バカは死んでも治らない   作:さっさかっぱー

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二十三話 波乱はひとまず落ち着いて

夕方。

風通りのいい、神社の境内。

ススキが風に揺れて、肌寒さを連れてくる。

久々に着込んだジャンパーがすごく心強かったのを覚えている。

 

ぼんやりと夕焼け空を眺める僕と、その隣でぼんやり話し続けている少女。

幼馴染。十数年の付き合いで終わってしまった友人。

 

 

ねえ。

シンデレラは幸せになれたのかしら。

町娘が一夜明けてお姫様。

それは素晴らしいけれど、住む世界が全然違うわ。

シンデレラの住んでた世界は塗り変わった。

 

 

……愛があれば。

だったかな。

確か、僕は幼馴染にそう答えた。

 

揺るがぬ愛には、世界なんて関係ないさ。

 

忘れもしない二分の一成人式。

その帰り道。

幼馴染の神社の縁側で、黄昏ていた僕に、彼女はシンデレラの話をしてたはずだ。

彼女の表情は覚えていない。

影になった彼女の顔、その表情は記憶にはない。

 

 

でも、世界は広いわ。

その境は広くて深い。

梯子も、橋も届かない。

二度とシンデレラが元の世界に戻ることはないわ。

 

朗らかな印象が強かった彼女が、こうも悲観的なことを言ったのが印象的だった。

 

なんて返したのか、覚えてはいない。

なにせ二分の一成人式。

自分の薄っぺらさに打ちのめされてグロッキー状態だったから。

 

けれど、彼女もきっと同じように不安に潰されそうだったんだろう。

自称神さまの話を聞いた上で思い出せば、彼女は混血、ナニカと人との子どもだったわけだ。

 

とすれば、あれは両親の住む世界への言及だったのか。たしかに幼馴染の父親にはあったことはない。学校を終えて遊びに行っても、休日に遊びに行っても。いつでも彼女の母が迎えてくれた。

 

結局。

彼女のその不安が、なんなのか理解する前に私は死んだ。

私と同じく、転生した男の手によって刺し殺された。

 

彼女のその不安は、結局解決したのだろうか。

もし、私が生きていれば、彼女の助けになれたのだろうか。

私がそれを知る方法は一切ない。

 

 

 

 

目がさめる。

懐かしい顔を思い出した。

 

面倒見のよかった幼馴染。

 

私の死後、彼女は世界を選べたのか。

世界の境に答えを出せたのか。

 

「起きたか」

 

窓からの夕日。

逆光の影から声をかけられる。

艶やかな黒髪に、かつての幼馴染を幻視する。

 

「アケノ?」

「……松本。意識を失う前、何をしていたか思い出せるか」

 

圧のある声。

幼馴染とは、似ても似つかない声に我に帰る。

織斑先生と目を合わせ、少し瞑目する。

 

夢見た景色は記憶の熱に焼き尽くされた。

思い返すのはあの熱。

 

「対抗戦への乱入。竜の襲来、逃亡、ですかね」

「貴様の乱入も、だがな。森先生はたいそうおかんむりだったぞ」

 

と言われても。

あのISは間違いなく私を狙っていたし、それを放置して逃げればクラス中を危険にさらす。

 

「嵐湯が合流した時点で避難すべきだった。どうして逃げなかった」

「……あのISの狙いは私でした」

「だとしても、嵐湯に任せることはできただろう」

「信用できません」

 

一組の男子生徒。

その時点で信用しかねる。

 

即答した私に、少し眉をひそめた先生は話を切り替える。

 

「……結果的に、けが人は貴様一人だ。観客席割り込んだISからの逃走中に怪我をしたことになっている」

 

頭に巻いた包帯、青あざになっているだろう背中、じわじわと痛みを訴える胸部。

 

日常生活には問題なさそうな怪我。

 

「私、一人。りんちゃ、鳳さんは?」

「今日は休みだ。言葉使いにとやかく言わん。鳳は無事だ。痛み、いや、熱を感じはしたようだが、ISの絶対防御を抜くほどのものではない」

「よかった。……休み?」

「賊の襲撃からすでに29時間、今日は土曜日だ。丸一日とちょっと寝ていたことになる。篠ノ之をはじめ、皆ずいぶん心配していた」

 

皆。皆ね。

一体誰のことだか。

 

あまり細かいところまで聞きたくないので話を変える。

 

「約束を守れずすいません。昨日の夜時間あけていただいたのに」

「その件は、こちらが謝罪すべきだろう」

「えっ」

 

そう言って頭を下げる先生に言葉を失う。

 

「私の認識が甘かった。挙句再起不能になりかねない怪我までさせてしまった。本当にすまない」

 

認識が甘かった。

時期、規模はともかくこういった襲撃自体は予想できていた?

