夜――
棚に置かれた時計の針がそろそろ22時を示そうとしていた。軽い気持ちで始めたPC作業が長丁場になりかかっていることに気付き、僕はキーボードを叩いていた手を止めて大きく伸びをする。机の上の液晶ディスプレイ上では形式を変換された短い動画ファイルが次々とスライドショーのように再生されている。
小川張りのタープに舞い落ちる桜吹雪――緑のゲレンデを飛び交うトンボの群れ――渓流を流れゆく鮮やかな落ち葉――雪の湖畔から見上げた夜空のタイムラプス――
それらは過去のキャンプで僕が撮影した断片的な映像だ。中身を確認し、いくつかの決まりに則って種類ごとに割り振ってフォルダへと収めていく、そんな作業に没頭しかかっていたのだ。改めて動画を見返しているとその頃の思いが蘇ってくるようで、これがどうしてなかなか時間を忘れてしまう。
キャンプのハイシーズンといえばおおよそ初夏から秋口にかけてなのだが、その時期に撮影したものは実は意外と多くない。僕はリンちゃんのように冬専門ではないので普通にキャンプへは出かけるものの、いかんせん人が多ければ騒音や映り込みに他者への迷惑と、カメラを回すには少々塩梅が良くない。僕が基本はソロであることを加味すれば、それなりに落ち着いた画を撮りたいと思うのも理由の一つだった。それが投稿用の動画ともなれば尚更のことだ。
転勤のゴタゴタもあり動画撮影からはしばらく離れている。僕の開設した動画チャンネルである『トムcamping』も最後の投稿から半年近くが経過していた。何か新しい動画に使えそうな素材が無いかと漁っていたハードディスクの中身が空振りだったことを考えると、そろそろ撮影を再開するべきタイミングなのかもしれない。
動画を仕分け終えてフォルダを閉じると、僕はブラウザを立ち上げて自分の投稿した最新の動画にアクセスする。そしてそこに書き込まれた二つのコメントを眺めてはしきりに頬を緩ませる。
コメントの存在に気が付いて以来まるで日課のようになってしまっているその行動を、僕は飽きもせずに繰り返していた。何度確認しようと中身が変わるわけでも新しいコメントが付くわけでもないのだが、ただそれがそこにあるというだけで僕は嬉しかった。言ってしまえばそれらがリンちゃんとなでしこちゃんのものだと100%確証があるわけではないが、それでも状況的にこのコメントが二人によるものだと推測するのは不自然ではない。これは僕にとって、あの夜が幻ではなかったことを示す証のようなものなのだ。
なでしこちゃんとリンちゃんと麓でキャンプをしてから一週間が経過している。僕と彼女たちの時間の流れが同じならば今週は二人ともキャンプはお休みのはずだ。まあ、原作と違って僕という異質な存在が混ざってしまったからには必ずしもそうだとは言い切れないのだが……もしかするとバタフライエフェクトによって原作にないキャンプが生じていないとも限らない。一人キャンプの時間を脅かされたリンちゃんがソロキャンリベンジに向かったかもしれないし、触発されたなでしこちゃんが乏しい道具を抱えて無謀なキャンプにチャレンジしようとしたかもしれないのだ。いや流石にそれはないか……少なくともなでしこちゃんに関しては桜さんが許すまい。実際のところなど知りようもないが、物語に干渉するというのはそういった可能性を孕んでいるものだ。
“そういえば、僕という存在は彼女たちにとってどのように映ったのだろう?”
