お節介   作:送検

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第14話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやいやいやいや」

 

 

俺は、彼のプロデューサーに困惑の色を隠せないでいた。

765プロへの勧誘。

まさか、何気なく相談した結果がこんなことになるとは微塵も思ってなかった故である。

予想の斜め上にも程があるだろう。

 

「嫌っすよ、俺は大学生っすよ?はっ‥‥‥もしかしてアンタは俺に大学生を止めろというのか」

 

「違う違う!キミは今盛大な誤解をしているよ!!」

 

ならばどういう了見なのだ。

言葉だけを掻い摘んでたら自然とそういう答えに至るだろう。

なにが入社だ、なにがウチに来ないかだ。

そもそもアンタの一存で決められるものでもなかろうに。

 

「大学を中退する必要はない!その代わり、インターンとして765プロで職場体験をするんだ」

 

「インターンだぁ‥‥‥?」

 

「そして、社風に合えば僕がキミを高木社長に推薦してキミは765プロに‥‥‥」

 

「やっぱりスカウトじゃねえか!?」

 

「だぁっ!?違う違う!!いや、手伝って欲しいのは確かだけどそれは第一優先じゃあないんだ!!」

 

立ち上がった俺の両肩を掴んだ石嶺プロデューサー。

すると、石嶺プロデューサーは情熱を孕んだ熱い眼差しで一言。

 

「南宮君!確かにキミに765に入社して欲しいってのは本音だ!!キミには気遣いとお節介の才能がある!!それを磨いて、プロデュース業に専念すれば僕なんかよりずっと良いプロデューサーに慣れると信じている!」

 

けどな、と更に石嶺プロデューサーは続ける。

 

「それよりもアイドル達の光り輝く姿と、その成長過程を共有していくことで僕はキミに笑顔になって欲しいんだ!!喜怒哀楽を全面に押し出して欲しい!キミに、『アイドル』を知って欲しいんだ南宮枯太郎君!!」

 

 

 

 

 

‥‥‥。

 

 

 

いや、言いたい事は理解したが。

 

 

 

「それでもアイドルのプロデューサーのインターンって。勧誘してくれるのは嬉しいですけど、流石に唐突が過ぎますぜ石嶺さん」

 

「だからこそのインターン生だ。暇がある時に事務所に寄って、仕事を体験したり見たり聞いたりして欲しい‥‥‥ぶっちゃけ、仕事を手伝って欲しい」

 

本音出たな。

くそ、まさかこのタイミングでこんなオファーを貰うとは思ってもみなかった。

大体俺は気分転換の為に外に出たんだぞ。

新たな懸案事項を抱えてどうすんだ、馬鹿。

 

「幸い、キミにはまだ期間がある‥‥‥何年生だい?」

 

「2年です。今年で3年───」

 

「なら全然期間があるじゃないか!!」

 

「いや、だから俺は───」

 

「兎に角、これ連絡先!ここに連絡をくれたら直ぐに出るから!!」

 

そう言うと、石嶺プロデューサーは立ち上がり鞄を片手にすたこらさっさと走っていった。

拒否される前に連絡先を押し付けられ、あれよこれよという間に言質を取られたとしか思えない。

この連絡先、どうしたらええんよ。

 

「ったく‥‥‥俺はまだ決まってねーって言いたかったのに」

 

765プロにインターン。

それは、就職先が決まっていない俺にとってはありがたい話である。

しかし、その就職先と己のメンタル的な要素を絡めてインターンを強引にこじつけられたのは不本意だ。

 

情けや同情でインターンの勧誘をされたくはなかったのが本音なんだからな。

 

しかし、そこは大学生。

機会があれば寄ってみようなんて悪魔的な発想が俺の脳内を襲う。

目標には貪欲なのが俺の主義なんだ、とでも言い訳したら良いのかね。

 

 

兎に角、縋った結果、明確な答えは貰えなかった俺氏。

感情を表に出すための具体案は授けてもらった訳なのだが、それは今のこの気持ち悪いニヤケ顔を解消させるきっかけにゃならない。

 

ベンチに座り、今一度深呼吸をする。

暫く、1人になる時間が必要だ。

そう、1人になる時間がな‥‥‥

 