あるいは襲撃にはならずともあちらからの接触があると予測できていた?

いや、言葉の意味よりも、むしろ、今は

 

「え、あの。いやいや。その。頭あげてください。先生が謝るなんて」

 

事件の事情聴取かと気構えていた分、先生への謝罪にうまく返せない。

 

「来客があったあの夜。あの時点で話していれば、まだ違う結果になったはずだ。一夏たちとも、協力関係を結べただろう」

「いや。あ。いえ。あの。仮に、えっと……一組代表の方は、どう、いえ。転生者はどれほどいるんですか?」

 

謝罪。

そりゃ管理責任は先生にあるだろう。

けれどあの事態は教師とか生徒とか関係なく、もっと上層の警備部門だとかそっちの管轄だろう。

 

事前情報の有無で状況は変わったと思わないし、協力しようがしまいが神器をぶつける以外に勝算のない私は、どのみち怪我まみれになっているに違いない。

 

もしも、なんて考えるだけ無駄。

 

先生の謝罪に情報と感情が錯綜して、結局質問を返すしかできない自分に嫌気が走る。

謝罪を返すなり受け取るなりすべきだろうに。

 

「……これまで確認できているのは三十七人。全員が異能持ち。ほとんどは再起不能。現状私が把握しているのは四人だ」

「三十七人?……いえ、再起不能とは?」

「文字通り、の再起不能。二度と立ち上がれなくなったものたちのことだ。半身不随。精神障害。単純に死んだものもいる」

「……私が、聞いても大丈夫な、話、ですよね?」

 

ガラガラ、と。

先生はベッドのそばに椅子を引き寄せ、どしりとすわる。

 

徐々に沈む太陽に、蛍光灯の光が強くなる。

 

「聞くべき話。ではあると考えている。既に結の耳には松本の話は届いているだろう。備える必要はある。だが」

 

人工的な灯りは、先生の表情をより際立たせている。

 

「まだ、引き返せる。関わり合いになりたくない。穏やかに生きたいのであれば、まだ私でなんとかできる」

 

祖母を思い出した。

引っ越し前夜の、厳しげに笑ったおばあちゃん。

 

「保留することもできる。怪我が治ってから考えてもいい」

 

心配しているのか、邪魔なのか。

葛藤を隠せていない、あの笑顔。

 

「どうして、そこまで?」

「私が貴様の教師だからだ」

 

即答。

あらかじめ要していたかのような、回答。

 

その目はきっと。

私を見てない。

 

「教師。ですか」

 

何を思って、何を望んでいるのか。

先生が身を焦がしてでも欲しいものは、きっと。その先に。

私を通して見ているものこそ。きっとそれ。

 

「ああ。たとえクラスが違おうとも。私は教師だ」

 

天秤は、望みに傾く。

であれば。私は使い潰されることになりかねないだろう。

 

「……先生は、きっと穏やかさを勘違いしてますね」

 

けれど。

束博士との一幕で、既に先生の手は取った。

答えは変わらない。

 

「友達ができました。喧嘩したり、狂人を自称してたり、記憶の連続性に自信がなかったり、欠けてばかりで、類が友を呼んだみたいな人たちです。力になりたいと思いますし、彼女たちの平穏がなければ、私の世界は波乱なままです。賽は既に投げました。今更前言撤回は男じゃないですね」

 

先生はしばらく私を見つめ、小さく息をつく。

 

黙ったまま沈む太陽を見つめて、こちらに視線が戻った時にはいつも通りの凛とした雰囲気が戻っていた。

 

「スタンド使い、超能力者、霊能者、過負荷。表現は多々あれ、異能持ちの連中の大半。松本は天界人、と名乗っていたか。まず前提として、異能持ちとの表現で統一する」

 

背後に以前の金色の男を出現させ、指で示す。

 

「これは後天的なものだ。まだ結と決裂していなかった頃に発現した」

 

近くにいるだけで威圧感を感じる。

ヒトガタ。

筋骨隆々だが、どこか機械的。

その表情は、無表情のままこちらを見ている。

 

「発現した?」

「ああ。この力故に、先日の襲撃は起きた。そう認識すればそれ程誤りではない。先ほど話した四人。転生者四人による闘争の結果が昨日の襲撃だ」

 

闘争の結果?