ふとそんな考えが頭を過る。
僕は自分を大層な人間だとは思っていないが、一度ならともかく二度ともなればリンちゃんとなでしこちゃんの中に印象に残っていてもおかしくはない。第一話から第三話にかけて主要人物に関わりをもったMOBキャラクターその一――原作アニメに当てはめるとすればそんなところだろう。
変なヤツだと思われただろうか。再会したときのリンちゃんの視線からは訝しみを感じた。けれどもなでしこちゃんからは大分好意的に遇されたと思う。以前恩返しを約束されたとはいえ、出会ったその場で鍋のお誘いを受けたのは僕からしても驚きだった。その後の二人の対応を見るにけっして煙たがられてはいないと思うのだが……どうなのだろう。
考え出すとどうにも気になって仕方がない。しかしながらそんなものを確かめる方法はない。得られる情報はこの間の二回のキャンプの反応だけ。彼女たちとメッセージのやり取りができるわけでもない。動画のコメントに返信をしてみるか。いや、結局あれが二人だと思っているのも僕の主観的な思い込みでしかないわけで、そもそも本人たちに聞く事柄でもないだろう。なんだかまるで意中の相手の気持ちを知りたい思春期の少年じみてきたなと溜め息をつく。しかもその相手が架空のキャラクターとくれば、客観的に見れば何とも
とりあえずパラパラとゆるキャン△の漫画をめくってみるも何の役にも立たなかった。当たり前だ。そんなキャラクターが原作に存在するわけがないのだから。いうなればそれはただの二次創作でしかなくて――
「そうだ」
唐突な閃きが僕に舞い降りた。確かめようがないのなら、自分で考えてみるというのもアリなのではないだろうか?
原作にない人物に対するキャラクターたちの反応など本来存在し得ないものだが、そのときの状況を基にして類推してみればリンちゃんとなでしこちゃんの気持ちに近付けることができるかもしれない。相手の気持ちを知る、ではなく、相手の気持ちを想像する。要は二次創作なのだ。
幸いにしてリンちゃんとなでしこちゃんの人となりに関しては原作漫画とアニメという資料がある。それに加えて実際に二人と対面したときの様子も参考にすれば、より真に迫った二人の人物像を描くことができるのではないだろうか。
そう思うと俄然やる気が溢れてきた。
僕だって曲がりなりにもゆるキャン△ファン……ゆるキャンパーの本能が、本物のリンちゃんとなでしこちゃんの気持ちを知っている筈……!! 僕にだって本格的なゆるキャン△二次小説が作れる筈だ――――ッ!!
そうと決まれば話は早い。小説なんてまともに書いたこともない僕だったけれど、まるで何かに取り憑かれるようにしてキーをタイピングし始めた。
――――――――――
「白菜、ネギ、ニラ、とうふ~♪ もやしっ、餃子~♪」
ご機嫌なメロディを奏でながらなでしこが次々と材料を鍋に放り込んでいく。
その様子をリンは横合いからぼんやりと眺めていた。先ほど何か手伝おうかと申し出たものの、本栖湖で助けて貰ったお礼なのだからと断られてしまったのだ。鍋を作るなでしこの手つきは淀みなく、リズミカルにキッチンバサミを使いこなす様は料理馴れしていることを覗わせた。自分が手を貸すまでもなく着々と下ごしらえは進んでいく。読書に戻ろうかとも思ったが隣で料理を作ってくれている同級生を尻目に活字に目を落とすのもなんだか気が引けてしまい、結果手持無沙汰に椅子に収まっているというわけだった。
「これでよしっ!」
全ての食材を放り込み、作業を終えたなでしこが鍋の蓋を閉じる。
「できるまで中を覗いてはダメですよ?」
「なでしこの恩返し……」
禁を破ればどうなるのだろう。食材に足でも生えて逃げていくのだろうか。他愛もないことを考えながらリンは気になっていたことをなでしこに尋ねた。
「そういえば、お姉さんは?」
「富士宮の方に行ってるよ。友達と遊ぶんだってー」
