎧姿の影の忠勝にはあまり効き目が無い様だ。それでも精神的には有効であるのか、力が膨れ上がっても感情に熱が入っている為に此方の思惑に簡単に嵌ってくれる。その証拠に動けない二人から離れる様に誘導する悠に疑問を浮かべずに螺旋槍を振り回して追って来る。
そして悠が離れた後に鹿角は忠勝に被さる様な姿勢から上半身を起こす。
「――――――大丈夫ですか?忠勝様。」
そう言う心配した彼女の声に対して口を開こうとしない。それでも彼女は
「――――――辛いのなら返事なされなくて構いません。傷の手当てを・・・。」
そう彼女が彼に手を手を伸ばそうとした時、彼は
「――――――――もういい。鹿角。」
「――――――――え、それは・・・?」
「もういいって言ったんだ。使い物にならない我を捨てて本家に帰れ。」
「な、何故そのような事を仰るんですが・・・・・。」
その問いに忠勝はかなりの力で手を握り締めていたのか、白くなり血が出ている片方の拳を挙げて砂利の地面に振り下ろす。鈍い音の後、その周囲の砂利が砕けてむき出しになった地面にクレーターが出来ている。
「お前、聞いてなかったのか?アイツの言っていた事。お前だって薄々は気づいてんだろ?我がなんで突然武者修行に出るとか言い出した理由。頭の良いお前なら分かってもいてもおかしくねぇ。」
「・・・・・。」
その言葉に鹿角の表情が曇り、動かなくなる。忠勝は重い体を起こしながら立ち上がり悠が行った屋敷の方に体を向ける。そんな忠勝に座ったままの鹿角は
「―――――――何処へ行くつもりですか?」
「こいつは我が起こした問題だ。我がけりをつけてくる。」
「そんな御身体でどうやって戦うつもりですか?武器も無いのに?」
「それでもだ。牽き付けてくれている奴にも悪いことしたからな。そいつの詫びにもこいつは我がけりをつけなきゃなんねぇ、だから――――――――――。」
そう言って彼女に振りむいた瞬間、思いっきり破裂音が周囲に鳴り響く、少し合間が開いて忠勝は我にかえると振り向いた彼の左の頬に少し焼きつける様な痛みと、視線の先に叩いてであろう手を振り切った状態の鹿角が目に入った。
そして彼女は
「――――――――――軟弱者!!」
「鹿角・・・・。」
「自分の不甲斐無さに嘆いてばかりで立ち上がらずにそのまま引き摺って!!最後は何もかも自分が死んで詫びるとか!!自分勝手もいい加減にしてください!!」
「・・・・・・・・だったら、だったら我にどうしろって言うんだよ!!我の気持ちもわからねぇのに好き勝手言うじゃねぇ!!」
「そんなことありません。何時も貴方を見ている私が分からないわけ無いじゃないですか、貴方が私の傷に負い目を感じている事なんてあの時から知っていました。それで私を少し避けていた事も―――――。」
彼女は辛そうな声を上げながら続ける。
「なら忠勝様にも私の気持ちがわかりますか!!―――――私もあの日以来、貴方に負い目を感じていました。貴方を支えると誓っておきながら庇う事でしか貴方を守れなかった事がどれだけ苦しかったかわかりますか?貴方の空元気の様な表情を見て、そんな表情をさせてしまった私の不甲斐無さに何度嘆いたか知っていますか?私は忠勝様の様に御先祖様の魂なんて持っていない!!それでも追いつこうと、忠勝様のそばに居る為に私は!!私は・・・・!」
「―――――――――――!?」
「――――――――――”だっちゃん”だけ辛いみたいに言わないで!!」
そう言う彼女の目尻には自然と涙が流れていた。此処まで感情を露わにして叫ぶように言ってきたのは何時以来だっただろうかと思う忠勝は、少し驚いたような表情を少し和ませながら鹿角に向き合い
「・・・・・お前、子供ん時の約束。よく覚えていたな。」
「忘れられるわけ無いじゃないですか。私達の大事な約束です。」
「鹿角、喋り方とか我の事をだっちゃんって呼ばなくなったのとその給仕の服を着るようなったのもそう言うの入っているのか?」
「昔の制度は無くなっても貴方を支える事を考えるのならこういうスタイルの方がやりやすいからです。」
そう言うと少し彼は近づいてふっきれた様な笑みを作りながら鹿角の涙を指で拭う。
そして忠勝は
「わりぃ、心配かけた。」
「慣れています。いつもの事です。」
「でも我は行かなきゃならねぇ、コイツのけりはちゃんとつけなくちゃいけねえからな。―――――付いて来てくれるか?」
