遅くなってすみません。
前は無かった小話、書いてみました。
唐突だが、私は幾つもの世界を巡り歩いている。
行く先はそれこそ種々様々だが、一応の目的というものがあり、それに沿って選んではいる。
しかし目的があるという事は、同時に達するため急ぐのもまた当然である。
身体は一つしかない。
なんて言葉は
二つを天秤にかけ、結果長大な主観時間を許容したのは元人としての好奇心のなせる業に違いあるまい。
そう言い訳などしつつ。
今日も今日とてパッと目に付いた世界へもぐり込むのだった。
草原だ。
人間は―――いるな。
若いのが二人ほどイノシシと戦ってる。剣もって。
なるほど、ここは剣が一般的な世界……いやいや、何故草原にイノシシ?
ぴかぁ
ざくぅ
突如として剣が光り輝く。
剣を振るのもおぼつかない素振りだった片方の男の、その握った剣が。
そして何故か変に堂に入った動きで、突っ込んできたイノシシを切り捨てる。
おい。
何だ今の。
魔力か? 魔法か?
いや、そもそもこの世界の魔力っぽいブツは、ここには見当たらないのだが。
あ、違うようだな。
なにやらウィンドウとしか表現できないもの開いてる。
イノシシも光って消えたし。
となれば……ここはあれか。未来技術で構築された仮想世界か。それも剣とくれば古き良き時代からゲームと相場は決まっている。成程、これは楽しめそうだ。
聞き耳を立ててみれば“ソードスキル”なる単語も聞こえた。
それがゲーム内の技能で、あの光って動きが良くなるヤツなのだろう。おそらく登録された動きをトレースしたのだ。確かにそういったシステムが無ければ、肉体的な運動の得手不得手で、あまり宜しくないユーザーの階級分けが出来てしまう。
商業用なのだろうが、そこ等辺はうまく出来ているようだ。
早速、ちょろっと世界を解析、大部分をフィルターで隠したままサポートや案内といった単語をキーに検索を掛ける。
ヒット。
簡単な手引書のようだ。
ふむ。
こうか、と反対の手の前腕へ指を滑らせ「ステータス、オープン」。
慣れれば思考のみで出せるようだが、一足飛びは遠慮しよう。
電子的な効果音と共にホロモニタと酷似した画面が立ち上がる。
うまい事出来た様だ。何と言っても不正規ユーザーでしかない身の上として、そこは覚悟していたのだ。しかし杞憂だったのは幸い。せっかくという機会を楽しめないのは切ないから。
さて。
ちょうど見やすい位置、顔の前のを興味津々に覗き込む。
人であった頃のこういったレイアウトと比べ、どうなっているかと心が躍った。
Name : 黒川 冬理
Lv : 1
Job : ソシアルナイト
……おや?
※クロスは、分かる人と分からない人がいるでしょうね。
ソードアート・オンラインに、何故か一人だけファイアーエムブレム仕様が混ざりました。しかも騎兵なのに馬がいないゲームという。
もちろん期待したようなカッコいいソードアーツはお預け。
一人だけ根性で他の数十倍も叩く羽目に。
あれ、ネット掲載版で技使わない素の攻撃って微々たるダメージとか書いてあった覚えがあるんで。