南部町から麓キャンプ場まで約40km。荷物を抱えたなでしこを車で連れてきたお姉さんの姿は今ここには見当たらなかった。聞けば後で戻ってきて、今日はなでしこ共々車の中で一夜を明かすのだという。妹のためにわざわざ送迎するのみならず車中泊にまで付き合うとは、何とも妹思いなお姉さんだとリンは思った。
「ふえっくしゅ! うー急に寒くなってきたねぃ……」
寒さに身を震わせたなでしこが着衣の襟を寄せ身を縮込める。いくら着込んだとて冬のキャンプは寒いものは寒い。とりわけ今日は諸々の事情から焚火はお預けとなっているから、暖を取る手段が貧弱なキャンプ模様となっていた。ガスコンロの火では気休めにもならないだろう。ならばリンはどうやって寒さをしのいでいるのかと言えば――
「貼るカイロあるけど使う?」
冬キャンプの心強いお供、貼るカイロだった。
「いいの!? ありがとー!!」
喜び勇んでカイロを受け取ったなでしこに、リンは効果的な使い方をレクチャーする。
「両目に貼るとあったかいよ」
「ホント?」
「……ウソだよ」
リンの冗談を真に受けたなでしこがホットアイマスク状態に移行する前に止めてやると、本当の使い方、首の付け根、みぞおち、肩甲骨の間に貼るといいことを教える。
「それにしても、冬なのにお客さん一杯だねぇ。こんなに人がいるなんて思わなかったよ」
リンがなでしこの背中にカイロを貼ってやっていると、辺りを見回したなでしこが意外そうに呟いた。
リンにとってもそれは意外だった。人がいないことが冬にキャンプをする理由の一つであったのだが、今日のキャンプ場はいつになく来場者が多い。周囲に視線を巡らせれば、どこを向いてもテント、テント、テント――リンがチェックインして以降も、まるで雨後の筍のようにキャンパーがひっきりなしに来場して次々とサイトを設営していった。貸し切り状態も珍しくない本栖湖キャンプ場に比べればその人口密度は雲泥の差だ。流石に近くのテントと隣り合うようなことにはなってはいないが、ソロを好むリンにとっては少しばかり居心地が良くないのも事実だった。
そういった意味では思いがけない乱入者となったなでしこの存在は歓迎するべきなのかもしれない。賑やかな場所で一人ぼっちで過ごすより誰か話し相手が居る方がまだ気が紛れるというものだ。本来リンが望んでいた過ごし方とは異なるが、それでもこの状況ではマシな選択肢なのは確かだった。
「確かに有名なキャンプ場だし、貸し切りってことはないと思ってたけど……イベントか何かやってたのかな?」
「この前のキャンパーさんも来てたしきっと何かあったんだよ。びっくりだよねぇ、二週続けて会うなんて。でもおかげでこの前のお礼もできるし、丁度よかったかも!」
「うん……」
なでしこの言葉にしばし悩んだような素振りを見せると、それからリンはおずおずと口を開いた。
「あのさ……」
「ん?」
「あのさ……この間はごめん」
リンの謝罪になでしこはきょとんと首を傾げた。言いづらそうに眉根を寄せたリンに謝られる覚えが、なでしこには思い当たらなかったからだった。
「ほら、サークル誘ってくれたのに、なんていうか……すごい嫌そうな顔しちゃったから……」
「あー……」
苦笑いを浮かべたなでしこに、リンは目を伏せながら後頭部を掻いた。
「ううん、私もなんだかテンション上がっちゃってて……無理に誘っちゃってごめんなさい」
しおらしいことになでしこも自分の過失を主張する。
「あの後あおいちゃんに言われたんだよ。リンちゃんはグループでわいわいキャンプするより静かにキャンプする方が好きなんじゃないかって」
「それはまあ……そうなんだけどさ……けど」
しかしながらリンは顔を顰めたままに続けた。
「でもそれは失礼な態度とっていい理由にならないっていうか……露骨に顔に出しちゃったのは私の落ち度っていうか……」
リンは大きな溜息を一つ吐き出してこう切り出した。