 

 

 

 

「あれ?コタローセンセじゃん。どしたの?」

 

 

 

このベンチには何かエンカウント確率アップの魔法でもかけられているのかな。

 

 

目線を地面から声のした方───後ろを振り向くと、そこには言わずと知れた茶髪に1人の見知らぬ少女。

親睦会でもやってたのか、アイス片手に仲睦まじい様子である。

 

「あ゛ー‥‥‥俺は今人生という困難にぶち当たってる最中なんだ」

 

「あー、ちょっと人生に行き詰まったカンジ?まあ、大丈夫っしょ、コタローセンセ鈍感だし」

 

「おうおう、売られた喧嘩は買うぜ。とりま表に出ろよ‥‥‥恵美さんよ」

 

俺がそう言って凄むと恵美は乾いた笑い声を上げて口笛を吹く。

笑い声が独特なのは、もう慣れた。

 

「にゃはは‥‥‥おそよー、コタローセンセ」

 

「おそよーさん、恵美。で、お前は何してる最中なんだ?」

 

「新しく友達が出来たんだ、だから親睦会の最中でー‥‥‥これからカラオケ!!」

 

「おう、そうか。アイスは食い終わってから行けよ」

 

「分かってるって!」

 

それなら良い。

 

ところで、目の前にいるもう1人の女の子は誰だ。

挨拶してくれるのは有難いが、あまり友達を会話の流れに置いてけぼりにするもんじゃないぞ。

 

「あーっ、そうだね。えっと、琴葉。この人は私のカテキョ!」

 

「カテキョ‥‥‥って先生!?」

 

「あー、うん。そんな感じ‥‥‥かな?」

 

言い淀み、困ったように視線をこちらに送る恵美。

遠慮する必要はない。

事実、俺はお前の先生やってるんだしな。

 

「親睦会の邪魔をして悪かったな。俺の名前は南宮枯太郎、恵美の言ったように家庭教師を努めさせて貰ってる‥‥‥まあ、友達みたいなもんだ。よろしくな」

 

「あ、いえ‥‥‥!別に邪魔をした訳では」

 

よろしくお願いします、と続け握手をするカチューシャ。

まあ、特に何かをお洒落してる訳でもあるまいのに綺麗な女の子だ。

清楚系だな、普通に可愛い。

 

「琴葉はね〜兎に角真面目なんだよ!!この前なんて差し入れを大量に持ってきてね‥‥‥」

 

「良いじゃないか。気遣いって大切だぞ」

 

世の中はお節介を忌避されることも多いが、そもそもの話お節介どころか気遣いすらも出来ない連中の方が多いからな。

利己的に傲慢に生きるよりかは他者のことを考え、その結果がお節介になってしまった方が余っ程良いというのが俺の考えだ。

 

「田中さん‥‥‥だっけか?まあ、あれだ。今後とも、よろしく」

 

「は、はい。こちらこそ」

 

これにて一件落着だ。

女子会みたいなものにこれ以上男───そして年上の家庭教師が介入する訳にはいかん。

そんなの、浄水をドブに捨てるようなもんだからな。

 

「ほら、そろそろ行ってやれ。お前の仲間がアイスを買い終わったぞ」

 

「あ、ホントだ!じゃあまたね、コタローセンセ!」

 

「おう」

 

『琴葉、行こっ!』と声をかけ、恵美は走り去っていく。

───が、その足は不意に立ち止まり再度俺を見つめた。

遠目から、恵美が声をかけたのだ。

 

 

「あー‥‥‥コタローセンセ!!」

 

「あ?」

 

「あの時、信じてくれてめっちゃ嬉しかったよ!!」

 

は?

 

「信じてくれて、ありがとねー!!」

 

最後にそう言って、走り出す恵美。

『信じる』という言葉に、覚えは無かった故に聞いた瞬間は素っ頓狂な声を上げたのだが、恵美と俺に関わる出来事と言えば『あの件』しかなく。

恵美の母さんとの会話が、恐らく聞かれていたのだろうと判断することに、そんなに時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー‥‥‥」

 

 

 

まあ、あれだ。

今日は家に帰って、悶えよう。

そして明日からリセットだ。

それしかないわな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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