あの場には複数の転生者が?

 

「内顔が割れているのは結のみ。他三人は名前すら不明。人数すら正確でない可能性がある」

「あの竜は?その転生者では?」

「違うだろう。転生者はもっとでたらめだ。少なくとも竜で統一されていたからな、アレは。アレがもし転生者であれば、竜に猿が混ざって、魔法を使って兵隊を召喚するくらいのことはしでかすだろう」

 

転生者ってでたらめすぎでは?

 

「おそらく結の改造を受けた異能者、改造人間だろう。……これまではせいぜい虎だのゴリラだの現実に即した改造人間だったんだがな」

 

現実に即した改造人間。

思わず笑って先生に睨まれる。

 

「すいません」

「……まあ、仕方がない。現実離れしているのは理解している。そしてあの男が結の手の物であれば、目的もわからんでもない。牽制だ」

 

先生の背後に現れる金色の男が口を開く。

 

『束と私、後はおそらく、一夏たち生徒へのな』

「牽制?」

 

そっと口に指を立てる金色の男の女性ぽい所作から感じる怖気を隠すように言葉を返す。

 

「他の三人への牽制だ」

 

あれ、と首を傾げる。

変わらず、指を立てたままの金色の男はそれに加えて首を横に振り出した。黙って聞けと言うことだろうか。

 

「現状。目的も規模も能力も判明していない結レベルの転生者が三人。最低でも、三人だ。おそらくそこへの牽制と見ている。いつでも手は出せるぞ。とな」

 

ん?と首をひねる。相変わらず金色の男は指を立てて首を振っている。

 

「他三人への先んじての先制攻撃。あの事件を端的へまとめれば、つまりはそう言うことになると判断している。巻き込まれる方は迷惑極まりないが」

 

「えっと。つまり、あの男、あの竜はちょっかいかけにきただけで、敵対するまでは目的になかった?」

「再三試験、テスト、と言っていたしな。額面通り受け取るのも危険だが、おそらくそうだろう」

「けど「つまり、再度の襲撃。他の転生者の手の物による襲撃も可能性として非常に高い。その場所がここになる可能性も、また高い。と言うことだ」…………なるほど」

 

口を挟みかけた私を、金色の男が手で遮る。

遮ったまま勢いに任せて話す先生の目からは、何も窺い知れない。

 

「警戒策はこちらに任せろ。関わると言った以上。今後また戦うこともあるだろう。今日っこくも早く完治させろ」

 

そう言ってカーテンで仕切られた向こうへと移り、ファイルを持ってこちらへと戻ってくる。

ベッドのそばの椅子に腰かけると、ファイルを開いて何やらペンを走らせ始めた。

 

「あの。先生?」

「ああ。話は以上だ。報告書をまとめねばいかんのでな、少し場所を借りる」

 

そう言ってペンでファイトをカツカツと叩き私から目を逸らす。

そんな先生のそばから金色の男がゆらりとそばに立つ。

 

『質問は受付られない。聞こえている前提で話を続ける』

「は

 

金色の手が口を塞ぐ。

 

『聞こえるのはわかった。だが声には出すな。頷きか首振りで答えろ』

 

頷く。

 

『これは、結の手にとって私に植え付けられた力だ。……後天的な異能者の話には続きがあってな』

 

頷く。

 

『遺伝的、文化的継承による異能の発現は少数だが観測できた。が、事故、改造による異能の発現はこれまでありえない、ありえたところで全人口の総数からすれば無視できる程度のはずだった。だが』

 

凛々しい表情のまま鞄からノートを取り出し、ペンを走らせる。

背表紙には業務報告と太ペンで書いてある。

幽波紋の口から言葉は続く。

 

