戦いの世界を生き抜いた女主人公は様々な世界で冒険するようです。 作:銅英雄
ミライside
グントラム達を倒した私は一休みする為に地球儀の上に座った。
ミライ(中々に楽しめたわね。取り巻きは大した事はなかったけれど、グントラムは今まで戦ってきた相手の中でも相当の強さだった。まぁそれでも私にダメージを負わせるには実力不足だったけれど)
そんな事を考えているとキャプテンカイト達が地球儀の前に来た。思ったよりも速かったわね。
カイト「此処で間違いなさそうだな」
スメラ「じゃあこの先にあるんだな。あらゆる願いを叶える宝が……!」
カイト「……どうだろうな。本当にどんな願いも叶うのならカリムーは苦労しなかったと思う。恐らくあれは例えだ」
スメラ「ええ!?それじゃあ宝ってなんだよ?この世の果ての『世界最高の宝』、『どんな願いも叶える宝』、そして『終わりをもたらすもの』……」
……そういえば私とベルが以前いた世界には『どんな願いも叶える宝』が存在していたわね。それもある意味では『世界最高の宝』だったり、『終わりをもたらすもの』だったりもするけれど。
カイト「そしてカリムーはその宝を持ち帰れず、ヒントは出しても具体的な内容までは形についてさえ語らなかった……」
スメラ「……そういえば可笑しな話だよな。願い事を叶える彫像や古代の超兵器だったら外見ぐらいは言いそうなものなのに」
確かに地球儀だからこそあやふやなヒントしか出せなかったのかもしれないわね。こういう謎解きもこの世界の醍醐味と考えた方がロマンがあるとベルなら言いそうね。
カイト「つまり形を言うと宝が何かわかってしまうからだよ。まぁ中に入ればわかるさ」
そう言ってキャプテンカイトが歩を進めようとすると、彼のパーティーの1人が呟いた。
???「あっ、そうか……。わかっちゃった……」
カイト「エンゼル……?」
エンゼル……。広川武美(ひろかわたけみ)の事ね。ゲームにおいてはほぼ必須の仲間だから、此処にいるのは当然かしら。あとパーティーにいるのはコックのジュンこと夏目准(なつめじゅん)と航海士であるレンこと浅井蓮(あさいれん)……。
ゲームを円滑に進める為には妥当な面子だけれど(特にエンゼルから貰える装甲+90はとても魅力的だから)、こうして見るとキャプテンカイトのハーレムパーティーに見えるわね……。
エンゼル「ボイラーは宝が何かを知ったから進むのを止めたんだ。……天使っていうのはこの遺跡の管理人だったんだよ」
カイト「いきなり訳のわからない事を言い出すなよ」
エンゼル「……ごめん。そんな気がしただけ。変な事を言っちゃったね」
彼女は宝の正体に気が付いたのね。天使云々はともかく、船乗りにとっての『最高の宝』は少し考えるだけで答えに導かれる事もあるもの。
うちの仲間で言えばアリスとユキコが正解を言っていたわね。アリスは私達と同じ異世界出身だからその回答まで容易に辿り着いていたし、ユキコは持ち前の情報力を駆使して正解まで辿り着いた……。まぁどちらもかなり切れ者だから、そこまで考えずとも宝が何かわかっていたでしょうね。
スメラ「こ、これは……!」
カイト「……巨大な地球儀か!」
スメラ「おまえは此を予想していたのか?」
カイト「地図だろうというのは予想していた。東から来たカリムー達がこの島から北に進路を変えたのは不自然だからな」
成程……。彼は彼なりに謎解きをしていたのね。その結論に至ったのもこの島に来る前でしょう。
スメラ「どうしてこんなものが最高の……いやいや、ちょっと待てよ。まさか……!」
カイト「そうだ。今の世界にある地球儀は世界の殆んどの部分を想像で描いているけど、これは恐らく正確な世界の地図なんだ」
ミライ(一応この世界にも地球儀は存在しているけれど、どれも曖昧なものだった……。それに対してこの地球儀は後の世界地図になるものとして出来上がった地球儀という訳ね。観点が違うとこういった推理も出来るのね。興味深いし、もう少し聞いておこうかしら)
スメラ「驚いたな……。海流も海の深さもちゃんと書き込まれている。これなら何処へだって安全に行けるぞ。この地球儀は固定されているから持ち帰るのは無理にしても、この地図を書き写して持ち帰るだけで世界は大騒ぎになるな!」
カイト「まさに船乗りにとっては『最高の宝』だよ。どんな場所に行く願いも叶えられる。そういう意味では『どんな願いも叶える宝』にもなる」
スメラ「でもコレが『終わりをもたらすもの』っていうのはどういう意味なんだ……?」
カイト「それは……」
言葉が詰まったところを見ると、まだそこまでの答えは出ていないようね。なら……!
