無と無限の落とし子(にじファンより移転)   作:羽屯 十一

12 / 69
新規の人にはごめんなさい。
思いついて書きたくなったんで、落ちとか無しで小話をひとつ。
またぞろ人によりけりなものですが、宜しければ御一つ。


ところで書き方ですが、カッコは入れる入れない、どっちがいいでしょうか。
入れて書いたんですが妙に目に眩しくてw




小話 閻魔と行き逢い 書き方その1

「四季映姫、と言ったか

 まさか音に聞く閻魔が地蔵とは……」

 

「――出会うなり不躾ですね

 少々無礼ではないですか」

 

「自ら閻魔に就いたのではあるまい

 大方、そうするに都合の良い能力でも見つかったか」

 

「だまりなさい

 今閻魔は休暇ですから、それ以上要らない口を開けば四季映姫として許しませんよ」

 

「地蔵にヤマザナドゥの名は重かろう

 裁きを下すは辛かろう」

 

「――――」

 

「命ぜられたか?

 否とは言えなんだか?」

 

 

「―――――ッッッ!!!」

 

 

「――そこまで触れて欲しくは無いか

 そうか。そうか」

 

「異国の神か、真性の化物か――

 お前のようなモノに……何がわかる……」

 

「分かるとも

 日ノ本で最も民草に慕われた地蔵菩薩よ」

 

「  」

 

「古き大和の神は朝廷に捨てられた

 大陸より新たに招かれたのは数多の仏神」

 

「  」

 

「しかしその全ては、氏族など力有る者のみ祀った

 何故なら日々を飢え苦しむ民に、僧や社へ奉げる物など何一つ持てないから」

 

「  」

 

「神の救いを説く僧は、民には縁がない

 八百万の神を徹底して奪われ、仏神は富める者しか救わない」

 

「  」

 

「貧しい時代

 盗みに殺生、やらねば生きてすらゆけぬ時代」

 

「  」

 

「現世は畜生に堕し

 死後は想像も出来ぬ苦しみがと、絶望する」

 

「  」

 

「地蔵菩薩は

 それら苦界の民草の唯一の救いとして生まれた神」

 

「  」

 

「要るは祈りだけ

 老人だろうと死病人だろうと、犯し殺しの極悪人だろうと構わない」

 

「  」

 

「だれでもいい

 どんな人間でも、地蔵菩薩に救いを求めていい」

 

「  」

 

「大いなる幸いが降るわけではない

 祈る者も、そのような絵空事は望めもせぬ」

 

「  」

 

「地蔵菩薩がくださる救いとは――」

 

「――地獄に落ちた罪人達に

 永く地獄の責めを受ける咎人達に、唯寄り添う事」

 

「ただ傍にいて、自分を見ていてくださる

 釜で煮られ、針の山を登らされ、飢え渇きに苦しみ、鬼に体を鋸引かれようとも」

 

「ただ傍で見ている

 ……見ているだけ」

 

「地蔵菩薩は

 四季映姫、お前はずっと、そうやって救われぬ者を救い続けてきた」

 

「  」

 

「だから他のどの神よりも慕われた

 日ノ本のあらゆる地で小さな神像が作られ、死後の小さな安寧が願われた」

 

「  」

 

「お前ほど罪人の苦しみを知る者は少ない

 ――突き落とすのは、辛いか」

 

「――貴方は、全部分かってて言ってたんですね」

 

「  」

 

「やりたくはありません

 勤めとて、辛い」

 

「  」

 

「何十年何百年、むごい責め苦を受け続ける

 気が狂う事も許されず、唯ひたすらに苦を魂魄に刻まれる」

 

「  」

 

「……幻想郷に地蔵はいません

 私が裁いた罪人は、救いがありません」

 

「  」

 

「黒を白とするは、私の能力が許さない

 罪業は過たず行く先を指し示します」

 

「  」

 

「ですが、彼らとて世に迫られたと

 そして悪因悪果として命を落としたとも、思います」

 

「  」

 

「私は神です

 救いを願われ生まれたものとして、救うべき者を地獄に落としたくはありません」

 

「――そうか」

 

 

 

 

 




※本話では日本仏教で途中から始まった『閻魔は地蔵菩薩の化身のひとつ』という説を抜いています。
 元々閻魔は不人気でほとんど知られていなかったんですが、鎌倉時代に『地蔵菩薩発心因縁十王経』というやたら名前の長い、もとい中国原産と見せかけ出回った偽経典に『閻魔は地蔵菩薩の化身のひとつ』っぽい事が書かれていて、既に超メジャーだった地蔵様繋がりで有名になってきました。
 ちなみに。
 実は日本に来る前の元々では閻魔と地蔵は同じらしいんですが、別々に伝わったので別の神になった、という話も。

 『地蔵菩薩発心因縁十王経』、略して『地蔵十王経』は三途の川や奪衣婆も登場。現代のイメージの元はこれらしいです。と言う事はこまっちゃんも登場していると言う事。


 こうして調べると日本の神話も面白かったり。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。