「貴方を支える事が、それが私の誓いです。」
「だったら、まずはお前を背負う事が我の誓いだな。――――んじゃ行こうか。我等を守る為にアイツを牽き付けている我儘なお人好しの所にな。」
「分かりました。お供いたします。」
「―――――おう。」
そう言って彼等は土煙が上がり爆音のする屋敷の方に走り出す。
そして牽き付けている悠は古そうな和風の内装の屋敷の中で・・・。
「―――――――――――ぬ!?掠ったか!」
『――――――――ちょこまかちょこまかと!!』
鳴り響く駆動音とも抉る螺旋槍を豪快に薙ぎ払い、叩き付ける。だが、いくら破壊力がある武装だとしても大振りになる分は隙は出来る。それを掻い潜って持ち前の瞬発力で胸部中心にステークを
「見えた!!そこだ!!」
『―――――――――!?』
悠は螺旋槍を振り切った影の忠勝の胸部にその杭を突き立て様とするが、切っ先を刺す事すら出来ずにその重厚で強固な装甲で弾き飛ばされる。
『―――――――――むぅぅだぁぁだぁぁぁぁぁっぁぁ!!!!!!!!!!』
「―――――くっ!?押し負けた!!?」
《悠!!体格差のある今の状態ではあの堅い装甲は貫けないぞ!!》
翡翠のモニターを発光させてイグニスに言われた通り、体格差で負けている上、さらにステークの強度は問題無いが今の威力ではこの重量や強固さで突き刺さる前に弾かれる。着地と同時に螺旋槍が振り下ろされるが、横に飛んで避け、後ろに飛んで距離を取る。
そして破壊された畳と抉られた床から穂先を引きあげるのを見ながら禁手化する事を思案していると後ろ方から声が
「おら!!さんざん東国無双がどうたら言ったくせに苦戦してんじゃねぇか!!」
「すみません。お待たせしました。」
「――――――――ようやく来たか?」
《この賭けの勝機が見えて来たな。》
『まさか、そいつの事を待っていたのか?―――はぁ、そんな役立たずを待つ為に今まで粘っていたって事か?馬鹿じゃねぇのか?』
そう影の忠勝の言葉に瓶割を持った鹿角と共に立つ忠勝は笑う。
「おう。言ってくれるじゃねぇか。―――――でもよお前の言うように確かに我は役立たずだ。何もかも捨てようと全部から逃げた。それは事実だ。でもこれからは違う。」
『これからは違う?お前、これからやり直すとかふざけた事をぬかすんじゃねぇだろうな?』
「似た様な事だ。それにまだ我は全部捨てきれていなかったらしい。だから我は背負い直した。これからも鹿角と一緒に捨てずに背負って行く事に決めた。」
『ふざけんな!!ふざけんなよてめぇ!!今まで捨ててきたもんはどうするつもりだ!!』
「拾い集めるさ、どれだけ時間が掛かるかわからねぇが・・・。だけどまずは我が本当に”東国無双”を名乗れる男を目指しながら、本多忠勝の名に恥じない男になる。その為にも――――。」
影の忠勝の眼を意志のある目で見て言う。
「――――――我の弱さを越えて行く、その為に”ただ勝つだけの事よ。”」
その言葉に悠は笑みを向け、寄り添う鹿角もあまり変化が無いが微笑んでいる様に見える。彼の言葉に答える様に悠のハードポイントの左の装甲部分が勝手に展開され、波紋を広げながら展開された間の空間から青白い光が飛び出して忠勝の前に行った。
そして青白い光から声が
《気にいったぜ。まだまだ未熟だがお前は俺の力を貸すのに足る男だ!俺を使え!!》
光から気の良さそうな男性の声が響き、さらに光が強くなるとそこには畳に垂直に刺さった一本の槍があった。
そして彼は力強く頷くとその槍の柄を握る。腕が曲線の目立つ白と青の装甲に覆われ、肘にはコ状の分厚い装甲を持つ肘当て、手の甲は青い装甲が覆い、保持力を考慮されているのか指が灰色で少しゴム質に覆われ、手の甲に横に長い長方形の翡翠のモニターが付いている。人の腕近い両籠手。
肩には青い草摺。上部には白の円の中にある少し小さい赤い丸が日の丸を思わせる。それを見た悠はハードポイントの装甲が元に戻るのを確認しながら
「おいおい契約を結んじまったよ。―――――やっぱし、契約システムの方は中の魂に依存するか。忠勝。そいつはお前さんの相方が持っている神器と同じドラゴン系神器、槍飛龍の割槍《クレイヴィジ・ドラゴンフライ》まぁ、要するにそいつの名前は”蜻蛉切”だ。お前さんの代名詞だろ。」
