お節介   作:送検

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第5話

 

 

 

 

 

 

 

それは、唐突な出来事であった。

今日の予定は特にない。講義もなければ課外活動もない。そんな1日に興奮感を覚えた俺は朝ご飯を少し豪華なものにした。

一汁三菜のご飯をしっかり噛み締め、未だに眠っている麗花をそろそろ起こすかと立ち上がった時。

 

不意に部屋から飛び出してきた麗花に、ラグビー部もビックリな高速タックルを腹に喰らった。

気が付けば俺は横になり、麗花がマウントポジションを取る。床ドン、または押し倒された状態って奴だ。

 

 

麗花を見つめる。

すると、彼女はその綺麗な顔を笑みに染めて一言。

 

「遊びに行こう!」

 

幼児ばりの一言を、言ってのけた。

 

「遊びに行く‥‥‥だと?」

 

冗談じゃない。

折角の休日に、俺はまた外に出なければならないのか。

良いか北上麗花。俺はこれから貯めておいた本や積みゲーを茶でも飲みながら読み漁るっていうやりたいことがだな‥‥‥

 

「こっくん、何時も本読んでるよね」

 

バレテーラ。

まあ、そりゃそうだわな。

俺、暇さえあれば本読んでるし。

ただ、このまま麗花の思い通りになるってのもなんか悔しい。てか、休みたい。

 

「あのな、麗花。俺は疲れてんだよ。そして休みたい。つまりだ、幼馴染のお前ならどういうことか分かるよな?」

 

「外遊び!」

 

「お前何言ってんの?」

 

俺が何時進んで外遊びしたよ。

長野じゃ毎回寝てたろ。

それをお前が揺すって揺すりまくって最後には俺を外から文字通り引っ張り出したんだろ。

 

「最近、こっくんと外で遊べてないから」

 

「そりゃ元の生活リズムが違うからな」

 

「だから遊びに行こう!!」

 

いや話聞けよ。

あーもう!きたよこれ!だから上下に揺するなって!!気持ち悪くなる!!朝ごはん吐いちゃうから!!

 

「分かった!!分かったから!!!何でもするから!!」

 

「本当!?」

 

「ああ、だから先ずは朝飯を食え。1日の始まりは朝ごはんからって言うし、先ずは食え」

 

「わーい!わーい!」

 

俺にのしかったまま両手を上げて喜ぶ麗花。

てか、幾ら麗花の身体が軽いと言ってもいい加減苦しいので降りてくれませんかね?

これじゃ俺が死んでまうねん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ご飯を食べた後に、支度をして外に出る。

そこまでなら通学をしているのと変わりはないのだが、今回は持っているものや行き先やらが違っている。

尤も、このげんなりした俺の気持ちは通学時の俺のメンタルとさして変わらない訳なのだが。

 

都内のビル街。

様々な店やショッピングモールが建ち並ぶ店に、俺達は繰り出していた。

理由は特にない。

強いて言うのなら、麗花と一緒にウインドウショッピングとでも言ったところであろう。

 

「うーん!外の空気が美味しいな〜♪」

 

「さいですか‥‥‥」

 

まあ、楽しんでくれているのならそれでいい。

こちとら大して外でやりたいことなんてないからな。

麗花が笑ってくれるのならそれでおーけーだ。

 

「久しぶりだね〜、こっくんとこうやって外に出るの」

 

「そうか」

 

この前当てもなく外に出たのはいつ頃だったかな。

言っちゃ悪いが外になら何時でも出れるからな。

大学で外にも出てるし、大して重要性を感じないというのが実情である。

 

「ま、お前が気分転換出来たってんなら良かったよ」

 

昔から外に出るのが大好きな活発美少女だったもんな。

あれから何年経っても頭と心の中身の根本が変わらないっていうのはある意味素晴らしいことなのか。

そう思っていると、不意に麗花が俺の左横から顔を覗かせる。

何だ、どうかしたのか。

 

「大学、楽しい?」

 

「何だよ、唐突に」

 

「何となく、かな」

 

何となくにしては唐突が過ぎるぞ北上麗花。

かつてお前は支度をしろと急かす俺のことを『お父さんみたい』と宣ったが、それはお前さんにも言えることなのではないか。

今の質問、まるでうちの母さんみたいだったぞ。

 

 

「まあ、楽しいよ。自分で選んだことだしな」

 

炊事で好きなものを作れる。

部屋も好きにしていい。

ある程度の自由が確約されているこの世界は酷く心地好い生活なのだが。

 

しかし、俺の回答が気に入らなかったのか。

麗花は何処かピンと来ないような表情を浮かべる。

太陽直下のような笑みが見えない。

はて、何か気に入らないことでもしてしまったか。

 

「最近、笑わないね」

 

「俺か?基本笑わないタイプだろ」

 

「嘘だ〜中高生時代のこっくんはちゃんと笑ってたよ?」

 

「そんなものか」

 

「そんなものだよ!」

 

俺も初耳だよ。

俺の表情筋なんてまともに機能してないと思ってたからな。

まあ、麗花にとっては俺の表情筋はまともに機能してたのだろう。

いやはや、人は俺の知らない所をよく見てるなぁ。

 

「笑ってるこっくんが見たいなぁ」

 

「む、そういうことなら笑ってみせよう‥‥‥へっ」

 

「ダメー!!」

 

「ふごっ!?」

 

鼻で笑おうとした途端に、俺の顔面は麗花の掌底打ちによって押しつぶされる。

麗花よ、俺が何をしたというのだ。

 

「その笑みはこっくんの笑みじゃないよ!!」

 

「俺の笑みってなんだろう」

 

「こっくんスマイル!」

 

「聞かない方が良かった」

 

ほならね?貴女が笑わせてみてくださいって話でしょ?

そもそも俺はそんなに表情を表に出さないタイプである。

そんな俺に笑えと言うのに無理があるのではないか?

 

「兎に角、こっくんの笑みはそうじゃなくて、もっとパーって光るものなの!あ、そうだ‥‥‥ちょっと顔貸して!」

 

その瞬間、麗花の両手は俺の頬を掴んだ。

その秒数まさかの1コンマ。

場所が場所なだけに抵抗できないのが辛いっ‥‥‥!

騒ぎを起こしたくない気持ちもあるけどこの状況は精神的に辛い‥‥‥!!

 

「ほら、笑って笑って!ニーって笑って♪」

 

───もう我慢出来ねぇ!!

 

「あーやめて!口引っ張らないで!?ばっちいでしょ!?麗花、ダメ‥‥‥あああああ!!」

 

 

その日は休日どころじゃなくなりました、まる。

 

 

 

 

 





11月10日 16:25 いくつかの誤字を修正致しました。
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