ミライ「『終わりをもたらすもの』……。それは冒険の終わりを指しているのよ」
カイト「だ、誰だ!?何処にいる!?」
ジュン「キャプテン!上!!」
カイト「上だって!?」
私は地球儀から飛び降りて姿を現す。
ミライ「初めましてと言うべきかしらね?キャプテンカイト」
レン「わぁ……。綺麗な人……」
エンゼル「いやいやレンちゃん?そんな事言ってる場合じゃないよ?」
カイト「あんたは……?」
ミライ「私はミライ。元カメダ海賊団の一員よ」
ちなみに言えばもうグントラム海賊団ですらないわね。
カイト「なんだって!?……元?」
ミライ「私達のボスであるカメダはグントラムによって追い出されたわ」
カイト「じゃあグントラムが……いや待て。グントラムは何処に行った!?」
ミライ「さてね。私を殺そうとしたから、軽く抵抗したら尻尾を撒いて逃げて行ったわ」
まぁグントラムを逃がす気は更々ないけれどね。その為にベル達に連絡を入れたのだから……!
スメラ「よく見たらあちこちに海賊達が倒れているな……」
カイト「これもあんたが?」
ミライ「ええ。しっかりと息の根も止めているわ」
私がそう言うと全員が後退りする。
スメラ「そ、それよりも冒険の終わりっていうのはどういう意味なんだ!?」
ミライ「そのままの意味よ。未知の大陸の大きさから海岸線や大陸から離れた小島の存在ですら全てわかってしまう……。答えがわかってしまうとそれは冒険とは言わず、只の旅行になるわね」
カイト「それでも行ってみなくちゃどんな島かはわからないんじゃないか?」
ミライ「そうかもしれないわね。……では例え話をしましょうか」
私が口を開くと全員が息を呑む。
ミライ「あの時は世界の広さは誰にもわからなかった……。何もわからないのに冒険に出たから彼は偉大な冒険者なんでしょうね。そこに何かがあるとわかって行くのとは難易度が全然ちがうわ」
カイト「だから宝がある事を口にしても、宝が何なのかという事に関して秘密にしていた。ここまで辿り着く後の時代の冒険者への贈り物にする為……という訳か」
ミライ「その結論も悪くないわね。ロマンのある考え方だわ。……けれどそれはこうとも取れるわ。自分達が命懸けで証明しようとしてきた『地球は丸い』という仮説に対する解答をこのような形で見付けてしまった……。そこからカリムーが感じたのは『無念』という想いではないかしら?」
私は更に考察を語る。
ミライ「それにこれを持ち帰っても自分達の苦労を理解してくれる人がいなくなる。世間からすればカリムーという人物は『地球儀を見付けた運の良い男』と評価されるわ。命懸けの旅を続けてきた人間からするとそのような結末が耐えられなかったのかもしれないわね」
カイト「……!」
長々と考察を語ると彼等はなんとも言えない様な表情をしていた。
ミライ「さて……。これを聞いて貴方達はこの地球儀を書き写すつもりかしら?」
スメラ「それは……」
ミライ「揺らいでいるわね。まぁこれを書き写してしまえば冒険者として大切なものを失う事になるから、仕方のない事だけれど。……まぁあと200年程すれば正確な世界地図が完成するでしょうね。それこそ様々な冒険者達が繰り広げた冒険と一緒にね」
さぁ、仕上げに入りましょう。
ミライ「そうなるとこの地球儀はいらなくなるわね。私達で壊してしまいましょう」
スメラ「待て!壊す事はないんじゃないか?これは人類の宝だぞ!」
ミライ「……ならどうするつもりかしら?」
カイト「……この地球儀は後の時代の冒険者達にも見てほしいと思っている。もしもあんたがこれを壊すと言うなら俺達は実力行使で止めるつもりだ」
ミライ「そう……。それなら全員でかかって来なさい」
私がそう言うとキャプテンカイト達はそれぞれ武器を構えた。バトル開始……ってね。
今回はここまでです。
次回、決戦……!