アズールタンペーン   作:まさ(GPB)

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以前、赤城ちゃん実装前に書き殴ったものの加筆修正版。


指揮官と赤城の隠し子!?(加筆修正版)

「指揮官!」

 執務室の扉を破壊しそうな勢いで開けて飛び込んできた重桜の正規空母、加賀。その様子は、普段のクールな言動からは想像もつかないほど慌てていた。

「ど、どうした加賀……?」

「あら、加賀?」

「あ、あ、あ……」

 彼女は偶然にもこの執務室にいた一人のKAN-SENの姿を見て固まってしまう。

「加賀? おーい?」

「どうかしたのかしら……? 加賀、指揮官様が困ってるわよ?」

 それは加賀と同じ重桜の正規空母であり、その加賀と共に一航戦として名を馳せる赤城であった。

「明らかにお前を見て固まったぞ、赤城」

 赤城と指揮官を交互に見ながら微かに震えて口をパクパクとさせる加賀を二人は不思議に思う。

「……赤城、加賀に何かしたのか?」

 流石の指揮官も、尋常ではない加賀の様子から赤城に目を向ける。

「し、指揮官様!? この赤城の事を一体なんだと思ってらっしゃるのですか!?」

「何って、意外とポンコツな重桜のやべー奴筆頭?」

「なぁっ……!?」

 二人が加賀の存在を忘れそうになっていると、執務室に更なる来訪者がやってきた。

 

「ここが執務室です。少し外で待ってて欲しいのです」

 そう言って執務室に入ってきたのは重桜所属の駆逐艦、綾波だ。

「綾波じゃないか。どうした?」

「指揮官に会いたいという子がいたので連れてきたのです」

 淡々と彼女は答える。

「俺に? それはご苦労。で、その会いたい子ってのは?」

「外にいるです。さ、入ってくるです」

 そう言って綾波がそのKAN-SENを招き入れる。

「……」

 呼ばれて執務室に入ってきたのは、指揮官の隣にいる赤城を小さくしたような子供だった。

「「……は?」」

 その小さい赤城を見た指揮官と赤城は、偶然にも同じリアクションをしてしまう。と同時に、指揮官は先ほど加賀が慌てていた理由を何となく察した。

 ――あれはどう見ても小さい赤城……だよな? また明石の仕業か? なんにせよ、変に大きな騒ぎになる前に……。

「し、指揮官様……これは夢でしょうか……?」

「赤城……?」

 指揮官が赤城に目を向けると、彼女はあわあわと指揮官と小さい赤城に視線が行ったり来たりを繰り返している。

「わ、私……いつの間に指揮官様との子供が……?」

「お前は何を言ってる!?」

 身体の大きさは違うものの、自分とほとんど同じ姿の存在が現れて混乱したのか、突然そんな事を口走った赤城に思わず指揮官も驚く。

 と、そこに運悪く、

「指揮官様と……誰の、子供ですって……?」

 重桜の最新鋭空母である大鳳が執務室の扉を開けていた。先程の赤城の発言を聞いた彼女は、この世の終わりであるかのような顔をしている。

 ――あ、これは終わったな……。

 この状況に、思わず指揮官は他人事のような感想を抱く。

「あらぁ? 大鳳、見て分からない? 指揮官様とこの赤城の愛の結晶が、あなたには見えないのかしら?」

「赤城はなんでそう大鳳を煽るの?」

「ッ……! この女狐ぇ!!」

「大鳳もなんでそんなに煽り耐性ないんだよっ!?」

 指揮官は赤城と大鳳による争いを避けるのに必死だ。しかしこの火種に油を注いだのは――

「この子分は私のものよ? あなた達には触らせないわ」

 小さな赤城の一言だった。その上、彼女は指揮官の傍まで近付いてきたかと思うと、大きい赤城と大鳳を煽るような表情で彼の膝の上に飛び乗った。

「えっと……」

 ――今この子、俺の事を子分って言ったよな……? 