『結がそれを可能にした』

 

ベッドのそばに貼っている番号と、私の生徒手帳と、枕元の時計を見比べてボールペンを走らせる。

 

『そして、それ以降、異能者は指数関数的に増加している』

 

ベッドの周りを仕切っているカーテンをめくり、養護教諭の机からカルテを取って戻ってくる。

そして業務報告のノートと見比べながらさらにペンを走らせる。

 

『既に世界は異能者の存在を感知している。ISに続く技術革新だと水面下ではISの発表以来の混乱になりつつある。表立っていないのは不幸中の幸いだが』

 

ペンの動きを止め、再度資料を見比べる。

ベッドと資料、ノートと、右往左往する先生の視線に反して、金色の目は私から外れない。

 

『もはや、各国は束でなく結を追っている。結を確保した国こそ、時代の覇権だとな』

 

ペンを胸元にしまい、鞄からデータ印を取り出し日時を合わせる。

どこに置くでもなく左手で押さえたまま印を押してノートを閉じる。

 

『だが、結にはそのつもりはない。』

 

パタン。と乾いた音が響き、小さく息を吐く。

そしてノートを鞄に放り込み、先生の視線もこちらを向いた。

 

『結は、世界を壊すつもりだ。そのための最後の鍵は、松本。お前になる可能性が低くない』

 

はい、ともいいえとも答えられない。

というか意味がわからない。

 

思わず口を開きそうになって、枕元の電子音に止められる。

 

『今は、これが限界だ。これ以上は別の機会にしよう』

 

その言葉を最後に金色の男を消して、先生自身の手で枕元の時計のスイッチを押し、アラートを止めて口を開く。

 

「え「すまなかったな。カルテの見方に手間取った。今日のことは他言無用だ。事情を知らん生徒に要らぬ混乱をさせるなよ。火曜日までは安静にするように。今日いっぱいは生徒の面会は謝絶。……うまくやれ」あ、はい」

 

凛と、有無をいわせずにうなずかされる。

 

「おそらく明日、森先生からこってり絞られると思うが。怪我で済んで何よりだ。異能持ちに関して教師はある程度理解している。とはいえ、学校生活に差し障りが出るようなら、指導が入るので注意するように。以上。何か質問はあるか」

 

強いて言えば、金色の口から話されていたことについて聞きたいが、そのことではないだろう。そのくらいは察せる。

 

「いえ。大丈夫です。もし今後何かあれば寮長室にお邪魔してもいいですか?」

「かまわん。寮長室にいなければ、職員室かアリーナにいる。幸にして生徒指導室はほとんど利用されないからな。密会場所には困らんだろう」

 

もっとも、今年は増えそうだがな、と続く言葉に思わず笑う。

 

「私はどうも、その手の指導に向いていなくてな」

 

曰く、何故か生徒指導リピーターが続出したらしい。

天下のブリュンヒルデもこれには辟易したそうだ。

 

「ファン心理って不思議ですね。怒られてもいい、なんて」

「私が担任になった程度で歓声が起こるのも度し難い」

「先生に実技見ていただけるって話が出た時の歓声もすごかったですよ」

 

少し眉を潜めた先生をみて、思わず笑いが溢れる。

笑った私の額に、軽くデコピン。

いたい。

 

「人をからかうほど元気なら、もう大丈夫だろう。退院までしっかり休むように」

「はい先生」

「重ねていうが、今日は教師以外は面会謝絶だ。もし生徒が顔を出したら、そう伝えるように。罰則などはないが。完治が遅れればそれだけ学園生活にも響く。しっかり治せ」

「はい」

 

枕元の時計をカルテと雑に鞄に放り込み、そのまま立ち上がる。

 

「では、水曜日の実習で会えるのを楽しみにしている」

「はい。今日はありがとうございました」

 

仕切りのカーテンをくぐり、しばらく部屋の隅をじっと見つめて、小さく笑って退出する。

足音はそのまま遠ざかり、やがて聞こえなくなってから数分後。

ちょうど、枕元に並ぶものの確認が終わり、ナースコールと私の制服一式だけ、寝る以外の行動はできそうにないことをどうクリアすべきかを悩み始めた頃。

 