「私ってそんなに顔に出るのかな?」
「へ? 何のこと?」
「さっきあの人……先週本栖湖で会ったキャンパーの人。鍋に誘われたときにちらっと私の方見てさ。なんだか申し訳なさそうな顔して帰っていったから、なんだか私に気を使ったみたいで、ひょっとしたらまた顔に出ちゃってたのかなって」
「うーん、そう……かなぁ? そんなことなかったと思うけど。リンちゃんの気にし過ぎかもしれないよ?」
「ならいいんだけど……」
けれどもリンには一つ気がかりなことがあった。
一週間前、本栖湖でキャンプをしていたときに他にいた唯一のソロキャンパーは、その夜リンの前になでしこを引き連れて現れた。初めは何事かと警戒したリンだったが、背後で半べそをかくなでしこに気付いて事情を聴いてからはそれも無くなった。連絡先も分からないという帰宅困難者のなでしこが何とか家に帰れるようになるまで面倒を見る……リンにとってそれは全く構わなかった。構わなかったのだが――
なでしこのお腹が鳴ったとき、リンは自分の持っていたカレー麺を分けてあげようかと思ってはたと戸惑った。リンのカレー麺は二つしかないが、その場には三人の人間がいたのだ。理屈としてはお腹を空かせた少女にカレー麺を与え、残りを持ち主のリンが食べる。それで何の問題もない。しかしもう一人の人間を差し置いて自分たちだけでカレー麺を食べるのもなんだか気が引ける。かといって自分も夕飯はまだだから譲り渡すのもなんか違う。道義的にそうあるべきという感情と、自分のための食糧を放出する事への抵抗感に板挟みになって、リンは咄嗟に行動に出ることが出来なかった。そうしているうちに彼がカレー麺を持ってきてなでしこに与えたことによってリンは出る幕を失ってしまった。結局のところ物が同じであったことからこれ幸いと自分もカレー麺を提供して三人仲良く夜食を啜るという運びになりはしたが、きっと彼がカレー麺を出さなければリンがカレー麺を出すことは無かっただろう。彼にカレー麺を渡したときの一瞬の苦笑が、まるでその心を見透かされたように思えて恥ずかしかった。それでももう会うことはないと思っていたから旅の恥はかき捨てとばかりに我慢できていたのだけれども――
そんな感情が果たして表に出てはいなかっただろうか? 先ほどの再会したときのやり取りを振り返るとなんだかそんなような気がして、リンは胸中複雑な気持ちになっていたのだった。
「リンちゃんは他の人と一緒にキャンプするのは嫌いなの?」
なでしこがリンへと尋ねる。
「どうだろう……私ソロ以外でキャンプしたことないから。あんまり騒がしいのは嫌だけど」
「私ね、この前もすっごく楽しかったよ。暗いのはちょっと苦手なんだけど、誰かと一緒にいれば全然怖くないし、外で食べるカレー麺ってこんなに美味しいんだーって感動しちゃったよ」
にっこり笑ったなでしこは湯気を上げる土鍋を見てさらに続けた。
「だったら皆で食べればもっと美味しいお鍋だったらどうなるかなって思ったらワクワクしちゃって、それで今回持ってきてみました!!」
ばんっ!と胸を張って言うなでしこに、リンは目を丸くした。
「だからリンちゃんも試してみようよ、まったりお鍋キャンプ。いいかもって思ったらまた行ってみて、そんで気が向いたらみんなでキャンプしようよ」
そんななでしこの誘いは、リンにはけっして不快ではなかった。
“本当にコイツは、他人の間合いに入って来るのが上手い”
絶対に無理強いはしないのに、気が付けば自身のペースに巻き込んでいる。なでしこの誰よりも楽しそうに振る舞うその姿は自然と周りの気を惹いてしまうのだ。
それはリンには無いある種の才能なのだろう。
「あ、お鍋できたみたいだよ!」
がぱりと開けた土鍋の蓋の下からもうもうと湯気が立ち上った。その中をリンが覗き込めば真っ赤な汁が顔を出す。