「”蜻蛉切”か、そいつは我にお誂え向きな槍だな。使わせて貰うぜ。」
「一人でやる気か?俺も―――――。」
「行くぜ!!我!!」
「ちょっ、おい!ったく、人の話を聞けよ・・・・!」
「お願いします。此処は忠勝様、御一人にお任せ下さい。」
「分かったよ・・・。だが、危なくなったら加勢に入るからな。」
「それで構いません。」
先に突っ込んだ忠勝を二人は見守る。悠が彼女を一瞬だけ見ると、鹿角も腕が曲線の目立つ白と赤の装甲、肘にはコ状の分厚い装甲を持つ肘当て、手の甲は赤い装甲が覆い、保持力を考慮されているのか指が灰色で少しゴム質に覆われ、手の甲に横に長い長方形の翡翠のモニターが付いている。人の腕近い両籠手。
肩には赤い草摺、上部には白の円の中にある少し小さい赤い丸が日の丸を思わせる。忠勝と同じく仮ではなく、契約を結んだ証が悠の眼に入り、彼はその事態に頭を抱えながらも影の忠勝と忠勝の二人に視線を向ける。
そして忠勝は
「――――――それじゃ行くぜ!!」
『―――――――今更お前が出てきた所でぇ!!』
前に突っ込む忠勝に対して磨り潰す為に螺旋槍を振り下ろす。英雄の魂を持ち、高い身体能力を持っていると言っても振り下ろされる螺旋槍の方が早いし、巨大なドリル状のランスである為に当たりがデカイ。轟音を響かせて畳ごと床を破壊する。
『ははっ、潰れやが――――――――――!?』
「―――――――――――おらぁ!!」
自分の背後から聞こえた声に振り向こうとするが、振り下される割槍で背中のバックパックを傷付けられる。
傷付けられたと同時に小規模な爆発、振り向く前に少し前のめりに姿勢が傾く、今の攻撃は今さっき磨り潰したはずの忠勝の割槍によるもの。あの速度なら確実に潰されていた彼がどうして己の背後を取れたのか不思議でならない。影の忠勝は振り向き様に叩きつけた螺旋槍を畳と床を抉りながら下から振り上げるが、それを飛び上がって忠勝は回避する。
『どんな手品を使ったか知らないが、空中じゃ避けられないだろ!!』
ステークでの悠の戦い方は地面を蹴って前へ飛ぶんで間合いを詰めるが、高く飛んだら羽根でも無い限り空での移動手段は無い。跳躍が頂点に達するとその場で停止してしまうから恰好の的になる。さらにこの高さなら巨大な体に巨大な螺旋槍なら届く、此処で狙わない訳が無い。思った通りに突き出される螺旋槍が頂点に達して止まった忠勝に迫る。
『馬鹿が!!届かないと思ったか!!バラバラになりやがれ!!』
「――――――――――タツヤ!!」
《Agile thruster、Boost!!》
その掛け声に忠勝の肩にある青い草摺が稼働し、上部から独立して展開された三つ程、配置されているハニカム状に配列された超小型ノズルから青白い発光と共に推進力を得る。
空での移動手段を得た忠勝は螺旋槍を難なく避ける。両肩についているのは割槍と砕刀の共通装備である”龍の飛翼《アジャイル・スラスタ》”元々彼等の特性であった空気を取り込み己の翼から推進力として吐き出す龍の息吹《ドラゴンブレス》を元に供給された空気を圧縮してプラズマ化させ、加速・噴出。これを推進力として使う一種の電気推進術式システム。
通常状態での推進装置はアゼリアを含めた悠にもあまりない無い装備、特に忠勝や鹿角の神器は高速機動戦闘を主体しているから加速装置としても使える。さらに刃にはエスから教えて貰った対黒き獣用の術式が施されている為、力を奪う事は出来ない様にしてある。
そしてこれから起こるは反応しきれない斬撃の嵐。天井に突き刺した螺旋槍はすぐには戻せないこの機を逃す忠勝ではない。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
《thrust!!thrust!!thrust!!thrust!!thrust!!thrust!!thrust!!thrust!!》
『がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!!?!?!!」
