バカは死んでも治らない   作:さっさかっぱー

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七話 ー新学期ー

「はじめまして!2組担任の森 あいです。とりあえず一年よろしくお願いね!」

 

快活という表現がしっくりくる眼鏡の似合う彼女は、自らをISの整備を専門にしているエンジニアだと名乗り、教員免許を持っていたから担任をやる羽目になったのだと笑いながら語る。

 

「操縦も一辺通りできるとは言え、専門ってわけじゃないから。答えきれない部分はなんとかできるように頑張ります」

 

例えば、と言葉を切って考えている森先生。

 

いきなりできません!なんて元気に言われてもこちらとしては困るばかりである。どうしたものかと若干キョロキョロしているクラスメイトも何人かいるしこんな担任で「1組担任の織村先生を紹介してみる……とか」大じょ「きゃーーーーーーー!!!」!!?!?!?!!???

 

思わぬ反応にギョッとする。

ざわつくクラスの反応に森先生は満足げ。

してやったりを丁寧に表現すれば自ずとあんな顔になるんだろう。

最新技術を学びに来た理系女子集団連中だと、半ば偏見を持っていたけれど、なんというか想像していたのとは著しい乖離がある。

いや、偏見と現実が違うなんて当たり前極まりないことだけれど、なんというかこの反応をする理系女子というのはイメージがつかない。

 

「はい!静かにー!みんなが織村先生の大ファンなのはよくわかったけどこのクラスの担任は私だからねー!」

 

パンパンと手を叩きクラスを静める。

クラスメイトたちを見回して、興奮冷めやらぬなりに静まり返ったことを確認するとニヤリと笑った。

 

やな予感が「ちなみに私は整備が専門なので、実技の授業は1組、つまり織村先生のクラスと合同です」「◆◆◆◆◆◆◆◆◆ーーーーーーー!!!!!!!」……………うげぇ。

 

もはや声とすら認識できない大音量のノイズ。

なんというか。女性オンリーな環境なだけでも辟易しているのに。

正直このクラスでやっていける気はしない。

 

 

 

学校初日にして不登校になりそうである。

おっさん若い女の子の感性わかんないし厳正なるくじ引きの結果クラス代表押し付けられるし休み時間にクラスの子大半外出て行って何するでもなく廊下でたむろってるし学食にハンバーガーないし事あるごとに悲鳴じみた歓声が聞こえてくるし妙な偏見で凝り固まった人間が散見されるし学食にハンバーガーないし。

校庭に木蔭がないのも大きなマイナスポイントである。

部屋に戻れば待っているのはふかふかベッド。貴族様が文句を言わないレベルには上等なものなのだろうそれには大変満足してます。IS学園サイコー。

とはいえ、隣の貴族様がトゲトゲしていなければの話である。声の感じが刺々しい。強いて前向きに捉えるならば、私に対する遠慮がなくなって友人に一歩近づいたくらいか。…………刺々しい友人は遠慮したいところだが。

 

うるさい。帰ったらまず何より微睡むのが優先でしょ。いいじゃん。そのままで。制服二着三着あるんだから。勘弁して。ほんとに。実力行使する?普通。同性とはいえデリカシーをね。いや、剥かれるのってヤバイヤバイ。いやわかった。脱ぐから着替えるから。構えながらにじり寄らないで。その顔女の子がしていい顔じゃない。

 

これが自称神様の言う"反動"なんだと言うのなら、全くもって一回目の私の目論見通りである。

波乱を望んだ一回目の私よ。ぶっ飛ばしてやるから覚悟しとけよ。

平穏でなくとも心休まらずとも、せめて瞑想させて欲しい。五分でも静寂が欲しい。

島一つが学園になってるなんて聞いて、海辺の岸壁に腰掛けながら微睡むのも素敵かもしれないなんて夢想してた時期に戻りたい。まさか塀に囲われた上、塀の外に出るのに許可がいるとは。

防犯上仕方ないとはいえ外に出るための申請に一週間かかるとはちょっと予想の斜め上である。どこいった適当試験の最先端セキュリティ。

授業が終わって、寮に戻る前。

本音を探しがてら学園を探索して知った驚愕の事実、屋上の閉鎖。

学校での絶好の昼寝スポットが全滅である。

 

口煩い貴族様の魔手から逃れて、ベッドで微睡もうとしてもドアの向こうからガヤガヤと聞こえる環境音。冗談だと言ってくれ。昨日気にならなかったのはあれか?昨日から入って来てたのが一部だけだったからか?もしかしてこれからずっと?就寝時間以降はそうでもないはずだと思う、思いたいけれど休日に昼寝もままならなかったりする?本当に?