部屋の隅からガタン。と音がする。

先生が見ていたところだ。

 

「先生に戻らないだろうし、出てきても大丈夫だと思うよ」

 

誰だろうか。

先生に気づかれながら追い出されないところを見れば、あの一件でアリーナにいた誰かだろうけど。

 

カーテンから顔を覗かせたのは、貴族様、ついでりんちゃん。

不自然に半身になって顔を出した彼女たちは、私を見て小さく息をつく。

一人どころか二人も隠れていたらしい。

織斑先生はどうやって気づいたのか。

 

「今私面会謝絶らしいです」

「そういうこと言う?」

 

顔をしかめるりんちゃんに、微笑んで答える。

 

「気づいてただろうし、織斑先生もわざわざ怒らないと思うよ」

「……うへぇ。まじ?見えないは前提として、おっ。とと。温度と匂いも完全に消したと思ったんだけど」

「……覗きに全力出し過ぎじゃない?」

「っと。淑女としてあるまじき趣味ではなくて?」

「私にそれさせたセシリアが言う?っとと」

 

カーテンの外へ引っ張られるようにりんちゃんが消え、少し上体を逸らしただけの貴族様が眉を潜める。

 

「さすがに往生際が悪いのではなくて?ことここに至ったら腹括ってしかるべきだと思うのですが」

 

嫌な予感がする。

というか、そんなことある?

 

「ちょっと!剣道で鍛えてるかどうか知らないけど引っ張んないでくれる!私一夏好みの華奢な女なのよ」

「一夏がそんなっ!」

 

聞き覚えのある声には血の匂いとともにくぐもった唸りに変わる。

カーテンの向こうでは、またスプラッタな光景になっているに違いない。

 

「箒さん。無理にとは言いませんが、少なくとも病室で大声をあげないでくださるかしら。バレたらことですし。それに一夏さんの好みはパツキン美人になりますわ」

 

決して友人を悪くいうつもりはないが、男の趣味はどうかしていると思う。

 

「ほ、しのざ、篠ノ之さん無理に連れてきちゃったの?流石にどうかと思うんだけど」

「ええ。私もどうかと思いましたもの。友達に捨てられたくない、なんて泣いてた方が友達を捨てるなんて」

「な、泣いてないし」

 

かれこれ累計でおじいちゃんだから。

老成してるし。人前で泣くわけないし。

 

カーテンの向こうから聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「な、泣いたのか」

「泣いてない」

「ええ。心の汗が流れただけですわ」

 

貴族様本当にイギリス人?

きょうび、涙を心の汗なんて表現する?

 

ジト目でカーテンを見つめれば、ホホホと朗らかに笑う貴族様が顔を出した。

 

「さ。約束通り場は整えましたわ。あとはどうぞ、煮るなり焼くなり」

 

そう言って、血の腕で捕まえている箒をカーテンのこちら側に放り込んで出て行く。

 

「え。流石に、あ。ちょっとセシリア?それは無理やりすぎるって、わかった!わかったから!出てくわよ!その腕引っ込めなさい!」

 

小声で叫ぶ器用なことをしながらりんちゃんも出て行った。

ドアがそっと閉まって、後には血塗れの箒が残った。

 

無理やり連れてきたにしても、彼女ならある程度抵抗できたはずだ。

ここにくる動機がわからない。

 

血痕をどうにかしようと擦って、余計被害を広げている彼女は、やがて諦めたのか、こちらに目を向ける。

その瞳の色はかつて見た覚悟を浮かべた輝き。

 

ああ。そうか。彼女は意を決してここにきたのか。

 

であれば。私もすべきことは決まっている。

 

月が昇るころ、ようやく互いに口を開いた。




転生者図鑑 ①

【一言】
神様転生!?まじで!
じゃあ俺
超サイア人と竜神族と力とドラクエの魔法とFFの全能力で!!!

これでチーレムだ。ヒャッハー!!

【能力】神様からのプレゼント補正 下記補正が入る
筋力 +18
体力 +18
精神力 -
俊敏性 +18
外見 +18
体格 +18
知性 -
教養 -

【履歴】
学生時代の千冬、束により再起不能。
手段を持て余し最後は自滅した模様。



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