無と無限の落とし子(にじファンより移転)   作:羽屯 十一

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 Fateにガンダム混ぜたのって見たことがない。
 どこかに同士はいないものか・・・


 ところで型月の”神秘”ってなんだろう? いまいち分からない。
 サーヴァントが神秘付きの攻撃じゃないと効かないって、どっかで聞いた様な気がするが? でもセイバーもキャスターも普通に殴り倒されてたしなー。凛は何かしてたとしても、葛木先生は魔術付与される前じゃなかったっけ。それに墓石とか障害物にしてたし。
 要するにあれか、霊体化したら効かなくて、実体化したときは効くのか? んで、霊体の時は神秘っぽいのしか通じないと・・・。



第参章 3 青タイツ、森で白髭と出会う、の巻 (Fate編)

 

 

 

 Main Side 黒川冬理 In.

 

 

 

 ヌルが何か言ってたみたいだが、取り敢えずはアレから逃げられたらしい。

 

 ホールアウトは無事終了。さっきとは違う、ちゃんとした空に出た。

 時間は夜。

 雲が疎らな夜空に月が煌々と輝いている。

 

「綺麗な月夜だ……」

 

 思わず見ほれる。

 あの醜悪なモノに追っ駆け回された後だと、唯の月夜が心洗われる美しさだ。

 

『・・・ッ・・・、・・ぁ・・・。

 聞こえますか、マスター?』

「ヌルか。どうした、通信が切れていたのか?」

 

 いつもヌルが座標を設定するのだから、跳んだからと言って通信が切れる事は無いのだが?

 

『はい。本機の跳躍タイミングで、外部からこの世界の魔力らしき要素で干渉がありました。幸いにして干渉自体が召還系の術式だったらしく、こちらの跳躍先の座標をずらすだけの影響で済みましたが』

「外部干渉か。あのタイミングで仕掛けてくるようなのは、あの黒いのしかいないよな」

『そう予想されます』

 

 つくづく邪魔臭い存在だな。

 どうか二度と出会いませんように。

 

「それで、ずれたっつったけど、どこら辺にずれた?」

『どうやら、どこかの市街の上空のようですね』

「は?」

 

 慌てて俺の癒しである月から視線を降ろす。

 ざっと360°カメラを回して確認してみる。

 

 本当だ……

 

 光学センサーに捕らえられたのは、繁華街と見られる市街と宅地らしき町の二つだった。

 機体が滞空しているのは上空300M付近。丁度その下辺りを流れる川で二つの町が分断される形だ。

 その周り、町の外は山と森が多いようだ。

 あ、まずい。

 機体のエンジン音でどんどん家に明かりがついていく。

 

「とりあえずアレだ、逃げよう」

『妥当かと』

 

 目標は町の外の山林。とにかく身を、というか機体(コイツ)を隠さないと。

 高度1000まで一気に上昇、ジャミングを掛けつつ町を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うまい具合に山間の背の高い木が密集している地帯を見つけ、そこに降りる事ができた。

 丁度山を挟んで町の反対側になる。

 コックピットでシートを倒し、思いっきり体を伸ばしてほぐす。

 この世界に来てようやく一息つけた。

 

「ん~~~っ、ふぅ。

 ほんと、どうすっかなー。あの町の様子を見るに、こっちのジャミング越えて軍隊に見つかるとか無いだろうけど」

『イエス。現状でこの国の防空網が反応した形跡はありません。

 なお、お気づきかと思いますが、ここは20世紀の日本です』

「見た感じそんな気がしてたけど、名前もそのまんま?」

『はい。主要な国名は、マスターの記憶にあるものと合致しています』

 

 ふむン、混乱しなくて良いな。

 

「科学技術は? やっぱ20世紀レベルか?」

『はい。例外としてIT関連がかなり弱いですが、それ以外は概ね』

「魔力技術の方はどんな感じだ?」

『バベルシステムによる記憶探査によりますと、先程の外部干渉時に感知された、魔力に良く似たエネルギーが一般的に利用されているようです。ただし、一般的と言いましても魔術関連は秘匿を第一とし、その重要度は関係者以外に洩らせば刺客が放たれる程のようです。

 彼ら魔術師と呼ばれる人間は世界中に存在し、大きく三つの組織があるようです。本拠地はロンドン、エジプト、北欧は複合組織でした。

 それとは別に、キリスト教を母体とした異端狩りの専門、聖堂教会なる組織も存在します。

 

 なお、彼らの間では魔術と魔法を分けて呼称されています。

 魔法とは実現不可能な現象を起こす業とされ、並行世界に対するアプローチや時間軸の移動などの六つが知られています。また、現存するものはこの内”第二魔法・並行世界の運営”、”第五魔法・破壊”の二つのみ』

 

 なんか、異様に物騒な世界だな。

 てことはだ、あんな出方をした俺達って追われないか?