 

……………………。

 

なぜ止める貴族様。え?二組の?なに?知らないけど。あ、ごめん聞いてなかった。え?代表?うん、私。クジ引きで。うん。それじゃ。いたっ。……離してくれるかな?ちょっと右手引っ張るのはシャレになんない。え?なに?…………。うん。ほう。…………はぁ。わかったからとりあえず離してもらえる?うん。ありがとう。で?……え。なに言ってんの。男が?候補に。物珍しさで?……えっと。そもそもISって女性しか動かせないんじゃないの?いや。前世を思い出すから新聞もニュースも読まないし見ない。…………いや。世界経済に興味持ったところで法人営業くらいにしか役に立たないし。いや、まあ土人と言われても反論できない育ちだけど、日本語だと一般的に土人って蔑称だから気をつけてね?というかよくそんな言葉知ってんね。今時そんな罵倒聞かないけど。それで?その男達が代表に?いいんじゃない?代表なんて面倒なだけだし。選ばれた余裕?聞いてた?くじ引きよ?くじ引き。強いていえば神に選ばれたなんて表現ができるけど、ありがた迷惑極まりないし次会ったらあいつ殴ってやる。

…………まあ混ぜっかえしたけどさ。言わんとしてることはわからんでもないよ?英国の代表候補生ながら最先端実験機"ブルー・ティアーズ"の搭乗者。インフィニット・ストラトス第三世代機にしてSF映画に必須装備とも言える脳波感応型兵装を実装している唯一の機体。そんな機体を与えられてる君は、随分と期待されているに違いない。…………いや。違うよ。シャレとかじゃなくてね。……ポカンとしないで。そうだよね。日本人的なシャレとかって母国語じゃない貴族様にはわかんないのかな?ほら機体と期待で……。いややっぱなし。

とりあえず、それなりに努力してその立場、機械を手にした君はきっと運だけでここにいる彼らが気に入らないんだろう。…………そういうことだよね?要はサッパリと雑にまとめればちやほやされてる彼らにムカついた。そういうことね?もっと私頑張ってるのにっ!って。

そりゃね。適当にもなるよ。さっさと貴族様に納得いただいて寮監を説得しなきゃいけないから。構ってられる時間が、そりゃそうよ。平穏は何より優先される。明日が火曜日でよかったね。土曜日だったら間違いなく貴女を放置して寮長室に直行してた。え?ドアを防音仕様に。は?ゆっくり寝られないとか私に死ねと?

…………平穏は何より優先される。私に貴族様の気持ちがわかんないように、貴族様も私の気持ちわかるわけないんだから。

とはいえ、おんなじ部屋のよしみだし。同じ皿のハンバーガー美味しく食べた仲だし。応援するし、協力するのもやぶさかじゃあない。

で。まあ結論模擬戦やることになったんでしょ?ならそこでぶっ潰してやればいいじゃん。試験で初めて触ったらしい男性生徒諸君はISへの推定搭乗時間二時間弱。私と一緒。それに対して負ける目は間違いなく無い。貴族様どれだけ乗ってるの。数千?ああ。そう。懸念点を挙げるとするなら貴女の機体が実験機であるところだけど。国家が公式発表して大々的にひけらかしてるくらいなんだし名ばかりのハリボテなんてことはないでしょ?貴女の言う努力がどの程度かはさておいてさ。訓練も模擬戦も星の数ほどこなしてるでしょ?なら負けの芽はないはず。素人考えではね?それで?貴族様のお考えではどうなの?数千の搭乗時間をこなしたイギリス代表候補生さまのお考えは?負けの芽はおあり?…………そうだよね。苛立ちも不愉快さも軽蔑も模擬戦で男連中に叩きつけてやればいい。

はいおしまい。もういい?私は寮長に相談しに行きたいんだけど。

いい?もう引っ張って止めないね?よし。離したね?

じゃあ行って来ます。あ、そのあと学食なんていかが?お貴族様の口に合わないかもしれませんけど。そう?それじゃまた後で。お箸の使い方でもお教えしますよお嬢様。え?知ってる?そりゃすごい。

 

んじゃいってきまーす。

 

 

ちなみに、私の要望は寮長に一蹴された。

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