「「指揮官様……?」」

 指揮官が自身の膝の上でふんぞり返っている存在に戸惑っていると、ゆらりと赤城と大鳳の二人が揃って向かってくる。

 ――あかん。

「綾波!」

「鬼神の力、味わうがいい……!」

 素早く動いた綾波が、赤城と大鳳の襟首を掴んだ。

「は、離しなさいよ!」

「指揮官様! まさか、それが小さい私とは言え、指揮官様はそんな小娘に誘惑されませんわよね!?」

「綾波、二人を寮まで連れて帰ってくれ……俺はこの小さい赤城と話がある」

「了解です」

「あ、あなた駆逐艦のくせに力強すぎませんっ!?」

「指揮官様、指揮官様ぁぁぁぁっ!」

 綾波は抗議を続ける二人を引きずって執務室を後にした。

 

「加賀、平気か?」

「――はっ! 私は一体何を……」

 どうやら衝撃が強すぎて加賀は立ったまま意識が飛んでいたらしい。

「今、綾波が赤城達を空母寮まで連れて行った。お前も行ってこい」

「あ、あぁ……そうさせてもらおう」

 指揮官に言われるがまま、加賀はふらつきながら重桜の空母寮へと向かった。

 その背中を見て、まだ大事にはなっていないが面倒な事にはなったな、とは思う指揮官であった。

 ――でもどうせすぐ騒ぎになるんだろうなぁ……。

 特ダネ大好きなあのパパラッチの耳に入った日には、すぐに新聞の記事が出回る事だろう。

 

      ◇

 

 そして翌日。

 小さな赤城――赤城ちゃんの艦隊への配属が正式に決定した。しかしそれを全体に発表するよりも前に、案の定例のパパラッチが書いた新聞に先を越されてしまっていた。

 ただ単に新しい仲間が増える、という内容ならまだいい。だが記事の内容はとんでもないものだった。

「……」

 まず最初の問題はその見出し。

『衝撃! 指揮官と赤城の隠し子か!? 艦隊の新しい仲間、赤城ちゃん!!』

 デカデカとそんな文字が並んでいた。

 ――隠し子とか書くなよ……絶対分かっててやったな、アイツ……あー、絶対後で面倒な事になるわ……。

 指揮官は頭を抱えそうになるが、一つ息を吐き出して記事に目を通していく。

 いつの間に取材や撮影をしたのか、赤城ちゃんの写真や綾波に連行された赤城のインタビューまで掲載されている。そのインタビューにはこう記されていた。

『初めて見た時は、私の知らない間に指揮官様との子供が出来たのかとそれはもう喜んだものです。でも、それは間違いだった……あの小娘、私の指揮官様に向かって子分って言ったのよ!? その上、まるで指揮官様を自分の椅子のように扱って……!』

 ――これ、二人を合わせたらまずいのでは……? いや大鳳とかもいるけど……。

「はぁ、これからしばらくは胃薬が手放せなくなるか……」

 商機の勘がいい明石や不知火なら、その胃薬一つでも指揮官に売りつけようとするだろうが、今の彼はその事は考えないようにした。

 ――赤城はいつもの事だから、今更あれをどうこうしようとなんて思わん。ってか無理だし。

「かと言って、赤城ちゃんの方も言って聞く感じじゃなさそうだしなぁ……」

 そう口にした指揮官は療養中で不在である一人のKAN-SENを思い浮かべていた。

「早く帰ってきてくれ……天城……」

 巡洋戦艦、天城。

 それは赤城が唯一頭の上がらない相手である姉だ。彼女がいる手前であれば、流石の赤城も多少は大人しくなるだろう。

 だが、その天城は現在この母港にいない。

「まぁ天城がいたら、それはそれで俺もしっかりせにゃならんけどな……。よし……!」

 気合を入れ直した指揮官は、放送用の機材のスイッチを入れて全力で叫んだ。

「青葉ァ!! 見出しわざとなの分かってんだからなァ!?」

 




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