 

 それにしても、”魔法”ね……。そこまで出来るのは凄いな。

 この空気中のが魔力って呼ばれてるんだろうけど、これ、世界を構成している『水』の残滓というか残りカスというか、世界から見て微細なチリみたいな感じで(こぼ)れ落ちて変質したものなんだよなー。

 だから余程うまく回ってる世界以外、どこの世界でも大体はある。変質によって少しずつモノが違うけど。

 その代わり宇宙空間はかなり薄い。

 まぁそれも当然。宇宙空間も原子分子は沢山あるが、惑星という塊が無いから当然そこから漏れ出すモノも少ない。

 

 魔術、世界によっては魔法とも呼ばれる技術は、俺の知っている限り大別して二つに分けられる。

 

 一つ目。この世界のように、世界から零れ落ちた『水』の変質した残滓(以後『魔力素』と呼称)、魔力等と呼ぶそれを集積し、ある程度纏めてから世界内の構成要素へと変換。それを利用する方法。

 

 二つ目は、世界に存在する、人間より上位の存在から力を借りる方法。

 

 その性質により、後者の方が大体において効力・攻撃性に優れ、前者は制御や効率的な運用に秀でる事が多い。

 

 

 閑話休題。

 

 

「効力はどんな感じ?」

『やはり秘匿されてきただけあり、戦闘の手段というよりも“世界の根源”を目指す研究の副産物といった面が強く出ています。攻撃性は他世界の魔術よりも全般的に低く、その反面で隠蔽や補助に優れている模様です』

 

 なるほど。

 

「典型的だな」

『そうですね』

「ただこのタイプの魔術は時々凄いのがいるからな。気をつけよう」

『イエス、マスター』

 

 

 はぁぁぁぁ。

 それにしても、これからどうしよっかなー。

 

『レーダーに感、数1。かなりの速度で接近中。

 これは……霊的な存在のようですが、人霊にしろ動物霊にしろかなりの魔力素密度です。加えて物理干渉能力を有していると思われます』

「もう来たか。

 霊で物理干渉って、使い魔の類いか。例の組織からの偵察かな?」

 

 この夜中に町から一気に山を越えて来たんだろ? 忙しいこって。

 

「俺が下で出る。ヌルは機体を見ててくれ。対処は柔軟にな」

『ラジャー。お気をつけて』

「いざとなったら機体自体を収納して逃げるさ。じゃ」

 

 コックピットハッチを開放、膝を着いた姿勢のモビルスーツから直で飛び降りる。

 そして待つこと二分。

 

「よう、あんたが後ろの白髭巨人の持ち主か?」

 

 目の前に蒼い全身タイツの変た、いやえーと、チンピラ? っぽい男が現れた。

 

 

 

 

 

 

「あー、そうだけど」

 

 服装には触れないでおこう。

 まさか流行とか言わんよな?

 

「もう一つ聞くぜ、お前サーヴァントか?」

 

 サーヴァント?

 ………まて、知識にあるぞ。

 タイトルは『Fate』、運命か。内容は?

 

 あー、あー、あー。あ、そういう事。

 全部分かったら面白くないから大雑把にしか思い浮かべなかったけど、『水』の溜まった入れ物巡って市街地で殺し合いねぇ。やっぱり物騒だな、この世界。

 そんで何か? 強力な魔力による召還術の介入で此処に来たせいで、俺がサーヴァントとかいう人霊の上位バージョンと間違えられたと。

 はーん。大方の所、随分未来から来た英霊とでも思われてんのかね?

 

 それにしても、やっぱあの黒いののせいだな。

 アレを聖杯の中身だとすると、俺は聖杯の腹を満たす餌としてこの聖杯戦争に送られたと。

 

 ……いや、おい、ふざけんなよ?

 人のを横からかすめた不気味存在が、人を獲物扱いか?

