思いついて書きたくなったんで、落ちとか無しで小話をひとつ。
またぞろ人によりけりなものですが、宜しければ御一つ。
ところで書き方ですが、カッコは入れる入れない、どっちがいいでしょうか。
入れて書いたんですが妙に目に眩しくてw
「四季映姫、と言ったか
まさか音に聞く閻魔が地蔵とは……」
「――出会うなり不躾ですね
少々無礼ではないですか」
「自ら閻魔に就いたのではあるまい
大方、そうするに都合の良い能力でも見つかったか」
「だまりなさい
今閻魔は休暇ですから、それ以上要らない口を開けば四季映姫として許しませんよ」
「地蔵にヤマザナドゥの名は重かろう
裁きを下すは辛かろう」
「――――」
「命ぜられたか?
否とは言えなんだか?」
「―――――ッッッ!!!」
「――そこまで触れて欲しくは無いか
そうか。そうか」
「異国の神か、真性の化物か――
お前のようなモノに……何がわかる……」
「分かるとも
日ノ本で最も民草に慕われた地蔵菩薩よ」
「 」
「古き大和の神は朝廷に捨てられた
大陸より新たに招かれたのは数多の仏神」
「 」
「しかしその全ては、氏族など力有る者のみ祀った
何故なら日々を飢え苦しむ民に、僧や社へ奉げる物など何一つ持てないから」
「 」
「神の救いを説く僧は、民には縁がない
八百万の神を徹底して奪われ、仏神は富める者しか救わない」
「 」
「貧しい時代
盗みに殺生、やらねば生きてすらゆけぬ時代」
「 」
「現世は畜生に堕し
死後は想像も出来ぬ苦しみがと、絶望する」
「 」
「地蔵菩薩は
それら苦界の民草の唯一の救いとして生まれた神」
「 」
「要るは祈りだけ
老人だろうと死病人だろうと、犯し殺しの極悪人だろうと構わない」
「 」
「だれでもいい
どんな人間でも、地蔵菩薩に救いを求めていい」
「 」
「大いなる幸いが降るわけではない
祈る者も、そのような絵空事は望めもせぬ」
「 」
「地蔵菩薩がくださる救いとは――」
「――地獄に落ちた罪人達に
永く地獄の責めを受ける咎人達に、唯寄り添う事」
「ただ傍にいて、自分を見ていてくださる
釜で煮られ、針の山を登らされ、飢え渇きに苦しみ、鬼に体を鋸引かれようとも」
「ただ傍で見ている
……見ているだけ」
「地蔵菩薩は
四季映姫、お前はずっと、そうやって救われぬ者を救い続けてきた」
「 」
「だから他のどの神よりも慕われた
日ノ本のあらゆる地で小さな神像が作られ、死後の小さな安寧が願われた」
「 」
「お前ほど罪人の苦しみを知る者は少ない
――突き落とすのは、辛いか」
「――貴方は、全部分かってて言ってたんですね」
「 」
「やりたくはありません
勤めとて、辛い」
「 」
「何十年何百年、むごい責め苦を受け続ける
気が狂う事も許されず、唯ひたすらに苦を魂魄に刻まれる」
「 」
「……幻想郷に地蔵はいません
私が裁いた罪人は、救いがありません」
「 」
「黒を白とするは、私の能力が許さない
罪業は過たず行く先を指し示します」
「 」
「ですが、彼らとて世に迫られたと
そして悪因悪果として命を落としたとも、思います」
「 」
「私は神です
救いを願われ生まれたものとして、救うべき者を地獄に落としたくはありません」
「――そうか」
※本話では日本仏教で途中から始まった『閻魔は地蔵菩薩の化身のひとつ』という説を抜いています。
元々閻魔は不人気でほとんど知られていなかったんですが、鎌倉時代に『地蔵菩薩発心因縁十王経』というやたら名前の長い、もとい中国原産と見せかけ出回った偽経典に『閻魔は地蔵菩薩の化身のひとつ』っぽい事が書かれていて、既に超メジャーだった地蔵様繋がりで有名になってきました。
ちなみに。
実は日本に来る前の元々では閻魔と地蔵は同じらしいんですが、別々に伝わったので別の神になった、という話も。
『地蔵菩薩発心因縁十王経』、略して『地蔵十王経』は三途の川や奪衣婆も登場。現代のイメージの元はこれらしいです。と言う事はこまっちゃんも登場していると言う事。
こうして調べると日本の神話も面白かったり。