忠勝の額辺りに水色の小さい龍門が展開し、彼の膝に何枚も一列に並んだ龍門が当たると全て砕け、忠勝はさらなる加速をする。目指すは速度の到達点。加速機能と推進機による超加速。バックパックの件もそうだが、明らかに装甲の強度が落ちている。ステークを弾いた装甲に傷をつけたのだ。強引に突き刺すステークより傷を作りにくい槍でだ。今さっきと違ってあの巨体にノイズが走っている。どう言った原理かわからないが、一連の流れから今までの事を考えると対象の精神的な影を具現化、それを否定させる事によってその否定する心から力を得ると言う感じだな。使用者の心によって進化する神器と似ている。
そしてその否定する力が、忠勝が自分の影を受け入れる事で弱まっている。それはあの強固な装甲にも影響を与えている様子、アレも元々は黒いヘドロだとするなら力が弱まれば防御力も低下する。こいつは前の朱乃の事を考えるとやはり黒き獣関連と考える悠。
そして忠勝の斬撃は閃光の様な速度で巨体を傷付けていく、引き戻した螺旋槍を暴れる様に振り回して嵐の如く周りの物を破壊しているが、全て避けられてしまうと言うより、振り回す槍が忠勝に追いつけていない。影の忠勝が騎士《ナイト》以上の高速で動き続ける彼を捉える事が出来ないのだ。
「――――――――コイツで決める!!」
『がぐぅ!?!―――――――ま、まだだ!!我はお前なんかに!!』
嵐の中から飛び出て来た忠勝は宙で反転し、影の忠勝を視線に捉えながら膝と左手をつけて滑る様に止まる。
影の忠勝は体中にノイズが走り、傷だらけになりながらも耐え、止まった忠勝に残った力で螺旋槍を振るって彼に迫る。忠勝は脇と右手で柄を保持し、穂先に影の忠勝を写し込む。
そして太刀受け分部を一周する様に二重に水色の帯状のモノが出現。穂先を中心に、四か所を囲む様に鳥居型の紋章が現れて高速回転を始め、さらに穂先は強い光を放ち始める。
「お前の言った事は全部、間違っちゃいねぇ・・・。我はそれを受け入れ前へ進む!!――――――――――我はお前で、お前は我だ。」
そう言った瞬間、螺旋槍を持って突っ込んで来る影の忠勝が少し驚き、直に満足そうな笑みを作る。螺旋槍を突き出す様に突貫する影の方の力強い歩みが緩み、遅くなる。
そして忠勝は立ち上がり、両手で柄を持ち
「そして我と共に歩むぞ!!東国無双の道を!!――――――結び割れ!!蜻蛉切ぃぃ!!!!」
《cleavage!!!》
それを横に一閃。振られた割槍の穂先の軌跡に沿って行われた割断は影の忠勝の胸部を横一線に割り、中から光の塊が飛び出て来て忠勝の胸に収まる。
それと同時に世界が煙を散らす様に崩れ去り、彼等は元の橋に戻ってきていた。どうやら今さっきの影を倒した事で俺達は元の空間に戻れたようだ。さらにあの影から出来てきた光は多分、元々は彼自身のは影の部分だったかもしれない。それを認めたから新たな光に転じた。と考えるのが妥当か・・・。
「世界を核である影を倒せば元に世界に戻る。って事か、――――――――――まぁ、なんにしても元の空間に戻れてよかったぜ。」
そう言う俺に忠勝は割槍を消して此方に向き、腰を九十度に曲げて頭を下げる忠勝。
「我の浅はかな判断で命を狙った無礼!!どうかお許し願えないだろうか!!」
「お、おう!?!え、あ、大丈夫だって!ほら、こうやって俺生きているし、許すよ。」
そう言うと嬉しそうに顔を上げる忠勝。今までの態度から考えてどういう心境でこうなったのか分からず、戸惑いう俺。
そして彼は
「御寛大なお言葉!感謝してもしきれません!」
「いや、その話し方なんだよ。改まっちまって、普通に喋れよ。」
「そう仰るのであれば――――。謝罪ついでに我から頼みたい事があるんだが良いか?」
「別に良いけど、無理難題で無ければ大丈夫だ。」
「―――――――そうか!そうか!!」
やけに嬉しそうに頷く彼が続けて口を開く
「我を助けて貰った恩もあるが、それ以上に我が主になって欲しいと思った。」
「―――――――――?」
「――――――我の頼みは、主に我が主君になって欲しいのだ。」
「―――――――え?」
唖然とする俺は、俺の少し後ろの方に居る阿佐美嬢に視線を向けると前に手の甲を重ねて綺麗にお辞儀をしながら
「どうかよろしくお願いします。」
「――――――――え?」
そして忠勝に向き直ると
「これからよろしく頼むぜ。――――――――殿。」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?!?!!!!」
そんな彼のいきなりの申し出に俺の驚愕の声が橋の上で響いた。
ではまた次回