 舐めやがって、そういうつもりなら邪魔してやる。

 いきなり聖杯とやらを山ごと蒸発させるのも溜飲が下がるが、どうせなら英霊とやらの能力も見ていくか。蒸発は最後だ。

 

「おい、いつまで黙ってんだよ」

 

 おっと、考え込んでたお陰で随分と苛立たしげだな。

 うん、とりあえずはサーヴァントとしておこうか。

 口調も少し変えておこうか。面白そうだし。

 

「あぁ、ごめんごめん。一応サーヴァントだよ。見ての通り召還主も居ないイレギュラーなんでね、状況が分からなくて混乱してたんだ。何とか最低限の知識は聖杯から流れ込んできたから落ち着いたよ」

「何、マスターがいないだと?」

 

 うん、疑わしそうな顔だね。

 まぁ無理もないか。

 

「そう、単品。俺自身特に願いなんぞ無かったんだけど、聖杯に引きずり込まれちゃってね」

「そいつぁまた災難だったな。で? だったらお前これからどうすんだ、参加すんのか?」

「一応そうしようかな? 観光のついでにね」

 

 返事を聞いた男、知識にランサーのクラスで呼び出されたクー・フーリンとあるが、その雰囲気が豹変する。気迫、闘気、殺気、そういった類いの強烈な気配だ。

 

「貴様……、我が槍が観光ついでに相手を出来るものか、試してみるか?」

 

 釣れたな。武に自信を持つタイプには聞き流せない台詞だろうな。自分達の戦いを片手間で、とか。

 少しばかり見てみるか。

 

「いいよ」

「ほう、良い度胸だ」

 

 ニヤリ。そんな感じにランサーが笑う。

 こっちが気圧されず、あっさり戦いを受けたのが嬉しい方に誤算だったのか。

 その手に魔力が凝縮され、身長ほどもある真紅の槍が握られる。

 おい、明らかに呪い付きだよな?

 クー・フーリンって事はゲイボルクか。海の獣の背骨。呪物としては狙った心臓への必中、返し風は典型的な不幸というかなんというか。つりあいの取れた正統派の呪いの品。

 

「得物、つーか宝具は後ろの白髭か?」

「それもあるけど、アレ使ったら卑怯でしょ。

 空からビームの雨降らせるよ? それに山が蒸発したら目立つし」

 

 ランサーの柄の悪い、もとい鋭い男前な顔が引きつる。

 

「オイ、そんな事も出来んのかよ……」

「もっと凄いのもあるよ? 範囲内の敵を問答無用で塵にするとか。見たい?」

「いや、いい」

 

 はあっと微妙に気の抜けたため息をついて槍を肩に担いだ。

 

「あれ使わないでお前自身、接近戦って出来ないのかよ?」

「超得意」

 

 十八番ですとも。

 

「それをしろ。ちっ、調子の狂う奴だな」

「まぁまぁ、そう言わずに。

 こっちは無手が得意なんで、いつでもいいですよ」

「そうかい。そりゃぁ」

 

 蒼い槍兵はスッと槍を下段に構え、

 

「よく言った!」

 

 突撃してきた。

 

(流石は最速、速い。けど)

「様子見か?」

 

 突き込まれた最初の一刺し。それをひょいと掴む。

 

「な!?」

「ふぅん」

 

 何で柄にこんな血管みたいなのが出てんだ? 邪魔じゃね?

 

「おっと!」

 捕まれたままの槍をこっちの体に引っ掛け、体勢を崩しざま拳打を見舞ってくる。

 顔を傾け拳を避け、槍を離して飛び退る。

 

「テメェ、槍兵の槍を掴みやがったな」

「いや、そんな怒らなくても。それにそっちだってかなり手加減してるでしょ」

「チッ」

 

 舌打ち一つ、すぐさま突いて来る。

 今度は速い。

(取るのはキツイな)

 秒間十発に届こうかという刺突。思考加速を加速。現在エイヴィヒカイトは蜘蛛を核に活動位階で駆動中。いける。

 硬気を両手に集中、素手で閃光の如き穂先を片端から払いのける。

 ひたすら払う。突きを払い払い払い、次の突きをって薙ぎ! 此方が潜れない様に足を薙いでくる。(すね)に硬気と念の防御を固め一歩前へ、穂先ではなく柄を脛で受ける。

 ゴンッ! という撃音と共に槍が止まる。すぐさま引かれるが同時に此方も前進、相手の後退より此方が速い、懐に入り込む。

「ッシ」

 空を抉りぬく右の二連から左の掌打! 槍の石突側で上手く払われる。問題なし、そのまま更に懐深く潜り込む。が、槍兵はいち早く後ろに飛ぶ。容易に悪手となりうる行為だが、最も速き者として呼び出されただけある。単純に素早い。だが届く。追撃、潜り込もうとした動きからカットするようなフックを虚空へ叩き込む。