「担々餃子鍋!! そんなに辛くないから心配しなくていいよ。辛そうで辛くない少し辛いお鍋だよー奥さん」
「ラー油かよ」
なでしこの言い回しにリンはクスリと吹き出した。
「はいはいたーんとおあがり」
「いなかのおばあちゃんか」
年寄りじみた言い草で鍋をよそってくるなでしこからあつあつの器を受け取る。
「浜松餃子、たくさん入れたんだよー。お代わりもいっぱいあるからね!! あ、でもあっちのキャンパーさんに持ってく分は残してあげなきゃだよね」
にこにこと嬉しそうな顔で自分の器に具を取り分けたなでしこは、辛抱たまらんとばかりに箸を手に取った。リンも手元の器に目をやる。
たくさんの具材が詰め込まれた鍋からは美味しそうな匂いが漂ってくる。
「……分かったよ」
鍋の出来栄えに観念したようにリンは呟いた。その様子に、リンが箸を付ける瞬間を窺っていたなでしこが疑問符を浮かべる。
いっそ清々しい程にソロキャンを引っかき回されたリンだったが、今は何故だか悪い気はしなかった。
リンにとってキャンプとは一人で静かに過ごす時間であったし、今もそのイメージは変わらない。今日だって前回だってソロで来たのに思わぬ来客に見舞われて、正直疲れると思わないこともない。けれどその二回――誰かが隣にいるキャンプは、間違いなく新鮮な体験ではあったのだ。自分からは踏み込もうとは思わないが、それが向こうからやって来たのなら……門前払いを食らわす程のことでもないかと少しだけ、ほんの少しだけ思い始めていた。
「食わず嫌いも変だからさ。せっかくだし楽しもうか、“まったりお鍋キャンプ”」
口の端に微笑を浮かべたリンの言葉に、なでしこは大きな笑顔を作ったのだった。
――――――――――
気が付けば夜が白み始めていた。
こんなに熱心に文章を書いたのは就活のときにもあっただろうかと言う程に熱中していた僕は、ようやくキーを叩く指を止めて自分の綴った小説もどきを見返してみた。
どうしてこんなものが出来上がったのかが不思議だったが、素人なりに形になっただけ奇跡というものだ。
改めて考えてみると、なでしこちゃんは凄いということが浮き彫りになった。やっぱりなでしこちゃんが居たからこそリンちゃんは野クルの皆と打ち解けてグループキャンプに踏み出すようになったのだ。僕が居たからどうのこうのなんて自惚れもいいところだろう。
勢い込んで書いてみたはいいが、よくよく考えれば小説としての体を成していないことに気が付く。登場人物の背景が分からず一シーンを切り取っただけのこれでは、チラシの裏への妄想の殴り書きでしかない。もともとそんなつもりなどは無かったが、これでは小説投稿サイトに乗せたりなんてとてもできはしないだろう。
それに、リンちゃんとなでしこちゃんがどう思っていたか知りたいからといって二次小説を書こうという斜め上もいい発想に至った時点で意味が分からないではないか。げに恐ろしきは深夜のテンションである。
途端に恥ずかしくなったので僕はPCの電源を落とした。やれやれ、いったい何をしているのやらと呆れ半分、羞恥半分だ。貴重な睡眠時間を削った収穫があったとはあまり言えないだろう。
いそいそ布団に潜り込んで朝まで残り少なくなった時間で眠りにつく。次回に彼女たちに会える機会がいつになるのか、それを夢見ながら僕はまどろみに落ちていく。
ああ、いや確かリンちゃんとなでしこちゃんはこの日曜日にそれぞれデイキャンプをしていたのだったか。台詞を確認するために捲っていた一巻の巻末に載っていたおまけ漫画がその模様を描いていた。それを思い出したのが収穫といえば収穫か。
リンちゃんは本栖湖に自転車で椅子だけ持って読書を楽しみ、なでしこちゃんは近所の河原で大好きなお菓子をひたすら頬張る。二人に共通点があるとすれば、ひとりデイキャンプで揺られて、寝過ごす。
まるでアニメ第四話と第九話の暗示のようだが、それにしてもなでしこちゃんは第一話といいよく寝るものだ――