「おわっ!?」

 ミス。此方の動きから反射的に槍で防御、遠当てはその上から叩いただけ。

 空中でバランスを崩すかと思ったけど、野生の獣、それも猫科のヤツを思わせる身のこなしで危なげなく着地。更なる追撃は出来ず。

 槍を構え直し油断なく此方の動きを見ている。

 

「イレギュラーにも程があんだろ、ランサーの俺より速いってのは。

 それにお前、俺並みの速さのヤツとやり慣れてるな?」

「ああ、ごろごろって訳じゃないけど探せば居たからね」

「………どこの人外魔境から出てきやがった、テメェ」

「ずっと遠い人外魔境からだよ」

 

 睨み合う。

 

 

「ふぅ、止めよう」

 構えを解く。

 

「おい、止めんのかよ? せっかくノってきたのによ」

 

 肩透かしを食らったように、かくんと闘気が霧散する。槍で肩を叩いて凄い不満そうな顔をしている。むぅ、さては戦い自体が大好きってヤツだなこいつ。

 

「やめるよ。何でかそっちが本気でヤらないみたいだし」

「チッ!」

 

 なにやら物凄い忌々しそうに舌打ちされたよ?

 ちょっと怯む。

 

「お前じゃねえよ。うちの腰抜けマスターに偵察だから全力を出すなとか言われてやがんだ」

 

 心底苛立たしそうにガツガツと足で地面を掘っ返している。

 

「俺の望みは全力でヤり合える戦いだってのに、クソッタレが!

 ……おい、お前未来の英霊だろ? 名を名乗れよ」

「ん、ここ日本生まれの黒川冬理だ」

「聞いた俺も俺だが、ホントに答えんのかよ」

 

 ランサーは呆れた目でこっちを見てる。脱力って感じだ。

 

「まぁ俺に害は無いしね」

「名乗りを受けたからには返すのが礼儀か、俺は」 「待った」

 

「それはそっちが不利でしょ? 代わりに一つ、教えてほしい事があるんだ」

「何だよ?」

「ここら辺の山でさ、潜り込めそうな廃屋か何か知らない? 状態が良ければなお良し」

 

「―――――――」

 

 いや、この質問でそんな怖い顔で黙り込まれても……。

 何か拙い質問だったのか?

 

 ランサーが顔を上げる。

 

「ここからそう離れていない所に洋館がある。あそこの山の町側、中腹だ」

 

 伸ばされた指の先には、それほど高くもない山が。そこそこ背の高い広葉樹が多いから隠れやすいかな。

 

「ありがとう、ランサー」

「いい。じゃあまたな。次に夜出会ったら全力でヤり合いたいもんだ」

 

 それだけ言うと、ランサーは霊体化して戻って行った。

 

 

「ヌル、付近に反応は?」

『ノー』

 

 すぐさま外部スピーカーから返答が返ってくる。

 

「……ふぅ」

 

 気が抜ける。

 

『マスター、お疲れ様でした』

「ああ、ありがとう。ランサーは気持ちの良いヤツみたいだな。が、後ろで覗いてたのが気に障る。あれがランサーのマスター、言峰綺礼とかいう神父か」

 

 あの類いの視線を向ける相手は、大体において面倒臭いと相場が決まっている。

 さてはて。

 取り敢えずは、

 

「機体を収納してランサーの教えてくれた洋館に行ってみようか」

『私はどう致しましょうか』

「あー、興味、ある?」

『あります。出来れば端末を携帯して頂ければと』

「分かった」

 

 空間を外と繋げ、せっかく造ったので機体を分解せずに放り込む。代わりに新しいヌルの端末として、漆黒の黒い掌サイズのキューブを持ち出した。これは各種センサーを内蔵し耐久性に非常に優れる代物で、どっかの時計ではないが、それこそ象が乗っても壊れない。試してないけどモビルスーツでも壊れないだろう。

 いつぞや他の世界で”ブラックホール入り小箱”を聞いたヌルが、面白半分に作り上げた代物のガワを利用したものだ。いったいどういう造りになっているのか、中から一方的に情報収集出来るという不思議物体である。

 

「ポケットに入れるには少しばかり大きいな――よし、こうしよう」

 

 引っ掴んだそれを服をはだけて左胸に当てる。するとズブズブと黒いキューブは体の中に沈んでゆく。ゆっくりとそのまま見えなくなり、最後に手の平が撫でたそこには何の痕跡もなかった。

 

「即席の心臓代わりだな」

『感度も良好、ありがとうございます。サポートはお任せを』

「ん、頼りにしてる。じゃあ行こうか」

 

 

 さて、これからの寝床があんまり酷くなければ良いんだけど。

 

 

 

 Main Side 黒川冬理 out.

 

 

 

 


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